週間情報通信ニュースインデックスno.692   2009/01/24

1.隠れた世界企業】和製マフラー、NYの定番に(1.30 nikkeibp)
松井ニット技研(群馬県桐生市・ニット製造業)

 群馬県桐生市。桐生駅前の住宅地で細道を折れると、「松井」の表札がかけられた民家に当たる。建造100年以上の木造住宅だ。扉の向こうからかすかに編 み機の音が聞こえなければ、そこが「松井ニット技研」の編み物工場の入り口と知ることは難しい。

 ある時、2人の米国人がこの民家のような工場を訪れた。
 玄関で靴を脱ぎ、畳敷きの客間に通される。座布団を勧められたが、正座はもちろん胡坐をかくことも彼らには難しい。結局、両足を投げ出すように伸ばして ちゃぶ台に向かった。

 ちゃぶ台の上に、色鮮やかな縦じまのマフラーが置かれた。2人はため息をつくようにそのマフラーを眺め、手に取る。指先に柔らかな感触、豊かな収縮、そ して大胆に原色を織り成したデザイン。 「素晴らしい」

 2人はニューヨーク近代美術館(通称、MoMA)のデザイナーとバイヤー(仕入れ担当者)だった。世界中を飛び回り、優れたデザインの商品を発掘して仕 入れるのが彼らの仕事だ。

 「MoMAストア」は、MoMAの“目利き”が世界から集めた雑貨や衣類などを販売している。美術館の土産物店という範疇を超えて、もはやMoMAブラ ンドによる「セレクトショップ」としての性格が強い。館内はもちろん日本でも東京都渋谷区に店舗を持つ。

 MoMAの2人が訪れたのは10年前のこと。2人は松井ニット技研のマフラーを一目で気に入り、400本を注文。2000年から同社の商品がニューヨー クの店舗に並んでいる。大胆な色使いが、MoMAを訪れるデザイン感度の高い顧客層の心をつかんで完売。以降、追加注文が続き、大ヒットとなった。

 2003年からMoMAストアだけで年間1万本のマフラーを売る。マフラーは48ドル(約4300円)で、クリームやブラウンなど7種類ある。5年連続 でMoMAストア全商品中、販売数量の首位を保つ。今はMoMAのオンラインショップでも売られている。

低速機械のリブ編みに特徴
 松井ニット技研のマフラーは、横に引っ張ると、畝のような凹凸が引き伸ばされる。その形状が、肋骨に似ていることから「リブ編み」と呼ばれる特殊な編み 方だ。
 豊かな収縮が得られ、しかも重量を軽く抑えられるという特徴がある。

 色使いも特徴的だ。同系色でまとめようとせず、個々の色彩の相性で見ればぶつかり合うような組み合わせの糸を数色使う。詳細に見れば過激な色の組み合わ せでも、視線を引いて全体を見れば、点描画のように調和の取れた色の固まりに見える。

 これらの特長をマフラーに持たせる技術が、他社の追随を許さない松井ニット技研の強みだ。

 同社の工場で稼働するラッセル編み機は、大正時代から稼働している年代ものだ。糸を張って、手でその張り具合を確認し、不足していれば重りとなる分銅を 足す。ギアの凹凸を調整することで編み針の動きを制御する。松井智司社長は「道具の延長にあるような機械」と表現する。

 最新の編み機に比べれば、その編みの速度はおよそ5分の1。しかしこの低速の編み機でなければ、同社の誇る「リブ編み」は実現できない。

 「高速機は便利で速いけれど、精緻なリブ編みをやろうとすれば、糸に負担がかかり、網目の柔らかな加工にならない」と松井社長は言う。しかし低速機であ れば誰でもできる加工というわけではない。「古い機械なので勘に頼る部分が多い」。

  なぜ同社だけが、衰退し、苦戦を強いられる繊維産業にあって、低速の機械や、伝統的な製造技術にこだわり続けられるのか。

 それは、創業以来、技術を保ちながらも時代の潮目を読み「売り方」を変えて、波を超えてきたためだ。


イッセイミヤケのOEMで足場
 創業100年超を誇る。1907年、繊維の町として知られる桐生にあって、現社長から数えて3代前が魚介販売から繊維産業に転じたのが起こりだ。

 第1の手は「輸出」だ。戦前はもっぱら織物の製造を手がけていたが、和装の衰退を見越して編み物に業態転換。60年代に入ると、特に米国市場に向けて製 品を量産し、隆盛を誇った。

 しかし好調は続かない。日米繊維交渉による輸出減で経営が悪化した。社長の実弟であり、繊維専門商社に勤めていた松井敏夫氏(現専務)は71年に米国が 金・ドル交換停止を打ち出したニクソンショックで為替が激変、輸出産業が打撃を受ける様子を目の当たりにした。そして75年に家業に戻って説いた。「国内 事業にシフトしよう」。

 ここで第2の手として「国内向けシフトとOEM(相手先ブランドによる生産)」に舵を切る。イッセイミヤケ、コムデギャルソンなどの国内著名ブランド向 けのOEMに特化する戦略だ。「技術やセンスを、優れたブランドとのおつき合いの中で磨くことができた」と智司社長は振り返る。

 ところが90年代に入ると、OEM先のブランドが生産拠点を東南アジアや中国にシフトし始める。単価引き下げの圧力が強まり、利益率が低下した。


 そこで第3の手として「自社ブランド立ち上げ」を目指す。

 OEMで品質と感性を磨いた。次は独り立ちして、自社オリジナルの商品を生み出したい。智司社長はリブ編みの特徴が出る大胆な色使いとデザインにこだわ り、意欲的に新作を商品展示会に出品し続けた。そしてマフラーが、MoMAスタッフの目に留まった。

 その成功を追い風に自社ブランド「KNITTING INN(ニッティングイン)」を2005年に立ち上げた。MoMAでも売るマフラーと同様のデザインの帽子や手袋を揃える。美術館の土産店などに販路を広 げる。 伝統の技で品質を守りながら、デザインは先端にこだわる。その姿勢で今後も世界に舞台を求める。

2.経済悪化で生産材料が手に入らない!中国で想定外の事態(1.29  nikkeibp)
 12月から1月にかけての3週間、中国の華北、華東、華南、香港を回り、取引先をはじめとする各地の中小企業経営者や企業幹部と会い、現地の景況感の調 査を行いました。
 中国や香港の経営幹部たちが異口同音に語った懸念は、春節(旧正月)が明ける2月以降、中国の実体経済がさらに急激に落ち込む「春節明け危機」が現実に なるのではないかということでした。

 中国沿岸の先進工業地帯では、世界金融危機の影響で、実体経済の猛烈な悪化が始まっています。製造業だけでなく、不動産関連業種や日本企業の下請けで成 長してきたIT関連業種も仕事の激減で大きな打撃を受けています。

●製造業を中心に拡がる停滞感
 中国の経済状況は地域によってまだら模様ですが、南に行くほど悪化の度合いは鮮明になります。輸出型製造業の多い華南地域(深セン、東莞、広州など) は、最もひどい状態に陥っているようです。健康関連製品、ブルーレイ関連製品など時流に乗った製品を作っている一部の工場を除き、既に昨年(2008年) の6月頃から生産調整、労働者のレイオフが始まり、製造ラインが半分以上も止まったままになっている工場があちこちに見られます。

 例年、春節休みが始まる前には駆け込み操業で工場が大忙しになりますが、今年は様相が一変しました。受注減少による生産調整のため、例年より早い、昨年 末から春節休暇に入ったため、出稼ぎ労働者たちが例年より1カ月も早い帰省を強いられました。彼らの多くは、「休暇明けに工場に帰ってきても、仕事を続け られるかどうか分からない」という不安を抱えています。

 金融・サービス業や流通業の比率が高い大都市上海を抱える華東地域は、表面上は活気を帯びています。しかし、輸出産業や不動産、IT関連業種も多く、今 後の経済動向が懸念されます。
 とりわけ、自動車関連製品、家電製品、雑製品など、輸出向け製品の工場が多い寧波(ニンボウ)では、受注の減少で地元メーカーの多くが華南と同じくらい 厳しい苦境に陥っていると聞きました。

 また、地理的、歴史的に日本との関係が深いため、日系企業の進出が多い華北の沿海工業地域では、日本経済の悪化が現地経済を直撃しています。華北の中心 都市である大連の工業団地にある日系工場の生産は、昨年10月くらいを境に、受注や生産が30%〜50%程度も減っているということです。

 中国のメディアや経済研究機関の論調を見ると、「中国だけは大丈夫」といった大本営発表的な楽観報道が目立っています。国営テレビ、新聞などの官製報道 のためか、一般市民レベルの街の声では、危機感はまだ薄いようです。

 しかし、実体経済の担い手である企業経営者や企業幹部の間では、春節明けにはさらに大きな経済の落ち込みが来るのではないかという、悲観的な見方が広 がっています。どこの地域でも地域経済全体が急激な受注減に苦しみ、近所の企業が次々に大幅な生産調整や倒産に追い込まれているのですから、心配になるの は当然といえます。

●日系工場が生産停止の状態へ
 中国の実体経済のこうした混乱の影響を受け、中国部品メーカーの生産縮小、倒産が続いているため、中国に進出した日本メーカーへの部品の供給がストップ し、製品を完成できないという思わぬ事態が多発しています。

 現地で見聞きした一例を挙げると、華北の工業団地に進出している日本の大手家電メーカーでは、長年の調達先である華南の材料メーカーが経営危機に陥った 影響で重要な電子部品、プラスチック原料、塗料などが手に入りにくい状況に置かれています。そのため、日本市場向け家電製品の組み立て、出荷が大幅に遅延 している事態になっているということです。

 実際に私が関係している日本の輸入企業でも、中国のメーカーに電気製品を発注しましたが、基幹電子部品が華南の部品メーカーから入ってこないため、2カ 月間も製品の組み立てができない状況が続いています。

3.塩尻市がRuby製図書館システムの導入を決定,「既存システムの半額」(1. 30 nikkeibp)
  長野県塩尻市は2009年1月29日,次期図書館システムに,まちづくり三鷹が開発したRuby製システムの採用を決定した。「現在の図書館システム を更新・拡張する場合の概算と比べ,費用を約半額に抑えられる」(塩尻市立図書館)という。

 塩尻市では現在NECグループ製の図書館システムを利用しているが,2010年3月末にリース切れを控えている。また図書館も2010年に竣工す る新しい市民交流センター「えんぱーく」に移転し規模を拡大する。そのため,新システムの導入を検討していた。1月29日に入札を行い,まちづくり三鷹の 図書館システム導入が決定した。図書館はえんぱーくの本館のほか市内に8カ所の分館があり,そこにもシステムの端末を設置する。現在のシステムが持つ機能 は新システムでもすべて利用できるようにする。

 まちづくり三鷹は,東京都三鷹市が出資する第三セクター。Rubyによる図書館システムを開発しているほか,Ruby技術者育成セミナーも行って いる。自治体向けシステムでは各地域のITベンダーと提携しシステムを導入する方針をとっており,塩尻市でも地域のITベンダーとシステムの保守運用で提 携する予定。

 塩尻市では2006年に策定した地域情報化ビジョンで,現在ベンダー1社のシステムを利用している住民情報等システムや行政内部システムをオープ ン化し,地元企業の参入機会を広げることをうたっている。2008年に策定した実施計画の中でもオープンソースについて言及しており,すでに体育館や総合 文化センターの施設予約システムや水道料金システムでPHPのオープンソース・ソフトウエアを利用している。「今回のオープンソース・ソフトウエアを利用 したシステムの導入は,このような市の方針にのっとったもの」(塩尻市立図書館)という。

4.企業システムで社員の携帯電話を遠隔操作可能に,ドコモが新サービス開始(1. 28 nikkeibp)
  NTTドコモは2009年1月28日,企業のシステムから社員などが持ち歩いている携帯電話を制御できるサービス「ビジネスmoperaコ マンドダイレクト」を1月30日より開始すると発表した。

 ビジネスmoperaコマンドダイレクトは,携帯電話の設定変更や紛失対応,データの送信などを企業のシステムから実施できるサービス。NTTド コモが携帯電話の機能をWeb API(application programming interface)として契約企業に公開し,これに対して企業システムがリクエストを投げることで実現する。例えば,社員全員の携帯電話に同報メッセー ジを送ったり,遠隔から端末のデータを消去したりといった操作が可能だ。APIを利用するため,企業側で個別にシステムを構築することが前提となる。

 これまでも,NTTドコモが提供するWebページを使って同様の操作が行える「ビジネスmoperaあんしんマネージャー」というサービスがあっ た。ただし,「必ずNTTドコモのWebページにログオンし,お仕着せのユーザー・インタフェースを使わなければならない」,「自社のデータベースとは別 のサーバーで端末を管理しなければならない」など企業にとって不便な点も多かった。今回のサービスを使うことで,企業側で端末のデータを管理できるほか, 企業の機材管理や情報統制のシステムの中に携帯電話を組み込むことが容易になる。

 利用料金は,回線の規模に応じた基本料金と利用機能で決まる。例えば,901〜1000回線の基本料金は月額22万500円。全端末に電話帳操作 機能を付ける場合は,月額7万3500円を追加する。これ以外にも,「ロック/利用中断」(901〜1000回線の場合月額7万3500円),「iモード 設定」(同月額3万6750円),「ブラウザ利用制限」(同月額3万6750円),「一斉同報」(同月額3万6750円),「遠隔初期化」(同月額10万 2900円),「遠隔カスタマイズ」(同月額5万1450円)などの機能が選べる。

5.JTB、Windows Azureで運用するWebアルバムサービスを公開(1.27 nikkeibp)
 JTBは2009年1月27日、同社の「旅のアルバム・サービスToripoto」を、マイクロソフトのクラウド・プラットフォーム・サービス 「Windows Azure」で運用し始めた。既存のASP.NETアプリケーションをWindows Azureに移行し、ユーザーが投稿した写真データは「SQL Data Services」に格納する。

 Windows Azureは、マイクロソフトのデータセンターで稼働する仮想マシンやアプリケーション実行環境上で、ユーザー企業が任意のアプリケーションを稼働できる というプラットフォームサービスだ。JTBは「Visual Studio」で開発したASP.NETアプリケーションであるToripotoを、Windows Azure上に移行した。ユーザーデータを格納するSQL Data Servicesは、SQL Serverをベースにしたストレージサービスである。

 JTBは2009年9月末までの期間限定でToripotoをWindows Azure上で運用し、性能の評価などを行う。クライアントアプリケーションには「Silverlight」を採用。開発と運用は、JTBの子会社である i.JTBとジェイティービー情報システムに加えて、独立系のイーストが担当する。

 ToripotoのURL(http://toripotoazure.cloudapp.net/)に含まれる「cloudapp.net」は、 Windows Azureを用いたアプリケーションが使用するドメインである。Toripotoのユーザー認証には、マイクロソフトのディレクトリサービスである 「Windows Live ID」を使用する。Toripotoにユーザー登録していないユーザーでも、Windows Live IDを使ってサービスにログオンできる。

 ジェイティービー情報システムの北上真一 副社長は、同日マイクロソフトが開催した開発者会議「TechDays 2009」の基調講演に登壇。「既存のASP.NETアプリケーションを、非常に簡単にWindows Azure上に展開できた。我々の主な仕事は予約システムの運用であり、なるべく本業に特化したい。インターネットで提供する様々なサービスに関しては、 積極的にWindows Azureのような(他社の)サービスを利用していく考えだ。特に写真のような容量の大きいデータの格納には、本業のサービスとは異なるネットワーク、 サーバーを使用したいと考えており、低コストでシステムを運用できることも含めて、Windows Azureには期待している」と、Azureでの試験運用を開始した理由について説明した。

 
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