週間情報通信ニュースインデックスno.669  2008/08/23

1.SaaS活用の3つの課題(8.22  nikkeibp)
 いま,多くの企業がプロセス・セントリックな組織を目指している。そのために重要なのが,ITのプロセス・セントリック化である。プロセス・セントリッ クITを現実的なものとしたのは,SOAとそれに関係する技術進化やパフォーマンスの向上だ。これにより,レガシー・システムと新しいパッケージ製品,外 部調達型のサービスをプロセス軸で組み合わせて最適化する道筋が見えてきた。こうした中で,SaaSの利用も一層進むと考えられる。ただし,SaaSを上 手に活用するためにはいくつかの課題に注意する必要がある。

企業の情報システムには大きく3つの種類がある。手づくりのカスタム型とパッケージ製品,そして外部から調達するサービ ス。これらを最適な形で組み合わせ,環境変化に対応して見直しながら最適を維持する。それは,困難な作業のように見えるかもしれない。これに対する解決策 を提示するのが,プロセス・セントリックITの考え方である。プロセスを明確に定義し,それを常にビジネスに適合する形に変えていく。こうした取り組みを 継続することで,企業の変化対応力は強化される。

プロセス・セントリックITを支える技術的な基盤となるのがSOAである。米アクセンチュアのシステム・インテグレー ション/テクノロジー&デリバリー グループ・チーフ・エグゼクティブを務めるカールハインツ・フルーター氏は,SOAの意義をこう説明する。

「プロセス・セントリックIT構築のカギはSOAです。従来は一枚岩だった巨大なアプリケーションを,SOAはいくつか の構造に切り分けてサービスとして開示し,プロセスとして組み立てることを可能にします。例えば,かなり以前にアセンブラで書かれたアプリケーションで あっても,Webサービスとして扱えるようにすれば,その機能を利用することができます。SOAによって,こうした既存資産の再利用が可能になるのです」

既存資産の再利用という取り組み自体は,10年ほど前から行われてきたことである。ただ,それがSOAによって大きく前 進しつつあることは間違いない。10年前との違いについて,フルーター氏は2つのポイントを挙げる。

「1つは,テクノロジーです。WebサービスやXMLといった異なるベンダー間の製品を連携する標準ができました。もう 1つは,パフォーマンスの問題が解消されたこと。10年前はパフォーマンスが出ずにあきらめていたシステムを,いまは簡単に構築できます」

フルーター氏が最初に挙げた連携性は,外部サービスを取り込む際にも重要な意味を持つ。自社の保有するシステムと外部 サービスとの連携によって,合理的でスムーズなプロセスを実現できる。こうした中で,SaaSへの注目度が一層高まっている。

「SaaSの重要な側面は2つあると思います。まず,ハードウエアやソフ トウエア,データベース,ネットワーク,さらには保守サービスまでをすべてSaaSで網羅できるという点です。次に,非常に柔軟な価格体系に対応できるこ とです」とフルーター氏は語る。こうしたメリットを引き出そうと,自前主義の傾向が強いと言われる日本企業の間でもSaaS導入の動きは加速しつつある。

ただ,SaaSを活用する場合にはいくつかの課題に注意する必要がある。フルーター氏は3つの課題を指摘する。

「第1に,データの同期です。社内で持っているデータと,サービスプロバイダーが管理するデータを,いかに同期させる か。同期の要件や頻度などは,アプリケーションによって異なるでしょう。第2に,外部に置いたデータのセキュリティを,どのようにして確保するか。第3 に,どのようにして十分な性能を得るかということです」

SaaSの利用はCRMやコラボレーション,電子メールなどの分野から始まり,すでに大きな市場を形成している。しか し,少なくとも現段階では,ERPをはじめとする基幹的なシステムにおいて多くのユーザーを獲得しているわけではない。この点に関して,フルーター氏の見 解は次のようなものだ。

「特に,基幹系のアプリケーションを“クラウド”に乗せることに関しては,様々な検討が必要だと思います。重要なのは, 会社の生命ともいえるデータをどこに格納するかということ。例えば,顧客のクレジットカード番号,病院のカルテといった情報までクラウドに乗せるのかどう か。こうした情報の格納場所については,政府が規制をしている場合もあるでしょう」

SaaSはグリーンITとも密接に関係している。個々の企業が自前のデータセンターでシステムを運用するよりも, SaaSプロバイダーが大規模なデータセンターで多数の顧客のためにシステムを運用するほうがエネルギー効率を高められる。デスクトップPCでも同様のこ とが言えるとフルーター氏は言う。

「多くの場合,PCが消費する電力のうち3分の2から80%程度は,本来のコンピューティングには使われていないと言わ れています。このデスクトップをクラウドに乗せることができれば,電力を相当節約できるはずです」

プロセス・セントリックITを構成する主要な要素としてのSaaS,そして環境負荷を低減させる大きな潜在力を秘めた SaaS。企業と情報システムの新しい姿を考える上で,SaaSは欠かせないものと言えそうだ。

倒 産から立ち直れたのは 「下町経営」のおかげ(8.20 nikkeibp)
 当社は1992年に会社更生法を申請し、事実上の倒産に至りました。私は管財人として当社に赴任しましたが、豪華な本社ビルを購入したり、旧経営陣の放 漫経営は目に余るものがありました。

 当然、合理化に着手しなければなりません。私がやったことは「ムダな設備は持たない」「知恵を出して、自分たちでできることは自分たちでやる」と いうことでした。本社ビルや余剰設備は売却・破棄するなどムダを省き、外注も減らして内製化していきました。

 一方で、最初の「設備投資」として「工場内の給茶器」を認め、花壇を社員で作りました。これらはムダではありません。「人の心を荒ませる」ことほ ど、企業の競争力を弱めるものはないからです。

 再建中は無我夢中で意識していませんでしたが、このような「合理化と人情の両立」や、「ムダを省く」「自分でできることは自分でやる」といった経 営姿勢は、自分が親しんだ下町の生活にどこか重なります。

 私は東京・上野で育ちました。隣近所の付き合いを大事にして、たとえ貧しくても皆で我慢し知恵を出して何とかする。こうした下町の生き方が、私の 経営の根底にもあると思います。

 再建を果たした今も方針は変わりません。先日、会社のカーペットを張り替えましたが、これもほとんどすべての作業を自分たちでやりました。私が近 所のディスカウントストアで安いカーペットを買い付けて、秘書と二人で自転車で運び、皆で「最近、子どもが生まれたんだって?」などとワイワイ雑談しなが ら張り替えました。

 およそ上場企業らしくはありませんが、こうした「下町経営」こそが、我が社が立ち直ることができた一番の理由であると自負しています。

3.理想主義者のダンナ芸は侮れない〜『ポスト消費社会のゆくえ』(8.21  nikkeibp)
辻井喬・上野千鶴子著(評:清野由美)
文春新書、900円(税別)

 上野千鶴子・東京大学大学院教授はジェンダー論と同時に消費社会論の研究者でもある。詩人、作家の辻井喬は本名、堤清二。元セゾングループの代表 だ。

 1990年代のはじめにセゾングループが社史「シリーズ・セゾン」(全6巻)を編んだ時、上野氏が編集委員・執筆者として参加したという縁が二人 の間にはある。取材・執筆時は、まさにバブル景気のピーク。そして出版後に、そのカーブは急激な下降線を描いた。そんな大波と寄り添ったのが、まさにセゾ ングループだったわけだ。

 取材を通して、セゾングループの高揚と凋落を目の当たりにした社会学者が、グループを率いた元経営者に試みるインタビューは、単なる回顧談義に終 わらない。

〈この機会にセゾングループの失敗を検証させていただきたいと思います。(中略)後知恵にすぎませんが、四つのシナリオを用意しました。第一、セゾ ングループの失敗はその体質にある。第二、グループ内の一部の失敗のダメージがほかに波及した。第三、この失敗は総帥・堤清二の経営責任にある。第四、堤 清二のパーソナリティに問題がある〉

 と、相手に向かう上野氏は、相変わらずのアグレッシブさ加減だ。

 普通の元経営者なら、まず、こんな質問が出たところで気分を害し、対論は成り立たないことだろう。その困難な対論が、ここでは「辻井喬さん」を相 手にしたことで実現している。「堤清二さん」と同じ経験を持ちながら、それを別の場所から俯瞰できる人格を媒介に、「セゾンの失敗」を追検証しながら、戦 後消費社会の誕生と爛熟をあぶり出す流れには、相当の読み応えがある。

 対話は1950年代の西武百貨店前史から始まり、70年代〜80年代の黄金期、90年代の失速、解体期まで3章にわたり、時間軸に沿ったセゾング ループの歩みをトレースする。

 池袋の駅前で「下駄ばき百貨店」と軽く見られていた西武百貨店が、時代の前線に踊り出たのは70年代後半。その中心にあった戦略が、広告によるイ メージ展開と、文化事業の二つだった。そこから、団塊から60年代生まれの世代に共通したセゾン体験というものも生まれた。「おいしい生活。」「不思議、 大好き。」のコピーが記された西武百貨店のポスターは、今でも私たちの記憶に刻まれているし、マルセル・デュシャンの作品を見に、軽井沢高輪美術館まで喜 んで足を運んだこともいい思い出だ。

そこまで自省しなくても…

 だが西武黄金期の戦略ですら、上野氏にかかると堤清二の誤謬になってしまう。

〈私の限られた観察からみても、西武の比較的とんがった文化事業のビジターと、西武百貨店のカスタマーとは重なりません。百貨店を素通りして、劇場 や美術館に行く人たちが大半でした。だから販売促進にはつながらなかったと思います〉(上野氏)

 どうだろう? 西武の文化事業をきっかけに、西武百貨店で買い物をした人たちは確かに存在したと思うのだが。実際、セゾン美術館を併設した西武百 貨店池袋店は、87年に百貨店の全国売上高第1位を達成している。このあたりは経営者として誇ってもいいのではないか。

〈私がいま感じている危機意識の実態は何かと申しますと、世界が産業社会の終末を迎えているということです。/日本市場のスケールの縮小と、経営者の堕落 は相当なスピードで進んでいる。ですから日本の市場もどこかに対抗軸を作っておかないと、とめどなく堕落する〉

 その対抗軸の可能性として、環境問題の解決や都市構造の脱構築などを挙げ、最後に「いまの若者たちは、そうした疲弊した状況にありますが、社会に 出る頃には、新しいポスト産業社会になって、いろんな分野で事態が動き出す時代になっていると思います」と、辻井氏は希望をつなぐ。

 抜き書きしてしまえば、その辺の評論家が言っていることと変わりないが、80歳を超えた辻井氏の感慨は重みが違うことだろう。

4.シン・クライアント端末としても最適なUMPC(8.22  nikkeibp)
 UMPCやMIDはほとんどの製品がコンシューマ向け。今のところ、企業ユーザーには縁遠いかもしれない。

それでも一部には、UMPCを活用する企業向けのソリューションが登場している。代表例がサイボウズ・メディアアンドテクノロジー(サイボウズ MT)やソフトブレーン・インテグレーションが提供する「モバイル・シン・クライアント」だ。いずれもHSDPAの通信カードを装着したUMPCをシン・ クライアントの端末として使う。

最近は端末紛失時の情報漏えいを防ぐためにノート・パソコンの持ち出しを禁止する企業が多い。だがそれではあまりにも不便。そこで、セキュリティ対 策と利便性を両立できるモバイル・シン・クライアントが注目されている

5.Salesforce.comの5〜7月期決算、過去最高の売上高(8. 21 nikkeibp)
 オンデマンドCRM(顧客管理)サービスの米Salesforce.comは米国時間2008年8月20日、2009会計年度第2四半期(2008年 5〜7月期)の決算を発表した。
売上高は過去最高の2億6310万ドルで、前年同期比49%増、前期比6%増。GAAP(一般に認められた会計原則)に基づく純利益は1000万ドル(希 薄化後の1株当たり利益は0.08ドル)で、前年同期の370万ドル(同0.03ドル)から大きく改善した。この純利益には、株式報酬費用の約1900万 ドルや、買収に関連した無形資産の減価償却費の約130万ドルが含まれる。


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