週間情報通信ニュースインデックスno.663  2008/07/12

1.フリーターの共感を集める昭和のプロレタリア文学『蟹工船』(7.10)
小林多喜二の『蟹工船』が今、ブームを呼んでいる。大手書店の文庫本コーナーで軒並み平積みとなり、昭和初期の純文学としては異例のベスト セラーとなっている。本書の内容には現代の若者の境遇とずいぶん一致する点があり、「時代の共感を得ている」というのが識者の分析だ。

 戦前の日本で、極限まで抑圧されたプロレタリアート(労働者階級)の群像小説。荒らぶるオホーツク海に現場労働者として連れて行かれ、過酷で劣悪な労働 条件でひたすら水揚げされた蟹を缶詰めに加工する労働者たちは、現代で言うフリーターだ。現場には次第に不満と絶望が鬱積していく。そのなかで、1 人の労働者の死をきっかけに労働者たちは団結して立ち上がる。

 過酷な労働を強いる監督を相手にした団体交渉は、一時はうまくいくかに見えた。だが、通報を受けて駆け付けた海軍によって、交渉にあたった労働者のリー ダーたちは有無をいわせず検挙されていく。この失敗に学んだ労働者たちは、今度は誰がリーダーか分からないような形で全員が団結してサボタージュを続けて いく……というのが大まかなストーリーである。

 小説には、特に主人公というべき労働者は登場しない。“悪の存在”として、蟹工船の監督者である「浅川」、ただ1人が名前を持った人間として登場するの みだ。
 『蟹工船』がフリーターたちの目線で共感されるということは、時代を置き換えて考えればこういうことになる。

 蟹工船の労働者たちはフリーターの象徴。管理監督する権力者の象徴として描かれる浅川は、現代でいえば正社員の象徴であり、浅川に肩入れして労働者たち を検挙する帝国海軍は監督官庁の象徴である。

 ここで興味深いのは、悪の側の主人公である浅川のポジションが、現代でいえばせいぜいチェーン店の店長か、スーパーバイザーのレベルにすぎないことだ。 言い換えれば「浅川」とは、現代のサラリーマンであれば誰もがその立場を経験する可能性がある我々自身を象徴する存在なのだ。

経営者と正社員は“蟹工船ブーム”をどうとらえるべきか

 『蟹工船』には、浅川よりも上層部に位置するであろう経営者や、労働者たちを搾取する資本家の姿は登場しない。虐待や不当行為はあくまで現場のフリー ターと正社員、そして現場の正社員に接待されて不当行為に目こぼしをする末端の役人(軍人)の間で起きている。

 では、現代の経営者は、この“蟹工船ブーム”を一体、どうとらえるべきだろう?

 あの時代に起きていた直接的な虐待や搾取が現代ではあり得ないとしても、現代に置き換えたとき、それに類似する状況があるからこそ、今の人気が生まれて いるのは間違いない。
 例えば、現代でも現場の正社員とフリーターの間の軋轢(あつれき)は、彼ら自身にその処理が任されている。今も昔も、大企業の経営者は直接的に関与せ ず、自らの手を汚すことはない。しかし我々、年長世代は、そのような社会をつくるためにこれまで頑張ってきたのだろうか――?

 こんなふうに今、僕の気持ちを暗くしているのは、ちょうど『蟹工船』が再び読まれ始めたころ、同時に増えてきた「労働弱者が会社を訴える」という一連の 報道である。
 髪を金髪に染めていたことを理由に職場を辞めさせられた女性店員、偽装請負を内部告発したために待遇差別を受けた男性、権限がないにもかかわらず管理職 に認定されて残業代がカットされたチェーン店の店長……。

 裁判ではある者は勝訴し、ある者は証拠が不十分で敗訴する。ニュースを聞いていてやり切れない気持ちになるのは、訴える側の若者の多くが、会社のことを 愛していて、会社に変わってほしいという気持ちから訴訟に踏み切っている点だ。

  今回のコラムでは、「訴訟」という事象を通じて、「経営者とフリーターの関係はどうあるべきなのか」を多くの経営者に、そして現場で軋轢の矢面に立つ 多くの正社員に考えていただきたいと思っている。

 さて、現在、ある外食チェーンでは、会社の不当労働行為を労働基準監督署に内部告発した非正社員が、「その報復措置として会社を解雇させられた」と会社 を訴えている。これに対し会社側は、即日、この訴えは事実無根であるとの声明を発表した。


裁判には勝っても、経営者は新たな“業”を負う

 さらにこの会社の経営者は、すぐにマスコミに登場してこの件を以下のように説明した。

 まず、会社の不当行為を知らせてくれた非正社員には感謝しているということ。次に、会社は不当行為の指摘を受け、即座に是正を行ったこと。それとは別の 事件として、この非正社員が会社として見過ごせない問題となる行為を行った事実があるということ。そして、(文脈からとらえれば「解雇」ではなく)この非 正社員と上司が話し合った結果、1カ月の猶予期間の後に自発的に退職してもらったということだ。

 ある新聞の報道によれば、この「見過ごせない問題」とは、非正社員が店長に暴力を振るったことだという。一方、正社員である店長は、会社の通達を無視し て不正行為を続けていた。非正社員はそれを正すように店長に訴え続けていたのだが、店長はそれを無視していたとも報道されている。

  非正社員は暴力を振るったことについては否定しているが、経営者の話をベースにすれば、退社を促されたのは内部告発の報復ではなく、それと は別の問題としての「暴力事件」が理由ということになる。

 食い違っている双方の言い分は、今後、裁判の中で明らかにされるわけだが、報道された内容だけを見れば、おそらく会社が勝訴するケースだと読み取れる。 実際、この会社の人事部は“良い仕事”をしている。是正措置の素早さもさることながら、退職に持ち込んだやり方は法的に逸脱していない。

 この事件で会社に追い詰められた若者が本当に「見過ごせない」行為をしたのかどうか、報道はされているが事実は分からない。それでも見過ごせない行為を した証拠を握っているから顧問弁護士は強気になれるのだろう。「そのような事実(報復としての解雇)は一切ない」と断言する会社を見ると、若者の立場は非 常に弱く映る。

 しかし、この経営者は裁判に勝った後で何を得るのだろうか。

 仮に暴力事件があったことが立証されたとしても、彼をそこまで追い込んだ途中のプロセスを知る正社員たちの間には依然として後味の悪さが残るだろう。そ して、1人の“元”非正社員にはった「会社から見て不法な行為をした人間である」というレッテル――これは、経営者が新たに背負う“業(ごう)”である。

 1人の非正社員が「会社として見過ごせない行為」を行うに至る過程にこそ、経営者の責任があるからだ。

今、経営者に求められる“法を超えた徳”

 経営学の世界では、何らかの不合理な状況に追い込まれた社員は、モチベーションの高い社員と比較して、不正を行う確率が高いことが事実として知られてい る。内部統制の理論ではこれを単純に「リスクファクター」と呼ぶが、彼をリスクファクターにしたものは、詰まるところ会社の側にある。

 繰り返しになるが、この会社は裁判に勝ったとしても結局、新たな業を背負うだけなのである。和解の道は、ないのだろうか――。

 松下幸之助が経営の一線を退くまでの昭和初期から中期にかけて、「徳のある経営者」の筆頭ともいうべき人物が彼だったとすれば、昭和後期にその後継者と して突出していたのは稲盛和夫だったとコッター氏は語る。だが、平成の現代日本には、彼らの後継者たるべき人材は存在していないというのだ。

2.人生も仕事も「転機」を迎えるミドルをどう生かすか (7.9 nikkeibp)
 現在もっとも大きな人事課題のひとつとして浮上しているのが、ミドルの活性化の問題です。今回から数回にわたって、いかにしてミドルを活 性化させるかというテーマでお話したいと思います。

 まず、ミドルという年齢がどのような年齢段階なのか、ちょっとアカデミックに考えてみましょう。ミドルとは、年齢35歳頃から40代にかけての年代を指 すことが多いと思います。社会に出てから10年から15年という時間が経った段階です。本来であれば「油の乗り切った」とか「働き盛り」と呼ばれる年代で す。ところが実態としては、かなり「停滞感」が強いのです。

 古い言葉ですが、「中年期の危機」というものがあります。これは精神分析医のジャックスが1965年に初めて論文で使った言葉です。中年期には誰もが自 分自身の能力の限界やいずれ訪れる死と向き合わなければならず、「しばしば怒りっぽくなり、不満が多くなり、また気分が落ち込み、心身症状が表れる。そし て何かを成し遂げようとする意欲も減退する」と言っています。現在では平均寿命が伸び、当時とは年齢が持つ意味も若干変化していますが、明らかに体力の低 下や、老化現象の一部が見られることは確かでしょう。

 人格心理学者のユングも、40歳を「人生の正午」と名付け、これを危機と位置付けました。「我々は、人生の朝のプログラムに従って人生の午後を生きるこ とはできない」として、正午の前後では、あらゆるものが変わるとしています。これまで抑圧していた内なる欲望や自分自身の本来の姿を見出し、それを実現し ていくことによって達成される「個性化のプロセス」が進むというのです。ユングの主張は、この個性化のプロセスを衰退としてではなく発達ととらえていると ころに、特徴があります。

 例えば、人生の午前の時間は、損得や勝負ということにこだわるが、午後になると他人と比べてどうかということではなく、自分自身の信念に照らし合わせて 良いかどうかにこだわるようになります。ひとりひとりが異なる価値観を持つわけですから、何をもって成功とするか幸福とするかは、個人によって異なりま す。だから個性化するわけです。

 発達心理学の研究者であるレヴィンソンは、中年期を過渡期ととらえ、この時期には「黙らせてきた内心の声や早まって拒絶してしまったアイデンティティー の声が聞こえるようになる」としています。本当に自分の人生はこれでいいのだろうか、と問い直すわけです。

 またエリクソンは、中年期(彼は成熟期と呼んでいる)を、世代継承性を発揮するときと位置づけています。自分の次の世代のために何かを生み出し残してい こうというモチベーションが強く表出してくるというのです。一種の恩返しでしょう。もしもこのような世代継承性のモチベーションが生まれてこないと、停滞 感に悩まされるとしています。

 以上に述べたことは、職業的な側面だけではなく、生活全般について中年期の特徴を語ったものですが、仕事における中年期ならではの変化もあります。

 私自身は、中年期を「筏下り」から「山登り」への転換期だと考えています。「筏下り」というのは、ジュニアの頃のキャリアを表したもので、「長期的な目 標を追いかけるというよりも、目の前にある課題に全力でぶつかる時期であり、そのプロセスで力をつけていくとき」という意味合いです。反対に「山登り」 は、ミドルのキャリアを表したもので、「ひとつの明確な目標を腹決めして、他の山は捨てて、選択した山の頂を目指して全力をそこに集中させるとき」という 意味合いです。「筏下り」から「山登り」へとうまく種目を変更できればキャリアは納得のいくものになり、そうでなければキャリアは漂流します。

 山を登るという行為は、プロとしての道を歩む、とも言い換えられます。筏下りの際、さまざまな仕事を経験して、どの仕事がもっとも自分に相応しいかを見 極め、その分野のプロを目指すのです。逆にいえば、ミドルという時期は自分の専門分野を明確に決める時期だということです。

3.マイクロソフト、グーグル追撃へ新たな一手新しい検索技術を開発する企業を買収 (7.9 nikkeibp)
ヤフー(YHOO)買収失敗の痛手が癒えぬマイクロソフト(MSFT)だが、ウェブ検索の王者グーグル(GOOG)に追いつくべく、次なる手に打って出 た。同社は、新機軸のウェブ検索技術の開発企業、米パワーセットの買収を発表。パワーセットが手がけているのは“セマンティックウェブ”と呼ばれるもの で、検索対象となる言葉の意味や使用文脈を解釈し、検索結果に反映させる技術である。現在の大手検索エンジンで使われている、検索語句が登場するウェブ ページを探すという手法とは一線を画す。

買収を発表した7月1日付のマイクロソフトのブログでは、両社に共通するビジョンとして、「検索やウェブページの言葉の背景にある意図や意味を理解 する能力を追加し、検索を次のレベルに引き上げる」という点を挙げている。マイクロソフトがパワーセットの買収に動いているとの情報は、IT(情報技術) 系ニュースブログ「VentureBeat(ベンチャービート)」で6月26日に報じられていた。その記事によると、マイクロソフトが提示した買収額は1 億ドルを超えるという。両社の発表では買収額については触れられていない。

今回の買収は、グーグル追撃を目指すマイクロソフトにとって、大きな追い風となる可能性がある。パワーセットなどが手がけるセマンティック検索エン ジンは、グーグルよりも優れた検索結果を返すことがある。

4.アップル、新iPhoneで事業モデル転換(7.11  nikkeibp)
販売奨励金を採用、コンテンツ販売からも収益
スティーブ・ジョブズCEOによると「iPhone 3Gは、初代iPhoneでの教訓をすべて生かした」という。初代iPhoneの課題には、(1)3G(第3世代携帯電話)対応、(2)企業情報システム への対応、(3)他社製アプリケーションのサポート、(4)多くの国への進出、(5)低価格化−−の五つがあった。

(1)については、HSDPA(high speed downlink packet access)送受信機能の搭載により、Webページの表示速度が従来機に比べて2.8倍高速になった。同じ3G対応の他社製スマートフォン(ノキアの 「N95」やパームの「Treo 750」)との比較では、Webページの表示が36%ほど高速とする。

“親指入力”が可能、企業用途にも
(2)の企業情報システムと(3)の他社製アプリケーションへの対応は、iPhone 3Gに先駆けてリリース予定の新OS「iPhone 2.0」によって実現する。同OSには多くの新機能があるが、最も重要なのは18カ国語に対応し、日本語入力用として新たに親指入力のキーボード「かな」 が追加されたことだろう。

これ以外ではアドレス帳の検索が可能になり、電子メールの一括削除/移動に対応する。電子メールに添付されたアップルのビジネス・スイートである 「iWork」や米マイクロソフトのOffice文書も表示できる。これまでもWordとExcelには対応していたが、今回はPowerPointが新 たに加わった。

iPhone 2.0の要である企業情報システム対応では、Microsoft Exchangeサーバーの同期機能ActiveSyncを用意したほか、米シスコと協力して、企業で必要とされる各種VPNや無線LANプロトコルも搭 載した。端末を紛失した際、遠隔操作ですべての情報を抹消する機能も用意される。

5.アップルがiPhone向けアプリ配布サイト「App Store」をオープン、500タイトル以上を用意(7.11 nikkeibp)
 米アップルは2008年7月10日、iPhone 3Gの発売に先駆けてiPhoneとiPod Touch向けのアプリケーション・ダウンロード・サービス「App Store」を公開した。iTunesを最新バージョンであるiTunes 7.7にアップデートし、「編集」メニューから「設定」→「一般」タブで「アプリケーション」にチェックを入れることで、メニュー上に現れる。

App Store上に掲載されているアプリケーションは、7月10日の22時現在で、約525タイトル。ハドソンの「ボンバーマン」やサン電子の「上海」などの ゲームが目立つほか、「駅探エクスプレス」のような実用ソフト、「Salesforce Mobile」などのビジネス・アプリケーションも見られる。1000円以下の価格帯が主流で、無料のアプリケーションも多くそろえている。

 

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