週間情報通信ニュースインデックスno.645   2008/03/01

1.力作「905i」を投入するも、なぜドコモは純増統計で「敗北」したのか (前編) (2.28 nikkeibp)
 「最新モデル905iがどれだけ高機能でも、NTTドコモのシェアの長期低落傾向の歯止めにはならないだろう…」
 昨年末ごろ、このように予測する記事を、私はいくつかの雑誌で書かせていただきました。

 それから2カ月後、私の予測は的中したのですが、いざ蓋を開けてみるとドコモの予想以上の「惨敗」ぶりにはいささか驚かされました。TCA(電気通信事 業者協会)が毎月発表している携帯電話の契約数をみると、ドコモは1月の契約純増数はわずか1万9800台にとどまりました。単純な比較はできませんが、 1万9800台という数字は主要都市部でデータ通信サービスだけを提供しているイー・モバイルの純増数(3万2600台)よりも少ない数値です。各キャリ アが発表している番号ポータビリティでの転出入者数の数値をみても、ドコモから他キャリアへの転出に歯止めがかかったとはいえない状態でした。

  昨年11月末に「全部入り」と言われる機能満載の905iシリーズを一挙7モデル投入し、年末商戦に向けて準備万端の構えだったはずのドコ モ。確かに905iは歴代FOMAで最も完成度の高い端末でした。それでケータイの専門家たちの間でも「これでようやくドコモも反撃か?」と予想する意見 も多かったのです。みなさんも、さまざまなメディアでこうした意見を目にすることが多かったのではないでしょうか。

 ところが実際は「波乱」と呼べるほどの変化は起こっておらず、ドコモのシェア低落傾向には歯止めがかかっていません。マスコミの多くが年末商戦で「盛ん に売れている」と報道していた905iも、蓋を開けてみれば、実はその多くがドコモユーザー自身による機種変更需要だったというわけです。何せ50%以上 のシェアを持つドコモですから、ドコモユーザーだけの機種変更でも、十分に「ヒット商品」になってしまったというわけです。

  ではなぜ905iを投入するも、ドコモは年末年始の契約獲得競争で惨敗したのでしょうか?
 その前に、まずは905iシリーズを含めて、ドコモが秋冬に発表した端末ラインアップ自体をいまいちど冷静に俯瞰してみる必要があります。多くのメディ アは「ドコモの反撃」に対して概して高評価を与えていましたが、それは本当なのでしょうか?

 パケット定額制が使える3G(第3世代)携帯電話に求められる基本的な機能について、各キャリア携帯電話の「機能搭載率」を個別に集計したものです。お よそ半年ほど前の時点(ドコモの先代904iシリーズが発表された頃)で比較すると、端末の機能搭載率において実はドコモがライバル各社に比べもっとも 劣っていたという意外な(?)数値が出ます。iモードでモバイルインターネットサービスを大成功に導いた経緯などから「ハイエンド携帯電話のリーダーはド コモ」というイメージを持っていた方にとって、この数値はかなり意外なのではないでしょうか。

 端末の機能別で比較すると、半年前の時点では実はドコモがライバル2社にかなりの遅れを取っていた実態が浮き彫りになってくる。ラインアップ全体で見る と、ドコモは国際ローミング以外に搭載機能で他社に抜きん出ている要素が1つもなく、お家芸であるはずの「おサイフケータイ」ですらauの後塵を拝してい た。
 
 機能だけで比較すれば、NTTドコモは、下り通信速度が3Gの「kbps級」から「Mbps級」になる3.5Gハイスピード(HSDPA)対応携帯端末 の展開が遅れ、さらにGPSやワンセグ機能ではauに遠く及ばず、また3.5G端末の主要アプリケーションの1つであるフルブラウザの搭載率においても、 実はソフトバンクにすら遅れを取っているという状況でした。
 
 こうした状況が過去1年以上も続いていたのですから、ドコモユーザーの中でも携帯電話の機能にこだわるハイエンドユーザー層にとって、機能満 載の905iはさぞかし待たれた製品だったことでしょう。加えてNTTドコモは905iから割賦販売を導入して頭金0円でも買えるようにしたのですから、 年末商戦においてドコモユーザーによる買い替えラッシュが起こったのはむしろ当然と言っていいほどです。

 私も早速905iを1台ゲットし、他の全てのモデルも実際に触れてみましたが、確かに905iは今までのFOMAに比べればよくできています。しかしな がら905iは、過去においてライバルに遅れを取っていたドコモが、ハイエンドセグメントにおいて、ようやく「ライバルたちに追い付き、一部で追い越し た」という位置付けであり、それ以上でもそれ以下でもないというのが実情ではないのでしょうか。

 今回は、TCAの純増統計や番号ポータビリティでの転出入者数に関する統計を元に話を進めてきましたが、最近ではこの数値が個人ユーザーの実態とはリン クしなくなってきているのではないかとも思えます。詳細は次回で紹介しますが、「2台持ち需要の増加」と「法人契約の流出」が、ドコモの不調の一つの要因 になっていると考えられるからです。キャリアはこれらの数値を明らかにしませんが、現在大きく動いている数値なのではないかと推測できます。

2.“反常識”経営で製造業を革新(2.29 nikkeibp)
森精機製作所が見せる日本企業の新たな強さ

今、日本のメーカーが世界シェアの過半を握るほどの強さを誇っている分野をご存じだろうか。機械を作る機械であることから「マザーマシン」とも言われる工 作機械だ。
 工作機械は産業革命以降、欧米で急速に発展。第2次世界大戦後は米国が圧倒的な強さを誇った。
 しかし1982年に日本が世界最大の工作機械生産国となる一方で米国は失速。現在は世界の工作機械の生産額のうち、ドイツと日本がシェアの半分近くを占 めるまでになっている。
 中でも成長著しいのが、名古屋市に本社を置く工作機械メーカー、森精機製作所だ。

日本の工作機械がなければ世界のもの作りは立ち行かない
 2003年3月期に連結売上高639億円、40億円の赤字に陥っていた同社の業績は、2004年以降V字回復。2008年3月期には連結売上高2000 億円、営業利益305億円を見込む。5年で売上高が3倍以上になるという成長ぶりだ。

 森雅彦社長によれば、同社の売上高はあと10年のうちに倍増、4000億円になるという。
 「ここで手を抜かなければ、世界で50〜60%くらいが日本製になる」。森社長は4兆円ある世界の工作機械市場のうち、2020年には二兆数千億円を日 本の工作機械メーカーが占めると断言する。

 世界の過半の工作機械が日本製になるということは、自動車や航空機、さらには携帯電話や石油掘削機に至るまで、あらゆる工業製品が日本の工作機械なしに は成り立たないことを意味すると言っていい。

 森精機の急成長を支えているのは、海外での売り上げの伸びだ。同社の海外売上高比率は60%を超え、年々その割合は高まっている。欧州と米国での売り上 げが全体の半分を占めるが、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)などの新興国での旺盛な需要が大きく寄与する。

 「ブラジルやメキシコなどの中南米に欧米の自動車関連企業が工場を一挙に移しており、何十台という単位で工作機械の需要が生まれる。中国やインドでも、 販売やサービスの拠点を増やすより早い勢いで需要が増えている」(平元一之専務・営業本部本部長)


従来の発想での「もの作り」という言葉に強い違和感

 工作機械は景気の波に強く影響を受ける業界。森精機のV字回復も景気の回復が強く後押ししているのは確かだ。しかし同社の強さはそれだけではなく、森社 長のユニークな経営理念に負うところが大きい。その独自性は、森社長のこんな言葉にはっきりとうかがえる。

 「うちでは、もの作りという言葉は使いません」
 「会社の受付に派遣社員を使うなんて考えられないですよ。うちは全員、正社員です」
 「在庫をどれだけ積み増すかが、会社の価値を生む」

 森社長はこの10年、15年間、日本企業が常識としてきた考え方を覆すような発言を繰り返す。
 一見、反常識と受け止められるこれらの言葉は、時流に流されず、どんな時であっても自らの歩むべき道を行くと言っているのにほかならない。

 いかに安くものを作るかだけに主眼を置いてきた日本の製造業の考え方や、品質の良いものさえ作っていれば顧客は満足するはずという、もの作りという言葉 が持つ固定観念に森社長は強く異論を唱える。それは、こういったもの作りをしているだけでは、これからのグローバルな競争では勝ち残れないという強い危機 感の表れだ。

 「安い労働力を使って物を作る製造業というのはもう、破綻し始めている。日本できちんと作ってそれで儲かるモデルを作りたい」
 工作機械は兵器の製造などに使われる可能性があるため、海外での生産は難しい点が多いという理由があるとはいえ、森社長は人件費などのコスト削減のため に生産拠点を中国、そしてさらに安い地域へと移してきた日本の製造業のあり方に批判的だ。

 森社長のユニークな経営理念は、新機種の開発にまつわるエピソードにもはっきりと見て取れる。


京都の超高級旅館で開発部隊全員が合宿

 2003年冬、森精機は2年連続で営業赤字に陥るという苦しい時期を過ごしていた。
 しかも開発部隊は厚い壁にぶつかっていた。2年もかけて作り込んできた機械があったが、新製品として顧客に強くアピールするだけの“売り”が見つからな いのだ。当時、開発部門に在籍していた平元専務は、設計や営業などの担当者を含めた総勢30人の開発部隊を集めこう言った。

 京都で3日間の合宿をする―。
 宿泊場所は超高級旅館。費用は合計で600万円にもなる。しかし社内の会議室で会議を何回しても、アイデアは出ない。ならば、部隊を非日常の環境に放り 込み、何かアイデアを出さなければ会社に帰れないという状態に追い込むしかないと考えたのだ。

 しかし、場所を変えただけでアイデアが出てくるわけではなかった。もう今日は帰らなければならない―。開発部隊のメンバーは青ざめた表情で最終日の朝を 迎えていた。

 問題は、素材を削る様々な刃物が付いた刃物台(タレット)の大きさだった。従来機では駆動モーターと刃物台までの距離は離れていた。すると刃物に加わる 力が弱くなり、加工能力が低くなる。これをどう解消するかのアイデアが出ずに会議は沈黙が続いていた。

 「刃物台を好きなだけ大きくして、中に大きな駆動モーターを入れたらどうだろう」

 合宿の成果をあきらめかけた3日目の午前、光が射した。「刃物台は小さく作る」という、それまでの常識からは外れた発想だった。しかし実際に作ってみる と、旋盤の能力は2倍に、溝を彫ったり表面を加工したりする能力は4倍に高まった。

 同社のCNC(コンピューターによる数値制御)旋盤「NL」シリーズはこうして生まれた。2004年の発売以降、累計の販売台数が6000台と「めちゃ くちゃに売れている」(平元専務)機械として同社の屋台骨を支える。

 同様に合宿を通して生まれた新製品は数多くある。
徹底的に顧客志向で開発してファンを増やす

 「原点は、お客様の要求内容を取り入れて、開発に反映すること」

 開発・製造本部の高山直士本部長は、ヒット商品のアイデアの基本にあるのは、顧客の利便性をいかに高めるかを考えることだと言い切る。
 高山本部長自らも積極的に顧客の元に足を運ぶ。5軸の方向に機械が動くマシニングセンタ「NMV」シリーズの開発に際しては、5軸機が普及している欧州 へ行き、飛び込みで20社もの工場を回って、使っている機械の問題点や改善点を聞き回った。NMVの開発ではこの時聞いた顧客の声を元に、機械の使いやす さを徹底的に追求。作業者が加工物に近づいて作業できるなど、機械の設計に工夫を凝らした。

 顧客の要望を捉え、新製品の開発に生かすことは、当たり前のことだとも言える。しかし、NMVは「この機械が好きだから買う」というファンを作るほど、 顧客のニーズだけにとどまらず、心までをつかんだ。結果、当初予想の2倍を売り上げ「爆発的にヒットした」(高山本部長)。

3.数多くの企業再生を手掛けて分かった「ダメになる企業」の公式とは(2.27  nikkeibp)
経営共創基盤代表取締役CEOの冨山和彦氏は、元産業再生機構のCOOであり、カネボウやダイエーをはじめ、数多くの企業再生に関わってき た。いわば企業の修羅場を見てきた人である。企業再生の現場を仕切ってきた冨山氏に、「企業にとって最も重要なこと」「どのような企業がダメになってい き、どのような企業が生き残るのか」、企業マネジメントのヒントを語ってもらった。

――冨山さんは、カネボウやダイエーをはじめ、多くの企業再生の修羅場を体験してこられたわけですが、ダメになっていく企業と生き残る企業を分けるものと は何なのでしょうか。

冨山氏(以下敬称略):現在、日本の多くの企業は、好むと好まざるに関係なく、グローバル化の波にさらされています。これまでのように日本国内や地域の地 場だけのライバル関係やビジネスの連係だけを考えていたのでは、生き残れません。環境変化から、企業経営自体が、数十年前に比べると、ダイナミックで、変 化の激しいものになっています。こうした時代に生き残るポイントは、2つあります。

まず、企業にとってのコアを考えることです。これは、変えてはいけないものです。会社の理念かもしれないし、会社のいろいろな事業ドメインかもしれませ ん。その企業にとって、10年、20年、もしかしたら100年経っても変えてはいけないものです。ビジョナリーカンパニーとして、本当に最後の拠り所にな る部分。「企業の本当の価値」といえる、普遍的な部分です。ここをきちんと押さえておかなければなりません。

もうひとつは、逆に、変わっていくことです。とにかく速くPDCAサイクルを回して、自分たちのやっていることを検証して、状況や環境の変化に対して、ビ ジネスをどんどん変化させていくことが重要です。

この2つは、相反するものではありません。重要なことは、「変化させてはならないこと」「変化すべきこと」が存在するということを、きちんとわきまえるこ とです。私も産業再生機構で多くの会社の再生を手掛けてきましたが、ダメな会社というのは、これらのことが中途半端になっていることが多いです。

――変化させてはならないことと、変化すべきことを見分けるのに、ポイントはあるのでしょうか。

冨山:企業のコアというのは、企業にとっての価値観といったことで、「私たちはこの企業で何をやりたいのか?」ということとイコールです。これはなにも経 営層だけの問題ではなく、社員1人1人がどのような思いを持って、その企業で仕事をしているのかということなのです。たとえば自動車メーカーの社員なら、 「いい車を作りたい」と思って、その会社にいるのでしょう。企業のコアというのは、なにもその企業の主要な事業分野を指しているのではありませんが、どん な企業でも、まず自社がどのような環境・事業で利益を得ているのか、きちんと理解しておく必要があります。そうしておいて、自社のコアとなるものを抽出し ます。

4.インドIT企業、正念場を迎える(2.27 nikkeibp)
IBMなど海外企業に対抗し、再び春を謳歌するための条件

 インドの大手IT(情報技術)企業にとって、危機はすぐそこに迫っている。収益と市場シェアの低迷を克服し、ビジネスモデルを見直さなければなら ないのだ。ムンバイで開催中のインド・ソフトウエア・サービス協会(NASSCOM)の年次大会でも、話題はただ1つ。

 「インドのIT企業は、いつになったら単なる後方支援業務から脱却し、米IBM(IBM)や米アクセンチュア(ACN)といったグローバル企業と肩を並 べられるようになるのか?」
 それこそが2月13日の基調講演で、インドのマヒンドラ・アンド・マヒンドラ(MAHM.BO)のアナンド・マヒンドラCEO(最高経営責任者)が突き つけた課題だった。マヒンドラ社はトラクター製造では国内最大手で、英ブリティッシュ・テレコミュニケーションズと共同で設立したIT関連会社テック・マ ヒンドラも堅調な業績を上げている。

 マヒンドラ氏は演説の中でIT業界がグローバル化の波を巻き起こしたことを称えた後、穏やかだがきっぱりとした口調で、インド企業が自力でイノベーショ ンや改革に取り組めていないことに苦言を呈した。「問題の原因は、我々の姿勢が及び腰なことだ。改革と再編、そして危機的状況への対処の見直しが必要だ」 と訴える。

 その頭文字から“SWITCH”と称されるインドのソフトウエア企業上位6社――サティヤム・コンピュータ・サービス、ウィプロ(WIT)、インフォシ ス・テクノロジーズ(INFY)、タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TSYS)、米コグニザント・テクノロジー・ソリューションズ(CTSH)、 HCLテクノロジーズ(LAVA)――はここ数年、その高品質・低コストのソフトウエアやIT関連サービスで、世界のIT市場に殴り込みをかけてきた。そ の結果、インドに新たな希望をもたらし、国の成長の牽引役となったのである。

 IBMやアクセンチュア、米EDSなど、それまで高価な商品やサービスで市場を独占してきた大手企業は、インド企業に顧客を奪われた。技術を高度化させ ていくSWITCH各社に伍していくのはほぼ不可能に思われた。


現地の手法と従来の強みが融合

 とはいえNASSCOM大会では、「インド企業は期待されたほどの進化を遂げていない(BusinessWeekチャンネルの記事を参照:2007年8 月24日「アウトソーシング大国、インドの岐路」)」という声も多く上がった。

 インド企業は複数の外国企業を買収したものの、ほとんどがごく小規模なものだった。IT事業の多くはインド国内に拠点を置き、国内の有能な技術者を数多 く採用していた。
 一方、IBMなどの競合企業はインドに進出し(BusinessWeek.comの記事を参照:2007年8月23日「IBM: Star of India」)、インド企業の手法をまねて、さらに従来からの強みであるコンサルティング業務と融合させた。これがインドのみならず世界規模での新規顧客 の開拓につながった。

 目下、インドIT業界は予期せぬ新たな事態に直面している。ルピー高、不動産及び人件費の高騰、そして深刻な人材不足だ。収益の60%近くを依存する最 大市場の米国は景気後退の危機に瀕しており、IT部門への支出は減少すると見られている。もはやIT部門は、インドの成長を促す唯一の原動力でもなけれ ば、唯一の花形部門でもない。代わって金融サービス、製造、最近ではインフラ事業などが基幹産業となりつつある。


 2007年にはインドIT企業の株価が急落し、株価収益率(PER)は昨年の23倍から、現在17倍まで下落している。「インド企業は今、曲がり角に 立っている。我が世の春を謳歌し、高収益も上げた。だが今は変革を迫られている」と、米技術コンサルタント会社のエベレスト・グループ(本社:ダラス)の CEO、ピーター・ベンダー・サミュエル氏は言う。


国内市場で後手に回ったインド企業

 最も差し迫った危機は、米国の景気後退だ。インド企業は長年かけて主要マーケットである米国への依存度を低下させ、欧州や日本、その他の地域への事業拡 張を進めてきた。だが一方で、自国市場を軽視してきたとも言える。インド国内のIT市場規模は現在10億ドル程度だが、5年以内には150億ドルに拡大す る見通しだ(エベレスト調べ)。成長を前にした今は収益拡大のみならず、改革の好機でもある。

 長年、インドIT企業は国内を重視してこなかった。国内企業から契約を獲得するには厳しい価格交渉が予想されるためだ。SWITCH各社が世界に目を向 けている間に、他業種のインド企業は国内外で事業拡大に乗り出した。通信、インフラ、製造部門は、活況を呈する国内市場に乗じて成長を遂げてきた。需要に 対応するため、技術を活用してコストを削減しつつ、急成長したのだ。

 そうしたインド企業が頼りにしたのが、IBMやアクセンチュア、EDSなど海外のIT企業だ。これら外国企業は、コールセンターからコンサルティングま で多彩なサービスを提供しているうえ、グローバル化を進めて海外への事業拡張を図る中でのノウハウも提供できるためだ。

 インド進出を目指す多国籍企業にとっても、現地企業との提携は魅力的だ。例えば英ボーダフォン・グループ(VOD)は2006年、190億ドルでインド の通信会社を買収して市場に参入し、IBMとアウトソーシング契約を結んで、インド国内のサービス業務を委託した。


イノベーションへの期待

 その結果、IBMはITサービス分野でインド第1位となり、10%の市場シェアを獲得した。IBMグローバル事業サービス部門担当上級副社長のヴァージ ニア・ロメティ氏は言う。「インドで得たノウハウはきわめて有益だ。トルコなどの成長著しい新興市場にも応用できるからだ」。これとは対照的に、インド企 業の国内シェアはきわめて低い。タタ・コンサルタンシーを除き、大半の企業が自国市場の開拓に真剣に取り組んでこなかった。

 インドIT業界の関係者の多くが、変革の必要性を理解していることは間違いない。「この国にイノベーションが起きることを期待している」と言うのは、ム ンバイ近郊のプネに拠点を置くゼンサー・テクノロジーズのCEOで、NASSCOMの副会長も務めるガネーシャ・ナタラジャン氏だ。「当社は30%の増収 を目指すだけでなく、国の成長の推進力となる画期的な新機軸を模索している」。


新しいビジネスモデルを目指し、タタの超低価格車がヒントに

 「インド企業の競争力はきわめて高く、逸した機会を挽回することは十分可能だ」と、前出のエベレストのベンダー・サミュエル氏は言う。成長を図るには欧 米などの大規模市場で大型買収を行う必要があるが、その資金は潤沢にある。「これまでは技術の改良や獲得ではなく、工場や人材に資金を投入してきた。今後 は新たな技術分野への投資が必要になる」と氏は指摘する。また、自国市場に目を向けて優秀な人材を投入しないと、IBMなどの多国籍企業の独占を許すこと になりかねない。

 インドがこれから真の意味でIT大国となるには、技術革新への投資が不可欠だ。アナンド・マヒンドラ氏は、「インドの既存産業から着想を得る」ことを提 案している。例として挙げたのは、今年1月に国内自動車メーカーのタタ・モーターズ(TTM)が発表した2500ドルの超低価格車「Nano(ナノ)」 だ。

 「ナノこそ、これまでの流れを変える新しいビジネスモデルだ。インドIT業界はまだ、流れを変えるようなビジネスモデルを見つけるに至っていない」とマ ヒンドラ氏は訴えている。

5.NGNとIPv6インターネットは併用できないって知ってました?(2. 28 nikkeibp)
2008年3月末、NTT東西地域会社は、いよいよNGN(Next Generation Network)サービスを開始する。その東西NTTのNGNサービスと、IPv6インターネットが併用できないことをご存知だろうか。

もちろん東西NTTは、NGNでも従来のフレッツと同等のプロバイダとの接続サービスを提供する。プロバイダのIPv6インターネットとも接続できるよう になるはずだ。しかし実際にNGNとIPv6インターネットを併用しようとすると、1台のパソコンにNGN用とインターネット用のIPv6アドレスが割り 当てられる「IPv6マルチプレフィックス」という現象が発生する。この結果、2つのアドレスの使い分けがうまくいかなくなり、正常に通信できなくなるの だ。

経路と送信元アドレスの選択ができない
1台のパソコンに2つのアドレスが割り当てられることで、どのような問題が発生するのだろうか。大きな問題は2つある。(1)経路選択問題と、(2)送信 元アドレス選択問題だ。

(1)の経路選択問題は、NGNに送るべきパケットをインターネットに送ったり、インターネットに送るべきパケットをNGNに送ってしまう問題だ。NGN には、インターネットと同じ体系のグローバルIPアドレスが割り当てられている。また、NGNを介して通信する相手は、独自にIPv6アドレスを取得する ASPだったり、別のアドレス・ブロックを使う他の通信事業者の配下のユーザーだったりする可能性がある。

このためパソコンやルーターは、あて先のIPアドレスだけを見ても、パケットをどちらに転送すればよいかは、正確には判断できない。NGN用とインター ネット用のルーターが別になっている場合、パソコンが転送先のルーターを間違ってしまう可能性がある。また1台のルーターがNGNとインターネットの両方 につながっている場合、ルーターが転送先を誤ってしまう可能性がある。このようにして転送先を間違えてしまうと、パケットは決して相手には届かない。 NGNとインターネットはつながっていないからだ。

(2)の送信元アドレス選択問題は、パケットの送信元アドレスの選択を誤ってしまい、通信相手が返信しようとして送ったパケットが自分の元に届かなくなる という問題だ。IPv6では、送信元アドレスの候補が2つ以上あるとき、プレフィックス(接頭部分)が通信相手のアドレスのプレフィックスになるべく近い アドレスを、送信元アドレスとして選択する。このルールを「ロンゲスト・マッチ」という。このルールを適用すると、NGNに送るパケットの送信元アドレス にインターネットから割り当てられたアドレスを使ってしまう、あるいはインターネットに送るパケットの送信元アドレスにNGNから割り当てられたアドレス を使ってしまうことがあり得る。


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