週間情報通信ニュースインデックスno.642   2008/02/09

1.どうすれば売り上げが上がるのか(2.8 nikkeibp)
遙 洋子
 どうすれば売り上げがあがるのか。それは販売の当事者や経営者にはなかなか見えにくいものらしい。かくいう、私自身も自分がどうすればもっと向上できる のかはなかなか見えるものではない。だが、他人のことならよく見える。客としての立場なら言いたいことが一杯ある。

 服や靴など販売店に行っていつも思うのは、なぜ店員はああも客が購入意欲を失うほど執拗に声をかけてくるのか、ということだ。
 こちらがあからさまに敬遠の素振りを見せても関係なく喋りまくる。頼みもしないのに色違いを持ってくる。聞きもしないのにその服の着こなしを語る。望ん でいないのに客を誉める。

 どの店舗のどの店員も似ているところを見ると、これらの執拗さは「営業」の名のもとに、おそらく経営側の強い要求があるのだろう。営業をしなければおそ らくただボーッと突っ立っているだけの店員に今日からすぐにでもなれる。私が願いたいのは、その中間はないのか、ということだ。

 必要なときに喋り、必要じゃないときに黙る能力といえばいいだろうか。
 客がなぜ購入意欲を失うかは、考えればすぐ分かることだ。私の場合、まず気に入った商品を見つけたときに、心でいろいろ自分に問いかけている。
 「予算に見合う商品か」「似たものを既に購入していないか」「どのTPOで使うのか」「何年くらい使用できそうか」「既存の何と合わせればいいか」「多 岐に組み合わせできるか」「使い心地はどうか」「似合うか」・・・。

 つまり、声などかけてもらっちゃ困る真剣勝負の時なのだ。ここでアレを見ろだの、コレをどう思うかだの、集中力をかく乱されると、もうこれは客にものを 考えさせる時間をわざと与えず、相手が正気を失くした瞬間に売りつけようとしているようにさえ感じる。これは詐欺商法といったい何が違うのだろう。

 喋りかけてほしい客もいるだろう。だが、声をかけてもらっちゃ困る客との違いを感じ取るのはそんなに難しいことなのか。「いらっしゃいませ」の後の客の 返事、たった一言で判断できるのではないだろうか。

 あるいは、商品を選ぶ客を直視せず視野にだけ入れ、客がこちらを見たときに間髪入れず目を合わせてあげる能力だ。その場合、だいたい客は店員の助言を必 要としていたりするものだ。

 ある保険会社に仕事で出向いた。そこは責任者だけ男性で、保険営業はすべて女性だという。そこで、「どういう女性が営業トップなのですか」と聞いてみ た。すると「最もお客さまのことを真剣に考えている女性です。会社の利益よりお客様の利益を優先するのか、という程にね・・・」と責任者は笑った。

 営業とは商品を売ることでも、売り上げを上げることでもないような気がする。本気で客のことを思えるか。「営業」はそれに尽きるように思えてならない。 そして、仕事の喜びもきっとそこにあるように思う。そういう営業と出会えた客は、感謝しながら金を出す。

 そのためにはまずその商品に“本気”で惚れ、お客様のことを“本気”で考え、もっとも相応しい商品を“本気”で薦めることだ。そしてそれらの前に、その 仕事を、仕事として“本気”で選んでいるのかという、自分の人生の“本気”度が試される。

2.マイクロソフトのヤフー買収提案への、現場の期待と戸惑い(2.8  nikkeibp)
 再び「またか」である。ただし、前回の「再生紙偽装」のそれに比べると、さまざまな感慨をこめた「またか」だった。マイクロソフトがヤ フーに買収を提案。その報道を耳にして、インターネットの黎明(れいめい)期を体験している現場のスタッフなら、おそらく半数以上が、「またマイクロソフ トさん、やるもんだねぇ」的な感覚を持ったことだろう。

 2007年2月にヤフーから断られたにもかかわらず、再度の提案で「またか」という意味ではない。提示された買収額の総額は、「446億ドル=約4兆 7500億円(ITpro 2月1日)」と伝えられているが、その規模の大きさへの驚きとも違う(巨額すぎて想像すらできないのですが)。あえて解説すれば、過去の記憶からの「また か」であり、その意欲への「やるもんだねぇ」に近い。

 その理由の一つは、「米グーグルはオンライン広告のシェアが75%と圧倒的な独占状態にあり、それがさらに加速している。今こそ両社が合併すべきだ(同 上)」という買収の目的にある。もちろん、きわめて正当な考え方であるのは間違いない。しかし、どういうわけか、「いかにもマイクロソフトらしいよね」と いう複雑な感想が伴ってしまう。

 誤解のないように付け加えるが、企業買収を否定するつもりはないし、トップシェアに対抗するための合併というのも理解できる。にもかかわらず、「いかに も」となってしまうのは、あくまでもシェアを追い求める企業意欲への、敬意とともに「戸惑い」があるからかもしれない。

 とりわけ、マイクロソフトは世界のトップ企業であり、軟弱な発想では「なにも、そこまで」となる。あるいは、OSで圧倒的なシェアを確立しているのに、 「オンライン広告くらいトップにならなくても」とも思ってしまう。しかし、考えてみれば、関連分野も含めてシェアの拡大を目指すのは、大企業としては当然 であり、それ自体に「戸惑う」ことなどない。

 にもかかわらず、「マイクロソフトらしい」となるのは、一部の制作現場スタッフにネットスケープの記憶が刻まれているからである。
 若いインターネットユーザーに、「ブラウザー(インターネット閲覧ソフト)は、ネットスケープが主流だった時代があった」といっても、おそらく信じられ ないことだろう。ご存じな方は懐かしいかもしれないが、Internet Explorer(IE)のない時代、ネットスケープのシェアは、ほぼ100%に近かったのである。

 ところが、いまや主流はIEとなった。正確には、Firefoxやオペラのシェアも無視できないし、ネットスケープも、それなりに健闘はしている。それ でも、会社や自宅のパソコンには、IEが必ず装備されていて、ほとんどが当然のように使っているだろう。

 その当時「IE対ネットスケープ」などという特集が、インターネット関連雑誌に掲載されたが、結果は、IEの圧勝となっている。理由は明白だ。IEは、 OSの「Windows」と組み合わせ、パソコンを購入すれば自動的にインストールされていたのである。わざわざダウンロードしなければならなかったネッ トスケープが、次第にシェアを減らしていったのは、ごく自然な流れだっただろう。

 もちろん、買収が実現するかも分からない時点で、想像をたくましくしても無意味なのだが、OSとヤフー、そしてオンライン広告のつながりは、大きな可能 性があることは確かだろう。ネットスケープと似たような――というのは考えすぎだろうが、やはりOSを支配している強みはある。

 グーグルとネットスケープでは、かなり条件が違うので、どこまでOSの強みを生かせるのか異論は多い。それにもかかわらず、かつてのネットスケープを思 い出し、「またか」と「戸惑う」層は存在している。

 ただ、断っておかなければならないのは、グーグルとヤフーのシェアは、日米では大きく異なっている点だ。調査データによって違うが、米国では、グーグル が約60%、ヤフーが約20%という割合だが、日本では、ほぼ逆で、ヤフーが60%、グーグルが20%のようである。また、日本のヤフーはソフトバンクの 系列であることも見逃せない。

 圧倒的なOSのシェアに加え、もともと大きいヤフーのシェアと、幅広い事業展開を進めるソフトバンクだから、なんとなく「鬼に金棒」という印象である。 日本に限って考えれば、マイクロソフトとヤフーの連合は、大きなインパクトがあるだけでなく、かなりの成長性が見込めるかもしれない(そう思ってニュース をのぞいてみると「ヤフー株ストップ高」とか 2月4日午後)。

 当然、オンライン広告も変わるだろう。それをビジネスチャンスととらえるかは、それぞれ議論はあるかもしれない。しかし、旧態依然としたバナーに依存し たオンラインのプロモーションではなく、厳密にターゲットを絞りこんだプロモーション展開へと変わっていくのではないだろうか。

 現状でも、検索に対応したオンライン広告の表示は一般的だが、もっと複雑で多様な要素から、ターゲットに最適な情報を表示するようなオンライン広告は不 可能ではないだろう。なにしろ、圧倒的なシェアを占めるOSを活用できるのだから、パソコンを立ち上げるたびに、必要な情報がオンライン広告として届けら れるのは、あながち夢物語ではないかもしれない。

やはり「検索一発ヒット」の到達率が勝負??

 ではグーグルは、追いつめられネットスケープのようにシェアを失うのだろうか。無責任な判断は慎まなければならないが、どうも、日本では「ノー」のよう な気がしてならない。別に、グーグルの味方をするわけではないが、グーグルを使うユーザーは、いわば確信犯のようなもので、グーグルを目的をもって指定し て利用しているようだ。

 周囲を見ても、「なんとなく」「みんなが使っているから」というのがヤフーの利用者には多い。それに対し「iGoogleが便利」「Google Earth がオモシロい」など、グーグルの利用者には、それぞれ積極的な理由がある。狭い範囲で推論するのは危険だが、日本では、それほどシェアの変化は起きないの ではないだろうか。

 しかし、大きくシェアが変わる要素はある。それは、検索到達率の向上である。はっきりいって、グーグルにしてもヤフーやそのほかの検索サイトにしても、 必要な情報に到達する率が、低くなっているような印象が強い。個人的な検索のノウハウもあるだろうが、現場の多くのスタッフが「最近、検索してもヒットし にくい」と感じているので、大きな傾向としては、検索到達率が改善されているとは思えない。

  一方では「検索は機能の一つ、今や純粋な検索だけでユーザーは集まらない」という意見もある。それを否定する材料はないが、「検索一発ヒット」への ニーズは、確実に存在しているし、無数のサイトが乱立している現状では、地味ではあるが、それは大きな優位性になるのではないだろうか。

 今回の買収劇の推移は、見守るしかないが、もし、マイクロソフトとヤフーの連合によって大きな変化が起きたとしても、検索の到達率の向上は忘れてほしく ない。マイクロソフトとヤフーの連合、そしてグーグルの実力をもってすれば、それは不可能ではない。

3.携帯電話契約数、ソフトバンクが9カ月連続トップ(2.7  nikkeibp)
電気通信事業者協会がまとめた1月の携帯電話契約数は、ソフトバンクモバイルの純増数が20万700件で9カ月連続のトップだった。 KDDIの純増は8万2700件で、NTTドコモは1万9800件。また2008年から月次で契約数を公開しているイー・モバイルは3万2600件の純増 だった。

ソフトバンクモバイルは前年に続き全地域で契約数を伸ばした。特に東京や九州では他社を大幅に上回る純増が続いている。
KDDIの「au」ブランドも全地域で契約数を増やしたが、純増11万6600件と2007年12月に比べ伸びが鈍かった。「ツーカー」ブランドは3万 3900件の純減となった。

NTTドコモは北海道と北陸、関西の3地域で純減となった。1つの電話機で2つの番号を持てる「2in1」も純増8100件と伸びが鈍った。
ウィルコムのPHSは純増9500件。なお1月7日にはNTTドコモのPHSがサービスを終了している。

4.NTT、体制維持にこだわる事情(2.6 nikkeibp)
 NTT持ち株会社は会見などで、「株主の利益」や「ユーザーの利便性」を強調することがしばしばある。例えば、2006年7月のNTT持 ち株会社の定例社長会見。そこには、総務相の私的懇談会でNTTの組織問題が検討されたことについて、渋い顔で苦情を述べる和田紀夫社長(当時)の姿が あった。

 「(NTTグループの)資本分離や、(NTT東西のアクセス部門を)構造分離するという議論は、NTTグループにとって企業価値に大きく影響してくるこ とである。株主にしてみれば、財産権の侵害だという気持ちになる。これまで以上に株主重視ということを重く受けとめて対応していきたい」

 さらに、報道陣からNTTのNGN(次世代ネットワーク)に規制がかかる可能性について問われると、「我々は事業をやっている会社であり、持続的に発展 していかなければサービス提供ができない。サービス提供ができないとなれば、ユーザーに迷惑がかかるし、国益にもならない。株主にしても非常に大きな影響 を与えることになるので、我々は主張すべきことは主張させていただく」と述べた。

 その主張は、企業としては筋が通っている。しかし、持ち株会社の主張と行動を追っているうちに、ある疑問が浮かんでくる。「現在のNTTは、株主やユー ザーのことをそれほど大事に考えている会社なのだろうか」、という点だ。そして、この疑問を突き詰めていくと、NTTが大事にしており、本気で守ろうとし ているものの存在が姿を現す。

守りたいのは今の体制
 NTT自身は決して口にしないが、必死で守ろうとしているものは、NTTの行動パターンを見ているとよく分かる。例えば、2006年に当時の竹中平蔵総 務大臣の私的懇談会(竹中懇)と繰り広げた組織形態を巡る議論の際のNTTは必死だった。その攻防においてNTTは政治家へのロビー活動を繰り返し、政治 に頼って組織問題の議論をかわそうとする戦略を露骨に見せた。こうしたNTTの姿は、何よりも周囲に、「NTTは古い体質を持ったままだ」という印象を与 えることになった。そして同時に、NTTが大切にしているもの、絶対に守りたいものがここにあるということが見えてきたのである。

 ある証券アナリストはこう断言する。「竹中懇とNTTのやり取りを見ていて、やはりNTTは普通の株式会社ではなく、古いまま変わらないなと思った。株 主のためとか言っていたが、今まで株主のことを考えたような経営なんてしてこなかったはず。あの攻防で、NTTが守りたいものは“今の体制”であること が、改めてはっきりした」。

 その背景にあるのは、やはり「電話的価値観」ではないだろうか。この古い価値観によりNTTは、インフラ機能先行のサービス開発から抜け出せないばかり か、時代遅れの体制にしがみつくことになってしまうのだ。株主やユーザーが優先なのではなく、まず自らの体制を守ろうとする。ここには、電話時代のインフ ラ更新やサービス開発と同様に、市場のニーズよりも自己都合を優先させる内向きな考え方。プロダクトアウト的な発想が垣間見える。

 また、電話網を一度構築した後は、それを計画にしたがって維持し続けることが大切とする“現状維持のマインド”も透けて見える。電話時代の発想で再編さ れた現在のグループ体制は既に時代遅れになりつつあるが、それでも今の体制の維持に汲々としてしまう。だがNTTは、そのことを悪いとは思っておらず、む しろ今後、組織防衛の強化に走ろうとしている。


「妥協の産物」を死守する不思議な発想

 もっとも、NTTが必死で守りたいと考えている現体制は、必ずしも理想的な形ではない。1999年に誕生した今のNTTグループは、純粋持ち株会社の下 に地域通信のNTT東西、長距離通信のNTTコミュニケーションズ、移動通信のNTTドコモなどがぶら下がる。資本関係で結ばれたNTTグループの現体制 は、「妥協の産物」と呼ばれてきた。

 NTTの組織再編が議論された際、本格的な再編をもくろんだ当時の郵政省と、一社体制の組織防衛にこだわったNTTが妥協して生まれたのが、今の体制 だ。ところが時代が変わり、IP技術を使うインターネットの波が押し寄せると、電話の発想で分割されたNTTの組織体制はすぐに時代遅れのものとなった。 インターネットが台頭し、地域や距離は関係ないIP技術を使うネットワークの時代に移行する中で、県内通信を基本とする地域通信事業者がずっと存続してい ることもおかしな話。既に、固定通信と移動通信の融合まで始まっている時代に、このような時代と合わない体制を維持する必要性はなくなってきている。

 だが、技術や市場が変わっており、自らの体制が妥協の産物であることもNTTグループ自身が重々承知しているにもかかわらず、「これを時代に合わせて変 えていきたいので、(規制を記した)NTT法を変えてほしい」という発想には到底ならない。仮にNTTにメリットのある体制に変われる可能性があったとし ても、組織問題の議論の展開次第ではNTTが最も恐れる資本分離などの再編案ができ上がる可能性があるからだ。

 こうして、「寝た子を起こすようなことになるなら」、あるいは「やぶ蛇になるくらいなら今のままでいい」という現状維持の発想が頭をもたげることにな る。計画経済的で、自らの都合で事業展開しやすかった独占時代を長く経験してきたNTTは、不確実な展開を極度に恐れるようだ。周囲の変化への柔軟な対応 が苦手であるため、組織を変えることをなんとか避けようとする。あるいは、内向きな組織であるがゆえ、外部からの介入を徹底的に嫌がるのかもしれない。


内向き思考の根は電電公社時代の組織構造にあり

 無意識に自分を守ってしまう内向きな考え方は、電話の歴史100年と共に築かれた。その原点は、独占的に電話サービスを提供してきた電電公社の組織体制 にさかのぼる。もっと具体的に言うと、独占で外部との競争がないため、社内で繰り広げられることになった激しい権力闘争に端を発している。ここで、NTT の組織体制の歴史を紹介しよう。

 NTTには、「技術系」と「事務系」という二系統の権力のラインが存在する。民営化後は技術系と事務系が交互に社長を務めてきた。その慣習を崩したの が、2007年6月末の和田紀夫氏から三浦惺氏への社長交代である。事務方の社長が二代続けて誕生するという異例の事態が起こった。

 それでも、このような「技術系と事務系の壁」と、その間の権力闘争は今でも色濃く残っている。複雑なのは、技術系vs事務系という対立だけでなく、技術 系と事務系それぞれのラインの中でも細かな権力闘争があることだ。技術系については第4回で紹介することにし、今回は事務系の組織構造を紹介しよう。

 NTTの主だったグループには、「労務屋」「制度屋」「経理屋」と呼ばれる集団がいる。「労務屋」とは、電電公社の「労働局」を拠点とした事務方の勢 力。国会対応や、「全電通」と呼ばれた強大な労働組合の対応を主な仕事としていた。「制度屋」は、別名「企画屋」とも呼ばれる一団で、業務にかかってくる 規制や制度的な折衝を担当していた。「経理屋」は財務や経理の担当部隊で、財務省の主計局のような役割を果たしていたという。

 これらの事務方ラインの中で、絶大な権力を握ったのは「労務屋」と呼ばれる集団である。NTTのあるOBは、「昔は、業務を円滑に進めるために組合対策 が特に重要だった。グループで30万人超の社員がいたころの組合『全電通』は、その組織力を後ろ盾とした大きな力を持っていた。新しい技術の登場による新 たな機器導入や新サービスの投入は労働条件が変わるため、管理職よりもまず組合に説明があったくらい。これが普通だったので、組合対策をする労働局の役割 も大きくなった」と説明する。


NTTの隙を突くソフトバンクとKDDI

 加えて、「昔は独占だったので、社外に敵がいなかった。人間なので競争意識は働くが、それは公社内での競争に形を変え、自分の出身母体となった組織や所 属する組織を第一に考え、その他の部門やラインとの権力闘争に明け暮れるようになった」と解説する。

 ところが、いまや競合事業者が存在し、競争すべき相手は外にいる。独占時代とは違って、ソフトバンクやKDDIがNTTの牙城を崩そうと相次ぎ新サービ スを提供している。ライバルであるソフトバンクやKDDIは、NTTほど電話で成功した経験がないため電話的価値観に縛られることはない。身軽に自由に サービスを開発できるし、内部抗争に躍起になることもない。

 こうしたライバルが外にいるにもかかわらず、いまだに内輪の争いに熱を上げてしまうところに、NTTの構造的な問題がある。しかも、その中で力を握るの が、労務系というのも弊害が大きい。グループ内の共通認識として、「労務屋は政治家対応と組合対策は得意だが、ビジネス感覚にうとく、ユーザーや市場から 遠い」と言われることが多いからだ。NTTの中でも、とりわけ内向きになりやすい部署なのである。ユーザー志向やマーケットインの考えにはなりにくく、あ らゆる面で内向きなプロダクトアウト的な考え方に染まってしまいがちだ。

5.貴社のITコストは本当に妥当か?(1.31 nikkeibp)
「自社のITコストは,他社と比べて高いか安いか?」。難しい問いだが,大手50企業を対象としたITコストのベンチマーク調査により,そ の“相場”を明らかにした。「開発」「保守」など6分野の分析データを基に,企業のITコストを最適化するための指針を解説する。

 企業の情報システム部門におけるITコストは,どのくらいが妥当なのか――。「売上高の1%が目安」といった話を聞くことはあるが,明確な根拠があるわ けではない。ITコストの妥当性を巡る議論は,以前から繰り返されている難しい課題である。

 こうした不透明さが一因となって,多くの経営者は「ITコストを削減したい。削減できるに違いない」という願望を抱え続けている。問題なのは,この願望 が往々にして「ITコストを全体で15%削減しろ」といった単純な命令につながりやすい点である。「15%」という数字が十分に吟味されたものならよい が,大抵は経営者が鉛筆を舐めながら決めた数字にすぎない。

 本来コスト削減は,投資効率が悪い領域を特定し,それを改善するという前提で実現すべきものであるはず。それなのに,実際に多くの企業で常識を無視した 命令が下されている。
 なぜITコスト削減策が,このようなやみくもな施策になってしまうのだろうか。それは,ITコストの妥当性について,実態が全く可視化されていないから である。

ITコストの有効性と効率性を分離して考えるべき
 ITコストの妥当性を可視化することは,限られたIT予算を最も有効に使うために,情報システム部門が取り組むべき急務である。だが,それを考える際 に,まず知っておかなくてはならない概念がある。ITコストにおける「有効性」と「効率性」の違いである。両者を混同すると,対応を誤る危険がある。

 ITコストの有効性とは,「ITが目的に合致した効果をどの程度実現しているか」を示している。一方の効率性は,「目的を達成するうえで,ITコストを 必要以上にかけすぎていないかどうか」を問うことだ。ITコストの妥当性を判断する際には,これら2つを混同せず,きちんと切り離して考える必要がある。

 本来,ITコストの有効性と効率性の両面を分析すべきだが,本連載では「効率性」に注目して話を進める。理由は2つある。1つは,ITコストの有効性を 議論するにはITコストの目的を定義しなければならないが,それは企業ごとに大きく異なるからだ。そしてもう1つの理由は,まず効率性に目を向けた方が ITコストの実態や妥当性を把握しやすいからである。

業務ごとの効率性を調べないと破綻を招く
 「効率性」は,ITコストの適正水準を考えるうえで最も重要な要素の1つと言える。ITコストには,情報システムの開発,保守,運用など複数の業務を遂 行するためのコストが含まれる。前述したように,これら全業務に対してITコストを一律に削減してしまうと,非常に優れた効率性を実現できている業務ま で,不必要に予算を削減してしまう可能性が高い。これは,結果的に業務効率を悪化させ,ひいてはシステム自体の有効性を著しく低下させかねない。

  簡単な例で考えてみよう。あるシステムの保守作業を5人の担当者が分担しているとして,担当者1人分の人件費を削減したとする。その場合, システムの有効性を維持しようと考えるなら,残りの4人が,従来担当していなかった保守作業まで受け持つ必要がある。

 不慣れであれば,専任の担当者がいる場合よりも作業効率は落ちる。さらに,1人当たりの作業が増えることで,これまでそれぞれが担当していた分の作業効 率にまで影響を与える恐れもある。その結果,システム自体の有効性を損ねる可能性がある。こんなコスト削減策は妥当ではない。

 似たような話はいくつも存在する。ある企業では,ITコストを削減した結果,システムに不具合が発生してダウンしたにもかかわらず,改修費用を捻出でき ない状態に陥ってしまった。別の企業でも,運用業務のITコストを大幅に削減したために,事実上,システムを意図的に停止せざるを得なくなってしまった。

 このような事態を避けるためにも,企業はITコストの効率が悪い部分を見つけ出して,手を打たなければならない。やみくもに「ITコストを削減せよ」と いった指示を出す経営者やCIO(最高情報責任者)は,「ITコストの妥当性など全く考えていません」と宣言しているに等しい。これは,経営者やCIO, そして情報システム部門の“恥”と心得るべきである。

 あるIT業務のコストを10%削減しても,国内企業の平均よりも高いコストのままであるならば,ITコストを最適化したとは言えない。そもそも,他社よ りもいくら高いのか安いのか,自社のITコストの水準がどの程度に位置するのかを客観的に調べる手だてが必要だ。

 ここで言う妥当性の可視化とは,「自社内のITコストを客観的な指標で捉え,その良し悪しを経営者が判断できる状態にすること」である。そのためには, 他企業と業務パフォーマンスなどを比較するベンチマーク調査(ベンチマーキング)で分析するのが一番確実だ。そのうえで,自社のITコストを削減し,最適 化することが望ましい。

 筆者が代表を務めるスクウェイブは,ITコストの適正水準を導き出すために,「SLR(サービス・レベル・レイティング)」というベンチマーク調査を実 施している。2003年に暫定版のフレームワークを用い,社名非公開の数十社に対して試行。2004年からは参加企業の社名を公開し,本格的にサービスを 開始した。

 毎年,参加企業各社のデータを集め,ベンチマークを更新している。現在の参加企業/団体は,アステラス製薬,神戸製鋼所,東北電力,リクルートといった 各業界の大手企業や,東芝インフォメーションシステムズなどの情報システム子会社,さらに地方公共団体など,60を数える。参加企業の詳細は,スクウェイ ブのWebサイトで公開しているので参照してもらいたい。

意味のあるコスト比較には,IT業務の「実施レベル」が重要
 SLRでは,情報システム部門の業務を「業務領域」と呼ぶ単位に分け,それぞれの業務領域におけるコストのデータを収集している。業務領域は,システム の「開発」「保守」「運用」「ヘルプデスク」「WAN」「PC/LAN」の6つに分類。このうち,運用についてはさらに,オープン系システムを運用するコ ストと,メインフレームを運用するコストに分けている。

 それぞれの業務領域について,参加企業が提供したITコストやIT業務に関するデータを集計する。ここでは(1)ITコストを算出すると共に(2)IT 業務の実施レベルを明確にする。
 (1)のITコストは重要な数字だが,それよりも注目してほしいのは,(2)IT業務の実施レベルだ。IT業務をどれだけ的確に,高いレベルで実施して いるかを,5段階で示すものである。

 ある企業のITコストが相場より高くても,非常にしっかりした業務を行っているなら納得感がある。その一方で,ITコストが平均的であったとしても,低 レベルのIT業務しか実施していないならコスト高と言えるだろう。意味のある公平な比較・分析をするには,同程度の業務レベルにある企業のコストを比べる ことが肝心だ。

「コスト・ドライバー」を見極める
 このようなITコストと業務レベルの両方を比較・分析することの最終的な狙いは,「コスト・ドライバー」を明確にする点にある。コスト・ドライバーと は,ITの業務のやり方を調整することで,効果的にコストを調整(通常は削減)することが可能な業務を指す。

 システム保守の業務領域を例にとろう。運用フェーズでソフトウエアのリリース管理などを行う「変更管理」は,SLRの分析結果から,コスト・ドライバー である可能性が高いとみられる。変更管理の業務レベルが高いか低いかによって,ITコストに大きな影響を与えることが分かっている。一方,同じ保守領域の 業務でも,「ドキュメント整備」の業務レベルは,一般にコストへの影響が大きいと思われているようだが,実際にはITコストへの影響が小さいという分析結 果となっている。

 つまり,保守業務領域においてコストを効果的に削減したい場合は,ドキュメントの整備にかける工数を削減しようと考えるよりも,変更管理業務に焦点を当 てるべきなのである。

実測した開発コストは「1FP=5万9249円」,企業間格差は480倍
 ここまではITコストを最適化するための指針を説明してきたが,いよいよSLRの調査結果を見てもらおう。 50社超の国内大手企業におけるITコスト の実態を示したものである。システム規模の違いや,アウトソーシングしているかどうかによってITコストの水準を詳細に分析することもできるが,まずはマ クロな視点で全体の平均値を見てもらいたい。なお,1次集計した結果,平均値から3σ(標準偏差)以上離れたデータを異常値として省き,集計し直してい る。図中に記載している標準偏差の値は,異常値を省く前のものである。

 システム開発の業務領域では,50社における開発コストが,1ファンクション・ポイント(FP)当たり5万9249円であることが分かった。FPを算出 できないシステムについては,ソースコードのステップ数を基に,各開発言語の係数を掛けてFP換算値を計算している。SLR参加企業の中には,1FP当た り35万3580円かけている企業もあれば,たった736円で済ませている企業もあった。


 ここで踏まえるべきなのが,前述した「業務レベル」の高低とITコストの相関である。例えばオープン系運用なら,サービスレベル・マネジメント (SLM)をしっかりやると,ITコストの押し上げ要因になる。内部統制と絡むリリース管理で保守・運用の切り分けをしっかり実行している場合でも同様 だ。こうしたコスト・ドライバーになる業務で,業務レベルに見合ったITコストになっているかどうかが分析のポイントになる。

 http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20080117/291322/


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