週間情報通信ニュースインデックスno.639   2008/01/19

1.ブランドに心のふるさとを想う 〜松下電器産業の社名変更〜(1.18  nikkeibp)
関橋 英作
 「遅すぎた」「松下の名前はなくすな」「明るいナショナルが好きだったのに」「グローバルに向きすぎ」などなど、松下電器産業の社名変更のニュースは マーケッターのみならず、日本人の話題を独占しました。

 なぜでしょう?たった一企業の話です。しかしそれだけ、あのナショナルのロゴは日本人の生活に溶け込んでいたという証拠だったのでしょう。
 1960年代の月曜日夜8時といえば、松下電器産業提供のドラマが定番でした。森繁久弥氏主演の「七人の孫」など。そして、何と言ってもナショナルの生 コマーシャルは、泉大助さんのあの優しい語り口がブランドの信頼感を後押ししていました。

 また、ナショナルのテレビCMもお茶の間の人気を独り占め。三木鶏郎さん作曲の「明るいナショナル」、坊屋三郎さんの外国人に発音で文句をつける「クイ ントリックス・テレビ」、電球を果物のようにむいていくと灯りが現れる、カンヌでグランプリを受賞した「ナショナルのあかり」、そして、人形の消防士が高 層ビルをはしごで登っていきタバコの火を消火する名作「ナショナル乾電池」など、いつまでも記憶に残っているテレビCMがたくさんあります。

 さらに町には、日本中どこでもナショナルのお店がありました。私の田舎、青森の八戸でも、家の近所にあり、親父からカメラを買ってもらったうれしい思い 出があります。きっと、みなさんにも同様な記憶があるでしょう。

 そう考えると、ナショナルと松下、これは日本人にとって生活に密接したブランド。もうすでに、一企業が占有しているだけのものではなくなっています。ト ヨタやソニーが日本を代表するブランドであるのと同じ意味を持っている。いや、それ以上に日本人の生活に根ざしているのかもしれません。スイッチを入れれ ば、明るくなる、暖かくなる、にぎやかになる。生きていることと直結しているのです。

 たしかに、松下の下にナショナル、パナソニックのブランドを持ち、三つの名前で呼ばれることはブランド戦略上、混乱を生じるのは間違いありません。しか も、それぞれのブランドの下に、また「VIERA」や「アラウーノ」などのブランドが存在する。このように重層化したブランドの場合、家電メーカーやクル マメーカーがそうですが、親ブランドの親方力でいくか、子ブランドの個性でいくか。それによってブランド戦略は変わってきます。

 ひとりの消費者として考えてみてください。ビデオカメラを買う場合、ソニーにするか松下にするかを考えるでしょう。ところが、お茶を買う場合、「爽健美 茶」にするか「おーいお茶」にするかで、コカコーラにするか伊藤園にするかとは考えません。子ブランドがブランドそのものになっています。

 この例で分かるのは、重層型のブランドにとって重要なのは、親ブランドへの信頼感でありロイヤルティ、忠誠心と言ってもいいかもしれません。江戸の町人 にとっての「徳川家」、イタリア・フィレンツェの人にとっての「メディチ家」のように、単なるモノや記号としてのブランドではなく、心の大きな部分を占め るブランドなのです。

 パナソニック(Panasonic)に変更する理由が、売り上げの50%を占める世界市場に対するグルーバル戦略。世界で知られてきた 「Panasonic」という名前に統一することでブランド力をあげようという狙いです。

 その根拠のひとつが、ある国際的なブランドランキング。1位コカ・コーラ、7位トヨタはいいとしても、21位サムソン、25位ソニーに対してパナソニッ クは78位。同じ家電メーカーのサムソン、ソニーに大きく水をあけられているのです。この現状が、松下のトップの決断を促した?もちろん、長年の課題だっ たのでしょう。

 Panasonicに一本化することで、国内外のブランド認知を統一する。松下、ナショナル、パナソニックという三つの知名度を一つにまとめることで、 知名度の拡散を防ぎ強力なブランドにする。確かにそうでしょう。ケンウッド、ペンタックス、ニコンなどの例を挙げるまでもなく、重層化ブランドの解決策の ひとつです。

 しかし、時代は変化しました。記号化された巨大なブランド知名度は、消費者にとって意味を持つものであり続けるでしょうか?疑問です。

 なぜ、いまだにコカ・コーラがブランドランキング1位なのか。トヨタはどうして上位に位置するのか。もちろん、これは米国を中心としたランキングですか ら、コーラをあまり飲まない日本人にとっては不可解でしょう。

 あくまで私個人の意見ですが、コカ・コーラはアメリカ人にとっての心のふるさと。時代が変わっても自分はアメリカ人であるということを思い出させてくれ るブランドなのではないでしょうか。それは、すでにコーラ飲料、清涼飲料というカテゴリーを超えて、アメリカ人になくてはならないもの、生活の光景になっ ている。

 これこそが、ブランドの最終ゴールです。ブランドの力は、どれだけたくさんの人に知られているかではなく、どれだけその人に好かれているか。その人の心 の中で、そのブランドが大きく成長していけるか。それが、ブランディングだと思います。そのブランドが大好きな人は、きっと家族や友達に話すでしょう。そ して、その輪が広がっていく。

 そのブランドのことを100人の人が知っていたとしましょう。その人たちがそのブランドを購入するのは、だいたい1年に1回。一方、そのブランドを大好 きな人はたったの10人。しかしこの人たちは、1カ月に1回購入する。どちらの人のほうが、メーカーにとって大事な消費者でしょう。あきらかです。

 マスマーケティングが絶対的でなくなってきた今、大事にしなければならない消費者は、この「大好きな人たち」。ブランドに対するロイヤルティの高い人。 彼らは、長くそのブランドと付き合うでしょうし、そのブランドを広める“影響者”にもなる。つまり、知名度より、「Top of Mind」のほうがメーカーにとって重要なったのです。Top of Mindに関しては、またじっくりと書いてみたいと思っています。

 松下電器産業にとっても同じことでしょう。松下を「大好きな人たち」を世界中で増やしていく。それが、パワーブランドへの道です。大事なのは、世界で Panasonicを大好きな人はどれくらいいるのか、またどうやって増やしていくのか。日本ではどうなのか。たしかに、日本では「ナショナル」が大好き な人がたくさんいるでしょう。その人たちはいなくなってしまうのか、それとも新たに増やしていけるのか。

 これは、私に答えの出せる問題ではありません。しかし、「大好きな人」をひとりでも多くする、これがブランドの答えであることは間違いありません。
 私にとっても、大好きなナショナルでした。ひとりの大好き消費者として、今後を楽しみに見つめていたいと思います。

2.松下とグーグルの連携は大変革の始まり?(1.17 nikkeibp)
 松下と米グーグルがネット対応テレビで連携すると発表しました。私は素人ながら、この連携はテレビだけでなくもっと大きな話に広がっていくのではないか と見ています。
 ちょうど、2006年末に放送法の改正を担当し、放送ビジネスの有り様を色々と勉強させていただく機会がありました。また、総務省の「放送と通信の融合 に関する法制度に関する報告書」が公表され、その報告書に対して国会質問をしたこともあります。

すべての情報が端末を選ばず見られる、グーグルのビジネスモデル
 まず、グーグルのビジネスモデルについて考えてみましょう。
 グーグルというと「検索」と考えている方は多いと思います。実際、政府が「日本版グーグルを作るための次世代検索システム」を開発するプロジェクトを打 ち上げたという動きもあります。
 しかし私は、「検索機能が大切なのではなく。すべての情報をサーバーに集め、どんな端末からも見られるようにするグーグルのビジネスモデル自体が重要」 だと思っています。

 今のパソコンをベースにしたモデルは、パソコンに情報を持ち処理することを基本としています。しかしグーグルは、サーバーに検索機能だけでなく、メー ル、スケジュール、画像データなども保管し、パソコンだけでなく、携帯電話からも検索して見ることができるようにしています。

 私はパソコン派モバイラーなので、携帯メールはほとんど使いませんが、聞いたところによるとWindowsの「アウトルック」に比べると格段に使いやす く、パソコンとのデータ共有が簡単にできますから、相当便利だということです。

 このようにグーグルは、サーバー集中管理モデルを構築しており、現在のメールだけでなく、音楽データ、デジカメの静止画やビデオカメラの動画も保管でき るようにしていくと思います(Picasa(写真)、YouTube・グーグルVideo(動画))。さらに本来パソコンに保管する文書データや表計算 データを保管し(グーグル Docs, Spread)、おそらく現在マイクロソフトが提供している「オフィス」に似た機能もネットで提供するのではないかと見ています。

 もし、ワープロが集中管理で使えるならば、大容量なハードディスクが不要になるでしょうし、自分が登録した単語辞書がどこでも使え、面倒なバージョン アップもする必要がなくなるでしょう。そして、一番大事なことは、おそらく「無料」で使えるです。

 これらはあくまでも私なりの考えですが、グーグルの人間だったらきっとこんな姿を目指すと思います。実際に、正式サービスではないようですが、グーグル のメニューには、「論文検索」「図書館文献検索」「翻訳機能」など便利な機能がどんどん増えています。特に翻訳ソフトは、へたなパソコン用ソフトより使い やすいと思います。

テレビ、パソコン、携帯電話は機能が一緒になる
 松下とグーグルの提携を考えた場合、テレビ、携帯電話、そしてパソコンの関係を考えないといけません。私は、「パソコンとテレビの間にあるのが携帯電 話」と考えています。これはソニーの元CEOである出井伸之さんが講演でおっしゃっていたことでもあります。双方向性がパソコン、一方的に情報を受けるの がテレビ、そして両方の機能を持っているのが携帯電話という位置付けです。つまり、携帯電話は、電話というだけでなく、パソコンとテレビの機能を持ってい るということです。

 いうまでもなく、現在のテレビ、パソコン、携帯電話は、機能が大きく違います。しかしながら、すべてがグーグルの世界、中央に文書データ、音声、画像を 保存し、どこでも利用できるようになると、端末の機能的な違いがほとんどなくなります。
 テレビは、ワープロや計算表などのビジネスデータを見ることができ、また、テレビ電話にもなるでしょう。つまり、すごく画面の大きな携帯電話と呼べなく もないでしょう。また、パソコンはすでに大きな携帯電話、小さなテレビになりつつあります。テレビ、パソコン、携帯電話などの端末は、機能的に同じにな り、持ち運べるかどうかはともかく、「画面の大きさが違うだけ」の存在になるのではないでしょうか。

3.iPhoneとWiMAXの“祭りの後”(1.16 nikkeibp)
大前 研一氏
 昨2007年の暮れは、特に携帯キャリア各社の動きが賑やかだった印象がある。端的にいえばそれは、iPhoneとWiMAXを巡るものだ。
 この二つに共通してわたしが思うこと。それは「日本で成功する余地が残っているのか」ということだ。確かに新聞やテレビ、インターネットでも騒がれてい る。しかし、皆さん、自分自身で「それを使うシーンはどういうところか」「自分はどう使うか」を一度考えてもらいたい。

 そういう視点で考えてみると、今騒がれているこの二つの事業の未来が見えてくるはずだ。
 まずはiPhoneについて考えてみよう。前述したようにiPhoneは、既に欧米では販売されており大変な人気である。この日本代理店の座を巡って、 NTTドコモとソフトバンクなどが争奪戦を繰り広げている状況だ。

 実は、この話題の商品について、わたしは割と否定的な見方をしている。日本で成功する製品としては、電池の交換などの問題(電池が経年劣化したときには 自分で取り換えられないなど)があり、まだまだ欠点が多く、成熟した製品とまでは言いがたい。将来、今のモデルをベースに改良を加えてくれるのであれば、 見方も変わってくるだろうが、今のiPhoneについては、わたしは懐疑的な立場である。

 もしも下馬評通りNTTドコモと組むのであれば、今のモデルのいい点を残して、まったく違う製品に作り替えてほしいと思っている。特に親指族にとっては メール機能などが同等以上でなければ乗り換えは期待できない。また最近の携帯電話は財布の多くの機能を持っているのでそうしたものを踏襲しないかぎり日本 では成功しないだろうと考えているからだ。何といっても、日本の携帯電話は世界に類例を見ないほど多機能だ。200も300もの機能を抱えていて、ユー ザーも使い切れないと言っているくらいだ。

 iPhoneは携帯音楽プレーヤーとしての機能だけでなく、Wi-Fi通信や、動画・写真の再生機能、メールやWebなどのインターネット機能などを持 つ。
 しかし冷静に考えてみれば、この程度の機能なら日本の携帯電話は既に実現しているではないか。携帯音楽プレーヤー機能だって、着うた、着うたフルなどの サービスが充実している。ソニー・エリクソンのウォークマン携帯の大ヒットもiPhoneの機能を分割・先取りしている、ということになる。こういう日本 の携帯電話市場に今のiPhoneが入ってきたとしても、2台持つような特殊な人を除いて、一般の日本人に受け入れられるとは思えないのだ。

  WiMAXに類似する技術に、Wi-Fiがある。これは家庭やオフィスのネットワークを無線化するもので、Wi-FiはノートパソコンやPDA、携帯 ゲーム機などにかなり搭載されており、普及しているといっていいだろう。

 Wi-Fiの弱点は、通信距離の短さだ。電波が最大でも数百mしか届かない。壁などの障害物があれば電波も弱まるので、現実的には数mから数十mといっ たところか。したがって、建物の中のネットワークを無線で実現するという使い方が一般的だ。このWi-Fiを、遠くまで、そして高速に利用できるようにし ようとしたのがWiMAXなのである。

 WiMAXには固定した拠点(デスクトップPCなど)をつなぐものと、移動端末用のMobile WiMAXがある。WiMAXの電波はWi-Fiよりはるかに長い距離、実に約10kmまで届く。電波の出力を高めれば、規格上はなんと50kmまで可能 とされている。Mobile WiMAXは数km程度だが、高速で移動している最中でも通信ができるようになっている。新幹線のような高速で移動する車内からの通信にも対応できる。こ れだけの距離、高速移動に対応していれば、これ以上望むことはないという印象を受けるだろう。

 さて、ではWiMAXを導入する業者側のメリットは何か。
 まず挙げられるのは電波の届く範囲が広いので、広域がカバーできることだ。つまり、基地局となるアクセスポイントを設置する数が少なくて済む。だから、 全国に基地局を作る場合でもコストを抑えることができる。携帯電話の基地局を全国に展開するには数兆円規模で必要だったが、WiMAXなら1500億円か ら2000億円で十分というわけだ。

 Wi-Fiと携帯電話の充実した日本に出番はあるか
 このように、世の中はWiMAX普及に向けた動きを本格的に始めようと大騒ぎしているのだが、わたしには「そもそもWiMAXの時代が本当に来るのか」 という疑問がある。

 というのも、普及の妨げになるのは、さきほど解説したWi-Fiと第三世代の携帯電話(3G)の存在だ。Wi-Fiを発展させた技術がWiMAXとはい えるのではあるが、その元になったWi-Fiだって、実は相当普及しているのである。

 近距離しか電波が届かないWi-Fiだが、外に出たときはまったく使えないのかといえば、そうではない。世の中には「ホットスポット」と呼ばれる、Wi -Fiのアクセスポイントも多数用意されている。空港、喫茶店、駅など主要なポイントには多くのWi-Fiのアクセスポイントがあり、その近辺であればイ ンターネットを利用できるサービスがいくつもあるのだ。なかには無料で提供されているサービスもあるくらいだ。

 そもそも皆さんが、外でインターネットを利用したいシーンとはどういうものだろうか。ノートパソコンを広げられる場所としては、ホテル、空港、喫茶店、 駅などではないだろうか。そういうところには既に、Wi-Fi、あるいは有線(LANのケーブル)でインターネットを利用できる状況が出来ているのであ る。

 それらに加え、わたしはNTTドコモのFOMA、そして海外に行った場合には「モペラ」を併用している。携帯電話をPCに装着すれば、新幹線のなかでも 利用できる。この現在の環境で、実際のところ、わたしは何も困っていない。講演や取材などで毎日のように全国を移動しているわたしにとって通信環境はまさ に生命線だ。しかし「生命の危機」を感じたことは一度もない。

 わたしですらそうなのだから、月に数度出張に出かける程度の、平均的なビジネスパーソンならなおさらだろう。となると、WiMAXの出番はどこにあるの か。強引に考えるに、例えばそれは「スターバックスと駅の間」「山間部」といった、携帯もWi-Fiの電波も届かない隙間しか残っていないのではないだろ うか。

  むしろ今普及しているサービスで不満なのは、機能ではなく料金体系である。今、NTTドコモのFOMAでも、かなり高速な通信が可能だが、これでイン ターネットを利用するとなると、非常にコストが高くつく。

  WiMAXにしろ、iPhoneにしろ、日本のなかでどのように使われるのか、その局面を明確にして打ち出すことが、成功か失敗かを見る試金石になる だろう。携帯のオペレーターは海外の技術動向や提携に一喜一憂することなく、足元の顧客の使用状況を見て、価格を含めたサービスの改善に注力してもらいた いものだ。

4.やっぱりうまい、ジョブズのプレゼン (1.17 nikkeibp)
  「I have some good news for you.(今日はちょっといい話があるんだ)」
 出た、出た。スティーブ・ジョブズが恒例のマックワールド・エクスポの基調講演でいつも使う言い回しが、これである。アップルの新製品については何週間 も前からそれらしき噂が流れるのが常だが、彼は必ずこう言って、パンパンに膨れ上がった聴衆の期待をことさらにくすぐるのだ。

 今週開催されたマックワールド 2008での発表は、なかなかに充実した製品ラインアップと内容で、しかも「あ、テクノロジーとインターネットがまた一歩前へ進んだな」と思わせるに十分 なものだった。世界最薄のノート型コンピューター「MacBook Air」、ストリーミングによるビデオ・レンタル(しかも6大映画会社と提携)、iPhoneにGPSなしのロケーション情報機能搭載、すべてのファイル を無線で自動バックアップする「タイム・カプセル」。どれをとっても、「確かにこういうものが欲しかった」と思わせるものばかりである。

 新製品の内容についてはすでにご存知だと思うので、ここでは「プレゼンテーションにおけるスティーブ・ジョブズの巧みさ」について考えてみた。やっぱり 彼はうまいのだ。
 ジョブズは、この手のプレゼンテーションの準備をトコトン詰めることで知られている。と言っても、スピーチの内容を丸覚えするのではない。彼がこだわる のは、パワーポイント(アップルの場合は「キーノート」ですね)・プレゼンテーションのタイミングやステージ上の照明、音楽など、会場の雰囲気を盛り上げ るイベントのディテールの仕上げだという。

 まず、ジョブズのプレゼンテーションにはいろいろなメディアが入れ替わり立ち替わり、タイミングよく出てくる。今回も彼が一人でステージ上を歩きながら 話すこと、スクリーンを使った分かりやすい前座的説明、すぐさま製品を手に持ってリアルタイムで行うデモ、新製品広告のプレビュー、関連会社の重鎮登場 (今回は20世紀フォックスやインテルのCEO)などがタイミングよく切り替わる。しかも製品ごとに繰り返される。聴衆は、ただでさえ発表を楽しみにして いるのだが、もう退屈する暇もないというわけだ。

 そして噛んで聞かせるような彼の話術の巧みさ。ジョブズはこちらの頭の中を整理しながら話をするのがうまい。「今日発表するのは4つです」、「……と、 ここまでが2つ目の発表。すると次は3つ目です」など、項目を追いながら説明する。最後に、「今日みなさんに発表した4つは……」と復習するのも忘れな い。これはまるで授業。しかも、その項目がハードウエア、ソフトウエア、インターネット・サービス、コンテンツ提携と、アップルの最新のビジネス・エリア をうまく網羅していて、「そうか、アップルはこういう会社になったんだ」とよく分かるのである。

 必ず自分でデモすること。CEOによるプレゼンテーションは数あれど、たいていは壇上からガミガミとまくし立てられるタイプのものだ。デモの 時間になると、いきなり裏から担当社員が出てくる。「社長の前で緊張してやっているなあ」とか、「きっと社長は自分じゃ製品の詳細まで分かっていないんだ ろうな」とか、とかく意地悪な観察をしてしまうものだ。ジョブズが自ら長時間にわたるプレゼンテーションをこなすのは、アップルが機動力のある若い会社だ というイメージにかなり貢献しているはずだ。

5.NTT西がNGN構築をためらう理由(1.17 nikkeibp)
NTT東西はこれまでのフレッツ・サービスと異なり、NGNのサービス仕様や名称、料金体系などを東西で一つにそろえる予定だ。当初の提供エリアはNTT 西日本の方が狭いものの、2010年までのNGNのサービス・エリアの拡大計画はNTT東西で同じ。これだけを見ると表向きは、NTT東西のNGNの取り 組み姿勢が一致しているように思える。

しかし、実態は少し違う。「『今のタイミングでNGNを展開したくない』というのがNTT西日本の本音だ」──。そんな声がNTTグループ内から漏れてく る。このままでは、NGNのエリア展開や新サービスの投入ペースで、東西に差が付いてしまいかねない。

違い過ぎる東西の事業環境と設備状況
その背景にあるのは、NTT東西を取り巻く状況の違いだ。具体的には、(1)事業環境、(2)競合他社の動き、(3)フレッツ網の数など現行ネットワーク の設備──である(表1)。

事業環境では、管轄エリアの広さや大都市の分布などで違いがある。NTT西日本の管轄は30都府県と広い。大都市は分散し、離島が多いというマーケット環 境を持つ。一方でNTT東日本の管轄エリアは17都道県で、首都圏という大消費地を抱えている。

その上、競合事業者との競争は西日本エリアの方が激しい。関西圏のケイ・オプティコムを筆頭に、東海地方や九州などの主要都市圏では電力系通信事業者が積 極的にFTTHサービスを展開している。東日本は、CATV事業者を除くと、東京電力のFTTH事業を買収したKDDIくらいしかFTTHで大きな競争相 手がいない。

最も深刻な違いは、NTT東西それぞれが抱える物理的なIP網の数だ。NTT西日本は、(1)フレッツ・ISDNとフレッツ・ADSL用、(2)Bフレッ ツ用、(3)「フレッツ・光プレミアム」用──と三つある。NTT東日本には、「フレッツ・ISDN」、「フレッツ・ADSL」、「Bフレッツ」を収容す るフレッツ網は一つしかないのと大きな差だ。しかもNTT西の光プレミアムの網は構築してから数年しかたっておらず、投資回収がまだ済んでいない。ユー ザー収容の面でも、余裕があるという。
 


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