週間情報通信ニュースインデックスno.632   2007/11/24

1.Amazon.com,無線機能付き 携帯型書籍リーダー「Amazon Kindle」を発売 (11.20 nikkeibp)
 米Amazon.comは米国時間11月19日に,携帯型書籍リーダー「Amazon Kindle」の発売を開始した。価格は399ドルで,同社のECサイト内の「Kindle Store」から購入可能。
 Amazon Kindleは無線接続機能を備えており,パソコンを介さずに,直接オンラインの書籍やブログ,新聞,雑誌をダウンロードして,いつでも読むことができ る。米E Ink製の高解像度の電子ペーパーを用いたディスプレイを搭載し,「明るい太陽光のもとでも実際の印刷物のように読みやすい」(同社)。
 同社CEOのJeff Bezos氏によると,同社は3年以上Kindleの開発に取り組んできた。EVDOに対応し,「電子書籍は1分以内にダウンロードできる」(同社)。雑 誌や新聞,ブログなどに購読登録をしていれば,自動的にコンテンツ配信を受け取れる。

 重さは10.3オンス(約320グラム)。一般的なペーパーバックより薄く,内蔵メモリーには200冊以上のコンテンツを保存可能。 Amazon.comから購入したコンテンツはオンラインにバックアップ保存されるので,容量を心配することなく新規コンテンツを購入できる。
 オンライン辞書「New Oxford American Dictionary」と「Wikipedia.org」へのアクセス機能のほか,メモ機能やブックマーク機能などを備える。

 また,Amazon.comが無線接続料を負担するため,Kindleユーザーは月額サービス料やデータ通信料などを支払う必要がない。
 Kindle Storeでは,Kindle向けの電子書籍を9万タイトル以上,新聞や雑誌,ブログを数百本揃えている。購入者のレビューやレコメンデーション,1- Click購入など,従来のAmazon.comサイトと同様の機能が利用できる。サブスクリプション料は新聞が月額5.99〜14.99ドル,雑誌は月 額1.25〜3.49ドル,ブログは月額0.99ドル。いずれも2週間無料でトライアル購読できる。

 2.【グループウエア利用企業の本音座談会】グループウエアは転機に来 ている (11.21 nikkeibp)
 グループウエアの使いこなしに問題意識を持つ情報システム担当者の本音座談会。第2回はグループウエア自体をテーマに、どんな機能を使ってい るのか、今後はどんな強化を望むのかを話し合った(第1回の内容はこちら)。市場に出ている製品について、「基本中の基本であるユーザー・インタフェース がまだ使いにくい」、「ソフトが設定している情報共有の単位が現場のニーズに合わなくなってきた」といった声が挙がった。

 まずは、そもそもどんな機能を最もよく利用しているのか、参加者が意見を出し合った。全員が共通して挙げた機能は2つ。カレンダーを使ったスケジュール 管理機能と、会議室などの設備予約機能である。

 畑本部長が勤務する東亜建設では、マイクロソフトのグループウエア「Exchange Server」を使ったスケジュール管理が、ほぼ全社員に定着しているという。「原則としてグループウエアに入力しているスケジュール情報を基に会議や打 合せの日程を調整する。いちいち電話やメールで『会議をします』などとは言わなくなっている」(畑本部長)。

 同社では、空いている時間帯があった場合、そこへ勝手に予約を入れられても文句を言えないようにしているという。「空き時間帯は、いつでもスケジュール を入れていいよ、という意味でもある」(畑本部長)。

 「ホテル業という特性上、当社でもスケジュール管理は必須機能」。こう語るのは、オリエンタルホテル東京ベイ 経営企画部経営企画課経営企画担の坂井忠史氏である。「ホテルの従業員は、基本的にシフト制で勤務時間を決める。個人の都合で勝手に休みを取ると、他の従 業員に迷惑がかかるだけでなく、業務自体が滞ってしまう。全員の勤務スケジュールが分かる仕組みがないと、いつ休みを取っていいのか分からなくなってしま う」(坂井氏)。

 同社はサイボウズの「ガルーン2」を利用している。ホテルで開催される会議の勤務シフトを組むケースを例に取ると、まず翌月分の会議予定を、マネー ジャーなどが全員のスケジュールに入力。各従業員は、休みを取りたい会議を自分のスケジュールから外すようにしている。前後のシフトに応じてマネージャー が調整したりしているが、「課長や部長が土日に出勤することも珍しくない」(坂井氏)。

 グループウエアを使ってスケジュールをオープンにする弊害を指摘する意見も出た。竹中土木の松田美孝 管理本部情報システム部課長は、「スケジュール管理を導入してすごく効果が上がった」としつつ、「グループウエアに休みの予定を入れるだけで、上司に何も 言わず勝手に休暇を取られてしまうこともある。休みの理由まで申告する必要はないが、最低限のコミュニケーションは必要ではないか」(松田課長)。

 また、他の参加者からは、「便利な機能だし、合理的だとは思う」とする意見が出た一方で、「なぜ勝手に予定を入れるのかと反発を受けて、結局は定着しな かった」といった意見が出た。
 設備予約機能については、モンテールの鈴木智也 取締役管理本部長が、自社の利用法を披露した。同社はサイボウズの「Office 6」を、会議室だけでなく営業車の予約にも活用しているという。

 本社の営業担当者には、1人に1台ずつ営業車を割り当てている。しかし拠点には共用の営業車もある。営業担当者の間で共用車の取り合いになることも珍し くないという。といって、むやみに共用車の台数を増やしてもムダが多い。

 「なんとかうまくやりくりできないかと思い、グループウエアの設備予約機能を利用することを思いついた。施設予約機能に「共用車」の枠を1つ作ってお く。それで何時から何時まで使う、と予約を入れるようにしている」(鈴木取締役)。

基本は「シンプル・イズ・ベスト」
 
 では、今後のグループウエアに望む強化点や改良点は何か。全員一致で挙がった意見が、「使い勝手をシンプルに」というものだった。「画面の中のアイコン をもう少し小さくしてスッキリさせてほしいとか、タグで画面を切り替えるときに今はどのタグ画面にいるのかを明確に色分けして示すとか。どれも細かいこと だが、本来は使い方を迷ったり考えさせたりしないように設計されているべきでは」(坂井氏)。

 坂井氏の務めるオリエンタルホテル東京ベイでは、従業員が宿泊客への対応に忙しく、パソコンの前に座って作業をする時間を割くことが難しい。「説明書を 読んでいるヒマもなければ、利用法を覚える時間もない。パソコンの前に10分いられればいい方」(坂井氏)。

 こうした現状が、シンプルな使い勝手への要望につながっている。「当社のグループウエア画面に一度に表示する情報の種類は、せいぜい2〜3種。利用者に 使い方を考えさせないことを第一に、画面をデザインした」(同)。

 グループウエア製品自体をシンプルにしてほしいという要望の一方で、製品の選択基準を反省する意見が相次いだ。「我々はつい、機能に○×を付けて、機能 が豊富な製品を選びがちだ。利用者のニーズに合っているかどうかよりも、システムを作る情報システム部門としての視点で選んでしまっているのかもしれな い」「同じ金を払うんだったら、つい機能がいっぱいあった方がいいと考えてしまう」「要は貧乏性なんだろうね」(笑)。

求む、「プロジェクト単位の協同作業支援」
 
 「同じ部署や組織の中だけでなく、異なる部署や企業に属するメンバー同士で、もっと容易に情報を共有できるようにならないだろうか」。松田課長は、こん な問題を提起した。「例えば支店や組織を横断するプロジェクトがそうだ。固定された組織内だけでなく、プロジェクトごとにメンバーを募り、そのメンバー間 で情報を共有したり共同でCADデータを編集したいケースが、非常に増えている」(同)。

 現状のグループウエア製品の多くは、人事データベースを参照するなどして、利用者の所属や職責に応じた文書アクセス権を、自動的に設定できる。しかし、 プロジェクト単位での情報共有を実現するには、この機能がアダになることがあるという。「自動的な権限設定は便利な機能だが、プロジェクト単位でアクセス 権を設定するには、情報システム部門が個別に設定し直したりしている」。

 他の参加者も、プロジェクトや特定の会議といった単位での協同作業を支援する機能を求める意見を述べた。現状ではファイル・サーバーや電子メール、プロ ジェクト管理ツールを併用したり、掲示板やToDoといったグループウエアの機能の使い方を工夫したりと、試行錯誤を重ねているという。

 松田課長は「確かにそういうやり方もある」としつつ、「今後のグループウエアには、プロジェクト単位の協同作業をもっと容易にする強化を期待したい」と 話す。「メールでファイルをやり取りすると、情報は一方通行になり、共有ができない。ファイル・サーバーや掲示板でファイル共有をすると、いったん手元に ダウンロードしてから編集してまたアップロードすることになり、手間がかかる」(松田課長)。

 「おそらく、そういった問題を解決するコラボレーション機能を、これまではグループウエアに求めていなかったのではないか。グループウエア自体の定義が 変わりつつある、あるいは変わっていくべき時期にきているのかもしれない」。畑本部長は、こう意見を述べた。

3.iPhone、欧州に侵攻英独で発売、でも米国市場ほど甘くない?(11.22  nikkeibp)
 消費者の心をわしづかみにする米アップル(AAPL)の神通力はロンドンでも顕著だった。11月9日、リージェント・ストリートにある アップル直営店の外には、英国独特の悪天候にもかかわらず長蛇の列ができた。英国とドイツでついに発売された「iPhone(アイフォン)」を誰よりも先 に手にしようと熱心なファンが詰めかけたのである。

寒さに震えながら並ぶ23歳の学生ジョン・マグレガー君は、今年1月にアイフォンが発表されて以来、英国での発売を首を長くして待っていたと言う。 「今、こんなものはほかにないからね」。
米国では既に140万台以上売れたアイフォンの話題性は抜群だ。しかし、欧州の携帯電話市場でもシェアを奪えるとは限らない。欧州はフィンランドのノキア (NOK)と英ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズのお膝元だ。両社とも欧州市場で圧倒的なシェアを誇り、独自のマルチメディア対応の音楽 再生機能付き端末を提供している。

いくらユーザーインターフェースが画期的でも、競合他社より低スペックでデータ通信速度の遅い携帯電話では、欧州の顧客に見向きもされない可能性も ある。

4.グーグルが作るケータイ新世界(11.21 nikkeibp)
 携帯電話の開発にはコストと時間がかかる。電話の心臓部となるチップ、部品を収める筐体、様々な機能を提供するソフトウエア――。それぞ れの開発に世界中の企業が何十年も取り組んでいるが、次々に新しい課題が持ち上がってくる。

 そこで開発の迅速化に向けて立ち上がったのが、世界最大の検索エンジンを運営する米グーグル(GOOG)だ。同社は11月5日、34社で構成する団体 「オープン ハンドセット アライアンス(OHA)」の設立を発表した。

 OHAでは、携帯電話に必要なすべてを網羅した無償のソフトウエアパッケージを開発していく。この中には、リナックスベースのオープンソースOS(基本 ソフト)やウェブブラウザーのほか、地図、電子メール、動画共有・再生ツールなど数々のアプリケーションが含まれる。

 OHAにはIT(情報技術)業界の大手企業が複数参加している。半導体メーカーの米インテル(INTC)、米クアルコム(QCOM)、端末メーカーの米 モトローラ(MOT)、無線通信事業者の米ティーモバイル、米スプリント・ネクステル(S)、電子商取引サービスの米イーベイ(EBAY)などだ。


「Gphone(ジーフォン)」ではなく「Android(アンドロイド)」

 新プラットフォームの名称は、大方が予想した「Gphone(ジーフォン=グーグル電話)」ではなく、人造人間を意味する「Android(アンドロイ ド)」だ。グーグルが2005年に買収したソフトウエア会社の名前に由来する。

 開発に貢献できるのはOHA参加企業に限らない。その名の“オープン”という単語が示す通り、OHAに参加していなくとも、提供される開発キットを使え ば、アンドロイドベースの携帯電話向けの携帯ソフトウエアやサービスを開発できる。グーグルはそうしたサードパーティー製ソフトウエアをオンラインストア 経由で販売していく。

 OHAの誕生は、携帯電話の開発方法が180度転換したことを意味する(BusinessWeek.comの記事を参照:2007年10月29日 「Apple, Google vs. Big Wireless」)。携帯電話事業者や端末メーカーは携帯端末の設計において徐々に主導権を失い、代わってサードパーティーの開発業者が世界全体で何十 億にも達する携帯電話ユーザー向けソフトウエア市場で優位に立ちつつある。

 「(OHAの登場により)開発業者にとってまたとない大変革期が到来した」と、米コンサルタント会社エンビジョニアリング・グループのディレクター、リ チャード・ドハーティ氏は言う。


マイクロソフト、シンビアンに立ち向かう

 新たな携帯電話向けOS開発への取り組みは、グーグルが初めてというわけではない。米マイクロソフト(MSFT)は携帯電話向けに様々なタイプのウィン ドウズOSを作っている。フィンランドのノキア(NOK)は携帯電話向けOS「Symbian(シンビアン)」を開発する合弁会社、英シンビアンを通じて 競争に参加している。またリナックスベースの携帯電話向けOSは少なくとも22種類ある。OHAはマイクロソフトとシンビアンに立ち向かうことになる。

複数の団体がそれぞれリナックスの標準を作ろうとしている中で、OHAはその一歩先を行くことができる。リナックスには数多くの種類があり、リナックス向 けの新ツールを作る開発業者は種類ごとにアプリケーションを書き換えなくてはならない。もう1つの主要リナックス推進団体「LiMo Foundation(リモ・ファウンデーション)」が携帯の心臓部であるOSに注力しているのに対し、OHAはもっと完全なパッケージを提供していく。

 新興企業はOHAの取り組みに一口かもうと、既にやる気満々だ。投資家はそのような企業に出資しようと躍起になっている――。そう指摘するのは米ベン チャー企業専門の投資会社ガーネット・アンド・ヘルフリッチ・キャピタルのマネージング・ディレクターで共同創立者のデビッド・ヘルフリッチ氏だ。

 「何十億ドルとはいかないまでも、数億ドルの投資」が、リナックスベースの携帯ソフトウエア開発企業に集まってくるとヘルフリッチ氏は言う。同社は約3 億5000万ドルの未公開株を保有しており、その中にはリナックス向けソフトウエア開発の米セルユナイトも含まれている。今年、携帯向けリナックス関連企 業に1200万〜5000万ドルを出資する計画だという。「市場は大きい。数十億ドル規模のビジネスチャンスがある」と見ている。

 開発業者がOHAのどこに魅力を感じているかは明らかだ。ほかの携帯プラットフォームとは異なり、アンドロイドを利用すればライセンス料などは発生しな い。また自社で開発したアプリケーションをグーグルのオンライン市場で販売でき、しかもグーグルと収益を分け合う必要がない。グーグルは端末ブラウザを利 用して広告を配信することで収入を得るという。

 「アンドロイドと関わることで宣伝効果も期待できる」と言うプログラミング会社もある。「我々にとっては大規模な販促キャンペーンのようなものだ」と、 米ニュアンス・コミュニケーションズ(NUAN)の携帯および消費者サービス部門担当社長、スティーブ・チェンバース氏は言う。ニュアンスはアンドロイド の開発業者向けに無償の基本音声認識プログラムを開発していくという。「(OHAは)開発業者同士が手を組むのにぴったりの方法だ」。

 既存の携帯端末メーカーや通信事業者にしても、アンドロイドを支持する理由は十分にある。無償で提供されるからだ。端末メーカーが新たなソフトウエアプ ラットフォームに移行しようとする場合、通常ならば2億ドル以上の投資が必要になる。リナックス向けソフトウエア会社の米ウインドリバー・システムズ (WIND)のCMO(最高マーケティング責任者)、ジョン・ブラッグマン氏の試算だ。


5年以内に数億台の端末に搭載へ

 グーグルのアンドロイド事業責任者アンディ・ルービン氏は、5年以内にアンドロイド搭載端末の年間販売台数を「数億台」に乗せたいと考えている。

 マイクロソフトは5年にわたる取り組みを経て、「Windows Mobile(ウィンドウズ・モバイル)」ベースの端末を年間約2000万台出荷している。また既に通信事業者160社以上、端末メーカー48社と提携 し、ウィンドウズ・モバイル向けアプリケーションを1万8000以上提供している。

 ルービン氏の望みはかなうだろうか。

 「それほどの規模をどのようにして達成するつもりなのか分からない」と、マイクロソフトで携帯通信担当統括マネジャーを務めるスコット・ホーン氏は首を ひねる。

疑問を持っているのは同氏だけではない。「この業界の複雑さを甘く見ない方がいい。問題は単にハードの開発ではなく、いかにして端末を消費者に買ってもら うかだ」と語るのは、ノキアの技術戦略部門担当役員セバスチャン・ナイストローム氏だ。「OHAの成功は、最終的には消費者がアンドロイド搭載端末を購入 してくれるかどうかにかかっている」と、エンビジョニアリング・グループのドハーティ氏も言う。

 OHA加盟の34社は需要を確信している。洗練されたデザインに定評があり、人気のスマートフォン「Touch(タッチ)」で知られる香港の端末メー カーHTCは、OHAに加わるまではずっとウィンドウズ・モバイルを支持していた。「ほかのOSも引き続き推進していく」と、ピーター・チョウCEO(最 高経営責任者)はアンドロイドについて発表した電話会議で述べた。

 モトローラはシンビアンOSを使用してきており、同社の最も有名なスマートフォン「Q」シリーズではウィンドウズ・モバイルが採用されている。


ケータイ業界を進化させる節目?

 端末メーカーがアンドロイドに関心を示すのにはもっともな理由がある。グーグルによれば、シンビアンやマイクロソフトに支払うライセンス料が不要となる ため、コストを約10%削減できるのだ。

 「その分の費用で部品を改良したり、大きな液晶画面を搭載したりできる」と、米コンサルティング会社NPDグループのアナリスト、ロス・ルービン氏は指 摘する。あるいは単純に端末の販売価格を引き下げることもできるだろう。

 「(OHAの設立は)画期的な進化だ。業界の1つの節目となるだろう」と、ヘルフリッチ氏は語った。

5.開き直ったMicrosoft (11.22 nikkeibp)
 「10年後には社内で運用されるサーバーは無くなり,すべてがコンピュータ・クラウドに移行する」−−−。米Microsoftのス ティーブ・バルマーCEO(最高経営責任者)は先日,システム・インテグレータを中心とする同社のパートナー企業に対してこう宣言した。もしそうなら, パートナー企業が現在手がけているWindowsサーバー関連ビジネスは,10年後にはどうなるのだろうか?

 やはり無くなるだろう。筆者はそう思っている。

 冒頭のバルマー氏の発言は,同社が毎年開催する「Microsoft Partner Conference」(今年は11月8日)の基調講演で飛び出した(関連記事:「10年以内に社内で運用されるサーバーは無くなる」,MSバルマー CEOが「破壊」を宣言)。このPartner Conference,午前中には同社が来年出荷する「Windows Server 2008」「SQL Server 2008」「Visual Studio 2008」の概要や販売方針の説明会が,夕方には同社の製品をたくさん販売したシステム・インテグレータを表彰する「パートナー・オブ・ザ・イヤー」の授 賞式が開催されたのだが,その間に行われたバルマー氏による基調講演で,パートナー企業の現在のビジネスを真っ向から否定する話が飛び出したわけだ。日 々,日本のパートナー企業と顔を合わせるマイクロソフト日本法人の幹部にはできない,本社CEOならではの「開き直った」発言である。

 「あなたのビジネスは将来的に無くなります」と宣告されたパートナー企業は,いい気分はしなかっただろう。Microsoftはここ数年「ソフトウエア +サービス」というビジョンを掲げているが,本命はサービスであり,ソフトウエアは「サービスに全面移行できるまでの繋ぎ」であることは明らかだ。バル マー氏は「もちろん今後数年は,サーバー製品をどんどん販売して頂きたい」と力説するが,これでは白けた気持ちにならない方がおかしい。

 とはいえ,発言内容自体を「まさか」と思ったパートナー企業も少ないはずだ。クラウド・コンピューティングやSaaS(Software as a Service)といったビジョンはこれまで散々語られてきたし,既にMicrosoftも「Dynamic Live」や「Office Live」といった企業向けのSaaS事業を開始している。バルマー氏の発言は,現状を追認する「決別宣言」のようなものであり,パートナー企業としては 「ついに」「いよいよ」とは思っても,それほどの驚きでは無かったはずだ。

 バルマー氏は無くなるビジネスの代表例として,「Active DirectoryやExchange Serverの構築・運用サービス」を挙げる。企業へのWindowsサーバー販売自体も無くなるし,「ほとんどのトランザクションやアプリケーション, システム管理機能がコンピュータ・クラウドに移行する」(バルマー氏)とも語る。

「Windowsサーバー関連ビジネス」はやっぱり無くなる

 では実際に,これらのビジネスは本当に無くなってしまうのだろうか。いまだに多くの企業にメインフレームが残っているように,全てのコンピューティング がコンピュータ・クラウドに移行することは無いだろう。しかし筆者は,ほとんどのWindowsサーバーがコンピュータ・クラウドに移行し,企業向けの サーバー販売やWindowsシステム構築ビジネスが無くなるのではないかと思っている。なぜそう考えるのか。それは筆者自身が,今は無くなってしまった 「Windowsサーバー関連ビジネス」に関わっていたからだ。

 無くなってしまったWindowsサーバー関連ビジネスとは,筆者がかつて所属していた「日経Windowsプロ」というWindowsサーバー専門誌 のことである。同誌はWindows NTブーム最中の1997年に「日経Windows NT」として創刊し,その後「日経Windows 2000」「日経Windowsプロ」と誌名を変え,2005年12月に,長年追い続けてきたLonghornを見ることなく休刊した。

 筆者は1997年の創刊には立ち会っていないが,創刊直後の日経Windows NTは,非常に勢いのある雑誌だったらしい。日経BP社の主力である直販誌(書店では販売せずに読者に直接届ける雑誌)は,読者開拓に莫大なコストを要す るため創刊初年度は通常赤字になるのだが,日経Windows NTは創刊初年度から黒字を記録したほどだ。しかし,創刊時には4万人を超えていた読者数は年々減少し,筆者が編集部に所属した2002年10月から 2005年12月までの間は,読者数は常に2万人台だった。

 なぜ日経Windowsプロは休刊したのだろうか。「必要な情報が雑誌ではなくWebで入手できるようになったから」「関連ビジネスの寡占化が進んで広 告主が減少したから」など,様々な理由があるだろう。しかし筆者の手元にある「歴代の人気記事ランキング(日経BP社の直販誌では毎号サンプリングによる 読者調査を行っており,記事毎に『読まれた率』や『読者の参考になった率』が測定されている)」を眺めていると,別の理由が浮かび上がってくる。

 簡単に言うと,日経Windows NT/2000/プロの人気記事とは,「トラブル対策記事」ばかりなのだ。歴代トップの人気記事は「Windows NTの正しいサービス・パックの適用法」だし,特集タイトルには「落とし穴」や「○○の常識」「○○の鉄則」といった言葉が目に付く。人気の高い長寿連載 は「トラブル解決Q&A」であり,同連載は何度も書籍化されている。

 つまり筆者は,こう考えるのだ。過去に日経Windows NTが売れたのは,当時のWindows NTがトラブルだらけで「雑誌でも読んで情報を入手しなければ,マトモに使えない代物」だったからであり,Windows 2000 ServerやWindows Server 2003になって安定性や信頼性が向上し,トラブルも減り,マイクロソフトのサポート体制も充実した結果,日経Windowsプロもその役割を終えた−− −と。そう考えると,Windows Serverに関わる人にとって,休刊はむしろ喜ばしいことだったとも言えるだろう。


無くなったあとに

 Windows Serverは進歩し,ユーザーが必死にトラブル情報を収集しなくても使えるようになった。同じように,将来的には自社で運用しなくても使えるようにな る。そうなれば,Windows Serverに関する構築・運用サービスもその役割を終えると考えるのは自然だ。

 では,無くなる予定のビジネスに従事している人は,今後どうすればいいだろうか。日経Windowsプロの編集部員のケースで言うと,Windows Serverに関する情報提供という業務は「ITpro」に移籍した筆者に集約され,他の編集部員は別の業務に進むことになった。つまり,Windows サーバー関連ビジネスを現在手がける人も,全く別分野のビジネスに移らざるを得ない可能性があるだろう。

 なおITproに移籍した筆者は,インターネット・ビジネス動向やセキュリティなど,Windows以外の記事も執筆するようになった。また, Windows周りのトラブルを追い回す機会も減ったので,これは精神衛生上,悪い話ではなかった。

 パートナー企業には,Windows Serverの代わりにLinuxを販売するという選択肢もアリかもしれない。日経Windowsプロは休刊したが,創刊時と同じようにOSやアプリケー ションのインストール方法を解説し続けている「日経Linux」は,いまだに健在である。こう書くと,筆者がLinuxのことをどう思っているかバレそう だが,Linuxの方が「(将来的に不要になる)既存ビジネス」が生き残る可能性は高い。

 これからもITプロフェッショナルの仕事は無くならないが,その中身は変わっていくはずだ。「ビジネスの消滅」は悩ましい問題だが,避けることはできな い。バルマー氏の発言は,ある意味,パートナー企業に対する誠実さの現れではないかと思っている。


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