週間情報通信ニュースインデックスno.622  2007/09/15

1.携帯型オーディオ・プレーヤ所有者の 40%が「iPod touch」を購入希望(9.14 nikkeibp)
ヤフーバリューインサイトは9月14日、アップルの携帯型デジタル・メディア・プレーヤ「iPod touch」に関する調査結果を発表した。携帯型オーディオ・プレーヤを所有している20歳以上のインターネット・ユーザーのうち、「iPod touch」を「購入したい」「やや購入したい」とする購入希望者は40%にのぼった。「iPod」所有者に限ってみた場合、その割合は52%に達する。

iPod touchの各機能の魅力度を調べたところ、「3.5インチのマルチタッチディスプレイ」が44%と最も高く,「WebブラウザSafari」 (31%)、「YouTubeプレーヤ」(29%)、「連続再生時間」「Wi-Fi無線ネットワーク機能」(ともに23%)が続いた。

アップルの携帯電話「iPhone」とiPod touchの両端末を「購入したい」「やや購入したい」とする購入希望者は31%。iPodユーザーに限定すると、その割合は42%に拡大する。

所有する携帯型オーディオ・プレーヤ(複数所有の場合は最も利用頻度の高いもの)のトップ3ブランドは「アップル」「ソニー」「パナソニック」だっ た。各ブランドのユーザー満足度は,「満足」「やや満足」を合わせると、アップルが84%、ソニーが61%、パナソニックが53%となった。

2.「うちの会社に映像コンテンツなんて」…本当にないか?企業サイトは動画・音声 をこう活かせ(9.14 nikkeibp)

―― 今はウェブにもいろんな表現形式が出てきて、動画もあれば、音声や動画を携帯できるポッドキャスト、メタバースと呼ばれる仮想空間もありま す。こうした新しい技術を企業サイトに活用するうえで、経営者はどういう視点を持っておけばいいのでしょうか。

経営者に必要な編成感覚の一部になりますが、「内容に最も適した形式で伝える」ことができているかどうか、その確認に尽きますね。

現場の方が「この部分は文字と画像で説明して、この部分は動画で見せて……」と表現形式をいちばんうまい具合に組み合わせる。文字を使うべきところ は文字を使って、画像が適しているところは画像で、動画で見せるべき物は動画で見せる。それをきちんと説明できるか、いち消費者として説明通りに機能して いる、と感じられるか。

そう言ってしまえば当たり前に聞こえますが、例えばウェブでの映像配信も大きく分けると、オンデマンドとライブの2種類がありますから、その2つを うまく使い分ける必要があります。

―― オンデマンドとは、受信者がプレイヤーのスタートボタンをクリックすると、発信者側にあらかじめ置いてある動画や映像データが流されてくる仕 組みで、現在のウェブ動画、映像配信のほとんどはオンデマンドですね。一方、ライブとは生中継・生放送のこと。

 はい。現在では通信技術が進んでいますので、インターネットでもかなり高画質のライブ映像を流すことができます。映像は、ライブの力がいちばん発 揮されるものではないかと思います。ライブを映像以外でやろうとしたら、ものすごく大変なことになる。例えば、野球を文字で生中継しようとしても、無理が ありますよね。

3.生まれ変わるNTTの進むべき道(9.12 nikkeibp)
経営コンサルタント 大前 研一氏

 いま、NTTは変革を迫られている。2010年、つまり3年後には、竹中懇談会(小泉前首相時代の総務大臣・竹中平蔵氏の私的な懇談会)の方針に のっとり、通信、放送の規制のあり方を見直すことになっているのだ。

 その意気やよし、と言いたいところだが、わたしは「思い通りにいくのは難しかろうな」と思っている。なにしろNTTは巨大だ。さまざまな利権もか らんでいる。だからNTTに関する議論は、ともすればエキサイトしやすい傾向にある。まともに取り組んだとしても、なかなかうまくいかないだろう。成功さ せるには老練な駆け引きが必要となろう。

 そんな折、総務省は固定電話の全国一律制(ユニバーサルサービス)を2009年に廃止すると発表した。ユニバーサルサービスとはNTTに課せられ た義務のことだ。「北海道だろうが沖縄だろうが日本全国どこでも同じ水準の通信環境を得られるようにせよ」というのがその内容で、だからNTTは義務の遂 行・維持のために年間何百億円もの多大な投資を、端的にいえば赤字をタレ流している。

 ユニバーサルサービスの廃止発表の背景には、既存の固定電話回線の限界がある。ご存知の通り、固定電話の主力インフラはカッパーメタル線、いわゆ る銅線だ。まあ「昔ながらの電話回線」と思っておけばいい。NTTはこれを日本全国に敷設して保守に努めている。ところがIP電話が普及してくると、カッ パーメタル線の地位は大きく下がる。

 それも当然だろう。日本全国どこにかけても1分8円程度の通話料金、IP電話同士だったら無料のことも珍しくない。まして高速・大容量が安定的に 供される光ファイバーなら、「0AB〜J」番号(=従来の固定電話と同じ番号)を持つこともできるのだ。

 現在、カッパーメタル線を用いたブロードバンドにはxDSLがあり、普及率も高い。しかしxDSLでは安定性の面で不安があり、0AB〜Jの電話 番号は付与されない。「通話料金が安くなるのは魅力だが、固定電話の番号は変えたくない」という消費者の声は大きかろうから、将来的には光ファイバーを用 いたFTTHに移行していくだろう。

 すなわち、カッパーメタル線を後生大事に持っていても仕方がないという時代は、もう到来しているのである。そんなものを保守するのに大金を費やす のなら、それこそ一本でも光ファイバーを余計に通したほうがいい、というわけだ。そこで現在NTTに課している全国一律のサービスを廃止していこうという のがユニバーサルサービス廃止の趣旨なのだ。

次世代ネットワークは「無線」が有望

 KDDIやソフトバンクなどの通信事業者は、NTTが持つインフラの開放を常に要求してきた。前身が電電公社というNTTは、加入者に債券を買わ せることによってさまざまなインフラを整備してきた。元々が国民の出資金で作られたものなのだから、それは国民のものだ。だからKDDIやソフトバンクが 「NTTが独占しないで、自分たちにも使わせてほしい」と主張するのは当然である。

 わたしがNTT社長であれば、NTT法の廃止と引き替えにその要望に応えるだろう。つまり、インフラを開放する代わりに縛りも解いてもらうのだ。 というのも、そういうネットワークのインフラは、あまり利益を生まないのである。今のように独占していては、周りに冷たい目で見られるうえに、事業領域に 制限が加えられ、またへき地へのサービスなどの義務が加えられる。要は、どちらが得か、長い目で考えるべき時期にきている、と思うのだ。現在のインフラ を、一貫サービス維持のために(垂直方向に)守り抜くことが、どれだけ長く意味を持つだろうか。わたしは疑問に思っている。

 というのも、これから重要になってくるインフラは、実は光ファイバーなどのインフラではなく無線であるとわたしは考えているからだ。Wi-Fiの 次にやってくる規格WiMAXや、デジタル放送開始後に空くVHF帯域を利用すれば、無線で高速ブロードバンドが可能になる。日本の隅々まで、またビルの 各部屋まで光ファイバーを敷設するコストを考えれば、無線のほうが安くあがる。

 そのことを考えれば、NTTが持っている光インフラの重要性がどの程度なのか、しがみつくだけの意味のあるものなのかが分かるだろう。

 むしろ、そういう土管部門は、新しい会社を作って移してしまってもいいくらいだとわたしは考えている。そして、その会社はKDDIやソフトバンク など利用者と共同の持株会社にしてしまうのだ。そうすれば今後必要なインフラ整備のコストも、NTTが自分だけで負う必要もなくなる。しつこい解放要求に もおさらばだ。

 そのためには、土管の独占で勝負する会社から、サービスの質で勝負する、携帯も東西地域会社も統合した会社に生まれ変わる「決意と戦略」があるの かどうか、が問われることになる。

何かやろうとすると法律に縛られるのがNTTだ。これはソフトバンクやKDDIとの大きな違いである。他の会社や外資がいろいろなサービスを展開で きるのに対して、NTTは不利な立場にある。だからわたしはこう主張したい。その竹中懇談会に乗じて新会社を作り、NTTが持っているインフラなどを全部 提供してしまえ、と。

 もちろん無料で提供しろということではない。インフラを渡す代わりにお金ももらう。NTTになってから敷設した光ファイバーについても応分の負担 を求める。ユニバーサルサービスについても、そちらの会社に引き受けてもらえばいい。こうして、現在NTTが持っているオブリゲーション(義務)もそちら の会社に移して、自由な身になるのだ。

象牙の塔と化した研究所は足を引っ張るだけだ

 NTTが抱えている制約は、法律だけではない。実は自分たちの中にもある。その一つが研究所だ。NTTは3000人もの研究者を抱えていて、たく さんの研究を進めている。かつては世界最先端をいく素晴らしい研究もあったのだが、今ではおおむね象牙の塔と化している。

 ところが、このあたりがセクト主義と言うべきか、NTT研究所で開発したものは技術的にはそれほどよくないものであっても、NTTグループ全社で 実現、販売しようとやっきになることがしばしばあるのだ。

 例えばICカード。今、この業界で力を持っているのは、ソニーのFelicaだ。スイカやエディなど、いろいろな電子マネーがこの技術を使ってい る。もちろんNTTも独自でICカードを開発してきた。だがそれはあまりに堅苦しい、使いにくいものであったためにソニーに負けて、ICカードブームに乗 り遅れてしまった。

 交換機だってそうだ。自前のATMネットワーク交換機を開発して、これに載せようとしたが、世はあげてルーターが支配するIPとなってしまった。 今では世界トップのシスコシステムズから機械を買うハメになっている。電電ファミリーとしてNTTに依存してきた富士通やNECもそうした流れの中で世界 の主要通信機メーカーの立場からずり落ちてしまった。

次世代ネットワークはドン・キホーテ的所業

 ところが今、NTTがやろうとしていることは、次世代ネットワークの構築だ。断言するが、これは絶対やってはいけないことだ。NTTが持っている 垂直方向の統合をさらに強化して、NGNなる摩訶不思議なネットワークを構築しようとしている。それで、携帯電話も固定電話も、全部NTTで固めてしまお うという、時代錯誤の権化のような代物だ。

 独自のネットワークを築いて、独占時代のノスタルジアに浸る。まさにドン・キホーテ的所業ではないか。しかも、これには多大なコストがかかる。そ れにシスコや富士通、NECなども「寄らば親方日の丸のかげ」とばかりに乗りかかって、多大な投資をしている。

 だが、こんな考えは間違いなのだ。むしろ前述したように、決済など顧客とのインタフェースをがっちり握って、それ以外のものは開放してしまえばい い。すなわち水平方向で上流の方は皆解放してしまうのである。仮に日本の通信業者の要望がNGNなら、皆で共同で作るのがよい。だが、いまの無線系の発展 を見れば、既に発表されているような光ファイバーを中心とした垂直方向の統合モデルであるNGNは時代錯誤となる可能性が高い。

4.NTTドコモ、パソコン接続時でも定額になる新プランを発表(9.13  nikkeibp)
NTTドコモは2007年9月13日、パソコンから利用した場合でも定額になるデータ通信向けの新プランを発表した。

データ通信カードや携帯電話をパソコンに接続した場合、従来は青天井でパケット料が課金されたが、新プランでは一定額でインターネットなどへ接続で きる。最大3.6Mbpsの「定額データプランHIGH-SPEED」と最大64kbpsの「同64K」の2種類のメニューを用意する。料金は、定額デー タプランHIGH-SPEEDの場合、50万パケットまでなら月額4200円で、50万を超えると1パケットごとに0.0126円ずつ従量課金される。た だし100万パケット以上は月額1万500円で使い放題となる。一方の「同64K」は、パケット量にかかわらず月額4200円の定額。現状で、対応する携 帯電話は9機種。

5.ケータイ・ビジネスを変えるiPhone (9.13 nikkeibp)
 2007年6月29日に発売されて以来,iPhoneは爆発的な人気を集めている(写真1)。9月5日には,電話機能を省いてコンテンツ 再生とWebブラウジングの機能だけを備えた弟分「iPod touch」を発表したうえで,iPod touchにわずか100ドルを足せばiPhoneが買えるように値下げ。このためiPhoneの売り上げにますます勢いがつき,発売開始から74日後の 9月10日には,ついに出荷台数100万台の大台にのった。iPodが100万台達成に2年かかったことと比べると,iPhoneの勢いのすごさがわか る。アップルの目標は意欲的で,2008年中に世界の携帯電話市場で1%のシェアを獲得したいという。2006年の世界の携帯電話端末の出荷台数は9億 5700万台。つまり,アップルは1年半で,その1%に当たる約1000万台を販売するつもりだ。

 年末に向けてヨーロッパ,そして来年からはアジア圏でiPhoneを発売することを考えれば,この目標は十分達成できるだろうというのが大方の見方だ。 米国の調査会社アイサプライ社では,アップルが2008年中に1350万台,2009年に2110万台のiPhoneを出荷すると予想している。

 このようにiPhoneは,数の上でも携帯電話市場に大きなインパクトを与えている。しかし,iPhoneの衝撃は決してこれだけではない。実は iPhoneは,ケータイ・ビジネス全体をも大きく変えるだけの影響力があるのだ。

もろ刀の剣だったAT&Tとの契約
 米国ではAT&TがiPhoneを独占的に販売している。だが,このアップルとの独占契約は,AT&Tにとってもろ刃の剣だった。

 iPhoneの独占販売によって,AT&Tは契約者数を一気に増やした。しかも,それまでとは一転してクールな携帯電話会社というイメージを作ることが できた。現在のAT&Tは2006年末に地域電話会社ベルサウスと合併し,ベルサウス傘下にあった米国最大手だった携帯電話会社であるシンギュラー社と合 併したもの。AT&Tと旧シンギュラーは合併で契約数最大の大手となったが,会社のイメージや評判は決して良くはなかった。会社のイメージや評判では,2 番手のベライゾン・ワイヤレスの方が数歩先を行っていた。しかしiPhoneによってAT&Tは,クールな携帯電話会社というイメージを作り上げ,人気を 挽回したのである。

 ところがAT&TがiPhoneの独占販売権を獲得したことは,携帯電話会社のビジネスを自ら大きく制約してしまう危険な行為でもあった。AT&Tは, パンドラの箱を開けたのかも知れないのである。というのもiPhoneは携帯電話とは言いながらも,パソコンの機能や使い勝手,そして文化を携帯電話端末 の形に凝縮した製品に他ならず,そうした側面はこれまでのケータイ・ビジネスと相いれない部分が多いからだ。

 パソコンは今やインターネットにつなぎっぱなしが当たり前。定額料金を支払いさえすれば,電子メールもWebブラウジングも無料なのが当然。しかし, ケータイ・ビジネスは違う。日本ではパケット料定額サービスが始まっているが,少なくとも米国では定額サービスは普及していない。携帯電話会社は,従量制 のパケット料金で収益を伸ばしている。ところがアップルは,この携帯電話会社の思惑さえも変えてしまったのだ。AT&Tにパケット定額制の料金プランを iPhone用に促したのである。AT&Tはアップルの要求を聞き入れ,iPhoneという特別な端末のために専用の料金プランをわざわざ用意した。

 これまで携帯電話の端末メーカーといえば,端末を作ることが仕事であり,料金プランを決めるのは携帯電話会社の仕事だった。携帯電話会社が端末の仕様に 口出しすることはあっても,端末メーカーが携帯電話会社の料金体系に要求を出すなど前代未聞のことである。しかしアップルとiPhoneには,この常識が 通用しなかった。

 iPhone専用の料金プランの基本料は,無料通話時間が異なる月59.99ドル,79.99ドル,99.99ドルなど。ほかの料金プランと比べてやや 高めで,アップルは基本料の一部を上納金として収めさせているという噂もある。同じような上納金の仕組みはヨーロッパでも交渉材料になっているようだ。 2007年8月21日付の英フィナンシャル・タイムズ紙(該当記事)は,アップルがヨーロッパの携帯電話キャリアとの提携交渉の際に独占契約の見返りとし て,基本料金の10%にあたる上納金を要求したと報じている。iPhoneは携帯電話会社のビジネス・モデルを変えるだけでなく,携帯電話会社対メーカー の力関係も一変させてしまったようだ。

iTunes経由で携帯電話会社の収入がゼロに?
 
 さらにiPhoneは,携帯コンテンツのビジネスにも大きな影響を与える可能性がある。米国ではそれほど携帯コンテンツのビジネスは大きくないが,日本 は巨大市場に成長している。総務省の発表では,2006年のモバイル・コンテンツ関連の市場規模は9285億円だった。このうちの一部は,携帯電話会社に 恩恵をもたらしている。

 携帯電話会社の公式サイトをユーザーが「お気に入り」に登録すると,月数百円のコンテンツ利用料が徴収される。このときに,携帯電話会社が携帯電話料金 と一緒に料金を回収し,そのうち1割程度が回収手数料として携帯電話会社の収入になる仕組みである。このほか,携帯電話会社が運営する音楽配信サイトから 音楽をダウンロードして,携帯電話料金と一括でコンテンツ料を集めるといったサービスがある。ところが,iPhoneによって,この公式サイトのビジネ ス・モデルは崩れる可能性があるのだ。

 というのも,iPhoneにはパソコン用のWebブラウザが搭載されており,PCと同じようにインターネット上のサイトを自由に見ることができるから だ。携帯電話端末の機能が貧弱だった時代に築き上げた,簡易的な公式サイトを登録してコンテンツ使用料を支払わなくても,本物のインターネットを活用でき る。しかも,定額の通信料で。

 「日本の携帯電話にもパソコン用のWebページを閲覧できるフルブラウザがある」という人がいるかもしれない。しかし,それはパソコン用Webページの 一部をなんとか閲覧できるようにしただけに過ぎない。操作性が悪いため,多くの利用者は「最後の手段」くらいに捉えている。ところがiPhoneではパソ コン用に作られたSafariというWebブラウザだけを搭載し,しかもこれがWebページをパソコン並みに快適に見せられる。

 実はiPhoneもすべてが無料というわけではなく,有料のコンテンツもある。iPhoneはiPodの機能を内蔵しており,オンライン販売されている 音楽や映像コンテンツを楽しむことができるのだ。ただし,これらのコンテンツの売り上げも,携帯電話会社の懐に入るわけではなく,アップルが運営する 「iTunes Store」で販売されている。つまりiPhoneのビジネスでは,ここでも携帯電話会社へのうま味がない。

このようにiPhoneは,携帯電話業界にとって脅威となる恐れがある。それでも,ヨーロッパやアジアの携帯電話会社は,iPhoneの独占販売契約権を 必死になって獲得しようと躍起になっている。

 日本でもNTTドコモ,KDDI(au),ソフトバンクモバイルの3社がいずれも強い興味を示している。一番真剣なのはソフトバンクモバイル。同社社長 兼CEOの孫正義氏は,2007年1月9日にアップルのスティーブ・ジョブズCEOがiPhoneを発表した際に,最前列で食い入るように眺めていたくら いだ。以前,アップル社から携帯電話の供給を受けるというニュースをスッパ抜かれたために契約がご破算になったという苦い経験があるためか,今のところ孫 氏は大人しくしているが,逆にそのことからも彼がいかに真剣かを伺い知ることができる。

 NTTドコモも真剣だ。もっとも,ドコモとしてはアップルと独占契約を結ぶことが必ずしも良いとは考えていないようだ。関係者によるとドコモの本心は, 「自ら契約を結べなくてもいいが,ソフトバンクと独占契約を結ばせるわけには行かない」という別のところにあるようだ。iPhoneの獲得は怖い部分もあ るけれど,他社に取られるくらいなら自社で販売契約を結んだ方がいい。今やユーザー獲得が至上命題の携帯電話会社にとって,iPhoneは毒があるとわ かっていながらも食さねばならない存在のようである。

 NTTドコモは,アップルなどの第三者に回線インフラ設備を貸し出すMVNO(仮想移動体サービス事業者)事業を提案することも含めて,iPhoneと の関係づくりのあり方を模索しているようだ。日経コミュニケーションのインタビュー記事(「【編集長インタビュー】米アップルのiPhoneは魅力的,話 があれば是非やりたい --- NTTドコモ社長中村維夫氏」)でも,NTTドコモ中村維夫社長が「よほど魅力的な端末やサービスでなければMVNOのビジネスは成り立たない。例えば米 アップルが2007年1月に発表したiPod搭載の携帯電話機「iPhone」のような特徴がなければ厳しい」と発言している(「米アップルの iPhoneは魅力的,話があれば是非やりたい --- NTTドコモ社長中村維夫氏」参照)。

 iPhone獲得競争には,auも名乗りを挙げている。ただし,携帯電話会社3社の中では,auは最も不利な立場にある。というのも,NTTドコモとソ フトバンクが世界的にも広がりを見せている「W-CDMA」という第3世代携帯電話技術を採用しているのに対して,auは「CDMA 2000」という別の技術を採用しているからだ。

 CDMA2000は,AT&Tのライバルのベライゾン・ワイヤレスが採用しているが,米国でiPhoneの独占契約を持つAT&TはW-CDMA陣営で ある。アップルは世界のどの市場でも同じグローバル仕様の商品を売ることにこだわる会社だ。地域ごとにローカライズした仕様の製品を用意することをことの ほか嫌がる傾向が強い。それだけにauは,iPhone獲得競争ではかなり不利な立場にある。それでもあえてKDDIは,iPhone獲得の意思があるこ とを示す声明などを出している。

半導体業界やWeb業界で増すアップルの存在感
 iPhoneが大きな影響を及ぼすのは,ケータイ・ビジネスだけではない。現在のペースで製造・販売をするとなると,その膨大な数の影響がさまざまなと ころに現れてくる。半導体に関する調査サイト「DRAM eXChange」の試算によると,2007年度第3四半期のフラッシュ・メモリーの総出荷量のうち,実に25%をアップル1社で消費する見込みだという (ただし,これはiPhoneだけでなくiPodの生産も合わせての試算)。

 Webブラウザのマーケット・シェアにも顕著な変化が現れる。アップルのスティーブ・ジョブズCEOによれば,現在のパソコン用Webブラウザのシェア は米マイクロソフトのInternet Explorerが78%,米モジラ・ファウンデーションのFirefoxが15%,アップルが開発するSafariのシェアは5%で利用者数にして 1860万人だという。ここにiPhone 1000万台の数字が加わると,Safariのシェアが躍進し,Firefoxとの差はぐっと縮まる。



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