週間情報通信ニュースインデックスno.607 2007/05/26

1.文系出身のNTT新社長はネット接続障害を防げるか(5.25 nikkeibp.jp)
 谷島 宣之

 技術中心の企業を、文系の新社長は果たして舵取りできるのか。NTTの新社長発表、その直後に起きたインターネット接続サービスの障害、という2つの報に接し、こんなことを考えた。  NTTは5月11日、三浦惺副社長が6月末に社長となる人事を正式発表した。日本経済新聞は、三浦氏の経営課題として、銅線を使った固定電話サービスから光ファイバーを駆使したインターネット接続サービスへの「光シフト」を挙げた。また、正式発表前の報道では、たすきがけ人事ではない点に注目が集まった。三浦氏は東京大学法学部出身、人事・労務畑が長く、和田紀夫社長に続く、“文系社長”となる。これまでNTTは、事務系(文系)と技術系(理系)出身者が交互に社長になっており、慣例に従えば和田社長の後任には“理系社長”が誕生するはずだった。

 三浦氏の社長昇格が発表されてから4日後の5月15日、三浦氏が2005年まで社長を務めていたNTT東日本で、インターネット接続サービスの障害が発生した。NTT東日本は15日夜、最大で285万世帯に影響がある、と発表した。光シフトの難しさが改めて示されたことになる。さらに5月23日朝、ひかり電話に故障が発生し、NTT東日本の顧客と、NTT西日本の顧客の間で通話ができなくなった。

 本コラムの題名を「文系NTT新社長はネット接続障害を防げるか」とした。文系はダメと主張しているように取られるかもしれないが違う。趣旨は、技術企業のトップはどのような要件を備えているべきか、NTTを題材に考えてみよう、ということだ。筆者は正解を持っているわけではなく、あれこれ考えたことを書き連ねるので、読者の方々もこの問題を考えてみていただければと思う。「読者と考える NTT社長の条件」という題名も考えたが、いま一つであったので、やや派手な題名を選んでみた。

 したがって、NTTはきちんとたすきがけをして技術系社長を選ぶべきであった、と言うつもりはない。NTT関係者の中には、「和田社長の前任の技術系社長が、優秀な技術系幹部を切ってしまい、技術系の人材が払底している」と見る向きもあるが、実態はよく分からない。事務系・技術系が交互に社長になるという慣例は分かりやすく、両部門の不満をうまく解消する大人の知恵なのかもしれないが、やはり最初から決めておくのはいかがなものかと思う。

 コラムの題名にその言葉を使っているので矛盾するようだが、理系と文系に人を区別すること自体、愚行である。理系か文系かといっても、その色がつけられたのは、大学の4年間、大学院まで入れてもたかだか6年程度に過ぎない。そのわずかな期間の差だけを、その後40年近くも取り沙汰するのは馬鹿げている。東大法学部を出たエースは人事・労務や秘書室、東大工学部を出たエースは研究所というように分け、その後、40年間人事交流がほとんどないままに過ごさせ、そのうえで社長を決める、という企業はNTT以外にも存在する。そうした人事をしなければ、経営と技術の両方が分かる人材が育ったかもしれず、実にもったいない。

 こう考えてくると、たすきがけをしないことはかまわないものの、NTTが直面する技術課題を見る限り、三浦氏や人事・労務畑の方々には大変失礼ながら、組合問題とはわけが違う、という気がしてくる。NTTは通信サービス事業者だが、人手でサービスを提供する会社ではない。事業の中核にあるのは技術であり、そしてそこに光シフトという難題がある。

 NTT はこれまでにも何度か、大規模なインターネット接続サービス障害を起こしている。別段、NTTの技術力が落ちたわけでも、手を抜いていたわけでもない。厄介なのは、インターネットがからむ技術は、障害原因をなかなか特定にしにくく、明確な再発防止策をうちにくいということだ。

 NTT幹部は明言していないが、光ファイバーに移行し、インターネットの世界の技術を使って音声通話を行った場合、従来の固定電話の品質を保つことはできない。従来技術と新技術は、もともとの設計思想が異なるからである。従来技術は閉じた技術で高コストであったかもしれないが、全国津々浦々の家庭や事業所を結ぶということを考え抜いてあり、確かにこれまで電話はきちんとつながっていた。

 これに対し、新技術はインターネットというオープンな技術に基づいており、低コストだが、もともと電話のことを考えて作られた技術ではない。乱暴に言えば、時々、つながらなくなっても仕方がない。もちろん新技術を磨いていけば、サービス品質を高めていけるだろうが、おそらく固定電話の水準には到達しないし、仮に到達できた時にはコストの優位性が失われるだろう。こうしたトレードオフをどう判断し、しかもその決定を利用者にどう納得してもらうか、難しい舵取りが求められる。
 

 完成した固定電話サービスを捨て、新技術に基づく光シフトを進めるのは、既存の銅線設備の劣化、コスト削減、新技術を生かした新サービスへの期待、といった理由からである。光ファイバーに切り替えることで、音声通話以外の大容量データ通信が可能になる。いわゆるブロードバンドサービスだが、今のところ「これだ」というビジネスモデルは見いだされていない。

 こう見てくるとNTTの新社長は、技術的な問題に対処し、新ビジネスをつくり、組合対策をしたうえで、経営形態の議論を政府や総務省と戦わせなくてはならない。すべてが分かるスーパーマンが必要ということになり、理系がいいか、文系がいいか、という質問自体が無意味になってしまう。しかし先に見たように、理系と文系を意識した人事をしてきている以上、両方が分かるスーパーマンの候補はなかなか見いだせない。

 月並みな結論になって恐縮だが、トップマネジメントチームで舵取りをするしかないのだろう。実際、6月末の新体制を見ると、三浦氏がCEO(最高経営責任者)になり、3人の新任副社長が支える形になっている。3人の副社長はそれぞれ、CFO(最高財務責任者)、CTO(最高技術責任者)兼CIO (最高情報責任者)、CCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)を名乗る。ここまで並べるなら、顧客のことを考えるCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)も任命してはどうかと思うが、それはさておき、「チーフ」という名称に合ったトップダウン型の舵取りを4人の経営陣には期待したい。

2.日本産業の凋落を招いた世界戦略を描けない日本型リーダー(5.25 nikkeibp.jp)
岩崎 哲夫

日本の企業がグローバルな競争の舞台から次々と姿を消している。
国内ばかりを重視して世界を攻略できない経営トップに原因がある。
国際感覚が豊かなリーダーを育てるトレーナーも仕組みもない中、外国人や海外経験豊富な若手を抜擢しないと、地盤沈下は止まらない。

 多くの産業で日本企業が世界を席巻した「栄光の1980年代」──。その記憶は、日本人のみならず外国人からも急速に薄れている。
 その代わり、IT(情報技術)の著しい発達と経済のグローバル化という新たな潮流に乗り切れず、往時の勢いを失っている日本企業のイメージが定着してきた。

 象徴的なのは、日本経済を牽引した80年代の優等生、電子・電機メーカーの凋落である。80年代後半から90年代初頭にかけて、半導体売上高で上位を独占し、世界の頂点に君臨したが、インテルやテキサス・インスツルメンツ(TI)といった米国勢に逆転を許したばかりか、急速に台頭した韓国サムスン電子にも圧倒的な差をつけられた。

 自動車メーカーや特定の分野で競争優位を維持している産業の例もあるが、その数は決して多くはない。
なぜ、このような状況を招いてしまったのか。どうして日本の多くの産業が競争力を喪失し、いつまでも浮上してこないのか──。

 私は1979年、米半導体製造装置メーカー大手、アプライド・マテリアルズの日本法人の設立に参加。その後、日本法人の社長や会長、米国本社の上席副社長を歴任した。昨年3月まで2期6年にわたってサムスンの社外取締役も務めた。
 これらの体験を踏まえて、日本の電子・電機メーカーを中心に日本の多くの産業が再浮上できない理由について考えてみたい。

改革を妨げる複数の要因

 これまでにお会いした日本の電子・電機メーカーの半導体事業のトップは、いずれも変革の必要性もその道筋もよく理解していたと思う。幹部の人たちも十分な能力や経験を備えた人たちだった。

 だが、半導体事業は会社の中の1事業でしかない。いつも社内の優先順位の最上位にあるとは限らず、半導体事業部門の希望は必ずしもかなえられることはなかった。

 特に雇用やオーバーヘッドコスト(間接経費)の削減、不採算部門の閉鎖など痛みを伴う本当に必要な改革は先送りされた。たとえ実行に移されても、「あまりにも遅く、規模も小さい」ものになった。  どんなに素晴らしい改革であっても、タイミングや規模が合っていなければ、効果は甚だ小さいものになってしまう。一体、何が阻害要因だったのであろうか。

 事業の将来ビジョンや収益水準、企業価値の最大化、金融市場との信頼構築、そして経営者に厳しく物申す「企業統治」の不在も大きく影響したと推測する。

 私もアプライド時代に、自分が立ち上げて1200人もの従業員を抱える事業の解消を取締役会から勧告された経験がある。勧告を受け入れずに何とか事業の解消を免れたが、当時の取締役会が事業の解消を求めた理由は妥当であったと今でも思う。
 

 ほかにも、国内市場の規模が大きいため、世界シェアを落としても売り上げ規模を維持できた。さらに半導体事業を抱えるメーカーはいずれも大企業で、半導体事業の採算割れが会社全体の危機にはつながらなかった。このため、改革の必要性がさほど切迫したものと受け取られなかったことも、改革の実行を阻害したと思われる。

 他方、80年代と90年代の端境期にファブレス(工場を持たない)メーカーとファウンダリー(受託生産会社)による水平分業モデルが台頭。インテルやサムスン、TIなども攻勢に転じた。このような世界で繰り広げられるドラスチックな変化を俯瞰して理解し、戦略を立てて実行する人材が少なかった。この点も、改革がタイムリーに進まなかった要因として挙げられるだろう。

“超日本型リーダー”の登場

 このような環境の下でも、障害を乗り越えて「選択と集中」を文字通り実現した企業が日本に誕生している。半導体のDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)専業メーカー、エルピーダメモリだ。

 同社を上場して成長軌道に乗せた坂本幸雄社長兼CEO(最高経営責任者)は、TIの日本法人で副社長まで上り詰めた。TIは半導体業界で最も国際化が進んだ優良企業として評価が高い。坂本氏は同社で多様な経験を積み、経営者としての素養を身につけたと思われる。

 NECと日立製作所という文化の異なる企業から来た社員をゴールを共有することで1つにまとめ、親会社への依存から脱却。大口ユーザーのインテルや投資ファンドを説得して資金調達し、事業拡大のための設備投資を次々と行い、連結売上高を5年間で5.7倍に増やした。日本での事業拡大を望む周囲の声をよそに、昨年12月には台湾の力晶半導体と合弁で1兆6000億円もの設備投資を行うことを決めた。

 坂本氏のリスクを伴う決断の速さは、エルピーダの社長就任以前の経験が半端なものでなかったことを物語る。「DRAM世界首位奪取」の夢を実現する力を備えたリーダーだと言えよう。

 私見だが、遅々として改革が進まない日本企業も、企業文化や既存の組織、人とのしがらみがないリーダーさえいれば、瞬時に改革が進むエネルギーを内包していると思う。坂本氏は社員に会社の進む方向を明示し、優秀な部下の能力を最大限に引き出して、内包されていたエネルギーを一気に解放したのだろう。

  マルチカルチャー体験を持つ米国人とそうでない日本人の世界観の違いを端的に示す出来事を、私はアプライドで経験した。ある時、日米でトップの大学を優秀な成績で卒業したばかりの逸材2人に、新製品の世界販売戦略を立案させた。すると、3週間も経たないうちに2人の間にリーダーと補佐という上下関係が出来上がっていたのである。

 米国人の新入社員があたかも地球を俯瞰するかのごとく最初から世界規模の販売戦略を着想。その様子を見て、足元の日本市場攻略のアイデアしか思い浮かばなかった日本人の新入社員が気後れしたのだった。

 井戸の底から星空を見上げるような島国生まれの日本人の習性は今後、大きなハンディになる恐れがある。競争がグローバル規模になった今日、足元の国内の情報だけでは競争を勝ち抜けないからだ。

 そうは言っても、最初から世界市場の攻略を考えられるリーダーを育てるのは容易ではない。
 

今の日本企業の中高年層は、世界第2位の巨大な国内市場だけを相手に仕事をしてきた人が大半だ。海外でビジネス経験がある人の多くも、輸出と販売を主とする「プロダクトアウト型ビジネス」や、コストの安い海外での製造を手がけた程度にとどまっている。今日のように競争が地球規模になって産業の境界を超えたビジネスモデルが生まれる時代に、旧来の経験しかない人にトレーナーが務まるはずがない。

 実は、海外経験を積んだ社員を巧みにリーダーに育てる企業が隣国にある。私が社外取締役を務めていたサムスンだ。同社は1990年から「地域専門家」という社員教育制度を実施している。中堅社員から希望者を選抜して海外へ派遣する制度だ。

 通常の海外派遣と違うのは、派遣先で仕事を全くしない点。1年の派遣期間のうち、最初の3カ月は現地の言葉の学習を義務づけられるが、残りの9カ月は何をしても構わない。ただし、サムスンの本社や現地法人の支援は一切なし。住む所や語学学校の手配から人脈作りまで、独力でこなすことが求められる。現地の人と同様に生活して、習慣や文化を体得するのが目的だからだ。

 この制度を終えて帰国した社員の多くは、今度は派遣先の現地法人に配属され、派遣中に培った経験や知識、人脈を仕事に生かす。こうしてビジネスだけでは得られない国際感覚を身につけた社員の中から、サムスンの次代のリーダーが育つ。

 サムスンの試みはこれだけではない。2000人にも及ぶ外国人研究者の採用や、午後4時終業による自己学習の推奨など、将来に備えて次々と布石を打ち、成長余力を蓄えている。社内の事業部間での異動も困難な日本企業には、真似のできないダイナミックな人材育成だ。

 このほかにもサムスンに学ぶべき点は多い。例えば、昇進の厳しさだ。30代後半までに役員以上に昇進できるか否かを決めてしまう。日本企業もこれくらいの厳しさで幹部社員を選抜すべきだと思う。
世界とつながることが急務

 先頃、トヨタ自動車に外国人の取締役が誕生したことが話題になった。歓迎すべき変化だが、これがニュースになること自体、いかに日本の企業が独特であるかを示している。どこの国の人であれ、能力のある人は登用すればいい。広い世界には魅力に富んだ優秀な人がたくさんいる。それにもかかわらず、日本の上場企業の外国人執行役員の比率は極めて低い。市場が世界に広がり、外国人の従業員や株主の比率が高い企業であってもだ。

 私が外国人ならば、日本人以外は幹部に登用しない日本の会社などに魅力は感じない。「外資だ。外圧だ。外人だ」と騒ぐ背景には、日本らしさの喪失を懸念する向きもあるようだが、この時代に幹部の「鎖国」を続けられるわけがないし、日本はその程度で日本らしさやアイデンティティーを失うような柔な国ではないと信じたい。

 日本や日本企業が世界の舞台で再浮上するためには、「知」の総和を高める必要がある。それには、世界ともっとつながることが急務だ。

 その点で圧倒的な優位にある米国は、移民国家としての国の成り立ちから世界と幅広くつながり、今も海外から頭脳が次々と流入してくる。将来の巨人、中国もこの点では同様だ。世界に散らばる華僑の人数は日本の人口の約半分に当たる6000万人。海外育ちのしたたかなエリートを通じて膨大な「知」や資金が中国に流れ込む。海外在住のインド人も3000万人おり、日本人の海外人口250万人とは圧倒的な差がある。

 十分な「知」をベースに構想して戦略を立て、資源を世界から調達して行動することが日本の、そして日本企業の再浮上の道であろう。江戸時代に鎖国をしていた日本は約150年前、黒船の来航を契機に開国した。日本が再び世界のリーダーの仲間入りを果たすためには新たな開国が必要である。

リーダーの不在を招いた日本企業の欠陥

1 国内市場を重視するあまり、海外に目が向かない
    国内の市場が大きいので、国内シェアの向上が最優先の課題となる。
    そのために海外市場の攻略が後回しになりがち
2 リーダーを育てるトレーナーがいない
    日本企業の中高年層はモノを作れば勝手に売れる時代を過ごした。
    海外市場を攻略する戦略を練る必要がなかったので、戦略を練るリーダーを育てるトレーナーが務まる人がいない
3 リーダーを育てる仕組みがない
    トレーナーがいないだけでなく、海外市場を意識した戦略を立てられる人を育てるシステムも存在しない
4 外国人を登用しない
    他国の出身者でも実績を上げれば登用する欧米企業とは異なり、外国人を抜擢することに抵抗感がある
5 海外経験が豊富な若手を抜擢しない
    海外でMBA(経営学修士)を取得した人など海外経験の豊富な社員を積極的に活用していない

3.IP電話の大規模障害を食い止めよ(1)(5.23 nikkeibp.jp)
 「ひかり電話がつながりにくくなり,大変ご迷惑をおかけした。改めてお詫びしたい」。NTTが2006年11月に開いた中間決算発表会は,持ち株会社,NTT東日本,NTT西日本の各社首脳が冒頭で陳謝する異例の会見となった。

 それも無理ない。9月にNTT東日本,10月にNTT西日本と立て続けに障害を起こした。全面的な不通こそ免れたものの,東西NTTともにひかり電話がつながりにくい状態が3日間続き,合計で約164万人のユーザーに影響を及ぼした。固定電話では考えられない大障害である。

 NTT西日本にいたっては,2006年の3月と4月にも障害を起こしたばかり。10月23−25日の障害が続いている間は約15万件の苦情や問い合わせが殺到した。度重なる障害に耐え切れなくなったユーザーからは「固定電話に戻してほしい」とする要望が相次いだ。約5000件の要望のうち, 3000件は障害中にNTT西日本の負担で固定電話に一時的に切り替えた。
揺らぐIP電話の信頼性

 東西NTTによるひかり電話の相次ぐ障害は,IP電話自体の信頼性に波紋を投げかける結果となった。東西NTTは「顧客にきちんと説明しており,障害による販売の落ち込みはない」と強気な姿勢を見せるが,他の事業者からは「ひかり電話の障害以降,IP電話の信頼性を心配するユーザーが多くなった」という声も聞こえる。

 ここ1年を振り返ってみると,IP電話の障害は東西NTTに限ったものではない。両社だけでなく,九州通信ネットワークやケイ・オプティコムでも障害が起こっている。東西NTTとケイ・オプティコムは障害を繰り返したこともあり,「IP電話を使っても本当に大丈夫なのか」と疑念を抱くユーザーが出てきても仕方ないような状況だ。

 IP電話をやめ,固定電話に戻すユーザーも登場した。NTT東日本のひかり電話を利用していた板橋区役所は障害直後の9月23日,本庁の約200 回線を固定電話に切り替えた。「電話は通じるのが当たり前。緊急のときに連絡できないのは困る。区民の方にご迷惑をおかけするわけにはいかない」(総務部契約管財課)というのがその理由だ。

 IP電話に対しては「今後100%問題ないというのであれば再度切り替えることも検討するが,今はそういう状況ではない。NTT東日本にはできるだけ早期の信頼性回復に努めていただきたい」とする。

「0AB−J」IP電話の功罪

 もっともIP電話の障害は今に始まったことではない。過去にもソフトバンクBBのIP電話「BBフォン」などで障害はあったが,ここまで大きな問題にはならなかった。なぜなら,これまでは050番号のIP電話が主流だったから。050番号のIP電話の場合,固定電話との併用が基本である。障害が発生しても固定電話を使えるため,ユーザーにとって大きな問題にならない。「安いのだからある程度の不便もやむを得ない」という意識がある。

 これに対してひかり電話を代表とする0AB−J番号のIP電話は,既存の電話番号をそのまま使え,緊急通報もかけられる。そのため固定電話の置き換え用途で利用されている。実際,東西NTTの光ファイバ・サービスは「ひかり電話を契約すると電話の基本料や通話料が大幅に安くなる」ことを前面に打ち出してユーザーを勧誘している。ひかり電話を契約することと固定電話の解約はセットで考えられているのである。当然,ユーザーは固定電話と同じ品質や信頼性を求める。いわゆる“ライフライン”という認識である。

 事業者にとっても0AB−JのIP電話は電話交換機を置き換えていくためのサービス。今後,各事業者は次世代ネットワーク(NGN)の構築などで電話網のIP化を進めていく。既にKDDIは2008年3月までに固定電話をIP網に置き換え,その後,携帯電話も融合していくプランを明らかにしている。NTTが掲げる「2010年度までに光3000万加入」も,固定電話のユーザーの半分をIP電話に移行させようというもの。両社にとって IP電話の信頼性向上は焦眉(しょうび)の急である。固定電話の交換機は既に新規開発をストップしており,寿命が尽きるのを待つばかり。どの通信事業者にとってもIP電話への移行は必須である。

 しかし,固定電話とIP電話ではネットワークの構成から利用する機器まで根本的に異なる。「固定電話は100年以上の歴史があり相当ノウハウを蓄積してきたが,IP電話はまだ数年。技術開発や運用の面で至らない部分がある」(NTT東日本の高部豊彦社長),「今回の障害は人知を越える範囲」(NTT西日本の森下俊三社長),「大量の音声トラフィックを従来の電話網と同等のレベルで制御できる完全な装置がまだ世の中に存在していない。その面で不安はあるが,現存する技術を最大限に活用して最善を尽くしている」(NTT持ち株会社の和田紀夫社長)と,各社首脳もIP電話が固定電話の信頼性に達していないことを認める。
固定電話置き換えへの険しい道のり

 では,どのような課題が残っているのか。最近のIP電話の障害を見ていると,二つの傾向が浮かび上がる。一つは復旧までの時間が長引くケースが多いこと。短い場合は数時間だが,長い場合はひかり電話のように数日間にわたる。もう一つの傾向は,障害の影響範囲が広いことだ。事業者の営業エリア全域にわたって影響が出ることが多く,ユーザー数も多い。
これまでの障害事例を見ると,(1)復旧までの時間が長く,(2)影響範囲が広い傾向にある。多くのユーザーに長時間にわたって迷惑をかけていることを意味し,障害としては最悪のパターンである。

 どちらも対策がうまく働いていないことを示している。交換機でもハードウエア故障など小さな障害は珍しくないが,地域も時間も限定されるのが普通だ。だから大きな問題にならない。IP電話にとって重要なのは,障害を全く起こさないことではなく,障害が起こっても,短時間,少数ユーザーへの影響にとどめることだ。
 

4.MicrosoftとLinux陣営の“口げんか”が過熱(5.25 nikkeibp.jp)
米MicrosoftとLinux/オープンソース陣営の争いが、明らかに過熱している。最も新しい戦いは、米「Fortune」誌に掲載された、 Microsoft幹部の「Linuxとその他オープンソース企業は、当社の特許を数多く侵害しているので対価を支払うべき」という内容の発言だ。この発言は、「Microsoftが間もなくオープンソース・ソフトウエアの開発/利用企業を訴え始める」と誤報され、広まってしまった。

この件について、Microsoftは「注目を集めるためにFortune誌からインタビューを受けたのではなく、当社の長期的政策を説明することが目的だった」としている。Microsoftは、米Novellと同様の特許クロスライセンス契約に応じるオープンソース企業を増やしたかったのだ。

問題は、Microsoftが特許侵害と主張する事例について、内容を公表せず、前触れもなく具体的に示し始めたことにある。Fortune誌の記事によると、そのMicrosoft幹部は「当社の特許に対する侵害件数は、Linuxカーネルが42件、Linuxユーザー・インタフェースが65件、オープンソースのオフィス・プロダクティビティ・スイートOpenOffice.orgが45件、その他オープンソース・アプリケーションが83件ある」と述べたという。合計すると、特許侵害は235件にのぼる。

5.ひかり電話が明らかにしたIP電話運用の危うさ(5.24 nikkeibp.jp)
2006年9月,3日間にわたってつながりにくくなったNTT東日本の「ひかり電話」。加入電話と同じ対策が裏目に出て障害が長期化した。原因の特定作業も,障害の連続発生で大幅に遅れた。加入電話並みの品質をうたうひかり電話だが,運用レベルには課題が山積みなことが明らかになった。

「着信規制を設定したサーバーにもふくそうが発生しました」。

2006年9月19日の午前10時17分。ひかり電話のネットワークの運用担当者たちは大混乱に陥った。1時間ほど前に一部のサーバーで障害が発生。その障害の影響を限定する目的でほんの6分前に実施した着信規制が“あだ”となり,かえって被害を広げてしまったのだ。

着信規制は,加入電話のふくそう対策としては常識的な措置。だが,今回のひかり電話では裏目に出た。不測の事態に混乱したNTT東日本は,その後の対応がすべて後手に回る。結果,発着信の規制が3日間も続く事態となった。
電話の“常識”が思わぬ副作用をもたらした

2006年9月の障害の経緯を順に追うと,IP電話のトラブルにいかに対処すべきかというノウハウが,NTT東日本に不足していたことが分かる。

最初の障害は,「ひかり電話ビジネスタイプ」向けの呼制御サーバーの1台で発生した。大口で回線を利用する企業が新たに契約し,9月19日に利用を開始。この企業あてに午前9時早々から通話が集中すると,呼制御サーバーがふくそうした。原因は一部のソフトウエアの不具合だった。
 
 
 

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