週間情報通信ニュースインデックスno.605 2007/05/12

1.大前研一:日本の生産性を見直せ 1 − 労働生産性は米国の7割(5.9 nikkeibp.jp)
労働力を表す指標に「労働生産性」というものがある。これは一定時間内に一人の労働者がどれくらいのGDPを生み出すかを示すものだ。先日内閣府から2005年度の分析結果が公表されたのだが、それによるとなんと日本は米国の71%にとどまるのだという。ちなみに、ユーロ圏は87%、英国は83%、 OECD加盟国の平均ですら75%である。日本はそれらの国よりも労働生産性が低いということだ。

この分析結果を聞いて意外と感じた人は多いのではないだろうか。何しろ日本人は働き者というイメージがある。ところがその実態は、米国の7割程度しか労働生産性がなかったということなのだから。

ただし、労働生産性を業種別に把握しようとすると違う一面が見えてくる。例えば製造業なら既に米国を超えているのだ。逆に低迷しているのは、卸・小売業、運輸などのサービス業などである。就業人口の65%を占めるサービス業の低い生産性が日本の国際競争力を弱めているといえる。この分野では2000 年以降、米国との差が拡大傾向にある。

なぜサービス業では労働生産性が低いままなのか。米国に追いついた製造業とはどこが違うのだろうか。

 製造業の現場では、人間がロボットに置き換わってきている。機械がほとんどの製造現場で活躍し、人間の作業割合が減ってきているのだ。結果的に、人間一人当たりのGDPは向上する。サービス業でロボットにあたるのはコンピューターである。人間がコンピューターに置き換わってきている。ところが、コンピューターの使い方が遅れているために、うまく活用できていないのである。コンピューターに任せたほうがいい仕事を人間がやろうとしていたり、あるいは業務の標準化ができていないためにコンピューターで処理できなかったりしているのだ。

 さらには、せっかくコンピューターで仕事ができるようになっていながら、実際には会議を開いたり、電話をかけたり、「念のために」確認作業をしたり、とその原因はいずれも“コンピューターへの権限委譲”が進んでないことに帰着する。ERPパッケージ(統合業務パッケージ)などの導入に手こずっている会社は多いし、せっかく導入しても人員削減にはつなげていなかったり、バックルームの人を営業やサービスというフロントラインへ出すには至っていない企業が多い。

 もちろん米国にもそういう問題を抱えていた時代もあった。しかし、今はその問題を乗り越えている。そして、どうしても人が多く必要とされる業務については、インドやフィリピンなど人件費の安い海外に委託している。ビジネスプロセスアウトソーシングがクロスボーダーになってきているのである(拙著「新・経済原論(東洋経済新報社)」の中で、わたしはこれをX-BPOと呼んでいる)。ところが我が日本ではなかなかそうはいかない。今後、労働生産性を高めるには、人間に依存しすぎている業務をもっと多く海外人材やコンピューターに任せなくてはならないのだ。

 そのために必要になるのは何か。業務の分析だ。まずは業務をしっかり分析して、人に任せるべきものと、コンピューターに任せるべきものを分ける。定型業務と、一部の非定型業務をできるだけコンピューターに任せるようにするのだ。この作業がちゃんとできていないから、ここ20年くらいの間にOECDの中で最も遅れてしまっているのである。

2.時代に逆行する「チープ革命」もある(4.25 nikkeibp.jp)
 「チープ革命」というのは、いいものである。だが、「なぜ安いのか?」は理解しておいた方がいい。
 疑い深いといわれるかもしれないが、僕のような昭和育ちの世代は、よく安売り店にだまされたものである。

 そんな原体験のせいか、「安売り」というものは一時的な客寄せの手段ではないかと勘ぐってしまうのだ。
 だが、グーグルの起こした「チープ革命」は、そのような「安売り」とは本質が異なる。

 「グーグル」というのは、年間1000億円規模の投資をして作られる巨大な情報システムだ。米国シリコンバレーのパロアルトにある本社には、ベル研究所級の“超”エンジニアたちが集結し、日夜、世界最先端の情報システムを構築し続けている。 この世界最先端の情報システムは、何人のユーザーが利用するかで、その“チープさ”が変わってくる。

 例えば、同じくらい(もしくは、やや少ないぐらい)の投資が発生する新車開発と比べてみよう。新車といってもフラッグシップモデルのフルモデルチェンジと、兄弟車種のモデルチェンジでは投資規模の桁が異なるが、前者の場合であれば、400−500億円ぐらいになるだろう。

 フラグシップモデルの販売台数を仮に累計20万台、開発投資を400億円として単純計算すると、1台あたりの研究開発費は20万円ということになる。研究開発費だけで20万円かかってしまえば、最終製品の価格が200万円を超えるのも仕方ない。

 一方で、グーグルの年間利用者数を、全世界のインターネットユーザーとほぼ同じ10億人と仮定しよう(あくまでも仮定の話である)。年間1000億円の開発投資も、10億人で割れば1人あたりは「たったの100円」ということになる。しかもソフトウエアの場合、製造原価はクルマと比べればタダのようなものだ。だからユーザー1人あたりの利用料はとても低く抑えられる。

 ITの世界における「チープ革命」とは、このように「圧倒的なユーザー数で頭割りされる」というメカニズムによって引き起こされているのである。

 もう一つ、誰でも分かる例を取り上げよう。世界最大のユーザー数を誇るソフトウエアはマイクロソフト社のPC 用OSである「Windows」シリーズだ。そのユーザー数はパソコンユーザー数にほぼ匹敵する。シリーズ最新OSである「Windows Vista」の場合、開発投資額は2兆円という空前の数字に上るのだが、これもグーグルと同じ10億人というユーザー数で一人あたりに割り戻せば2000 円ほどになってしまう――。

 こうしたメカニズムからあぶり出される「チープ革命」のもう1つの側面は、投資規模による競争障壁の存在である。
 Windows Vistaにかけられた2兆円という投資は、アポロ計画やスペースシャトル開発などの公的投資を除けば、有史以来登場したどのような民間企業の商品も、単一では超えることのできない数字だろう。

 日本企業では、研究開発費1位のトヨタ自動車が今年、グループ企業全体で初めて1兆円を超えるのだが、これも多数ある商品ラインナップの開発費をすべて足し上げての1兆円だ。ほぼ単一商品に収束されるものとしては、ボーイング社が、その開発に年間3000億円を振り向けている「ボーイング787」があるが、2兆円というWindows Vistaの数字は、累計総額とはいえ、それらに比しても絶大な数字であることが分かる。

 こうして、いったん2兆円を投資する企業が登場してしまうと、それに対抗するのは私企業ではほぼ不可能になる。

 実際、Windowsに競合しようと企てるものは、中国政府のような国策的な存在か、ないしはLinuxのような無償エンジニアのオープンソース・コミュニティ以外には成立し得ない状況だ。
 グーグルも、早晩そのようなポジションに到達すると考えられる。年間投資がまだ1000億円のうちは、ほかの私企業でも対抗は可能かもしれない。だが、年間1兆円の桁に及んでくると、対抗できる企業の数は限られてくる。しかも、YouTubeやダブルクリックのように、周辺企業はどんどんM&Aで取り込まれていくから、その意味でも対抗企業はごく一部の企業に絞られてくるはずだ。

 
3.こんなに違う世界の携帯電話市場(5.9 nikkeibp.jp)
 現在、世界の携帯電話利用者数は24億人を超えている。国別に見た場合、利用者数上位の顔ぶれは次の通りである。1位/中国(約4億6000万人)、2 位/米国(約2億3000万人)、3位/ロシア(約1億5000万人)、4位/インド(約1億4000万人)、5位/ブラジル(約1億人)、6位/日本(約9600万人)。以上のようにBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)と米国、日本が上位を占める構図となっている。この6カ国だけで約12億人の携帯電話利用者がおり、世界の全利用者の半数を占めることとなる。

 日本は、世界で初めて「写メール」サービスを開始、世界で初めて第3世代携帯電話サービスを開始、世界で初めて「おサイフケータイ(非接触IC搭載端末)」を開始するなど“世界初”を立て続けに送り出してきた先進市場である。数年前までは、日本市場はサービス面でも、端末機能面でも世界で独走状態が続いていた。

 だが事業者の視点で見た場合、日本は惨敗である。通信事業者のNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル3社は日本市場に展開するにとどまり、世界に覇を唱える英ボーダフォンやシンガポール・テレコム(シングテル)には遠く及ばない状態が続いている。この状況は端末メーカーの状況を見ても同じことが言える。携帯電話端末ではフィンランドのノキア(35.5%)、米モトローラ(17.7%)、韓国サムスン電子(13.6%)が不動の3社として世界市場を席巻している(数字は市場シェアを示す。米IDC調べ)。この3社で世界市場の7割近くを占有している状態である。

 日系企業としては、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズのみが8.5%のシェアを確保しており、唯一世界市場で存在感を見せている。その他のパナソニックモバイルコミュニケーションズ、NEC、シャープなどの日系企業は、全社を足しても世界市場におけるシェアは数%にとどまる。

 世界の携帯電話端末需要台数は、2006年度は9億5500万台で、今後も堅調に拡大を続け、2010年には12億台を超えると野村総合研究所では予測している。セット製品として年間の需要台数が10億台を超えるものは携帯電話端末以外にない。テレビの1億台、自動車の6000万台と比べると、その圧倒的な数量が分かることと思う。

 テレビではソニー、液晶ではシャープ、プラズマでは松下電器産業、自動車ではトヨタ自動車と、日本には世界トップをひた走っているメーカーが数多くある。その一方で、エレクトロニクス製品でこれほど日本企業が苦戦している市場は珍しい。

 日本企業が世界の携帯電話端末市場で伸び悩んでいるのは、様々な要因が合わさった結果だと思われる。いくつかの要因を挙げると、第1に、1億人の市場である日本(現在でも利用者数は第6位)に傾注しすぎた点。第2に、海外との通信方式が異なったがゆえに、海外への展開が出遅れた点。第3に、世界での第3世代携帯電話サービスの普及が予想を超えて遅すぎた点。第4に、日本企業が開発する端末が高性能・多機能すぎて、海外市場に出荷するには時期尚早だった点などである。

 携帯電話市場で日本企業が苦戦している惨状に関しては、各種リポートやアナリストらが議論を尽くしているので、これ以上の詳細な分析は避けたい。ここでは、今、各国の市場がどのような状況にあり、日本とどれほど違うのかをいくつかのデータ分析によって示し、今後の携帯電話市場を占ってみたいと思う。

 日本の携帯電話市場の特殊性とは

 各国の市場状況を分析する手段として、「MOU(月々の携帯電話通話時間)」と「ARPU(1カ月当たりの携帯電話利用料)」を活用したい。ARPUには、音声による利用料と、メールやモバイルインターネット(iモードやEzwebなど)の利用料(データARPU)の2種類がある。「携帯電話を利用してインターネットを見るのは日本人だけだ」という指摘をよく耳にする。それが事実かどうか、定量的に分析してみよう。

 世界の主要60カ国程度をマッピングしたもので、これだけでも日本市場が異質なことが見て取れる。確かに日本市場はデータARPUの割合が3割と非常に高くなっている。しかし、意外なことにMOUはそれほど多くなく、1カ月当たり150分程度の通話時間しかない。世界各国と比べた場合、日本は通話量は少なく、データ利用が多い市場と言える。

 一方、米国は極めて通話量が多い国だということが分かる。MOUが800分を超え、突出している。中国、韓国はデータ利用料、通話料ともに比較的多い。ロシアやブラジルは通話、データともに利用量が少ない。この2つの指標を見るだけでも各国の特徴が分かる。

 データARPUについて、さらに詳細に見てみよう。携帯電話のメール文化は、日本に限らず世界各国で広まっている。中国では年間3000億通を超えるメールが飛び交っている。データARPUからメールの利用料金を取り除くと、各国のどんな違いが浮かび上がるだろうか。 データARPUからメールの利用料金を取り除き、分析した。

 すると日本市場の特殊性がさらに際立つ。日本市場は、メールの利用料金を差し引いても、データARPUの割合が他国よりも圧倒的に多い。つまり、モバイルインターネットの利用が非常に多いということだ。第3世代普及率が日本を凌ぐ韓国でさえ、モバイルインターネット利用によるデータARPUの割合は10%程度と、日本の半分以下にとどまっている。

未開市場が広がる中国、プリペイドが普及したロシア

 続いて中国、ロシア、インド市場の特殊性をデータから導き出してみよう。

 前述したように、中国の携帯電話利用者数は約4億6000万人を誇り、その利用者数は世界一である。中国が世界一に躍り出たのは2002年であり、もう5年も前のことだ。にもかかわらず、中国市場には、まだまだ携帯電話未開の地が存在する。

 中国の場合、北京や上海では日本並みの普及率だが、10位の江蘇省では約3割にとどまり、携帯電話後進国並みの普及率となる。地域別の収入格差が如実に表れた結果とはいえ、1つのマーケットとして捉えるにはあまりに格差が大きい。

 続いてロシアを見てみよう。ロシアの携帯電話市場は2004年から急激に拡大した。その拡大スピードは、日本のそれをはるかに凌駕したものであった。筆者は長年日本の携帯電話市場を見てきて、日本以上に市場の拡大速度が速い国はないと認識していた。しかし、それを改めなければならない。ロシアでは2003年時点で携帯電話の普及率が20%を超えたところだったが、2006年には100%を超えるまでに急拡大したのである。
 

 この急拡大には理由がある。ロシアでは携帯電話利用者の実に96%がプリペイド利用なのである。日本ではプリペイド利用はわずか3%だ。プリペイド利用ならば、携帯電話を利用しなければ月々の利用料が無料となるので、気軽に持つことができる。携帯電話事業者が携帯電話機を大量に配布した結果と言える。

 ロシア市場のMOUは88分、ARPUは7.5ドルといずれも低い。普及率では世界で最も成熟した市場の1つであるにもかかわらず、世界で最もライトユーザーな国と言える。普及率が100%の未熟な市場ロシア、なんとも奇妙な国である。

インド人は生活を切り詰めてでも携帯を使う?

図6 世界主要60カ国における1人あたりGDPとMOUの関係

 人口は中国に次いで第2位、携帯電話利用者はロシアに次いで第4位のインド市場にも、極めて特徴的な点がある。インド人は生活費を抑えてでも、携帯電話でよく通話するのである。図6は各国のMOUと1人当たりGDP(国内総生産)をまとめたものだ。インドは米国に次いで携帯電話を利用して通話をする国である。1カ月当たりの通話時間は450分程度にまで上る。

 一方で、インドの1人当たりGDPは極めて低い。1人当たりGDPに占める携帯電話利用料は、約16%に上る。これは日本の約10倍である。端的に表現するならば、インドでは、家計に対して日本の10倍の携帯電話料金を負担している計算となる。インドは収入格差の多い国なので「10倍」という違いは正確な比較値ではない。しかし格差を考慮したとしても、インド人は生活費を削ってでも携帯電話を利用する国民性があるようだ。

 今回は様々な角度から各国の携帯電話利用状況を明らかにしてみた。携帯電話は、世界で最も個人単位で普及した機器であり、サービスである。言うまでもなく利用状況は一人ひとりの個人に依存したものとなる。通常の製品の場合、メーカーや事業者は国単位でマーケットの魅力を判断し、参入の是非を問うわけだが、携帯電話市場に限るとその見方は適切ではない。MOUが突出している米国やインドにも、日本人と同様にモバイルインターネットを活用する人もいれば、日本にも米国人並みに通話時間が多いユーザーは多数存在する。

 携帯電話の事業者は、こうしたユーザー間の「格差」を決して無視できない。この格差はさらに拡大していく見込みである。携帯電話ほど、利用格差が激しいものはない。事業者は、それに対応する端末、サービスの幅広い展開を、地球規模で迫られることとなるだろう。
 

4.「Windows Vista」は発売から100日でどの程度成功したのか(5.11 nikkeibp.jp)
「Windows Vista」が,1月29日の一般消費者向け販売開始から100日という最初の節目を迎える。そこで,成功した製品かどうかの分析を始めてみよう。米 Microsoftは3月,「Windows Vistaは発売後30日間にライセンス2000万本以上を販売し,『Windows XP』の2倍のペースで売れた」と発表した。4月には,「Windows Vistaの販売は予想を上回る状況となり,四半期の売上高で144億ドルという新記録を達成した」としている。

その一方で,いまだにWindows Vistaは,物議をかもしているようだ。技術面で知名度の高いブロガーのなかには,Windows Vistaの問題を指摘したうえで「Windows XPに戻す」と書く人や,「Macintoshにスイッチする」と書く人までいる。インターネットは,Windows Vistaのハードウエア/ソフトウエア非互換に関する恐ろしい話があふれ,「Windows 2000」以後の失敗リリースとなった「Windows Me」にちなんで「Windows Vistaを『Windows Me 2』という名前に変えたらどうだ」という意見もある。何人かのブロガーは,「Microsoftが主張するほどWindows Vistaは売れていない」という疑いを実証する目的で,Microsoftの売り上げの分析を試みた。

5.「統合メッセージング」から「統合コミュニケーション」へ(5.10 nikkeibp.jp)
 米MicrosoftのZig Sarafin氏(リアルタイム・コラボレーション担当ゼネラル・マネージャー)によると,「昨年Microsoftは,『Live Meeting』を使ってウェブ会議を多く行ったので,約7000万ドルの出張費を節約できた」そうである。何百万ドルもの出張費を節約できるのなら, IT担当者は「統合コミュニケーション(Unified Communication,UC)」への投資を正当化できるかもしれない。

 まだ「統合コミュニケーション(UC)」のことをよく知らない読者も多いだろう。米国「Windows IT Pro Magazine」誌が読者300人を対象に行った調査では,多くの回答者が,UCの実装を検討する前に,そのコンセプトやテクノロジ,利点についてもっと深く理解する必要があると述べている。

 回答者の57%は,統合コミュニケーションのコンセプトと利点を理解していると答えた。29%はUCについて耳にしたことはあるが,あまりよく知らないと答え,13.7%はUCについて全く知らなかった。UCのことを理解していると答えた多くの読者も,「統合メッセージング(UM)」とどこが違うのか,UCソリューションにおいて「Exchange Server 2007」は何らかの役割を果たすのか,そして役割を果たす場合,それはどんな役割なのか??,といったことに関しては,完全には理解していなかった。調査回答者の多くは,次のような質問をした。「UCとは,具体的にどのようなものなのか,そしてUCを使えば,時間とお金を節約できるのか?」

 Sarafin氏は「UCとUMは同じものだと考えている人が多い」と述べる。実際にこの調査でも,回答者の多くは「UCとは電子メールとボイス・メールを統合したもの」と答えていた。だが,「電子メールとボイス・メールの統合」はUMのことである。「Exchange 2007 Enterprise Edition」と「Outlook 2007」を使うと,ユーザーはExchange Serverの受信トレイから,自分あてのボイス・メールや電子メールにアクセスできる。Sarafin氏は,「Exchange 2007のUM機能を使うことで,音声認識技術によってカレンダ機能や社内ディレクトリへアクセスできるようになる。例えば,Microsoftの代表番号に電話をかけて話したい相手の名前を言うと,音声認識システムが電話の取り次ぎをしてくれるのだ」と説明する。

 Exchangeベースの非リアルタイムUMプラットフォームを補完するのが,UCの基盤である「Live Communications Server(LCS)」だ。Sarafin氏はUCをこう説明する。「UCを定義するとき,私たちは現在ビジネスの世界で使われている個別のコミュニケーション技術を考察することから始める。音声会議やPBX,インスタント・メッセージング,電子メール,ボイス・メール,ビデオ,携帯電話などだ。UC とは,これら別個の技術の間にある垣根を取り払って,PCや携帯用デバイス,オフィス内の電話などで機能する単一のソフトウエア体験を実現することを言うのだ。UCを利用すると,相手を捕まえるのに4?5個のアプリケーションを経由する必要はなく,1つのコミュニケーション技術を利用するだけで済むようになる。捕まえたい相手の電話番号を探す必要はなく,その人物の名前を入力したり,友人リストを見て,その人物が通信可能な状態かどうかを確認したりするだけでいいのだ。これが,UCの基本的な考えだ」

 「ExchangeがOutlookと連携するように,Live Communications ServerはUCクライアントの『Office Communicator』と連携する。CommunicatorはIMクライアントのように見えるが,このクライアントから電話をかけることもできる。つまり,ソフトフォンとして機能するのだ。Communicatorは,ウェブ,ビデオ・音声会議,電話の発信,インスタント・メッセージング,他ユーザーの通信可能状況の確認などのユーザー・エクスペリエンスを,PC上で提供する」(Sarafin氏)

 通信可能状況,または「プレゼンス(在席情報)」の概念は,UCを理解する上で重要である。プレゼンス機能が使われている典型的なものにインスタント・メッセージング(IM)がある。IMアプリケーションでは,通信したい相手がオンラインにいるのか,取り込み中なのか,あるいは携帯用デバイスで連絡可能なのか,ということを確認できる。MicrosoftのUCでは,Active Directoryを利用して組織内の全メンバーのプレゼンス・データを提供できるようにすることで,プレゼンス機能を拡張している。

 Windows IT Pro Magazineの読者調査に関して,Sarafin氏はこうも述べている「調査回答者は人々と連絡を取ることに問題を抱えており,相手の通信可能状況やプレゼンスを知りたい,と思っている。その一方で,回答者が所属する会社の65%は,職員によるIM使用を認めていない。これは皮肉的ですらある」

 その上でSarafin氏は次のように指摘した。「IMのプレゼンス機能には,まだ利用されていないものがたくさんある。消費者向けのIMであれば,私は手動で『取り込み中』あるいは『昼食中』をクリックできる。だがこれは,IMのプレゼンス機能のほんの一部分でしかない。面白くなるのは,Active Directoryと統合されたセキュアなIMを,Live Communications Server経由で展開してからだ。プレゼンスは,企業のActive Directoryインフラストラクチャにおいてユーザー・アイデンティティーに『光を照らす』ものと考えることができる。従って,Active Directoryと統合されたすべてのアプリケーションは,それぞれのアプリケーションに関連するユーザーの通信可能状況やプレゼンスを表示できるようになるのだ」
 
 

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