週間情報通信ニュースインデックスno.98 2007/03/24
 

1.「社長のジョーク」で知る会社の危険度(3.23 nikkeibp.jp)
 「ただ今ご紹介いただきました、ジャーナリストのルーシーでございます」というのが日本でスピーチを始める際の決まり文句ですが、ユーモアを日常生活にちりばめるアメリカでは、いきなりジョークを「かまして」からスピーチを始めることが決して珍しくありません。聞く方の心を和ませる、張り詰めた空気を変えるといった効果を狙うわけです。関心が薄そうな視聴者がいたら、まずはアピールすること。それが、講演する人にとって最初の挑戦でもあり、責務でもあるとアメリカ人は考えるのです。

 日米文化論はさておき、私もアメリカで生まれ育った人間ですから、その流儀にのっとって、いきなりジョークで始めさせていただきたいと思います。覚悟してくださいね。
 2個のマフインが、オーブンの中で焼かれていました。そのうちの一つが言ったのです。「わあ、ここはすごく暑いな」。それを聞いた、もう1個のマフインが叫びます。「信じられない!マフインが喋っている!」

 ・・・・・・笑いがないですねえ。何?いくら何でも寒すぎる? ま、そうかもしれません。でも、このくだらない冗談って、とても役に立つのです。何しろ、これ一つで人間の心理が見事に解明できてしまうのですから。

 私たち人間は、生まれて4カ月もすれば、もう笑うことを身に付けます。そしてそれを、あるときは素直な喜びの表現として、あるときは人間関係の潤滑剤や仲間づくりのツールとして、一生使い続けるのです。

 もう一つ、あまり知られていない「笑い」の利用法を見つけました。これを上下関係の有無を調べる「リトマス試験紙」として使うのです。説明しましょう。さきほど披露したつまらないジョークは、実はこの研究で使われたものだったのです。

 ある研究調査のため、架空の「大学での勉強の仕方調査」を名目に、学生が募集されました。参加者はいくつかのグループに分けられるのですが、第1グループには、そのうちの何人かに賞金が送られることが告げられます。そうすることで、主催者側と参加者(被験者)側に上下関係ができるわけです。ちょうど、給料を決める経営者と部下のような。

 次に、主催者側による面談です。この場で、例のマフインのジョークが使われました。「気に入られたら賞金がもらえるかも」と思った第1グループの学生は、期待通りほとんどがこのつまらないジョークで笑ったのです。対照的に、賞金がもらえるとは思っていない第2グループの学生は、ほとんど笑いませんでした。

 当たり前といえば当たり前の結果でしょう。普通の人間なら、自分より上位にいる人間が目の前にいれば、これくらいの「ゴマすり」はするものですよね。人気映画『釣りバカ日誌』のシーンを思い出してみれば、よく分かります。けれど、実態はそれほど単純なものではないようです。

 実は、もう一つの学生グループがあったのです。この第3グループの学生も第1グループの学生と同じように、選ばれた人には賞金が出ることが知らされています。ただちがうのは、マフインの話を直接「仮のボス」である主催者からではなく、個室で録音されたビデオで聞かされるのです。それでも、「仮の部下」である学生たちは、このジョークで笑ってしまったというのです。いったい、どうしてなのでしょう。肝心の「ゴマをする」相手がいないのに、こんなに面白くないジョークで笑ってしまうなんて・・・。

 研究グループは、こう結論しています。自分の地位は低いと感じると、できるだけ多くの、同じ感情を持つ相手を必要とする。つまり、こうした境遇を生き抜くには同類の仲間作りが欠かせない。それを円滑に進めるため、直接的な利益がなくても「とりあえず笑ってしまう」という行動を自然にとってしまうのだといいます。自身で考えて、戦略的に笑うというよりも、自分の状況を感じて本能的に反応してしまうのです。

 ちなみに、この研究を担当した大学院生が、偉い教授陣が出席する会議でこの冗談を披露したらしいのです。まさしく悲劇。会場は気持ち悪いほど静まりかえり、屋外のセミの鳴き声が聞こえるほどだったとか。

 この、興味深い実験を自身の会社でも試してみてはいかがでしょう。「自分の会社は、上下の意識なく発言できる、自由闊達なる社風を誇っている」と自慢している社長さん、ぜひこの「くだらない冗談」を社員の前で披露してみてください。会場がどっと沸いてしまったら、危険度大。社員は必ずしも「上下意識のない自由闊達な・・・」とは思っていないのかもしれません。

2.追悼 城山三郎(3.23 nikkeibp.jp)
 黒木 亮
 城山三郎さんが亡くなられた。まさに、巨星墜つ、の感がある。

 私の机のそばの本棚には、城山さんの作品がずらりと並んでいる。私は学生時代からの愛読者で、好きな作品は『官僚たちの夏』『総会屋錦城』『落日燃ゆ』『乗取り』など、枚挙にいとまがない。海外ビジネスへの憧れを育んでくれたのは『生命なき街』であり、会社員の頃に悩んだりした時は『打たれ強く生きる』をひもといた。

 私にとって、城山作品は、純粋な読書の対象であると同時に、作家としてのお手本でもある。よく「小説家になるための文章修行はどうされましたか?」と訊かれるが、一番効果があったのは、自分がいいと思う作家の文章を「分解」してみることだった。

 具体的には、文章がどのような流れになっており、どのような要素がどの程度投入されていて、それら要素がどのように組み合わされているか、といったレベルにまで文章を分解することである。そうすることで、なぜ自分がその文章が好きなのかを理解でき、それを手本として、自分の作品の設計図を描き直すことができる。

 私が「分解」した作家の1人が、城山さんである。小説家としてデビューした頃にもやったし、1年半ほど前に短編小説が上手く書けずに、模索していた時にもやった。

 その時のメモは、たとえばこんな具合である。

[1]タイトル:『輸出』(1957年7月、82枚)

[2]ストーリー:(1)カラカスで小久保が行方不明→沖が捜しに行く→本社とバイヤーの板挟みで統合失調症になった小久保→会社が小久保を切り捨てる、(2)ストーリーは複雑ではなく、どんでん返しもない

[3]ディテール(テクニカリティ):ミシン輸出に関する調整最低価格、その抜け道のスペヤーの無為替輸出によるリベート

[4]人間像:(1)笹上、沖、小久保ー輸出政策の犠牲者、部長ー上記の3人の対極にある非情な会社の論理の象徴、ミチー戦争花嫁の悲哀と打算、(2)それぞれが時代を象徴している

[5]暴露性:輸出政策の陰の人間群像

 ストーリーは複雑ではないが、ディテール、人間群像、暴露性という3つの要素が、わずか82枚の中にふんだんに盛り込まれており、それが読者を魅きつける秘密になっていることが分かる。

 3.ブラウザはどんどん使いづらくなる(3.20 nikkeibp.jp)
 「ブラウザが使いづらくなる」などというと,「何のこっちゃ」と思うかもしれない。ブラウザはバージョンアップを繰り返し,機能は次第に充実している。むしろ,使い勝手は向上しているのではないか。そう考えるのが普通かもしれない。また,GoogleマップやGoogle Docs&Spreadsheetsに代表されるように,いわゆるAjaxを駆使することでブラウザだけで操作性のいいアプリケーションを実現できるようになった。さらにパソコンだけでなく,携帯電話/スマートフォンにもフルブラウザが搭載され,ブラウザの利用シーンは格段に広がっている。

 筆者も,この点には全く異論はないし,どこにいてもブラウザさえあれば様々なアプリケーションを利用できる環境は確かに便利だとも思う。ではなぜ使いづらくなると言っているのか。問題は,ブラウザを狙った攻撃が目立ち始め,エンドユーザーが従来以上にブラウザのセキュリティを意識しなければならなくなっていることだ。

 実は,こんな内容の話を「日経コミュニケーション」の3月1日号とITproの特番「変わる企業セキュリティの常識」に,「Web 2.0は危険がいっぱい」という記事として掲載した。その話を,あえてここで改めてしているのは,最近筆者の危機感が,より一層高まっているからだ。原因は,今後「ブラウザのオフライン利用」が進みそうなことと,デスクトップで稼働するWebアプリケーションの危険性に気付かされたことである。

 ブラウザを狙った攻撃の典型例は,ほとんどのWebアプリケーションに潜んでいると言われる「クロスサイト・スクリプティング」のぜい弱性を突いた攻撃。クロスサイト・スクリプティングのぜい弱性というのは,Webアプリケーションの入力フォームなどからJavaScriptを入力すると,ほかのユーザーのブラウザでそのスクリプトが実行されてしまう弱点である。クロスサイト・スクリプティングは数年前から指摘されているが,いつまでたっても攻撃はなくならない。それどころか,Ajaxアプリケーションの台頭によって危険度はますます高まっている。

 Ajaxによるアプリケーションを見ればわかるように,JavaScriptを使い倒せばかなり高度な処理が可能になる。ユーザーによるキー入力,あるいはブラウザが記憶するクッキーを盗み出すような悪質なプログラムも仕込まれかねない。Windowsのクリップボードに一時記憶した情報を盗み出すことも可能だというから驚きだ。クッキーを盗まれると,Webメールの盗み見,なりすましによるECサイトの不正利用などにつながる。どこかのWeb サイトにログインする際に,IDやパスワードをコピー&ペーストしていれば,クリップボードからパスワードを盗まれる。機密文書から別の文書を作るために文面をコピーすれば,それを抜き取られる可能性だってある。

 ブラウザがオフライン利用されるようになるとさらに恐い。ブラウザのオフライン利用というのは,ブラウザ上で一種のプロキシ・サーバーを稼働させて,Webアプリケーションを利用すること。データを大量にキャッシュし,ネットワークにつながらない状態でもAjaxアプリケーションを利用できるようになる。Webメールなら,オンライン時に受信ボックスのメールやアプリケーションのコードをダウンロードしてキャッシュ。オフライン時には,プロキシ・サーバーが受信ボックスのWebページを提供したり,メール送信を受け付けたりする。実際,Firefoxの次期版ではオフライン機能が搭載されそうだし,「Dojo Offline Toolkit」というツールキットも公開されている。

 この仕組みがあれば,Ajaxアプリケーションの利便性は飛躍的に高まる。本当に今のデスクトップ・アプリケーションとそん色なくなりそうだ。ただあくまでも,利用するにはJavaScriptを動かすことが前提になる。オンライン時,JavaScriptを有効にしたままでよいのか。様々なデータをキャッシュするとなると,そこには個人のメール,ワープロや表計算ソフトで作った機密文書などが含まれる。仮にオフラインになる前に悪質なスクリプトを埋め込まれていたら・・・。ローカルのプロキシ・サーバーにキャッシュしたデータを,オンラインになると同時に犯罪者のサイトに送信されることだってあり得る。今年2月,Googleデスクトップに潜んでいたクロスサイト・スクリプティングのぜい弱性が報告された。このGoogleデスクトップはローカルでWebサーバーを稼働させる仕組みになっており,ここにぜい弱性があった。同様のぜい弱性がブラウザのローカル・プロキシ・サーバーに潜在する危険性は決して小さくない。

4.P2Pの大量トラフィックは制限されるってほんと?(3.23 nikkeibp.jp)
各プロバイダでユーザーが利用する帯域を制限しようという動きが出てきたのは、2003年の終わりごろでした。一部のユーザーが大量のデータを転送するなどして帯域を占有したため、ほかのユーザーの通信に支障が出るケースが増え、クレームが多く寄せられたのがきっかけです。ユーザー間の不平等を是正するためには、トラフィックの制限もやむを得ないということになりました。

問題になったのは、上りの通信量です。従来は下りの通信量が多かったのですが、そのころから上りの通信量が増えました。その原因の一つとして、P2Pファイル共有ソフトの影響が指摘されました。

ただ、P2Pファイル共有ソフトの影響に対する考え方や制限方法はプロバイダによって違います。

例えば、一部のプロバイダはP2Pファイル共有ソフトだけを制限の対象にしています。最近は、通信のパターンからファイル共有ソフトのトラフィックを識別し、利用できる帯域を制限したり、パケットの優先度を下げたりする装置がありますから、そのような装置を利用しているのだろうと思われます。

5.【IT Trend 2007】「“組織IQ”の低い企業によるIT投資は業績悪化を招く」――早稲田大学ビジネススクールの平野教授が実証研究を基に講演(3.23 nikkeibp.jp)
 早稲田大学ビジネススクールの平野雅章教授は22日午後、ホテルニューオータニ(東京・千代田)で開催された「IT Trend 2007 イノベーションが創る『明日の経営』」で、「IT投資で伸びる会社、沈む会社?IT活用のための経営革新?」と題する特別講演を行った。
 平野教授は経営情報学の第一人者。IT投資と経営成果の関係について、データに基づいた実証研究を行ってきた。この研究成果を基に、「IT投資によって企業業績を改善するためには、まず“組織能力”の向上が必要だ」と主張した。講演の概要は以下の通り。

 私がかかわる経営情報学会の「情報投資と経営成果」特設研究部会では、IT投資と企業業績の関係を分析してきた。そのなかで、IT投資額と企業業績が大きく関係していることに加えて、「組織能力」の高さがIT投資の成果に大きく影響していることが分かった。

 具体的には、経済産業省が実施した「IT経営百選」「情報処理実態調査」の調査結果や公表されている業績データ、組織能力を測るための独自の調査結果を組み合わせて分析した。

 組織能力を測るには、「組織IQ」という概念が有効である。組織IQは、ヘイム・メンデルソンとヨハネス・ジーグラーの著書『スマート・カンパニー』(ダイヤモンド社)で紹介されている。組織メンバー個人の知識やスキルではなく、組織全体として意思決定の仕組みやルールが整備されているかどうかに着目した概念である。

 我々の分析によると、組織IQが高い企業と低い企業で、IT投資の成果には差があることが分かった。組織IQが高い企業のグループでは、IT投資額が多い企業ほど利益率が高くなっている。一方で、組織IQが低い企業のグループでは、IT投資額が多くても利益率は高まらず、むしろ多額の IT投資が業績を悪化させている傾向がある。

 この分析結果から言えることは、IT投資を実行する以前の問題として、組織IQの向上が不可欠だということだ。具体的には、社内の意思決定プロセスの見直しや、業務プロセスの標準化や文書化などが必要になる。

 会社の現状によって、取るべき方策は違ってくる。もし、あなたの会社の組織IQが低く、IT投資額が少ない(IT投資に力を入れていない)場合は、すぐにIT投資に注力するのではなく、まず組織IQを向上させる施策を実行するべきである。組織IQが低いままIT投資額を増やしても、組織がITを使いこなせず、業績は悪化してしまう。

 一方で、あなたの会社の組織IQが低く、IT投資額が多い場合は、まずIT投資額を減らしたほうがいい。組織IQが低いまま情報化が進んでいる状況では、現場がITを使いこなせずに業務が混乱している可能性が高い。

 組織IQを向上させるには、「外部情報感度」「内部知識共有」「効果的な意思決定機構」「組織フォーカス」「継続的革新」の5つの観点で体制作りが必要になる。「外部情報感度」については、例えば、「顧客の声の定量的・定性的な分析結果を製品開発につなげているどうか」といったことが重要だ。顧客の声を集める仕組みがあっても、実際に機能して製品開発の実例がなければ意味がない。IT活用の前に、IT以外の部分での「経営革新」が必要なのである。
 
 

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