間違いだらけのネットワーク作り(103) 99/11/20
「企業ネットワークにおけるSLA」

 12月4日の研究会は11月19日時点で31名が参加することになりました。予約している会議室の定員が40名ですので、40名になりしだい締め切らせていただきます。申し込まれた方は会員ページの名簿に登録されているか確認してください。今回は遠く広島や京都から参加する方もいて、次世代IPネットワークへの関心の高さ(あるいは全く別の動機かも知れませんが)に驚いています。

 さて、今週の話題は企業ネットワークにおけるSLA、Service Level Agreementです。もともとSLAはISPやキャリアがユーザに対して保証するサービス品質を規定するものですが、専用線やフレームリレー網を使った企業ネットワークにおいても電話音声、ERP、メール、グループウェアなど多様化・多量化するトラヒックの中で安定的で快適な利用環境をエンドユーザに保証するSLAが必要になっています。キャリアが契約したSLAを守っていても、SLAで規定した帯域等の条件がエンドユーザへのサービスに充分なのかどうかはキャリアの責任ではなく、企業のネットワーク管理者の責任です。ネットワーク管理者がエンドユーザに保証するSLA、これが考え始めると難しいのです。

○SLAでの規定項目
 ワシントンコア社のページに米国におけるアウトソーシング契約でのSLAの定義やフレームワークが紹介されています。 http://home.saison.co.jp/SIS/pont/VOL20/p3.html
ネットワークのSLAより広いとらえ方ですが、参考になるので一部を引用します。

 ”SLAとは、電算センター管理運用、C/S移行、デスクトップ管理運用、コールセンター、ヘルプデスク、ネットワーク管理、BPO(Business Process Outsourcing*1 )などのITアウトソーシング業務に関し、それぞれサービスの数値目標を設けることにより、サービスの質を保とうというものである。”
 ”標準的なSLAの指標としては、システム・アベイラビリティー(システム稼動割合)、情報処理エラー発生率、レスポンス時間(ヘルプデスクの場合、電話のベルが鳴ってから何
回以内 *2 に応対する)、故障復旧時間(何時間以内に回復、修理する)、デスクトップ取付時間(発注から何時間以内に導入・稼働する)、補修のためのフィールド人員を派遣す
るまでの時間などが利用されている。”

 これに続いてエベレスト社というSLAを設定することをビジネスにしている企業のフレームワークが紹介されていますので、興味のある方は見てください。ただ、企業内のシステムやネットワークに適用するには細かくて「重過ぎる」、という感じです。次は逆に「軽すぎる」例です。あるISPがユーザに保証しているSLAは
・可用性の保証:何時でも使えること
・遅延時間の保証:往復で○○ミリ秒
・障害通知の保証:ISP側が障害を検出してから○○分以内で通知

 実際の企業ネットワークに適切なのはこれらの中間でしょう。

○企業ネットワークでのSLA
 では、どんな数値がSLAとして適切か。銀行の勘定系オンライン、製造業のオンライン、グループウェア、電話音声、・・・。業種によっても、アプリケーションによってもSLAは違ったものになるでしょう。SLAの候補として考えられる数値を列挙すると、レスポンスタイム、スループット、帯域幅、遅延(delay)、遅延時間の変動(delay variation)、回線利用率、呼損率、MTBF、・・・。

 銀行オンラインではレスポンスは顧客サービスや業務効率に直結するためSLAとしての管理が不可欠ですし、設計時にも重視されます。しかし、一般の企業で基幹システムのレスポンスタイム(あるいはその目標値)は何秒ですかと聞いて答えられるところはまずありません。銀行でレスポンスタイムをSLAとして管理するのも単純には行きません。アプリケーションによって入力データ長、出力データ長は様々ですから基準となるアプリケーションを決めないとSLAは規定しようがありません。さらにトラヒックの変動によってレスポンスは変動しますから、どの時点のレスポンスでSLAを規定するのか決める必要があります。

 電話音声をIPやフレームリレーで扱っている場合は音質の保証のために遅延時間やその変動を抑えることが重要ですが、さて、ユーザの主観評価を満足するように指標をどうして測定をどうするか、となると簡単なことではありません。
 

○SLA管理の考え方
 私はSLA管理は予防的管理と対症療法的管理に分けて考えると検討しやすいと思います。予防的管理とは「遅い」とか「使えない」といったクレームやトラブルを未然に防ぐためにあらかじめ設定したしきい値を超えないように管理するものです。対症療法的管理とはクレームやトラブルが発生した時に速やかに対処できる仕組みを作っておくことです。
私は予防管理は出来るだけ運用負担の少ないシンプルな指標と方法を用い、対症療法の手段を充実させるのが良いと思っています。
 
 

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