間違いだらけのネットワーク作り(94) 99/09/18
「PRISM見学記」

 今週、日本テレコムのPRISM実験に参加している企業を訪ね見学させて頂きました。PRISMの実体と実力、特にVoIPの音声品質がどの程度のものか確かめるのが目的でした。結論から言えば、音質は従来のVoFR、VoIPと同等。VoATMや一般の電話より劣る。無音圧縮による違和感が比較的大きい。以上です。音質はあくまで私が自分で聞いて、これまで聞いてきたVoATM/VoFR/VoIPと比較した主観評価です。私以外に2名が試聴しましたが同様の評価です。

 実験環境は3ヶ所の事業所にPRISM Gatewayを設置し、PRISM IP−VPNに接続しています。GatewayからPRISMへのアクセス回線は4MのATMメガリンクです。Gatewayの実体はCISCO7200+CISCO3600でした。PRISM Gatewayという呼称から独自の仕様が盛り込まれたものかと思っていたのですが。Gatewayの実体を知り、アクセスがATMであることを知って、私の事前の期待から比べると迫力半減、という感じになりました。(もっともアクセス回線は場所によって違うと思いますが)

 電話は直接Etherに接続されているIP PhoneとGW経由で接続されている一般の電話機があります。高速回線を使っているためでしょう、音声IPパケットのヘッダ圧縮機能は使っていません。長いデータパケットのフラグメントも4Mという回線では不要です。VoIPの環境としてはルータにとって理想的です。先ずIP Phoneを試聴しました。この製品は「無音圧縮あり」でしか使用できないとのこと。G.711(64K PCM)とG.723.1(6.3K圧縮)の両方を東京・大阪間で試しました。遅延やエコーは感じられません。高速ですし、ネットワーク自体が実験規模ですから当然といえば当然ですが。

 G.711とG.723.1の音質の差はさほど感じられません。ただ、IP Phoneは無音圧縮のためトランシーバで話しているような違和感があります。例えば、通話の両側で数秒間黙っていると、相手側の周辺雑音が聞こえたり、全く無音になったりを繰り返します。アナログ電話はGWで無音圧縮あり、なしを選択できるため、G.711、723.1×無音圧縮あり、なしの4通りを試聴しました。結果は圧縮方法の違いによる音質の差よりも、無音圧縮あり、なしによる差の方が大きいことが分かりました。もちろん、無音圧縮を使わない方が良くなります。

 無音圧縮はどんなVoATMやVoFRの製品でも使用すると音質は劣化します。私は音質を重視するお客様では無音圧縮を使用していません。音質を重視しないお客様はいませんから、ほとんど無音圧縮は使っていないのが実状です。無音圧縮を使用しないデメリットはノードの処理負荷が増えるということです。回線の帯域が無駄になる、などというベンダーがいますが、8Kや6.3Kまで圧縮されているので帯域の効率なんて問題になりません。20ミリ秒単位で音声をパケット化するとして1つの通話で上り・下り50PPS、合計100PPSの処理能力が必要です。小さな実験環境ではどうってことありませんが、現在の電話交換機による公衆網をPRISMのような仕組みで置き換えようとしたらルータにかかる負荷というのは大変なものになります。無音圧縮を使うことで負荷が半減する(ルータの投資が半分になる)のは魅力です。でも音質は悪くなる。このトレードオフをどう解決するかは今後の課題の一つでしょう。

 アクセス回線にATMを使うくらいなら電話音声とIPはATMレベルで分離し、音声は低遅延で処理能力の高いATMで扱った方が、高性能で高価なルータに中途半端なQoSを作りこんでデータ・音声統合するより余程高品質で投資も少なくなるんじゃないか、と思いました。

 いずれにしても、4Mというめぐまれた速度、サイト数3ヶ所という小規模でも満点の音質にはならないのですから、大規模なVoIPネットワークで快適な音質を実現するには超えるべきハードルがまだまだ高そうだ、というのが感想です。
 
 
 
 

 
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