間違いだらけのネットワーク作り(93) 99/09/11
「アンバランスVoIP no.2」
 

  今週、約1ヶ月ぶりで神奈川西部のお客様を訪問するとバスから見える田圃の稲がたわわに実り、穂先を垂れていました。真夏の1ヶ月、充分に日差しと水分を吸収したんですね。いつもの通勤電車とちがって田圃の中を走るバスというのは季節を感じさせてくれます。

 さて、今週はエンドユーザの方から次図のようなVoIPの提案を受けているんだけど、何か注意することはないか?と問い合わせがありました。いくつかの問診の後描いたのがこの図です。要はレガシーな専用線ベースのネットワークとIPのネットワークを統合するんだけども、ついでに流行(?)のVoIPもやろうというのがこの会社の考えです。問診して申し上げたのは「注意するも何も、これでは動きません」ということです。

 
 最も大きな問題は支店用ノードの処理能力不足。電話音声のパケット化は遅延を抑制するため20ms程度の単位で行われます。20msで1個のパケット、1秒では50個。電話1チャネルで50PPS(パケット/秒)の処理能力が必要です。「無音圧縮を使うから半分で済む」ですって?無音圧縮を使って50PPSです。何故なら電話は双方向です。無音圧縮なしで上り/下りの音声を流すと50×2で100PPSの能力が必要になります。無音圧縮の効果を50%と見て1チャネル上り/下りで50PPS必要なのです。

 支店のチャネル数は4本ですから200PPSの能力が必要ですが、提案されているノードはわずか100PPSの処理能力しかありません。これでは音声が流れませんし、データを送信する余力もなくなります。

 次の問題は帯域不足。VoIPではIPヘッダ20バイト、UDP8バイト、RTP12バイト、合計40バイトのオーバーヘッドが20ms分の音声20バイト(8kb/s圧縮の場合)にプラスされます。余分な部分の方が多いのですね。ノードとVoIPゲートウェイが別製品ですので、ヘッダの圧縮などという器用なこともできません。

 上り方向に平均100パケット飛ぶとすると60バイト/パケット×8ビット/バイト×100=48Kb/sの帯域が必要になります。64K程度の回線では平均16kの余裕しかなく、肝心な基幹業務のデータすら流れません。音声も平均すれば有音のチャネルは2チャネルで上り方向に100PPSの伝送で良いのですが、これはあくまで平均で、ある時は4チャネルのうち3チャネル、あるいは4チャネルが同時に有音の瞬間があります。3チャネル同時に有音の時は72K、4チャネル同時に有音の時は96kの帯域が必要なのですから、64kの回線では帯域不足で音声パケットの破棄が多発することになります。

 最後にロング・パケットの問題。長いデータパケットがノードから回線に送出されている間は音声パケットは送信できませんから音声が途切れます。これもノードとゲートウェイが同一製品ならロング・パケットを自動的にフラグメントする機能を使えますが、別製品では不可です。

 ということで、こんな無理な提案がいまだにある、というのがVoIPの現実です。でも、こんなことエンドユーザの方にはチェックするのは困難ですね。こんな提案がまかり通ったらどうなるのでしょう?

 
 
 

 
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