間違いだらけのネットワーク作り(81) 99/06/19
「迷えるユーザ」
 
 この1週間はこれまでにコンタクトしたことのなかった企業4社のネットワーク担当の方と会い、いろいろ話を伺う機会に恵まれました。それぞれネットワークの更改を検討されているのですが、共通する印象は「迷っておられるな」ということです。

 たしかにこれだけネットワーク技術、製品、回線サービスの変化が激しいと迷うのは無理のないことかも知れません。データ・音声統合一つにしても、VoATM、VoFR、VoIP、そして「データ・音声統合なんてやらない」という4つの選択肢があります。

 変化の激しさに対応する有効な方策は2つあると思います。第一に必要なのはユーザとして(私も機器ベンダーではなくSIというユーザの立場です)主体性を持つことではないでしょうか?「自分が新しいネットワークで実現したいことは何なのか、会社が新ネットワークに求める基本的要件は何なのか」がClearであれば、自ずと適用すべき技術や製品の候補は絞られるはずです。

 何はともあれ、ネットワークの企画や設計の仕事をするということは「良い技術をタイムリーに取り入れて会社に貢献する」というのが給料を貰っている理由でしょうから、変化が激しいことを消極的な選択をする理由にはしたくないものです。変化に対応するもう一つの方策は書いてしまえばコロンブスの卵のようなことなので、ここには書きません。

  と、ここまで書いていると日経コミュニケーション6.21号が届きました。「先行VoIPユーザの本音」、面白そうな記事だと思ってのぞいてみて笑ってしまいました。このシリーズで取り上げたことのある3拠点を768Kで接続してVoIPを使っている企業が取り上げられていたからです。実は今週会った企業の中にもベンダーから、この企業の事例を聞いているところがあったのです。わずか3拠点の事例が方々で使われているんだな、と思いました。
 この記事の内容と、
間違いだらけのネットワーク作り(72)
間違いだらけのネットワーク作り(79)

を読み比べると小規模でかつ回線速度が比較的高速なネットワークで問題が少ない理由、低速で多数の拠点を接続するときがVoIPの真価が問われる時だということが分かると思います。

 その他の事例でも6拠点と書いてあっても、実際は1対1の2拠点構成3組をTDMとPBXで接続しているだけで、VoIPとしては2拠点でしかない例が紹介されています。要は、ルータによるVoIPは2〜3拠点でしか使われてないということです。

 独立型のGWを使った事例もあります。「実用上支障無い」がどの程度の品質か聞いてみるしか分かりませんが、理論的にはフラグメンテーションもなしに高品質な音声が出るとは考えにくいことです。理由は簡単で、わずか64Kしかないフレームリレー回線への出口で1000バイトのデータパケットと音声パケットが競合すると音声パケットはデータ・パケットが送出される間、120ミリ秒以上待たされてしまうからです。音が途切れます。GWとルータが一体型なら長いデータ・パケットを短く分割(フラグメント)し、かつ音声パケットを優先的に送出することにより、音声パケットの送信待ち時間を少なくできます。しかし、独立型ではロング・パケットをフラグメントしようにも手が出せません。データ・パケットはGWを通らないのですから。音声パケットをデータ・パケットより優先しようにも、しようがありません。64k回線へ送出しているのはGWでなく、ルータですから。独立型GWで良い音質を出すことは、少なくともこの記事で紹介されているような構成では考えにくいことです。

 この記事はVoIPの現在の実力をよく表しています。VoIPはまだ小規模ネットワークでしか使えないということ。「通信品質はネットワーク設計次第」というのを結論にしていますが、私に言わせれば「今の製品では設計やチューニングをいくら工夫しても中規模以上(10〜20拠点超)のネットワークは無理」となります。 また、小規模なネットワークでさえ「安定して動くまでは根気強く調整を繰り返す必要もあるようだ。」とすると、VoIPが本当に実用的と呼べるのは当分先のように思います。
 

 話は変わります。6月26日(土)の情報化研究会「やさしいMPLS」は現時点で21人参加予定です。申込をしている会員の方は会員ページに参加者リストがありますので登録されていることを確認してください。当日のスケジュールと会場の地図も掲載しています。申込およびキャンセルの期限は6月24日(木)です。

ホームページへ