間違いだらけのネットワーク作り(62) 99/02/06
「VoIPゲートウェイ(続)」

 日経コミュニケーション2月1日号の「VoIPゲートウェイ」にに対するコメントの続きです。

C音声パケットの遅延/破棄     
 イントラネットやインターネットでは帯域保証や遅延時間の保証が出来ていません。RSVPなんてWANで使うには無理があります。実際にRSVPで帯域保証しているISPなどありません。ネットワークの状態によって音声パケットの伝送遅延が大きくなったり、ノードのバッファがあふれて破棄されることは当たり前に起こります。
 特に、送信側のアクセス速度と受信側のアクセス速度のギャップが大きい場合は「高速出口渋滞」現象でバッファオーバーフローによる音声パケットの破棄が起きやすくなります。上図では左のサイトが128K、右のサイトが64Kでギャップはたいして大きくありませんが、本社は1.5M、支社は64Kといったギャップがあると、本社から支社の収容されているアクセス・ノードまでは高速で音声&データパケットが転送されます。ところが出口の回線が64Kしかないため、アクセス・ノードの送信バッファがあふれて音声パケットもデータパケットも破棄されやすくなるのです。
 これを防ぐには音声パケットを優先制御するしかありませんが、インターネットの世界では音声パケットの流れを識別する手段さえありませんから、優先制御など不可能です。イントラネットの世界でも独自の優先制御機能を持ったルータが必要ですが、某社ルータでは公衆フレームリレー網上で音声のPVCとデータのPVCを分けているとのこと。要は、IPの中で始末をつけるのは難しいということでしょう。
 
Dエコー・キャンセラの性能
 日経コミュニケーションの記事ではほとんど触れられていませんが、エコーキャンセラの性能はVoATM、VoFR、VoIPいずれにおいても致命的に音質を左右します。
 そもそもエコーとは何でしょう?データ屋さん(ルータ屋)はVoIPに手を出すまでは聞いたこともない言葉だったはずです。エコーとは電話において回路の特性(4W→2W変換回路など)により、送信した音声信号が相手側の装置内(通常PBX)でわずかに折り返し、受信信号に回り込む現象です。つまり、自分の声が聞こえることになります。
 遅延のごく少ないネットワークではエコーがあっても話ている自分の声とのズレがミリ秒単位しかないため気づきません。しかし、100ミリ秒単位の遅延があるVOFRやVOIPではハッキリしたエコーになります。
 エコーキャンセラとは送信側の装置(ここではVOIP−GW)が遅延を予測し、内部で疑似エコーを発生させ、受信した信号から差し引くことによりエコーを除去する機能です。器用なことしてるんですね。
 考えて下さい。遅延時間が一定しないイントラネットやインターネットでは遅延の予測自体が困難です。タイミングが合わなければエコーは消えません。逆に消してはならない相手からの音声が減衰されることもあります。
 また、エコーキャンセラが機能するには遅延時間の予測等をするためのトレーニングが必要です。「話し始めの音が消える」というVOFRやVOIPでよく聞くクレームはエコーキャンセラのトレーニングが遅いことに起因することがあります。さらに、遅延の変動が大きいと通話の途中でトレーニングが何回も必要になります。トレーニングしている間はエコーキャンセラは効かないのですから、どういうことになるか説明するまでもありませんね?
 遅延時間やその変動に保証のないIPの世界ではエコーキャンセラの有効性には限界があります。ATMが音声伝送のためにCTDやCDVの保証をする理由がこの1点でもよく分かります。

 エコーキャンセラの性能は製品によって大きな差があります。比較表で「エコーキャンセラあり」となっていても効くかどうかは試してみないと分かりません。 

閑話休題「NTTの次世代高速データ通信網」

 2月4日の日経新聞にNTTの青木副社長が幕張のNET&COMで行った講演に基づく記事が掲載されました。

 「ライバル各社は交換機を廃し、インターネットの通信方式に準拠した低価格ネットワーク構築を次々と打ち出している。NTTは従来、データ通信サービスについてもATM交換機を介して提供していく方針を崩していなかったため、その動向に関心が集まっていた。」

 とあり、ATMを捨てるのかどうか結論は書いてないのですが、この文章を読むと「ATM交換機を介して提供していく方針を崩した」ような印象を受けました。
 そこで日経コミュニケーションのHPで講演内容をチェックすると、

「99年からは、次世代インターネットを作っておきたい。ATMリンク上にIPを乗せて制御する技術、次世代インターネット・プロトコルのIPv6の本格的な採用。これらをWDMを使った格安な高速サービスに統合し、「都市型超高速ネットワーク」と名付けてユーザーに提供する。」

 とのこと。ATMを捨てるということではないようです。NTTは昨年、高速データ通信サービスの基盤としてATMを使うことを宣言したばかり。ここで急に方向転換とはオカシイと思いましたが。日経新聞も肝心なところを明確にし、誤解のない書き方をして欲しいものです。 何でもIPオンリーで済むと単純に考えている門外漢の記者が書いたのでしょう。

 

 
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