間違いだらけのネットワーク作り(61) 99/01/30
「VoIPゲートウェイ&UAE通信事情」

 先週予告したとおり、日経コミュニケーション2月1日号の「VoIPゲートウェイ」についてコメントします。
「VoIPは音声を最重要視するユーザには向かない」、「自営のIPネットワークでも、設計に工夫を凝らさないと満足できる音声品質は確保できない」、といったところは、まあ妥当なところと思います。
 私に言わせれば、「VoIPは音声をビジネスに使いたいユーザには向かない」、「自営のIPネットワークで工夫を凝らしても大企業(大規模ネットワーク)では無理」となります。
 予想したとおり、音質の比較評価がなく、スペックの比較だけなのは読者にとっての比較材料としては今一つlと言わざるを得ません。万一、VoIPをやろうというユーザ企業の方がいるなら、これまで再三書いてきたことですが、「自社と同規模のネットワークで実績があること」、「そのネットワークで自分の耳で音質を確かめること」、をお勧めします。「VoIPでクレームが出たことはない」という記述がありましたが、???です。私のところに困った方からメールが飛んで来るくらいですから。各社とも実績が10社未満しかなく、おそらく試行的に小規模な環境で使っているだけなのでしょう。第一、クレームがない=音質がいい、という方程式は成り立ちません。「安かろう、悪かろう」状態に我慢しているだけかもしれないのです。
 さて、次の図を見ながらVoIPの音質悪化要因を見てみましょう。

@データ・パケットによる音声の遅延
 日経コミュニケーションの記事では指摘されていませんでしたが、GW(ゲートウェイ)がルータと一体でない場合、データパケットによる音声パケットの遅延が生じます。上図ではデータ・パケットの長さを1000バイトと仮定しています。WWWのやりとりやメールなど、データパケットは長大化しています。イーサネットのフレームが最大1500Bなので、ファイル転送などではデータは1500B単位にフラグメントされることが多いでしょう。1000Bという仮定は決して長すぎません。OLTPアプリケーションでも1KBを超える電文はめずらしくありません。
  128Kb/sの回線でこのデータパケットの送出が始まると、完了するのに60ミリ秒強かかります。その間、音声パケットは待たされます。GWとルータが同一製品の場合はデータパケットの伝送時間が20ミリ秒程度になるようGWが長いデータパケットをフラグメントします。その上で、音声パケットを優先して送信しますからロングパケットによる遅延は抑制されるのです。
 GWとルータが独立している場合はこんなことは不可能ですからデータパケットによる遅延は不可避です。
GWとルータが一体でもフラグメント+優先制御機能がない製品では不可です。
 この説明の中で「20ミリ秒」の根拠を知っておくことが大事です。音声をデジタル化する場合、たとえばG.729だと8Kb/s、すなわち1秒の音声を8kビットにします。しかし、1秒間単位で音声をデジタル化したのではそれだけで1秒の遅延になってしまいます。そこで、20ミリ秒程度でデジタル化し、それを1つの音声パケットにしているのです。その場合、デジタル化された音声は1秒の50分の1、つまり8kb×0.02で20バイトになります。これにUDP、IPのヘッダやメーカー独自のヘッダが加わって80バイト程度になるのが普通です。
 複数の通話の音声パケットを1つにつなぎ合わせてパケットの処理負荷を下げる製品もありますが、それでは処理遅延が大きくなります。

ALAN上での音声とデータの競合
  @はWANへ出ていくところでの競合でしたが、当然LANでも競合します。LANの利用率が高くなると音声パケットのLANへの送出待ち時間が長くなります。
 
B同時通話数/パケット処理能力/回線速度のバランス

 日経コミュニケーションの記事では各製品の最大同時通話チャネル数が記載されています。これが実際使えるかどうかは、音声パケット、データパケットの処理能力とそれを転送できる回線速度とがバランスしている必要があります。
 記事では1台で60チャネルを超える製品があります。無音圧縮なし、G.729 8kb/s、20ミリ秒単位のデジタル化を想定すると、1チャネルあたり50パケット・秒。60チャネルで3000パケット/秒。これは片方向ですから、双方向で6000パケット/秒。この上に短くフラグメントされたデータ・パケットが処理されることになります。
 回線も音声、データを伝送するに充分な速度、本数が使えねばなりません。ベンダーから提案を受けた時にはこのような能力のチェックが不可欠ですが、メーカーの多くは処理能力を紙に書いて保証しないのが現実です。

 長くなったのでC、Dは来週コメントします。気分なおしに吉川さんのUAE通信事情をお読み下さい。ご本人が
質問を受け付けても良いとおっしゃっているので、メールアドレスを記載しました。

「UAE通信事情」 by Mr.吉川(yosikawa@osa.sharp.co.jp)

UAE ・アラブ首長国連邦です。
   「慣習」 
    ・公共関係(アラブ人独占)は、8時ごろからPM2:00で仕事が終わり。
    ・公共機関の休みは、木曜と金曜、土曜と日曜は働いています。
    ・一般企業はそれぞれ、違いますが、日本企業の場合は、金、土が休み。
    ・よって、会議のアポイントは午前中に限られる。    
    ・スケジュールは完璧にまもる民族です。安心できます。
    ・アラブ人が10%残りが、インド系、アフリカ系等です。
    ・万事、イスラムの世界で事が運ぶことを、認識しておかないと、いけません。
     (英語はもちろん通じます)
    ・ドバイはアラブのシンガポールといわれるぐらい、町は超近代的です。
    ・食事接待は、要注意です。(必ず相手の意向を聞くように)
   「インフラ」
    ・通信事業は、ETISALAT(国営)が独占。
    ・通信関係のインフラはすべてあり、問題ありません。
      インターネットもISDNもOKです。
    ・但し、規定事項がたくさんあり、この約款をきっちりと守って、接続しないと
     いけません。
      例)@専用線接続と公衆回線用のPBXは完全分離。
        A国際専用線接続のPBXはETISALATより購入のこと。
        B専用線の中を、音声メディアとデータメディアを混在させる場合は、
         通常料金の1.5倍となります。
         等
    ・FLAG海底ケーブルが98年に開通しています。
    ・専用線は2Mbpsまで可能。
    ・専ー公接続は禁止。 
    ・長期割引制度あり、デリバリーは、1から1.5ヵ月
   「障害」
    ・年に国際回線で2回ほど。対応は早いです。
      1回はFLAGケーブルがマレーシア当たりで切れました。 
   「よもやま話」
    ・砂嵐に注意。予期もしない気象現象です。建物の窓は2重構造で、細かい
     砂がはいらない用にされています。
     通信機器室には窓は作らないことです。
     簡易なビル構造のオフィスでは、端末にはビニールシートをかぶせて帰るなどの
     注意が必用なようです。
    ・現地調査中に一度、ベビーレベルの嵐に遭遇しました。前が砂でみえませんでした。
    ・現地にVANネットワークをはっている外国業者が、通信公社から、98年に突然
     国内からのダイヤルアップ接続をしないようにと勧告を、口頭でを受けました。
     (国際経由の接続はいいそうですが)
     VAN会社は、突然のことで、正式な文章でもらわないと、ユーザに説明できないと
     要求しましたが、却下されました。
     イスラムでは文章は意味をもたない、口頭でも正式に決められたことなので、問題ない
     ということです。イスラムとはこんな国です。
     これは、なんとか自国の利益を減らさせない政策の一つでしょう。
    ・この国はイスラムでも、酒はホテル、レストランで飲めます。
    ・何年か先には、この国の石油も枯渇し、他の生きる道を必死に、模索しています。
 

      

  
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