間違いだらけのネットワーク作り(60) 99/01/23
「日本の電話網が消える??」

  
  日経コミュニケーション(99.1.18)に「日本の電話網が消える日」という記事が掲載されました。キャリアの中に基幹網をIPにしようとしているのがいるよ、ということで、このページでも何度か関連することを書いており別にめずらしい話ではありません。しかし、あまりに「ケレン味」が強いのでいくつかコメントしたいと思います。

○ネットワークの評価を決めるのはトラヒックの多さではない、評価する人口が決める。

  まず1点め。IPのトラヒックがどんどん多くなるから、IPに適したバックボーンにする。すればいいじゃないですか。でも、そのネットワークを評価するのは流れているトラヒックではありません。企業のプライベートネットワークでは電話のトラヒックをIP等のデータのトラヒックがとっくの昔に凌駕しています。しかし、出来上がったネットワークの評価を決めるのは電話ユーザです。「IPトラヒックが安く大量に流れるからいいネットワークだ」などとは誰も言ってくれません。そんなことは当たり前。

  ATM交換機を使おうが、ルータを使おうがIPのユーザからクレームが上がることは設計に失敗がない限りありません。また、IPユーザ、つまりPCユーザは社員の100%を占めることはありません。これに対して電話に関しては必ず何らかのクレームは発生します。たとえVoATMを使っても公衆電話網と同等の音質にはならないからです。VoIP製品の広告で「公衆電話網の品質を実現」などと書いていますが、よく平気でウソがつけるものだと思います。さらに電話は社長から平社員まで100%の社員に使われます。流れるトラヒックが少なくても、人口と使用頻度は圧倒的に多いのです。電話ユーザの評価で完成したネットワークの評価が決まるのです。

  企業ネットワークで言えることはキャリアのネットワークでも同じでしょう。IPによるバックボーンを作っても、電話の音質が現在の公衆網より落ちればユーザはつかないと思います。特に企業の場合、電話の相手は大事な顧客である場合が多く、音質は顧客サービスのレベルを左右するからです。また、ユーザ数も家庭や個人の多い公衆網では電話ユーザの方がIPユーザより圧倒的に多いでしょう。

○ATMなしでIPバックボーンは成り立たない。

  日経コミュニケーションでも述べられていますが、日本テレコム等が作ろうとしているネットワークでもエッジ(アクセス)部分はATMが使われています。電話、IP、専用線等のサービスを1本のアクセス回線で束ねるマルチサービスをするには低速のアクセスでATMによる確実なQoS制御が必要、ということです。

  将来は「ATMノードをルータに収容」と書いてあります。面白いですね、「ルータ」というのはルータ屋が呼ぶ箱の名前で、交換機屋なら、「ルータをATM交換機に収容」というでしょう。たまたま日本テレコムで使うのがルータ屋なだけ。ATMという技術が捨てられないという事実は同じです。ATMで提供するサービスは「当面」IP網と切り離して運用するとのこと。要は、電話はIPを通さないよ、ということでしょう。なあんだ、という感じです。

  私の疑問。アクセス部分でATMセル化されているIPをわざわざIPパケットに戻してIPバックボーンを通すのが、それほど効率的なのでしょうか?アクセス部分でIPなら、そのままセル化せずにバックボーンを流した方が効率的なのはよく理解できますが。それにWDMでバックボーンの光ファイバを数倍以上効率的に使えるのに、ATMの5バイトのヘッダを問題にせねばならないのでしょうか?アクセスがATMなら、バックボーンも含めてフルATMでいいような気がしますが。

○企業ネットワークでマルチサービスIPバックボーンは不要

 日経コミュニケーションの記事はそもそもキャリア向け、企業ユーザにusefulとは思えません。むしろ「キャリアのバックボーンがIPなら、当社のバックボーンもIPでデータ・音声の統合をしよう」などと、トンデモナイ誤解をまねくだけ。この記事を読んでいる企業ユーザの方、上述のようにキャリアもデータ・音声を統合するアクセス部分はATMを使うということをお忘れなく。それと、キャリアのバックボーンというのはギガビット単位の速度であり、そもそも企業内ネットワークとは次元が違うということ。ただし、当社はATMメガリンクの135メガでは不足だ、とおっしゃる企業は別です。キャリアやISPでない限りそれはないでしょう。
 

 次号の日経コミュニケーション(2月1日号)はVoIPゲートウェイを特集するとのこと。できれば、音質に関する客観的な評価を書いて欲しいものですが。音声の遅延やゆらぎを制御する仕組みがある、なんてメーカーの受け売りそのままでないことを期待します。いずれにしろ、VoATM/VoFRの経験やVoIPで苦労している企業の事例をもとにコメントしたいと思います。
  
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