間違いだらけのネットワーク作り(56) 98/12/19
「公衆FRにおけるVOFRの問題」
 
 
 今週、某通信事業者につとめるHさんから頂いた入会申込メールに面白いVOFRの体験談や見解が書かれていましたので、ご本人の了解の上皆さんに紹介します。このページに繰り返し書いてきたように、音質を出すにはVOFRで公衆FRは使うべきではない、専用線と優先制御等の可能な自営FR交換機を使うべきだ、というのが私の持論です。銀行をはじめ多くのVOFRを構築して来ましたが、すべて専用線ベースです。

 Hさんは音質が保証できないことを事前にユーザに了解して貰って、公衆FR上のVOFRを構築した経験があるとのこと。「事前の了解」がポイントですね。悪さ加減は実際使ってみないと分からないので、事前了解というのは「あいまい」で難しいような気もしますが。
 

以下、Hさんからのメール(部分)を引用します。文中、「本当のFR網」というのは公衆FR網のことです。

”松田様の「間違いだらけのネットワーク作り」、全くおっしゃる通りで感服しております。私も企業ネットのFRネットは何件か手がけており、VoFR(本当のFR網)では泣かされました。ただ松田様のおっしゃることは事前に分かっていたため、ユーザにFR網側の条件が厳しくなったときはつかえない旨了解を得てから構築したので事無きを得ています。

なお、FR交換機によっては音声廃棄だけでなく音声の異常な遅延(たとえば3秒くらいとか)も生じ得ます。これはFR交換機の特質上バッファをかなりの容量保有しているためで、データを不用意に出すと音声遅延となって現れます。”

○赤く表示した「音声の異常な遅延」というのが、私が経験したことも聞いたこともない面白い事象です。遅延はあってもせいぜい100ミリ秒単位のものと思っていました。Hさんにメールをこのページに引用することを了解して頂くようお願いしたところ、返信メールで次の追加説明を頂きました。

”FRであればアクセス回線に不均衡があるのが普通です。(例えば本社側384Kbpsに対して、拠点側が64Kbpsであったりしますよね。)この時本社から拠点に対して音声+データ(例えばFTP)を送るとします。網設計が誤っていなければ何ら問題ありませんが、設計の過ち(たとえば対地毎のトラヒックシェーピングが適切でないとか。)によってデータを流し過ぎた場合、FR網内にあるバッファに滞留して、早く行きたい音声もバッファ内で待たされることとなります。

FR交換機もあまたあるので他の交換機がどうということは一概には言えませんが、この公衆FR網の場合データを廃棄しないことを旨として、FR交換機のバッファ容量をかなり大目に設定してあり、結果これがどうも災いしているようです。音声が途切れる現象が起きるのはこのバッファ容量が比較的少ない交換機なのではないかと思います。

また網輻輳の場合ですが、これは基本的に救いようがありません。よく音声の帯域分はCIRで確保しておくという事が定石のように言われておりますが、私の経験上これは輻輳時にはほとんど意味がなく、やはり音声は多大な遅延が生じ得ます。理由は先ほどと同じ、網内の転送レートが下がっているのにバッファリングして何とか送ろうとするので遅延になってしまうのです。ここまで言うと「BECN、FECNがあるじゃない。」とおっしゃる方もいるでしょうが、普通交換機側でECNをそんなに即座に出すような設定にしてあるとは考えにくく、ある程度バッファリングされてから、と言う設定になっているのではないでしょうか。結果、ECNを受けてFRADが転送レートを下げる頃には音声滞留が始まっているため救いようがないという結論に達しています。

PVCを音声用とデータ用の二本にすれば輻輳時でも音声遅延は比較的軽減されたのですが、回線料金もかさむのであまり現実的ではないですね。

という事で音声はcrucialであり、いかなる不具合も許されないと考えるお客様には必然的に専用線によるVoFRを提案することとなります。”

○結局、Hさんの見解も私と同じということが分かりました。しかし、公衆FRを使ったことのない私と違って公衆FRでの問題点を交換機の設定にまで踏み込んで述べておられるのが大変参考になりました。

○皆さんには毎回同じようなことを書いているように思えるでしょうが、インターネットと比べればはるかに制御されている公衆FR網でさえ音声のハンドリングにはこれだけの限界があるのです。トラヒック制御が無いにひとしいインターネットや、いい加減な機能しかないルータで構築されたイントラネットで良い音質を出すのは無理です。
 
 

 
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