間違いだらけのネットワーク作り(51) 98/11/14
「VoATM内線網におけるSS7の必要性は?」
 
情報化研究会の会員である名古屋のHさんから、次のような質問をもらいました。

●Hさんからの質問
 「ATM機器の各ベンダーは音声通信のSVCディジタルワンリンクによる高品質な通信を謳い文句の一つにしています。ある程度の規模のPBX網を構築する企業の場合、共通線信号方式によるPBX網を構築/採用している企業は少なくない気がします。しかし、私が調べた限り、共通線信号方式を利用してSVCディジタルワンリンクを実現するATM交換機(CLAD)はありませんでした。

 PVC構成では、メッシュ構成で構築する必要があり、ATM構成も複雑となりPVCの分割損も発生する為、非効率です。機能サポートにはPBXとの連携も必要なので、早急に対応出来ないのかもしれませんが、ATM交換機が登場して数年、大企業から適用されているのであれば、当然サポートされていても不思議ではない機能と思うのですが、どう思われますか。」

 さて、どう考えればいいんでしょう?私が知っている範囲でも共通線信号方式(正式名称Common Channel Signaling System  No.7、略称SS7)でVoATMやVoFRをサポートしている交換機はありません。

○そもそもSS7とは
 発呼者と被呼者との間で音声による通話を可能とするために、電話機と交換機(電話交換機)、交換機と交換機間で種々の制御信号をやりとりする方式を信号方式といいます。NO.7というのは89年にITU−Tで7番目に標準化された信号方式です。

 信号方式には音声信号と制御信号が同じ回線をとおる個別線信号方式と、音声信号用回線とは別に制御信号だけを伝送する共通線信号方式があります。個別線信号方式では通話1チャネルごとに音声・制御信号用回線が使われるのに対し、共通線信号方式では通話用回線と独立した制御信号用回線は多数の通話の制御に共通に使われます。SS7は名前のとおり共通線信号方式です。

 データ通信(コンピュータ通信)の経験の長い私に言わせればアナログ音声を交換・伝送してきた回線交換の世界が、制御信号(というよりデータ)を効率的に扱うためにデータ通信を取り込んだものだ、といえると思います。回線交換機も今やCPU制御のコンピュータです。音声信号と制御用の信号をアナログ向きの仕組みで無理やり一緒くたに扱うより、コンピュータ間に別回線を引っ張って制御データをやりとりした方が効率的に決まっています。

○SS7のメリットは?
 SS7の主なメリットは1本の信号回線で大量の通話回線をコントロールできることと、多種多様な情報を高速転送できるため一般の通話以外に付加価値サービスが実現できることです。SS7では1回線で約4000回線を制御できます。付加価値サービス機能としてはISDNの信号回線として利用できること、仮想私設電話網用の番号やクレジットカードの照合情報などの転送などが例としてあげられます。

○VoATM/VoFRによる内線網でのSS7の必要性は?
 結論から言えば、必要性は低いと思います。ATM交換機メーカーがSS7をサポートしていないのも技術的な問題より、必要性が低いと判断しているためだと思います。ATM交換機がSS7をサポートすべきかどうか、ということはATMによる内線電話網でSS7のメリットが必要かということになります。

 先ず大量の通話回線のコントロール。Hさんの尺度でどの程度のネットワークが大規模かは分かりませんが、大企業の本社でも支社や事業所との内線用回線は100〜200回線といったところではないでしょうか?この程度のネットワークで本社のPBXとATM交換機間をTTC2M(30チャネル/本)数本で接続したとします。個別線信号方式でやりとりしても起動信号や選択信号(内線電話番号)がPBXからATM交換機に渡された後は中継交換はATM網のSVC接続で効率的に行われます。接続時間も数秒で、長くはありません。中継交換をPBXで行わないため、PBXの設備も減らせる場合が多くなるのではないでしょうか。SS7の制御能力が必要とは思えません。現に店舗数が100〜200程度の銀行ネットワークが個別線信号方式によるVoATMやVoFRで稼働しています。これでは小規模でしょうか?

 次に付加サービス。これも電話機やFAXを使った内線網では、この機能がないと困る、といったものは思い浮かばないのですがどうでしょう?電話を使った付加サービスというのは公衆網の業者には不可欠でしょうが、プライベート・ネットワークでは不要のように思います。

 先述のように共通線信号方式は音声交換・伝送のために出来たネットワークで制御データを効率的にやりとりするために、データ通信用回線を分ける、という発想で生まれました。しかし、ATMも、フレームリレーも、さらにはIPも、もともとデータ通信用なのです。VoATMやVoFRは音声をパケットにカプセル化してデータと統合する技術なのです。もともとデータ通信は得意なのですから、制御用のコネクションを通話用のそれと分けるなどという発想が合わないのではないでしょうか?

 米国のインターネット電話業者のように既存の電話網(公衆網)とインターネットを相互接続するためにゲートウェイで公衆網のSS7をサポートする、というのは必然でしょうが、企業内に閉じた内線網で必要性が高いとは思えません。これまでTDM+中継用PBX+SS7で内線網を作っていた企業なら、ATM導入を機にTDMと一緒に中継用PBXもSS7も捨てればいいんじゃないでしょうか? 

 ただ、私もSS7に詳しい訳ではないので、こんなケースはATMによる内線網でもSS7は不可欠だ、あるいはSS7を使うとATM内線網でもこんなメリットがある、というのがありましたらご教示ください。

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