間違いだらけのネットワーク作り(34)  98/07/11
「FRADによる無理な設計(その1)」
 

「間違いだらけ」のシリーズでは、これまでも「公衆フレームリレー網での音声のトギレ」や「1+1+1=2となる無理な設計」など、音声とデータを統合するFRADやルータの問題を取り上げてきました。しかし、今なお小型のFRADやルータで音声・データ統合ネットワークの提案を受け、その問題点を知らないエンドユーザの方からの問い合わせが多いため今回から2〜3回集中的にチェックポイントを解説します。

処理能力の大きいATM交換機やフレームリレー交換機を使わず、FRAD(あるいはルータ)のみでも10拠点程度までのネットワークなら動かすことはできます。しかし、驚くべき事に40拠点、50拠点といった規模の大きいネットワークをFRADのみで構成し、かつ、音声・データ統合をするという提案がまかりとおっているのです。

図に沿ってチェックポイントを見ていきましょう。

上図は本社と25カ所の支店・営業所間を公衆フレームリレーで、近距離の10支店をデジタル・アクセス等の専用線で接続したネットワークです。私は公衆フレームリレーを使った音声・データ統合は音質に限界があるため、お客様に奨めることはありません。この図は「無理」を説明するための想定図です。近距離で公衆フレームリレーより専用線が圧倒的に有利なのは前回のグラフによる比較で明らかです。近距離まで公衆フレームリレーで提案されていませんか?

@機器の接続構成は明らかにされているか?
信じがたいことですが、本社等の通信拠点に設置される複数のFRAD、ルータ、PBX等が具体的にどう接続されるかユーザに明確に示さずにイメージ図だけで提案しているベンダーがいます。あまりにもツギハギ的でみっともないために明示しないのでしょうか?

接続構成の分からないような提案をするベンダーを信用すべきではありません。無理のある設計、歪みのある設計はケーブル等による接続構成が分かる図を見ると、見かけそのものがミットモナイので「ああ、無理してるなあ」とスグ分かります。きちんとした設計は接続構成もシンプルでスッキリしています。

もし、接続構成が分からない提案を受けているとしたら、ベンダーに明確にするよう要求すべきです。

A公衆フレームリレーでの本社側と支店側の速度バランスは取れているか?
25の支店がそれぞれ64Kのアクセス速度で本社に接続されています。公衆フレームリレー網内が混雑していなければ、64K×25=1.6Mまでスループットが得られる可能性があります。その半分の800Kのスループットを享受するには、本社と公衆フレームリレー網間のアクセス回線は800K以上なければいけません。

本社側のアクセス速度が256Kとか、384Kで支店側のアクセス速度合計とアンバランスになっていませんか?アクセス速度やCIRの決定根拠はベンダーから明らかにされていますか?データのトラヒックや電話の同時接続数(本社と支店で同時に何チャネル会話できるか)に基づいて算出された数字になっていますか?不明であればベンダーに確認してください。

Bルータのトラヒックに対して充分なスループットが確保されているか?
これからの企業ネットワークではIP(TCP/IP)トラヒックが主役です。本社〜支店間、支店〜支店間、の流れがありますが、一般には本社〜支店間のトラヒックが多いでしょう。この図で回線が転送できる能力は、公衆フレームリレー側が支店のアクセス速度合計の半分として800K、専用線が64K×10本で640K、合計1440Kあります。したがって、FRADやルータがネックにならないかぎり、本社と全支店間で上り・下り同時に1440Kの速度でデータを送受信できることになります。

この図では本社〜支店間のIPトラヒックは全てルータと本社の真ん中のFRAD、両者を結ぶケーブルを通過します。従って、これらの処理能力が1440Kを使い切るだけの能力がなければ、回線が無駄になります。

話が前後しますが、本社のルータが支店や本店のFRADと同一製品の場合は問題ありませんが、支店側はFRADの内蔵ルータ、本社のルータはFRADと異機種とするとそもそもつながるの?という問題があります。

能力の問題にもどります。1440Kを使いきるにはまずルータとFRAD間のケーブルが1440K以上の速度でなければなりません。FRADの処理能力は1秒間に何フレーム転送できるかを表すFPS(フレーム/秒)で示されます。音声とデータが統合されるとき、データのフレームが長いとデータ送信中音声がトギレるため、長いデータはFRADが短く分割します。

64K程度の回線の場合、64バイト〜80バイト程度です。仮に80バイトとすると1440Kビットを使いきるためには片方向で1440Kビット/秒÷(80バイト×8ビット/フレーム)=2250フレーム/秒の転送能力が必要です。両方向では2倍の4500フレーム/秒必要です。回線は全二重なので両方向の転送が同時に1440Kで可能です。

提案されている接続構成で、回線としての転送能力はどの程度ありますか?IPトラヒックが集中して負荷がかかる装置はどれですか?その装置は回線の転送能力を使い切るだけの処理能力がありますか?数値的根拠をベンダーから入手してください。

それをしないのは「排気量の分からないクルマ」を買うのと同じです。

次回に続く

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