間違いだらけのネットワーク作り(28) 98/05/30
記事評「電話をのみ込むデータ・ネットワーク」
(日経コミュニケーション 98.6.1)

音声・データ統合に関する記事がまた日経コミュニケーションに特集されました。VOFR、VOIPがコンパクトにまとめられており、概要を知るには便利な記事です。ただ、いつもどおりいいことばかり書かれており現実に苦労する点については述べられていません。

そこで記事を深読みするための着眼点をいくつかあげてみましょう。

@小規模なネットワークと大規模なネットワークの違い

VOFRの最初の事例で取り上げられている京都信用金庫殿のネットワークは私の担当で手がけた最初の銀行ネットワークです。銀行のVOFRとしては完成時期が最も早く、昨年4月から移行が始まり今年3月には完成しました。全本支店がVOFRで内線化している銀行は現時点で京都信用金庫以外にありません。

このネットワークのポイントはセンタのルータとフレームリレー交換機(実際にはATMも収容できる交換機)CR60との接続速度=2Mb/s(記事では書かれていない)と支店との回線64Kb/sのギャップです。2Mのスピードで送出されるバースティなIPデータが音声をこわさないようにする工夫が必要なのです。

センタから支店へIPデータが高速で送出され、64kという低速回線への出口で8Kb/s音声と競合します。出口へ向かうスピードはルータの2Mの方がはるかに速いですから、放っておけば音声はフレームリレー交換機の64k回線への送信バッファ上でデータもろともオーバーフローして破棄されます。この音声フレームのロスが起こると、受信側ではブツブツという感じの途切れ音が聞こえます。

そこで交換機の優先制御や交換機とルータ間のふくそう制御等の工夫が必要になるのです。一方で記事中で公衆フレームリレーを使った音声統合サイト数6のネットワークが紹介されています。このネットワークではLAN−WAN接続はないようですからバースティなIPデータの転送自体ないのかも知れません。あったとしても、回線速度のギャップが128K、64Kと小さいため大きな問題にはならないでしょう。

国際公衆フレームリレーを使った事例も同様で、FRADにルータが収容されているようではIPデータのトラヒックは大したことありません。なぜなら、ここで使われているFRADの転送能力が2Mb/s程度しかないからです。

これも繰り返し述べてきたことですが、小規模なネットワークならどんな製品を使ってもそこそこの音質は簡単に出せるのです。音声・データ統合の難しさは規模が大きくなると幾何級数的に増大します。

ASVCの使い勝手

先日紹介した「VOFRで高品質な専公接続」では、この記事にあるNTT DATAのCR60/CR5Eを使っており、音声をSVCで扱っています。記事ではサイト数が多いとSVCの方が圧倒的にインストールしやすいような書き方ですが、拠点間の音声のリンクにPVCを使っても音声のスイッチング機能を持つFRADであれば定義すべきPVCの本数は少なくできるため、インストールの手間は大差ありません。

注意すべきは、大規模になるとスイッチング能力が不足するためメッシュ状にPVCを設定せざるを得ないFRADがあることです。この記事に紹介されているFRADにも該当するものがあります。このようなFRADはしょせん大規模ネットワークには使えないということです。

BVOFR?VOIP?VOATM?

VOIPは設計さえちゃんとすれば大丈夫、などという発言も記事中にありましたが、???です。実際大規模なネットワークでVOIPを動かしたことがあるのでしょうか?現時点では大企業の内線に使うために充分なスペックを持ったVOIP製品自体がない、というのが私の実感です。

メーカーのデモでいい音質が出ているといっても、しょせん「箱庭」的な小さな環境であり、サイト数が増えたり、バースティデータが増えたときにどうなるか、実例が出るまでは分かりません。スペック・シートを見ても、処理能力さえ明記されていない。まあ、東京と米国の間でpoint to point で使うくらいはどうってことないでしょう。海外なら多少音質が悪くても安さという点で割り切れますし。

いずれにしてもVOFR、VOIP、VOATM、それぞれの思惑を持ったメーカーがしのぎを削る競争が始まっています。ユーザの立場で製品を選択し、ネットワークを設計構築する私にとっては選択の幅や可能性が広がる楽しい時代になりました。

下記セミナーでATM/フレームリレーを使ったネットワークについて講義することになりました。このページで述べているよりは、もっと突っ込んだことも話しますので興味のある方はお聞き下さい。

主催者:日本工業技術センター Tel 03−3262−1892
「ATM/フレームリレーによるWAN企画・設計技法」
日時 6月26日(金)10:00〜16:50
場所 東京 申込方法等詳細は電話で問い合わせてください。
 
 
 
 

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