間違いだらけのネットワーク作り(17) 98/03/14
記事評「安くて速いネットワークを選べ」(日経コンピュータ98.3.16)


平凡な記事だなあ、というのがこの記事を読んだ率直な感想です。平凡なら取り上げなければいいじゃないか、と思われるかもしれませんが何故平凡かという理由に意味があるのでこのページに取り上げました。

安くて高速なネットワークを使う、音声とデータを多重化して安くする、こんなことが日経コンピュータの読者には新鮮なんでしょうか?ここに書いてあることの多くはこのホームページで述べてきたことと重なることが多く、言っていることが間違っているというのではありませんが、面白くないのです。何故か?新しい視点が無いから。

「新しい視点」という大きな話は後にして、どうしても文句を言っておきたい小さな話をします。
@ユーザ事例について
企業名を羅列して簡単な概要が表に書いてありますが、最も重要な情報がない。それはこれらのネットワークが何時から稼働しており、移行が何%終わっているのか、ということです。WHENについての情報が本文にわずかにあるだけで、ほとんどないのです。これらのユーザの中にはまだ設計中で稼働してなかったり、ごく一部が稼働しているだけのユーザがあります。

ネットワークは生き物です。移行の進展によって姿も中身も変化します。完成したネットワークでデータのレスポンスやスループットがどうだったのか、音質がどうだったのか、開発上の問題は何だったのか、これらの情報が無い事例は事例としての価値はありません。読者に安易にメリットだけがあるように誤解させることになります。ATM/フレームリレーでデータ・音声を統合することはこのページに何度も関連する記事を書いたうように、かなりな工夫を要するのです。特に銀行のような大きなネットワークは。

A基本的な間違い「図11音声を伝達する場合のATMとフレームリレーの違い」
ATMは短いセルを次々と中継処理するため遅延が小さい。フレームリレーでは一つの長いフレームをすべて取り込んでから次に中継するため、遅延が大きい、という説明がされています。

右図を見てください。「長いフレームをすべて取り込んでから次に中継する」ことをストア・アンド・フォワード方式といいます。たとえて言えば「バケツ・リレー方式」。こんなことをするフレームリレー交換機やFRADはよほどの安物です。今のフレームリレー製品の多くはカット・スルー方式です。フレームを受信しつつ、フラグメントして尻尾が到着するまえに頭を次のノードに向けて送出するのです。たとえれば「トコロテン方式」。フレームが長くても受信と送信を並行して行うため遅延は極めて少なくなります。
今では20万円のFRADでもカット・スルーをサポートしたものがあります。

新しい視点はないのだろうか?

ネットワークの価値が速さとコスト、というのは発想が貧弱です。経営や文化に対するネットワークの価値、などというと次元が違ってしまいますが、コンピュータ・システムへの高速ネットワークの影響は大きいものがあります。考えてみてください。ATMメガリンクを使って10Mビットの回線を東京〜大阪間で気軽に使えるようになった。10メガでつなげば東京と大阪が1本のイーサネットに乗っているようなものじゃないですか?もっとも、イーサネットの実効スループットは2〜3メガですから回線は10メガも不要かも知れません。

こうなると「遅くて高いネットワーク」を前提にして来た従来のクライアント/サーバ型のシステムはサーバやデータベースなどのコンピュータ資源の配置を大胆に変えられます。大阪のサーバだから大阪に置く、という必要はないのです。これは一つの例ですが、高速ネットワークであるがゆえに可能になるアプリケーションだってあります。

ネットワーク屋から見て浅くてものたりない記事になるのは仕方ないですが、日経コンピュータなら、高速ネットワークでシステムがどう変わるか、といった独自の視点を加えるべきではないでしょうか?




ホームページへ