間違いだらけのネットワーク作り(15) 98/02/28
「無音圧縮の面白さ」


無音圧縮とはVoice over Frame RelayやVoice over ATMで、音声が発生した時だけ音声フレームや音声セルを送出し、音声が無いとき(無音)は送出しない方式です。有音でも無音でも常にフレームやセルを送出するのに比べて、PVCやSVCに割り当てる帯域が少なくてすみます。通話中の音声チャネルで有音率は50〜60%と言われています。無音圧縮をすると40〜50%帯域が節減できることになります。

「圧縮」といっても、ファイルの圧縮のように冗長な情報を詰め込んで小さくする本当の「圧縮」をしている訳ではありません。英語ではSilence Suppression、直訳すれば無音抑止。この方が実態をよく表していると言えるでしょう。無音圧縮は目新しい技術ではなく、古くは海底ケーブルで使われていたそうです。つまり何10年も前からアイデアとしてあったわけです。

VoFRやVoATMが注目される中で、無音圧縮がまた脚光(というほどのものでもないですが)を浴びるようになっています。この短いコラムで言いたい結論は「音声チャネルが2本とか3本しか多重化されない低速回線では無音圧縮は使うべきだが、音声の帯域を平均値=有音率50〜60%に絞ると音質がヒドクなる」ということと、「充分多くの音声チャネルが多重化される高速回線では、音声の必要帯域を平均値で考えてよい」ということです。

右図が無音圧縮のイメージです。6本のチャネルが同時に通話しています。仮に音声の圧縮を16Kb/sのLD−CELPとすると、16K×6本×0.5(有音率)で音声の帯域は48Kb/sでいいだろう。回線が128Kとして、残り80KはデータのCIRとして割り当てよう、などと考えるとトンデモナイことになります。

図のaの時点、bの時点では有音3チャネル、無音3チャネルで有音率は0.5です。しかし、これはタマタマのことであってcの時点のように全チャネルが有音の時もあります。全チャネルが有音の時に帯域が有音率分=48Kしか確保されてないと、音声の半分は回線に送出できず音声フレームやセルが破棄される可能性があります。これは音の途切れになります。

多重されている音声チャネルが少ないときは平均は有音率0.5でも実際にはそれを超えている瞬間も多いということです。多重されているチャネル数が充分多い場合には各時点の有音率が常に平均有音率に近くなるため、音声の必要帯域を平均有音率で決めても音声フレームやセルのロスはごく少なくてすみます。

多重されているチャネル数が「充分多い」というのが何本か、というのは許容する音声フレームやセルの破棄率を決めて確率論で導くことになります。確率論も何もなく、確実に言えることは64Kとか、128Kといった低速回線では平均有音率で音声の帯域をしばってはいけない、ということです。8KのCS−ACELPでは8K×音声チャネル数分の帯域を、16KのLD−CELPなら16K×音声チャネルの帯域を音声用に見ておかないと音声フレームやセルのロスが多くなり音質が悪くなる、ということです。

それなら、いっそ無音圧縮を使わなければいいじゃないか、というのも間違いです。平均では有音率分しか音声は帯域を使わないのですから、空いた部分はベストエフォート的にIP等に割り当てられた方が良いのです。そして何より、無音圧縮は音声フレームやセルの数を半減させるためFRADや交換機の処理負荷を半減するのです。ヘタに無音圧縮を使わないと交換ノードの音声モジュールが過負荷になるおそれも生じます。

以上、簡単なようで奥の深い無音圧縮の話でした。




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