記事評 98/01/24
「音声もフレームリレーで統合 技術も成熟し、金融機関で導入進む」
日経コミュニケーション98年1月19日号(P130)
 


この記事は私がこのページで主張してきた「高速部分はATM、低速部分はフレームリレーでデータ・音声を統合すべき」、「銀行でもVOFR(Voice over Frame Relay)は問題なく使われている」を裏付けるものです。VOFRを普及させる上でインパクトのある記事です。

ただ、難点もあります。先ず、記事の冒頭で「音声の品質保証をできるようにするための、インテグレータのノウハウが蓄積されてきたことも見逃せない」と書いてあるにもかかわらず、インテグレータが誰かが表や本文に明記されてないことです。異機種の交換機やFRADを組み合わせてVOFRを実現する場合、「機器」そのものよりインテグレータの設計やインストールのノウハウの方が重要なのです。

記事の中で紹介されている5つのネットワークのうち、スルガ銀行、京都信用金庫、日興証券の3社はNTTデータ通信がインテグレーションおよび保守を行っています。このうち1社は私の担当が直接企画・設計を行っています。

次に誤り。京都信用金庫で使用しているFRAD、CR5/20が米ノーテルのOEMとなっていますが、米MICOM社の間違いです。MICOMは96年5月にノーテルに買収されましたが、CR5/20はMICOMブランドの製品のOEMです。

次に記事中の表1を見て、誤解が生じないための補足をします。表に書かれている以外にもVOFRを構築中の金融機関はたくさんあります。表1だけ見るとFRADとしてはMICOM(現ノーテル)1社、ロジック、モトローラ各2社となっています。しかし、VOFRで使われているFRADのシェアはこの表の比率と決して同じではありません。この表はサンプルが少なすぎるのです。

技術的な記述は限られた紙数の中で基本的なポイントが分かりやすくまとめられていて良いと思います。もちろん実際の設計やインストールでははるかに多くの要因が絡みます。一つだけ技術的な誤解を指摘します。「内線電話ネットワークでは、支店間で通話するために、全拠点間にメッシュ状に論理回線を用意する必要がある。」固定的に論理回線を設定するPVCでは本数が多くなりメンテナンスが大変、という指摘とSVC(相手選択接続)が支店間通信では有効、という記述があります。PVCをフルメッシュに設定しないと支店間内線通話が出来ないのは、お粗末なFRADを使った場合であり、ボイス・スイッチングの機能を持ったFRADはフレームリレーの上位で電話交換のためのプロトコルを持っているため各支店は1本のPVCの上で他の全ての本支店と通話できます。要は、ルータをフレームリレーで接続しているのと同じです。支店のルータは1本のPVCで他の拠点と接続されていますが、フレームリレーの上位のIPでルーティングされるため他のどの本支店とも通信できるのです。

SVCを使った場合も内線電話番号とフレームリレー・アドレスを対応づけるテーブルがネットワークのどこかに必要です。支店が移転したり追加されればテーブルのメンテが必要です。インターネットのDNS的なサーバーでテーブルを持つ場合は1カ所が2カ所のメンテですみますが、各支店のFRADがテーブルを持っていたりするとメンテは大変になります。必ずしもSVCだからメンテが楽とは限らないのです。

紹介されている5つのネットワークのうち、4つは大容量のATM/フレームリレー交換機とFRADを組み合わせてネットワークを構築しています。この場合、「間違いだらけのネットワーク作り(8)1+1+1=2となる無理な設計」で指摘した問題が生じる心配はありません。しかし、1社だけモトローラのFRADのみでかなり規模の大きいネットワークを構築しようとしているところがあります。まだ試行段階のようですが、どんな工夫をして小容量のFRADだけで「1+1+1=2」とならない設計をしているのか大変興味があります。

この記事は通信の品質と信頼性に厳しい金融機関でもVOFRがどんどん普及していることを知らせた、という点で意義が大きいと思います。「ATMが適用出来なければTDM」と思っている方は考えを改めてVOFRを検討されたらどうでしょう。

現在、私の担当で設計しているお客様では2月から、高速部分はATMメガリンクで、低速部分ではプライベート・フレームリレーでデータ・音声を統合して運用を始めます。これからは高速性と経済性を両立できるATM、フレームリレーでのマルチメディア・ネットワークが広く普及するでしょう。


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