間違いだらけのネットワーク作り(997)2018/01/06
「企業ネットワークの20年とこれから」

  明けましておめでとうございます。 新しい年がICTにかかわるすべての人にとって佳い年となることを祈念します。

  この「間違いだらけのネットワーク作り」がもうすぐ1000号になります。 ほぼ毎週書いていますから、20年経つことになります。 1997年6月に書き始めたので、昨年6月が20周年なのですが年に数回は休載するので1000回到達が少し遅れました。 今年4月7日土曜日は第19回京都研究会です。 1000回到達を記念して盛大にやりたいと思っています。 テーマやプログラムは2月初めにご案内する予定です。

  1000回のコラムを振り返ると日本の企業ネットワークの20年間の歴史が分かります。 日経コミュニケーションは休刊になり、その記事を20年前から読みたいと思っても手段がありません。 しかし、このホームページなら1000個の記事をいつでも調べられます。 例えば2001年当時、企業ネットワークで何が話題になっていたのか、すぐ知ることが出来ます。

  今回は企業ネットワークの20年を要約するとともに、これから数年間の企業ネットワークがどうなるのか述べたいと思います。

「企業ネットワークの20年とこれから」
   

 企業ネットワークの20年を大胆に要約し、2020年までを表にまとめました。



「多様化と帯域爆発の時代」(1996年〜2000年)
データのトラフィックが電話を凌駕し、爆発するトラフィックを安価にさばくためフレームリレー、ATMメガリンク、デジタルアクセスなど、現在から見れば遅いのですが、当時は画期的な速度の回線が低価格で提供されました。

1995年にWindowsが登場し、TCP/IPが使えるパソコンが廉価になったことでインターネットの普及が加速しました。

この時期、フレームリレー、ATM、TCP/IPとネットワーク技術の多様化が進み、書店にはネットワークの書棚がいくつも立ち並んでいました。

「IP融合の時代」(2001年〜2005年)
  前期のフレームリレー、ATMがあっと言う間に消え去り、代わって広域イーサネット、IP-VPNが企業ネットワークを席巻しました。 当初、IP-VPNが優勢だったのですが、ローソンの事例を始め、このホームページで広域イーサネットを応援したこともあって広域イーサネットが広がりました。

 ローソンの広域イーサネットは2003年に倒産したクロスウェーブ・コミュニケーションの広域LANを使いました。 1999年12月に情報化研究会で八巻さんにサービスの紹介をしてもらったのがきっかけです。

 多様化していた技術がIPに一本化されました。 その象徴が「東京ガス・IP電話」です。 2002年11月に私が受注し、12月には日経新聞の1面に大きく報道されました。 これをきっかけにIP電話ブームが起こり、電話もIPで扱うことが当たり前になりました。 東京ガス・IP電話は2003年6月に稼働し、10年あまり使われました。

「モバイルブロードバンドの幕開け」(2006年〜2010年)
 この時期もっともインパクトがあったのは07年3月にイーモバイルが始めた下り3.6M、月額5000円で定額のモバイルブロードバンドです。 この年の京都研究会の後、清水寺の舞台で会員の津坂さんがノートパソコンでイーモバイルを使って見せてくれました。 すいすい動くのに驚きました。

 どれだけ使っても定額なので専用線と同じです。 これを固定回線の代わりに使えないか実験したところ、長時間接続したままでも大丈夫でした。 古河電工さんにイーモバイルが使えるルータを作ってもらい、2008年に京葉ガスさんで稼働させました。

  現在のLTEにつながるモバイル・ブロードバンドはドコモでもauでもない、イーモバイルが創始したのです。

 その一方で名前倒れに終わったサービスがあります。 NGNです。 もはや定義も忘れました。 光ファイバーをベースにしたサービスで、様々なサービスのプラットフォームになるはずでした。 しかし、プラットフォームになったのはインターネットであって、NGNではありませんでした。

 この頃、「クラウド」という言葉は一般的ではなかったのですが、AWSがサービスを始めたのは06年です。 Amazonの先見の明はすごいですね。 いまやクラウドを使う日本の企業の80%がAWSを選択しているそうです。 残りがAzure。 それ以外はごくわずか、ということです。

 ネットワークではありませんが、07年6月に米国で発売され、日本では08年から販売されたiPhoneはスマートフォン普及の嚆矢となり、ICTを大きく進化させました。 10年に発売されたiPadは大手航空会社が20キロ近いパイロットのマニュアルをペーパーレス化したり、企業がプレゼンテーションの良さを生かしてパソコン代わりに営業マンに使わせるなど、タブレットという新しいツールを創出しました。

「クラウドシフトの進展」(2011年〜2015年)
  この期間、クラウドの導入が進みました。 2015年末時点で日本の企業でクラウドを使っているのは45%、導入予定を加えると60%に達しました。 クラウドのメリットは短期的なコスト削減というより、自社でハードやソフトを所有してシステム構築するより、手早く開発出来て長期的に見ればコストも抑制できる、ということです。 しかし、日本においてはIT部門の高齢化が進み、自社で開発・運用することが出来なくなっている、という理由が増えているように思えます。 ネットワーク分野でも、ファイアウォールやプロキシ、メールサーバといったものを自分で運用できないので、サービスメニューを選択して、あとは毎月の料金を払うだけ、という「サービス化」が受け入れられています。

  2014年4月にイオンが格安スマホを発売したことで、MVNOに注目が集まりました。 私は2015年にMVNOの閉域モバイルをメイン網として使うネットワークを構築しました。 安価なモバイル回線を多用して、高価は固定回線や電話回線は極力使わない、という発想です。 経済性だけでなく、災害時(熊本地震)にも内線電話やメールが使えたことがBCP対策としても有効なことを証明しました。

「CMA時代」(2016年〜2020年)
  これからの数年はCMA、つまりクラウド、モバイル、AIの活用が企業ネットワークにとって重要になると思います。 クラウド化の流れはさらに進みます。 モバイルは5Gで超高速、超低遅延、超多数端末接続が可能になり、IoTはじめ、さらに利用分野が増えるでしょう。 固定回線からモバイル網へのシフトは現在よりやりやすくなります。

 2011年に登場したSDN製品はこれから本当のSDNになると思います。 「本当のSDN」とはAIを備えていて、ネットワークの資源管理やQoS制御を自動化できるSDNです。 現在の企業ネットワークでよくあるトラブルはネットワークが使えない、といった単純かつ深刻なトラブルではありません。  サービスのレスポンスが悪いとか、テレビ会議の映像が乱れる、といった品質にかかわるものが主です。 この原因を人間が切り分けるのは手間と時間がかかります。

  どんなトラフィックがどれだけ流れていて、接続されているサーバやパソコンのCPUやメモリといった資源の使用率はどうか、といった様々な情報をAIが管理し、トラブルを未然に防いだり、発生したときの切り分けや復旧が自動化出来たとき、SDNは完成したと言えるのではないでしょうか。

 今、私はコミュニケーション・ロボットの商用サービス化に取り組んでいます。 音声認識AI、顔認証AIなどとともに、カメラ、マイク、スピーカー、各種のセンサーを備えたコミュニケーション・ロボットは様々なサービスのインタフェースになるでしょう。


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