間違いだらけのネットワーク作り(704)2011/09/03
書評「クラウドが変える世界」

 
今週、お客様とした会話の中で一番面白かったのは「自炊」の話です。  自炊は紙の書籍や雑誌を自分で裁断、スキャンして電子化すること です。  この自炊を本格的にやっている人と出会ったのです。  日経コンピュータを講読されているのですが、届くとすぐに自炊してiPadに入れている そうです。  月2回発行の雑誌なので、すぐ溜まるのですが、自炊すれば場所も取らないし、何冊でも持ち運べます。   自炊には定番のスキャナーや裁断 機があるのですね。  スキャナーはスキャンだけでなく、OCRの機能もついていて、電子化した本を書棚形式で表示するアプリなど、ソフトウェアのツール も充実しているようです。  悩みは写真やビデオも格納するので、iPadの64GBでも容量が足りないことだそうです。  やはり、コンテンツの保管は クラウドがいいのかも知れません。  ちなみに、この方は私と同様、Picasaの愛用者だそうです。

 日経コミュニケーション9月号にコラム、”プロマネは「責任」の前に「5つの権限」を持て”が掲載されました。  権限のあるプロマネほど楽しい仕事は ありません。  しかし、一般にプロマネは責任ばかりが問われているように思えます。  楽しいプロマネ論としてお読みください。


書評「クラウドが変える世界」 宇治則孝著  日経新聞出版社刊 1600円(Amazonへ リンクしています)

 宇治さんは私がNTTデータで東京ガスさんや積水化学さんの仕事をしていたときの上司で、現在はNTTの副社長、CTOです。 今も少人数での勉強会を やらせて頂いています。
今週、この本を出版されたと知り、さっそく読んでみました。 

 経営者らしい、高い視点と広い視野でクラウドの意味を明らかにし、豊富な事例で分かりやすく現状と今後の動向を解説しています。  しかし、本書の特徴 は「解説」にあるのではありません。 情報通信社会の潮流を、「パラダイムシフト」、「サービス融合」、「グローバル化」という3つの視点でとらえ、その 中でクラウドをどう活用すべきか、企業のみならず、国としての取り組み方に言及しています。  トレンドのとらえ方とクラウド活用の考え方に、単なる解説 ではない、著者の独自性が出ています。 印象的なのは「課題先進国」、「課題解決先進国」という言葉です。  少子高齢化、大震災からの復興という、世界 が経験したことのない課題を、クラウドを活用して日本が先駆けて解決することで、世界に貢献すべき、というのです。 

 ミクロな話題で面白かったのは36ページにある「ネットワークの進化」という図です。  ネットワークの進化はほんの30年程度の間に急激に進んだのだ ということが、スッキリと分かります。  今度、講演のネタで引用させてもらおうと思います。  もう一つはビッグデータの活用例として紹介されている、 ドコモの「モバイル空間統計」です。  ドコモの基地局がリアルタイムに把握している人の動きを蓄積・解析して、都市計画や防災計画に活かそうというもの です。

 内容以前のこととして、この本に感心したのは東日本大震災のことはもちろん、なでしこJapanにまで触れており、「新鮮である」ということです。   新鮮、ということはごく短期間で書き上げた、ということです。  超多忙な経営者でありながら、それをやり遂げた集中力と体力に驚きました。  そんなこ とからも、著者の情熱が伝わって来ます。  ご一読をお勧めします。

 さて、以下は感想ではなく私の意見です。

 私は今年に入って20回近く講演やプレゼンをしていますが、その中で「クラウド」という言葉を1回も口にしたことがありません。  今、私の頭の中にあ るのはオーダーメイド型のネットワークサービスとスマートデバイスだけだからです。 最近の講演で必ず紹介する「iPadカタログ活 用アプリ」はオンプレミスのシステムです。  いわゆるドキュメント管理をするソリューションなのですが、1000台規模のiPadで使って頂い ているお客様もあります。  実はこのお客様は私の提案と、クラウド(SaaS)を比較検討して、非クラウドである私の提案を採用したのです。 理由は価 格が同等であること、アプリの動きが数倍軽やかであること、UIがいいこと、の3点です。

 「所有から利用へ」を実現するクラウドは早く、安く、システムを導入できるのが大きな特長です。  しかし、クラウドでなくても「早くて、安くて、高品 質」が実現出来るケースはあるのです。  SaaSでは個々のユーザーの言い分を聞いてカスタマイズすることは不可能です。  サービス内容で差別化しよ うとしても、SaaSを使う限り、金太郎飴的サービスしか出来ません。  私のチームで開発しているアプリはカスタマイズ要求にも柔軟に対応できます。

 これから、ますますクラウドの利用が広がることは間違いないでしょう。  医療クラウドのように、地域や組織の枠を超えて、情報の蓄積と連携が必要な分 野はクラウドしかないと思います。 しかし、「クラウド万能」ではないと思います。  ヤマザキのパンでは満足できない人が、町の「焼きたて パン」の店に来るように、オンプレミスが適する分野は残ると思います。 

 また、クラウド万能主義はIT部門の空洞化と技術力低下を招き、クラウドに満足できなくなってもオンプレミス(プレイべートクラウドも含みます)に戻る という「選択肢」を持てない、「クラウドの奴隷」になる危険もあります。  クラウドとオンプレミスの賢い使い分けをしたいものです。

注)上記の本でクラウドが万能と書いてある訳ではありません。 念のため。


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