間違いだらけのネットワーク作り(612)2009/10/31
「LTEは超ガラパ ゴスの チャンス?」

 今週水曜日の午後は明治記念館でこのコラム の連載が600回を突破した記念の講演会とパーティをしました。  夜の部のパーティには21人が参加、バークレイキャピタル証券のアナリストで、超ガラ パゴス研究会の委員である、津坂徹郎さんに講演をしてもらいました。 津坂さんはドイツ証券、リーマンブラザーズ証券(昨年の破綻を経験)、そしてバーク レイキャピタル証券と一貫して通信分野のアナリストをしています。 平成14年の研究会名簿に津坂さんの名前があるので、7、8年前に研究会に入会したよ うです。
 この日、嬉しかったことは3つあります。 まず、数年ぶりに会ったAさん(男性)が地方のSI会社からキャリアアップして大手キャリアの肩書のある社員 になり、しかも結婚していたこと。 良かったねえ、と思わず肩をたたきました。 2つ目はこれも久しぶりに会ったBさん(女性)が、以前より元気で楽しそ うだったことです。 Bさんは大手キャリアの社員だったのですが、3年あまり前に外資系コンサルティング会社に転職したのです。 キャリア時代よりいきい きしていて、転職が成功したのだなと思いました。 この二人はともに30代なのですが、ふと思いついて、「30代の人、手をあげて!」というと半数くらい の人が手を挙げました。 これが3つ目の嬉しかったことです。 研究会の創立メンバーが50代に突入したので、会員の平均年齢も上がったのでは、と思って いたのですが、中核は30代だと言うことが分かりました。
 ちなみに、津坂さんも30代です。 これからは、もっと20代、30代の人に話してもらう機会を増やそうと思いました。 ということで、若い方、気楽に 入会してオヤジ世代だけでなく、同世代の人たちと交流してください。 

 10月26日(月)に掲載されたITproのコラム、「Gmail と競合しないのはなぜだろう?」のアクセスランキングは次のとおりでした。

       


「LTEは超ガラパゴスのチャ ンス?」
 
 
今週は津坂さんの講演のポイントを紹介しま しょう。 超ガラパゴス研究会の目的は先進的な技術や魅力的なコンテンツを持ちながら特異な進化をとげ過ぎ、世界に出ていけない日本の通信事業者やメー カーに、ガラパゴス状態から脱するための提言をすることです。 対象とする業界は通信業界、電機業界、コンテンツ業界の3つで、通信業界に対しては次の5 つの提言がなされました。

「通信業界への5つの提案」要旨
@日本の通信業界は先進的な技術を用いてグローバル展開できるポテンシャルがあることを認識すべきである
A日本の通信端末メーカーはグローバルに通用するマーケティング力とコスト競争力を保有すべきである
B日本の通信端末メーカーはハードとソフト、サービスは切り離せないものであることを理解すべきである
C日本の通信関連企業の経営者は経営陣の多様性を取り入れるべきである
D日本の通信キャリアは海外展開をするのかしないのか、各社のスタンス、考え方、長期戦略を明確にすべきである

 この中で特に印象に残ったのはBです。 アップルは後発であるにもかかわらず、すでに世界のスマートフォン市場で約10%のシェアを持っているそうで す。(2009年1Q) 日本でもソフトバンクのiPhoneは累計100万台近くになっているようです。(ソフトバンクはなぜか、台数を公表しません ね。 ちょっと卑怯な感じがします。 津坂さんの話の中にも台数は出てきませんでした。) 日本の端末メーカーは端末を売るために、頻繁に新しい端末を発 売します。 津坂さんによれば、新しい端末を出しても売れるのは3カ月くらいで、6カ月たつと棚からもなくなるそうです。 メーカーは頻繁に新端末を出す ため、ハードやソフトの開発に膨大な費用がかかります。 
 対して、iPhoneは発売から2年以上たちましたが、ハードもソフトもユーザインタフェースも基本は何も変わっていません。 日本では同じ端末は半年 も売れないのに、なぜiPhoneは同じものが2年以上売れ続けるのか?  魅力的なアプリやコンテンツが次々に登場するからです。 アップルの成功は iPhoneのすばらしいユーザインタフェースだけに原因があるのではなく、アプリやコンテンツが流通し、次々に生まれるエコシステムを作り上げたことに あります。 同じ端末がどんどん売れるのですから、日本の端末メーカーと比べて生産効率は極めて高くなります。 実際、今や日本の端末よりiPhoneの 方がずっと安くなりました。
 これまで日本ではソフトやサービスは携帯キャリアが考えるもので、端末メーカーは携帯キャリアに盲従して端末を作っていればそこそこ利益が出たのです が、もうそんな時代は終わったということです。 

 津坂さんの話の後半はLTE、4Gについてでした。 LTEは超ガラパゴスのいいチャンスになりそうです。 3Gはドコモが欧米に3-4年先行して 2001年に始めました。 しかし、先行したことはメリットにならず、ガラパゴス化の一因にもなりました。 しかし、LTEでは先行するのは米ベライゾン で、年内にサービス開始する予定だそうです。 ドコモは来年12月、イーモバイルやソフトバンクは2011年以降、auは2012年末からです。 つま り、2009年から2012年という比較的短い期間に多くの国でサービスが始まることから、3Gにおける「先走り」の失敗は心配する必要がありません。  日本の端末メーカーも、キャリアも世界で売っていくことを前提に欧米の動きと同期をとって開発が進められます。

 LTEにはさまざまな用途が考えられます。 例えば、私が3.5Gでやって来た固定通信における光ファイバやADSLの代替。 3.5Gは遅延が数百ミ リ秒あり、VoIPやシンクライアントといった遅延に弱いアプリには不向きでした。  LTEは数ミリ秒の遅延しかないため、リアルタイムなアプリも大丈 夫です。
 
 津坂さんは「携帯ホットスポット」(ポケット4G)とでも言うべき使い方をデモしてくれました。  携帯ホットスポットは3.5Gでも製品があります。  ポータブルな小型ルータにLTEとWiFiを載せ、図のようにデジカメも電話も、PCもWiFiでルータに接続します。 定額のLTE1つに加入してお けば、さまざまな端末で電話やネットの利用が出来ます。 実際にはLTEはまだサービスされてないので、津坂さんはWiMAX使ってデモをしました。 写 真がWiMAXのモデムを挿したルータです。 津坂さんは無理やりコートのポケットに入れていましたが、ちょっと大きいですね。 iPhoneをWiFi でルータに接続し、撮影した写真をルータ経由でネットにアップする、というデモをしたのですが、残念ながらWiMAXの電波が明治記念館ではほとんど受か らず、うまく行きませんでした。

 LTEを光ファイバの代替にしたり、ポータブルホットスポットを作ったりというのはアプリケーションでも、サービスでもありません。 日本のメーカーや キャリアは端末だけでなく、LTEの高速性を活かしたアプリやサービスをマーケティングを含めて考えなければいけません。 もうとっくに検討しているので しょうが、韓国勢や台湾勢に後れを取ってほしくないですね。








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