間違いだらけのネットワーク作り(576)2009/02/14
記事評「見積もり2億円のIP電話を820万円で構築?

  今日は暖かくて、窓を開けると春のような空気です。  このまま一本調子で暖かくはならず、週明けは寒くなるそうです。  三寒四温の季節に入ったと いうことですね。
4月4日の京都研究会は先週土曜日にお知らせしてすぐ、申込が来始めました。  情報化研究会への入会と京都研究会への参加を同時に申し込む方もいます。  たくさんの方と会えるのを楽しみにしています。  3月12日に明治記念館でする講演では有償Gmail vs OSSベースのメールを目玉の一つにし ます。  コスト比較や使い方の比較をするといろんなヒントが得られます。  今週、新しい目玉が加わりました。  Asteriskです。   ご存じ の無償IP電話サーバソフトです。 これを使って大館市役所がプロに外注せず、自分たちでIP電話を導入したという記事(見積も り2億円のIP電話を820万円で構築した秋田県大館市から学べること )がITproに掲載されました。  私が3年くらい前から主張してい るのは「使われなくなった電話にお金をかけてはいけない」ということです。  典型的な意見は「メー ルが電話より3倍エライ理由---IP電話の採算を見直そう 」に書いています。  お金をかけない典型をアマチュアの人たちがやってしまったの が大館市ですね。  ITproたる我々はこれをどう受け止め、どう対応して行くべきなのか?  これも面白いテーマなので3月12日の講演の中で触れた いと思います。

 3 月12日講演「常識を捨てて考えるIT基盤と企業ネットワーク」
 
 
記事評「見積もり2億円のIP電話を820万円で構 築?

 
JTBさんの有償Gmailのニュースも20億円が9億円になる、というのが面白くて、アポイントを取ってヒアリングに行きました。  まあ、 Gmailならコストが半分以下になっても不思議はないな、と思っていました。  しかし、大館市のAsteriskの記事にはとても違和感を覚えまし た。  かつては東京ガスさんのIP電話を手がけ、いかに安くIP電話を実現するか色んなことをやって来たので、なんだかおかしいな、と思ったのです。   プロのPBX業者にIP電話を構築してもらうより、ユーザーが自分で無料IP電話ソフトを使って構築した方が安くなるに決まっています。 しかし、IP 電話システムでは配線系の費用や電話機の費用の比率が高いのです。  それはプロがやろうが、アマチュアがやろうが大差ないので、2億円と820万円とい う、20倍以上の差がつくのはおかしいと思いました。  比較の土俵が違うんじゃないか?  ということです。  やはり、違っていました。

 おかしいと疑問を持てば、解消すればいいのです。  JTBさんは都内なので訪問しましたが、大館市は遠いので電話とメールでヒアリングさせて頂きまし た。  電話2本と、メールのやりとり1回で、費用の内訳をはじめ、疑問はきれいに解消されました。

 まず、104で大館市役所の代表電話を調べました。  代表に電話をかけて、記事で紹介されている労政係の中村さんにつないでもらいました。  この電 話自体、Asteriskで呼処理されているわけですが、転送もスムーズで音質もまったく問題ありませんでした。  中村さんと総務の方のお二人に教えて いただいたのですが、お二人ともとても親切で、丁寧な、しかも迅速な対応をしてくれました。 電話でクドクドお聞きするのは負担をかけるので、メールに質 問を箇条書きにして送りました。  たぶん、2、3日はかかるだろうな、と思っていたら3時間もしないうちに返信が来たのです。 メールを見ながら、もう 一度電話をして補足的な質問をさせてもらい、これでヒアリング完了です。

 分かったことの要点。  プロが提案したIP電話2億円には、10数か所の市庁舎間を結ぶWANの費用がとても長い期間分入っているそうです。 また、 庁舎内のLANもデータとは別に音声用に新規に構築する費用が入っています。 この2つで2億円の半分を超えるのです。  対して、大館市役所の皆さんが 構築したIP電話はWANも、庁舎内のLANも既存のデータ系ネットワークに相乗りさせたのです。 このため、WANの費用は増えないし、庁舎内の配線も 基幹部分はあるものが使えますから、支線だけ引けばよかったのです。 

 プロのIP電話も同じ条件で構築すれば、数千万円で構 築できたでしょう。  Asteriskでの構築費用は820万円ですが、配線だけでなく、マニュ アル整備や、勉強など市役所の方が動いた人件費を考ると実質的には千数百万円程度かかっているのではないでしょうか。   したがって、プロのIP電話vsアマチュアのIP電話のコストは20倍以上の差ではなく、数倍 の差、 ということになります。  それにしても、数倍の差があることは事実ですから、プロたる我々は電話系ビジネスをどうすべきか考えるべきですね。  そうい う警鐘を鳴らしたという意味で、このITproの記事は価値があります。  でも、ちょっとドライブがかかっていて、プロが可哀そう(自分も含めて?)に なったので、この記事を書きました。

 高層ビルや広大な工場の配線設計や工事、IP電話システムそのものの設計などをアマチュアがやるのは無理です。  しかし、中小のオフィスならアマチュ アが自分でやってしまえます。  さて、プロはどこに存在価値を見出せばいいのでしょう。  数の上では高層ビルや工場より、中小のオフィスの方が圧倒的 に多いのです。 

 大館市役所の方がやったことは素晴らしいです。  中村さん含め、6人の方が1年かけてじっくり構築したそうです。  予算を担当している総務の方と話 していて、「VoIP」、「短い音声パケット」、「VLANを切る」などという言葉が自然に出てくるのに驚きました。  サラリーマンなんだから高くても 業者に頼めば楽だし、それで給料が下がるわけでもないのに、厳しい地方自治体の収支を少しでもよくするために、ゼロから勉強して構築したのです。  見習 いたいですね。  電話にお金をかけすぎた大企業も反省してはどうでしょう?


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