間違いだらけのネットワーク作り(539)2008/05/31
記事評「2つのワイヤレス・ブロードバンド記事」

 今週、九州と四国が梅雨入りしましたが、東京も梅雨入りしたと言っていい天気模様ですね。  例年より早いようですが、梅雨明けも早くあって欲しいです ね。  1年で一番好きな季節は梅雨明けの、太陽の光が一番強いときです。  毎年7月末に研究会のコアメンバーと旅行するのも、梅雨明けで気候が安定し ていて、強烈な太陽が楽しめるからです。  それにしても、これからの2か月ほどを梅雨のうっとうしさを忘れて楽しくすごす工夫をしなきゃいけません。

 5月14日にアカデミーヒルズで行った講演、「テレコミュニケーションからリッチコミュニケーションへ−ワイヤレス・ブロードバンド/NGN時代の企業 ネットワーク」の受講者アンケートの結果がやっと事務局から届きました。  



 事務局からのコメントと、受講者のコメントは次のとおりです。
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  ※「とても参考になった」と「参考になった」の合計が92%と,通常ではまず出ない,きわめて高い評価でした。
   ご参考にセミナー全体の評価(平均ではなく独立に尋ねたもの)は「とても参考になった」と「参考になった」の合計で64%でした。
   セッション4への評価の突出ぶりが,お分かりいただけると思います。
(松田注:セミナー全体の評価にも私の講演が貢献しているのではないでしょうか、とずうずうしくコメントしておきます)

●セッション4へのご意見・ご感想(自由記入欄)
・松田様のセミナーについて、とても貴重な意見を聞けました。
・特に松田さんの話しには、大変興味深いものばかりでした。
・松田氏の講演をもう少し長くして欲しい。
・具体的で分かり易く、断定的で良かった。
・このセッションは倍の時間あっても良いと思う。
・反逆的で非常におもしろかった。もっと聞きたい。
・面白すぎる。技術的な話しをもっと聞きたい。

  ※不満などのマイナス意見は皆無でした。
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 「反逆的」というのが面白いですね。  私は反逆的ではありません。  視点が他のスピーカーと180度違うだけです。  提供側の視点でベンダーに迎 合し、ベンダーの広告代理店のような話をするのでなく、ユーザと同じ視点で考え、話しているだけです。  嬉しいのはこの講演を聴いてくれた約200人の うち大部分が提供側の人なのに、私の講演を肯定的に評価してくれたことです。  聴いてくれた皆さん、無理やりニーズの存在を仮定するユニファイド・コ ミュニケーションなんぞやめて、私と一緒にコンバインド・コミュニケーションを盛り上げましょう。
 講演の依頼はほとんどの場合受けて立ちますので、 tuguhiro@mti.biglobe.ne.jp まで連絡をください。

 私の新著「間 違いだらけのネットワーク作り」は出版社によるプロモーションがあまりされてないのですが、日経コミュニケーション6月1日号(101ページ)が 書評に取り上げてくれました。  いろいろ書いていますが、我が意を得たりに近いのは「そんな時代によりどころになるのは、先駆者がある答えにたどり着く までの”考え方”である。 ルーターレス・ネットワークや大規模なIP電話など、常に新しい企業ネットワークの導入を手がけてきた著者は、コラムを通じて 答えに至るプロセスを公開してきた。」   公開という言葉は秘密をばらすようなニュアンスがあって、嫌いです。 別に秘密をばらしているのではなく、言 われてみれば「なるほどね」という視点やアイデアを書いているだけです。  ”考え方”を一言でいうなら、「目的から考える、マクロに考える、単純に考え る」の3つがポイントです。  これだけで、たぶん、1時間以上は話せると思います。  

 


記事評「2つのワイヤレス・ブロードバンド記事」(日経コミュニケーション6.1、日経NETWROK6月号)

 上記の講演のテーマで「ワイヤレス・ブロードバンド」をNGNの前に持ってきていることからも分かるように、私はNGNよりワイヤレス・ブロー ドバンド(WBB)の方がはるかに革新的で面白く、ユーザに新たな価値を提供できるサービスだと思っています。 ですから、日経コミュニケーションと日経 NETWORKが同時にWBBの特集をしても不思議には思いません。

 内容や書き方の上手・下手を比較できる、という楽しみも両誌を購読している読者には生まれます。  ではさっそく比較してみましょう。 結論から言う と、私は日経NETWORKの特集の方を好みます。 むつかしいワイヤレスの仕組みを実に分かり易く解説しています。  概念区分が正確です。  次世代 PHS、モバイルWiMAX、3.9G(LTE)を同じWBBの土俵でとらえています。  日経コミュニケーションの記事は冒頭の文章「日本では2009 年にモバイルWiMAXや次世代PHSなどのモバイル・ブロードバンド・サービスが始まる予定。 しかし多くの加入者を持つ携帯電話業者が、その1年後に モバイルWiMAXや次世代PHSの伝送速度を超えるサービスを始めることになる。 モバイル・ブロードバンドのサービスを見極めるうえでも、LTEの動 きに注目しておく必要がある。」 で分かるように、新興の次世代PHSやモバイルWiMAXがモバイル・ブロードバンドであり、LTE(3.9G)は既存 携帯業者のサービスであって同じカテゴリーには入らない、という書き方です。  これはおかしいですね。

 両誌とも私とまったく言葉使いが違うのは、私は「ワイヤレス・ブロードバンド」といい、両誌は「モバイル・ブロードバンド」という点です。   私は移 動通信(モバイル)だけでなく、固定通信(フィクスト)でも用途が広がるので、モバイルとフィクストの両方を含めて「ワイヤレス」と呼んでいるのです。   そのうち、光ファイバが必要なケースは固定通信でも50%程度になってしまい、ほとんどWBBで済ませるようになると思います。 私がデスクなら、モバ イル・ブロードバンドという言葉にはダメ出しします。  記事中にも固定通信の用途が書かれてないのは残念でした。 では、各記事で印象に残った点を短く 書きます。

「LTEが世界を覆う」(日経コミュニケーション)
 
 KDDI(au)がcdma2000を止めて、W−CDMAにする。  LTEが世界を覆う前に、W−CDMAが世界を覆い、cdma2000が消滅し つつあるのです。  どちらも第三世代携帯の標準なのですが、W−CDMAが多くのベンダーから基地局設備や端末用チップが供給されているのに対し、 cdma2000はこの技術を開発したクアルコム社の独占状態です。  auなど、cdma2000を使っている携帯業者は端末用チップがどんなに高くて も、たとえOSであるBrewが高くて出来が悪くても(実際に出来が悪いかどうかは知りませんが)、クアルコムから買うしかないのです。  こんな独占状 態に世界中のオペレータ(携帯電話業者)が愛想をつかし、米国のベライゾンのようにW−CDMAへ乗り換えるところが出ているのです。 auもそうするの ですね。 同じKDDI陣営でLTEと、WiMAXの2つのWBBをサービスして、どういうメリットがあるのでしょう?  投資の分散と、共食いのデメ リットしかないように思うのですが。

 auがcdma2000を止めるというのをはっきり書いたのを見たのはこの記事が初めてだったので、そこから記事とは関係のないことを書きました。   多くのハード、ソフトベンダーがユーザ・ニーズの多様化に対応し、安くて高機能な製品を提供できるよう、ケータイの世界でもオープン化の流れが進んでいま す。  クアルコムのような、あるいはマイクロ・ソフトのユニファイド・コミュニケーションのようなクローズドなビジネスモデルはもはや生き残れないので しょう。 と、ついでにUCの攻撃もしておきました。 

「10M超モバイル時代がやってくる」(日経NETWORK)

 17ページの力作です。 とにかく、今まで無線のテキストは読もうとしたけど、難しくて挫折したという人は読んでください。  ワイヤレ スの速度が周波数帯域幅、変調方式、多元接続方式、MIMOの4つの要素で決まり、それぞれがどんな仕組みか、分かった気にさせてくれます。  「分かっ た気」になることが大事です。  解説が深くなりすぎると、誰も分からなくなります。 解説は「分からないことは書かない」のがポイントです。



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