間違いだらけのネットワーク作り(538)2008/05/24
記事評「電話のないユニファイド」

 今週は先週に引き続いてプレゼン週間で、3回、合計6時間プレゼンをしました。 先週のアカデミーヒルズでの講演を聴いて、引き合いをいただいた会社が 対象です。 もともと私の講演は過激な内容が多いですが、個別のプレゼンはさらに言いたい放題に話せ、時間も十分かけられるので講演以上に盛り上がりま す。
 「コンバインド・コミュニケーション」という言葉がどの程度、浸透したかGoogleで検索すると、アカデミーヒルズの講演についての感想が書かれたブ ログが出てきました。
「次世代ネットワークシンポジ ウム参加してきました」です。 「ネットワークのお勉強しませんか」というサイトを運営している方らしいですね。  私がユニファイド・コミュニ ケーションを否定したことを心配してくれていますが、4組のスピーカーの中で、「話は一番面白かったです。」という評価をしてくれているのは嬉しい限りで す。 ユーザの論理でなく、売る側の論理が強すぎ、ニーズから浮いているユニファイド・コミュニケ−ションを誰も彼もが何の疑いもなく持ち上げたのでは、 ユーザにとってろくなことはありません。   対比すべき事実とアイデアを提示し、ユーザが比較し、選択できるようにすべきです。  対比する一番分かり やすい方法が「否定」です。 
 月曜日にITproに掲載された、「『進 捗率』では出来ないプロジェクト管理」はまずまずの評価でした。  新著「間 違いだらけのネットワーク作り」に寄せられた感想もいくつか紹介しましたが、ちょっとそれにスペースを割きすぎた感はあります。

     


 
記事評「電話のないユニファイド」(日経コミュニケーション5.15 ケーススタディ:スクウェア・エニックス)

 先々週書いたように日経コミュニケーションは5月1日号でユニファイド・コミュニケーション(UC)の記事を2つ掲載し、UCを盛り上げたいの かな、と思いました。 5月15日号には前号に引き続き、UCの連載記事がありました。 今回はUCの記事はこれだけかと思ったら、ケーススタディで取り 上げていました。  
 UC盛り上げキャンペーンはまだしばらく続きそうです。  なので、私もUC批判キャンペーンを続けます。  ある人が評論家山本夏彦さんの文章を評し て、「寄せては返す海の波のように、同じことを繰り返し書く」と書いていました。 これは同じことを書くのが悪いと言っているのではなく、自分の意見を浸 透させるには「寄せては返す海の波」のように何度でも書くべきだと言っているのです。  ということで、講演でも、文章でも、「ユニファイド・コミュニ ケーションなんてメリットのないことは止め、コンバインド・コミュニケーション(CC)で行きましょう」ということを繰り返し述べたいと思います。

 CCとUCの比較表を再掲します。  ビジネスでの電話利用は最近の6年間で約70%減少しています。  1日に5本以上電話がかかってくる人は1割程 度しかいないのです。  UCを導入したある企業は講演で、「UCのプレゼンスを使って、相手の状況に応じて電話やメールを使い分けできるので、話中によ る電話のかけなおしや電話の取次ぎといった無駄な時間が社員一人あたり1日○○分節約でき、全社では1日○○時間、1年で○○万時間、人件費に換算すると ウン億円節約できます」という説明をしていました。 ナンセンスですね。  何もしなくても、電話の利用が70%減少すれば、話中も取次も70%減少して いるのです。 お金をかけてUCなどやる必要はない。  要は使われなくなった電話に投資するのは損なのです。

 ですからCCでは電話はオプションです。  コミュニケーションの主役となったメールを安くて使い易いオープンソースベースのもので実現する。  積水 化学さんは市販のメールシステムと比較し、導入・運用コストがはるかに安価になるオープンソースベースのメール/グループウェアを、グループ2万人で使っ ています。  私の提案するCCではメール/グループウェアは積水化学さんと同一のものを推奨しています。   大企業で使える機能の豊富さ、オープン ソースの日常的なバージョンアップやパッチが適切に行われ、品質が保証されているからです。

 メール/グループウェア以外ではWeb会議やエンタープライズ・サーチがエンドユーザの利便性を高めるツールとしてニーズが高まっています。 これらは 優れた市販品が多くのベンダーから提供されているので、ユーザに合ったものを選択して利用します。  CCではイントラ・ポータルのWeb画面から、ク リック一つで誰でも簡単にこれらのツールを使えるようにしています。 比較表にあるように、オープン指向、Web指向、マルチベンダー指向がCCのポリ シーです。  

 日経コミュニケーションのケーススタディは事例研究というより、マイクロソフトのOfficeCommunicatonServer2007の広告記事 という印象を受けました。 私の感想は次のとおり。

@賛成できる点
 電話を対象としていないこと。  ただ、その理由は使われない電話に投資しない、というCCと同じ理由ではなく、マイクロソフトには日本 のひかり電話やISDN、あるいは内線電話の各種機能をOfficeCommunicatonServer2007でサポート出来ない、という消極的な理 由かも知れません。  

A特殊で一般の企業にはあてはまらないと思う点
a.IM(インスタント・メッセージング)を社内のリアルタイム・コミュニケーションの主役としている点
 これはよほど、キーボード文化に親しんでいる会社でないと無理ですね。  電話の利用は激減していますが、緊急の用件、相談事は電話によるリアルタイム なコミュニケーションが普通です。 IMがスクウェア・エニックスさんでどの程度利用されているか、数字が出てないので説得力がないですね。

b.プレゼンスの有効性
 普通のビジネスマンのコミュニケーションの相手はお客様、取り引き先、パートナー企業が大部分でしょう。  社内の人しか対象にならないプレゼンスなん て、意味がありません。 この事例では通信相手がほとんど社内に閉じているのでしょうね。 だとしたら、特殊です。

 かといって、社外の人とのプレゼンス共有が将来広がるかというと、そうは思いません。  プレゼンスというのはプライバシー情報ですから、社内はともか く社外の人に開示するのは難しいでしょう。

Bまったく賛成できない点
 
マイクロソフトの世界にどっぷり浸かったシングルベンダー指向、クローズド指向である点。 それが運用負荷軽減といった効果があるなら、 社内の人件費も含 めて従前のシステムと比較して費用がどれだけ削減されたか、数字を示して欲しいものです。 ADにしろ、Exchangeにしろ、MS系のサーバの運用も 企業の負担になっていると思うのですが。  金額での比較が一番分かりやすいので、それを知りたいですね。  ユーザが主体性を保つためには、つねに「選 択」と「リプレース」が可能な環境が第一です。 ネットワークやWebの技術のオープン化が進み、今はかつてないほど選択と組み合わせ(コンバイン)がし やすい時代になりました。  そんなときに、主体性を捨ててクローズドな世界に入ってしまうのはもったいないと思います。 





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