間違いだらけのネットワーク作り(466)2006/12/23
「ParlayAPIとは」

来年2月9日にNET&COM2007で行う講演、「5つの『vs』で考えるNGN時代の企業ネットワーク」は既に、かなりの申込みが来ていると昨日事務局から連絡がありました。 ありがたいことです。 この講演ではNGNをどうとらえるかがポイントになります。 NGNは立場によって定義が違うのですが、大事なのは自分独自のコンセプトを持つこと、それを進化させることです。  その意味で、先週土曜日の研究会は勉強になりました。 研究会の場ではNGNに対して否定的な意見が多数派でした。 それはNTTのトライアル内容だけ見ればいたし方ない気もします。

もっとも極端な意見はISPの人。 「インターネットの人の間ではNGNは無視するのが一番と言われています。」(某ISPの方)、「ということはNGNはGligibleetworkということですか?」(私)。 会場はドッとわきました。 しかし、私にとって一番勉強になったのは研究会の翌日いただいたメールです。
 

「ParlayAPIとは」

Aさんからいただいたメールの一部を引用させていただきます。
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NGNにはいろいろな定義や解釈がありますが、私はまったく夢のないもの
 だとは完全にあきらめていません。確かにQoSやVPNは新しいものでは
 ありませんが、そもそもNGNの肝はネットワークではなくアプリケーションに
 あると思っています。
  ITU-Tのリリース1では全く議論にもなっていませんが、SDP(サービスデリ
 バリープラットフォーム)の考え方が、WEB業界からテレコム業界に侵食を
 はじめています。BTさんのアプリケーションI/Fの話がありましたが、業界
 団体(Parlay Group)では既にテレコムアプリケーションのI/Fが詳細に規定
 されています。つまり、(私の期待する)NGNとはキャリアサービスをWEB
 上の一つのアプリケーション(テレコムアプリケーション)として開放すること
 だと思っています。
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*BTの日本・韓国担当のバイスプレジデント、キムさんとは先週、1年ぶりにお会いし、BT21CNのことやネットワークとは関係のない日本の教育の問題点、NTTや国産通信機器メーカーのクローズドなビジネスのやり方の問題点など、面白い話をたくさんしました。 キムさんはもともと韓国の人ですが高校を卒業して英国に渡り、大学を出てBTに就職しています。 すでに英国籍を持っています。 日本人と違って、中国や韓国の人は世界中どこにでも出て行き、そこに根をはって生活できることに、いつも感心します。 出て行かなくても、島国の中でそこそこ幸福にくらせる日本人はラッキーなのかも知れません。 しかし、日本のネットワーク業界がグローバリゼーションの大波の中で、これまでどおり島国に閉じこもったやり方を続けていると、国として大きな損失をこうむることになるでしょう。 キムさんと話していてそんな確信を持ちました。

*キムさんから聞いたBT21CNのアプリケーションI/Fのことは研究会で話しましたが、このメールを貰うまでParlayGroupのことは知りませんでした。 勉強不足ではずかしい限りです。 たしかに、NGNの目玉の一つはキャリア・ネットワークの持つ機能や情報をオープンなAPIでユーザー・アプリケーションに開放することです。 この点について一番詳しく書いてあるのは、日経コンピュータの11月27日号「NGNで何が変わるか」です。 定期購読しなくても、一冊だけ買えるのでNGNに興味のある方にはおすすめします。 日経コミュニケーションなどネットワーク系の雑誌ではアプリケーション側から見たネットワークの在り方は詳しく書かれません。 たとえば、ネットワークとのAPIを組み込んだSDPとはどんなもので、製品として何があるか、といったことはネットワーク系雑誌では書かないことです。 

*さて、Parlayについて調べて驚きました。 NGNが目指すテレコム・アプリケーション、つまりキャリア・ネットワークをユーザーのアプリケーションから制御するという発想は欧米ではParlayGroupが発足した1998年からあったということに驚きました。 Parlayは75社以上のIT関連企業やキャリアが参加するコンソーシアムで、キャリアのネットワーク資源(機能や情報)をユーザーが簡単に利用できるAPIセットを標準化し、普及させることが目的です。 ETSI(欧州電気通信標準化機構)、3GPP(W−CDMAによる第3世代(3G)移動体通信システムの標準化プロジェクト)、3GPP2(cdma2000による3G標準化プロジェクト)と連携しており、その標準はETSI標準として開示されています。 IBMやHPはこれらを取り込んだソフトウェアを出荷しており、すでにテレコムで使われています。 

*ParlayAPIには分散処理の標準であるCORBAに準拠したParlay/OSAと、Webサービスに準拠したParlay−X Webサービスがあります。 X Webでは第三者呼制御、プレゼンス、端末位置情報など13の機能が定義されています。 ParlayAPIはネットワークに依存しません。 つまり、レガシーなキャリア網でも、現在のモバイル網でも使えるものです。 NGNでなくてもかまわないのです。 アプリケーションがNGNの目玉だとAさんはメールに書いていますが、アプリケーションはレガシー・ネットワークでも目玉になるのです。

*Parlayが発足し、APIの初版を出した98年、日本ではATMがブームでした。 QoSに優れてはいるが複雑で、高価なATMはあっという間にIPによって市場から駆逐されました。 そんな低いレイヤの話がもてはやされている頃に、欧米ではすでにアプリケーションが重視されていたというのが驚きです。 ParlayWebサービスの一例として第三者呼制御の図を引用します。 ネットワークはNGNなどではなく、現在の携帯網です。

*やはり、色々な人の話を聞くというのは大事ですね。 おかげで私のNGNに対するコンセプトも進化しました。 「5つの『vs』で考えるNGN時代の企業ネットワーク」ではParlayのことも踏まえて、「日本のIP電話ベンダーが声高にすすめるプレゼンスなんて、ツマラナイ」といったことを今まで以上に確信を持ってお話したいと思います。
 

***おまけ***
12月20日からNTTのNGNトライアルがショールームで始まりました。 東京と大阪のショールームだけで、見学には予約が必要とのこと。 しかし、ショールームに行かなくてもビデオでも見ておけば充分でしょう。

ビデオで見る:NTTが開設したNGNトライアル・ショールーム「NOTE」
 
 

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