間違いだらけのネットワーク作り(460)2006/11/11
「IP電話での災害時優先電話」

先週、浅田次郎さんの「中原の虹第二巻」を高田馬場の芳林堂で買ったのですが、以前ここに書いたとおり、この店は危険なところで目的とする本以外に気になる本が必ず何冊か眼に入ります。 結果、買う気がなかった本まで買ってしまうことになります。 この時も鹿島茂さんの「パリでひとりぼっち」(講談社)という本の表紙が気になり、冒頭部分を読むと文章も自分の好みに合っているので買ってしまいました。 2200円とちょっと高いのですが、買うと決めるのに30秒かかっていません。 いつもこのように「ほぼ衝動買い」です。 そして半分くらいの本は読み始めてツマラナクなり、放り投げてしまいます。 しかし、鹿島さんの本は大正解でした。 舞台は20世紀初頭のパリ、主人公はリセというエリート養成の国立中学に留学している日本の少年です。 この少年の父が没落し、仕送りが途絶えてリセを放校になります。 ほとんど無一文で寄宿舎を追い出されてから、日本大使館の父の知人に保護されて再び勉学生活に戻るまでのスリルにあふれた9日間を描いています。 食べることと寝る場所を確保すること、最低限のお金を得るための奮闘。 当時のパリの最底辺で生きる人たちに交じってサバイバル生活を送るのですが、ヘえーと思わされる仕事がいくつも出てきます。 たとえば犬の糞を回収する仕事。 それは白革をなめす業者が買い取ってくれるのですが、上流階級で飼われている犬の糞の方が品質が良く高く買い取ってもらえる。 たとえば、ゴミの山からニワトリの頭やブタの骨を拾い集める仕事。 これは肥料の原料になるのです。 

主人公の少年に好意を持つ幼い娼婦や、そのヒモであるやくざな少年手配師、一つのベッドを二人で使うような最低のホテルで出会った老人や出稼ぎ少年。 こういった人々が活き活きと描かれ、どこかミステリアスな当時のパリの風俗や路地裏が細密に書かれています。 たった9日間を340ページもかけて書いているのですが、それだけ濃密で展開がスピーディなドラマです。 ついでに買った本の方が「中原の虹」より楽しめました。 で、この週末も鹿島さんの本を読みたいと思い、昨日会社帰りに芳林堂に寄って鹿島さんの本の店頭在庫を検索して貰いました。 たくさん書いているのですね、驚きました。 本職は大学の先生なのですが。  9月に出版された「パリの秘密」という本を買いました。 やはり装丁の凝った本で、中央公論新社刊、1900円です。 
 

第27回情報化研究会大会「NGN時代のITプロフェッショナル」まで1ヶ月あまりとなりました。 来週土曜日には参加者の名簿を会員ページに掲載します。 今年もにぎやかになりそうです。 問題は何を話すか。 NET&COM2007の講演内容と重複しないように工夫が必要です。 この週末、いつもどおり引きこもって楽しくアイデアを練りたいと思います。
 

「IP電話での災害時優先電話」

先日、お客様との会話の中で災害時優先電話が話題になりました。 「IP電話に災害時優先電話ってあるんですか?」 「ありません。」でブツッと話を打ち切ったのでは面白くないので、関連する情報を先ず集めてみましょう。 下記のとおりです。

災害時優先電話とは

「NTTでは災害の救援、復旧や公共の秩序を維持するために必要な重要通信を確保するため、法律に基づきあらかじめ「災害時優先電話」を指定しています。 災害時優先電話は発信のみ優先扱いとなっており、着信については、一般電話と同じです。 緊急時では発信用として使用してください。 災害時優先電話から発信しても、相手が話中の場合は一般の電話と同じく接続はできません。」

ひかり電話を利用すると、固定電話が不要となるのですか?
「本サービスは、基本的通話機能については固定電話と差異なくご利用いただけますので固定電話は不要となります。
ただし、「通話先」および「付加サービス」において一部制限がありますので、必ずご確認願います。
また、災害時の優先的な通信の確保、および停電時の通話はできません。」

「110番(警察)、118番(海上保安庁)、119番(消防)の緊急通報の利用もできるのですか?
110番(警察)、118番(海上保安庁)、119番(消防)の緊急通報のご利用も可能です。」

KDDI光ダイレクト
「 110番、119番、118番 (海上保安庁) への通話はご利用になれません。 緊急通報の可能な加入電話回線を、必ず最低1回線残すようにお願い致します。」

NTTの光電話では災害時優先電話がありません。 KDDIのビジネス向けサービス、光ダイレクトでは緊急通報も出来ません。  結局、レガシーな電話にお世話にならないと現在のIP電話は「安心・安全」には使えないということです。

NTTのNGNではどうなるのでしょう? 「安心・安全」を謳うからには災害時優先電話も実現されるのでしょうが、NGNフィールドトライアルで公開されている情報の中には災害時優先について言及はありません。 話は脱線しますが、NGNは公開されている情報が少なくて企業ネットワークでどう使えるのか、検討できないのが現状です。  たとえば、ISDNは専用線のバックアップとして使われて来ましたが、NGNのインタラクティブサービスは同様にバックアップとして使えるのだろうか? 要はSIPで設定したセッションで音声だろうが、データだろうが何を送信しても可なのだろうか、可とすればどの程度帯域が保証されるのだろうか? 料金は通信時間に応じた課金なのだろうか、定額もありなのだろうか? と次々疑問は出てくるのですが回答となる情報はまだない状況です。

災害時優先電話の話に戻ると、先のお客様に対しては「優先電話は今のIP電話にはないので、レガシーな回線をそのまま残した方がいいです。」と当たり前すぎるアドバイスをしました。 

NGNで災害時優先電話はどのように実現されるのか、その原理には興味があります。 災害時に端末から一斉に呼接続要求(INVITE)が送信されると、それを受信するだけでSIPサーバ(NGNではIMS?)はパンクするでしょう。 パンクさせないためには優先電話からのメッセージと非優先のそれとをフィルターにかける専用の機能を持ったゲートウェイなり、ロードバランサーのようなサーバが必要になるのでしょうね。

今日(11月11日)の日経新聞には「NTT東西 サーバー増設前倒し 光電話対策 各30億円投入」との記事がありました。 持株会社にグループ横断のプロジェクトチームを設けて東西の情報共有を密にし、プロジェクトの成果はNGNの構築にも生かすとのこと。 9月に東の障害が発生した時点で、西のIP電話で同種の障害が起きないよう情報共有や西におけるチェックはされなかったのでしょうか。 

自分自身の経験からも、トラブル対応というのは一度後追いモードに入ってしまうと、最後まで(安定するまで)後追いということになり易いものです。 1つの障害が起こったとき、その直接原因だけを取り除いたのでは、不十分です。 直接原因の周辺に別の潜在的な障害原因がないか、想像力を働かせてその原因を取り除く必要があります。 私は直接原因を取り除くのは「障害対策」、潜在的原因まで洗い出すのは「再発防止策」と区別しています。 キャリアのネットワークと比べたらはるかに小規模な企業ネットワークでも、そんな対応が必要なのです。

NGNでは、是非、先回りした対応で安定したサービスを提供し、初期段階でユーザーの信頼を獲得して貰いたいものです。


 

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