間違いだらけのネットワーク作り(396)2005/08/20
「電気通信番号の在り方」
 

先週末、12年ぶりの高校の同窓会に出席するため、2泊3日であわただしく帰省しました。 母校は伊予西条藩の陣屋跡にあり、清水のわく堀にかこまれ江戸時代の門があります。 集合はこの正門で日曜日の午後5時半。 理数科第5回生の同窓会で、クラス40人中27人が参加しました。 今年は卒業30年の節目です。 皆相応に年をとっていましたが、元気に活躍しているようで嬉しく思いました。

恩師に新著「ネットワークエンジニアの心得帳」を貰って頂きたいと思い、扉に書く俳句を飛行機の中で考えたのですが、いい句が浮かびませんでした。 集合1時間前にエイッと作ったのがこの句です。
 
「ふたたびの門出祝わん雲の峰」

男の平均寿命は78歳。  高校卒業から60年です。 とすると卒業30年はちょうど中間点。 今日ふたたび母校の門を出て、新しい気持ちでこれからの30年を始めよう、と言う意味です。 雲の峰は夏の季題ですが、西条の町を見下ろす西日本最高峰の石鎚山をさしています。


 

「電気通信番号の在り方」

ここ2週、FMCについて書きました。 しばらくFMCやNGNを追いかけようと思います。 総務省は8月10日、「IP時代の電気通信番号の在り方に関する第一次報告書」を公表しました。 さっそく眼を通しましたが、ガッカリしました。 IP時代の通信サービスの理想形を明確にした上での電気通信番号の在り方ではなく、現状の追認とその延長で考えたものに過ぎません。

電気通信番号とは「電気通信事業者が電気通信役務の提供に当たり送信の場所と受信の場所との間を接続するために電気通信設備を識別し、又は提供すべき電気通信役務の種類若しくは内容を識別するために用いる番号、記号その他の符号をいう。」(電気通信事業法第50条)とのこと。 明治の香りがしますね。 報告書は基本的にこの定義に沿っています。

電気通信番号は引き続き、「サービスの識別」、「品質の識別」、「社会的信頼性の識別(笑)」に使うとのこと。 FMCの本質は固定電話、携帯電話と言うサービスの区別がなくなることです。 FMCの一歩先を想像すればIP時代の通信サービスの理想形は見えてきます。 サービスごとに、あるいは通信設備ごとに電気通信番号が違うなどというユーザにとって使いづらく、ネットワークの仕組みとして不合理なことはありえません。

IP時代の通信サービスの理想形は、ユーザつまり通信の主体が個別のネットワークやサービスと切り離され、場所や通信設備を選ばす、通信相手とのネゴシエーションと利用可能なネットワーク資源から、音声通信・テレビ会議・チャット等から適切なサービスを選択できることです。 そのためには電気通信番号は通信主体を表すIDであるべきであり、間違っても、「場所」や「通信設備」を表していた明治以来の電話番号と同じでは困ります。 どんなIPの教科書にだって、IPネットワークで場所を表すのはIPアドレスであり、サービスを表すのはポート番号だと書いています。 電気通信番号はそれらの上位のIDであるべきです。 この電気通信番号では固定電話しか使えない、などというのはナンセンスです。 実際、英BTのFMCでは携帯電話の番号で固定網を使った発着信も出来るようになっています。 イギリスの方が合理的ですね。 ゆくゆくは同じ番号で、時と場合に応じてテレビ電話もチャットもメールも使えるようになるでしょう。

明治以来の固定電話は03−等で始まる位置が固定されたものですが、IP時代には通信主体は移動することがふつうであり、移動できるものを「わざと」動けなくしたのが固定電話、という位置付けにすべきです。 地理的にくくりつかられた0AB−J番号はしばらく残さざるを得ないでしょう。 IPネットワークでもそのために位置の固定を保証する仕組みは必要です。 しかし、位置が固定だから社会的信頼性がある、とする報告書の書き方には笑ってしまいます。 今や、大企業でも050番号をお客様窓口用に使っているのですから。 信用は電話番号についているわけではありません。 早晩、0AB−J番号だから信用できる、などという感覚はなくなるでしょう。

品質の識別を番号でする、というのも変ですね。 先週書いたとおり、0AB−J以外はベストエフォートで充分です。 将来は通信の都度、ユーザが品質を選択できるようになるでしょう。

IP時代の理想の電気通信番号に近いのは何か? SkypeNameですね。 ユーザを識別するIDであって、ネットワークが固定だろうが、携帯網だろうが、端末がPCだろうが、携帯端末だろうが関係なく使える。 サービスは音声もテレビ会議も、チャットも選択して使える。

衆議院選挙では郵政の民営化が焦点になっています。 経済合理性から考えて民営化すべきなのは当然。 小泉のやり方どうこうが問題ではなく、何をやろうとしているかが問題なのに反対派は何を勘違いしているのでしょう。 しかし、郵政民営化は誰もが知って、投票に参加できるだけましです。 電気通信番号の規制は誰も知らないところで、「IP時代における電気通信番号の在り方に関する研究会」が決めたことがそのまま通ってしまう。 非合理なルールが決まると、その損失はひょっとしたら郵政非民営化より大きいかも知れません。  ちなみに、研究会は提供側の通信業者とメーカーばかりで、ユーザの代表である企業や個人は入っていません。 これではユーザの便益が充分反映される訳がありません。 

IP時代の通信サービスのあり方は、もっと世間一般に議論が広がっていいのではないでしょうか? 

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