間違いだらけのネットワーク作り(389)2005/07/02
「Skypeの『衝撃』」

今週はプレゼン過多で、プレゼンや講演を4回、計7時間以上話しました。 1日6時間話すこともあるので、「過多」は大げさかも知れません。 相手が毎回違い、したがってリアクションも違うので楽しく話せました。 特に30日木曜日午後に明治記念館で開催されたセミナー「 『Skype』の衝撃 −通信市場はどう変わるのか!?」は、楽しめました。

私を含め3人が講演。 一人はNTTコミュニケーションズでインターネットをやっている方、もう一人はシンクタンクの方でした。 私とはまったく種類の違う仕事をしている人たちなので、きっと面白いだろうと思い、お二人の講演を聞きました。 インターネットな人はSkypeの危なさをさかんに強調し、P2Pはこれから発展するがNTTのようなTrusted3rdPartyが主体となり、有償でセキュアなサービスを提供すべき、といった主張をされました。 シンクタンクな人はSkypeに関するさまざまな情報を引っ張ってきてコメントして行き、最後に通信市場への影響についても言及していましたが、何が自分の主張したいポイントなのかよく分かりませんでした。

内容とは直接関係なく面白いと思ったのは、インターネットな人にとってはインターネット界のエライ先生とつながっていることが価値であり、シンクタンクな人は総務省などのエライ人に会っていることが価値なのだなあ、ということです。 たびたびの言及にそう感じました。 企業ネットワークな私にとってはそんなことはまったく無価値です。 仕事においてはいかに新しいコンセプトを打ち出して企業にとって実利のあるネットワークを提案し構築するかが価値であり、講演においては聞いている人にいかにインパクトを与えるか、つまり独自のOpinionや新しい視点を提示できるか、そして面白く聞いてもらえるか、が価値だと思っています。 

今回のセミナーではホームページからの申込みが多かったと事務局の方から感謝されました。 情報化研究会のHPを見て参加頂いた方に私からも御礼申し上げます。
 

「Skypeの『衝撃』」

明治記念館での私の講演のポイントとなる5枚のスライドを掲載します。 2月のNET&COM講演とかぶるものもありますが、気にせず掲載します。 ある人が山本夏彦さんのコラムのことをこう評していました。 「寄せては返す波のように同じことを何回も書いている。」 山本さんのコラムほどの価値はありませんが、波のように繰り返し主張することも自分の意見を少しでも浸透させるために必要かなと思います。 いくつかコメントをしておきます。

Skypeが驚くほどのインパクトを持つとは思えません。 2枚目のスライドにあるように電話=音声通信そのものが急激に減少し、100年余り続いた電話文化はメール文化への転換が進んでいるからです。 1日数10通メールをやりとりする人はめずらしくありませんが、電話をそんなに使う人はいないでしょう。 電話を使わないことでオフィスの生産性は向上したのです。

ただし、Skypeが適した用途が3つあります。 コラボレーション、モバイル、海外との無料電話です。 他社のメンバーを含めたプロジェクトを持っており、メンバーのプレゼンスを把握しつつ電話会議やチャット会議などのコラボレーションをしたい人にとってSkypeは便利なツールです。 私のようにノートPCにSkypeを載せて持ち歩いていると、客先で別の場所にいるメンバーを含めた電話会議が簡単に出来ます。 実際、昨日は客先の打ち合わせにSkype社の方を電話会議で招待し、お客様の質問に答えてもらいました。 1500円のヘッドセットのマイクでも半径3メートルの範囲の声をちゃんと拾うことが出来、向こうの声はPCのスピーカーで会議に参加しているメンバー全員が聞くことが出来ます。 Skypeは私にとっては便利なモバイル会議システムです。 海外との無料電話は上場企業においても奨励している会社があります。 

企業でSkypeが適する潜在ユーザはこれらの3用途を合わせても20%いないでしょう。 ただ、20%使われれば大したシェアですが。 コンシューマーはケイタイで満足しています。 コンシューマーもケイタイで電話をかけたりしません。 2枚目のスライドにあるように、ケイタイ1台が1年間で通話する時間は23時間でこの数年間一定です。 1日4分未満です。 ケイタイは通話でなく、メールに使うものなのですね。 ケイタイとは別にSkypeをPCやPDAで使いたいと思うコンシューマーは少ないでしょう。 ケイタイ型の端末にSkypeが搭載されたら使われるか? それがあればケイタイを捨てられるなら使われるでしょう。 しかし、こんなに便利なケイタイを捨てて、Skypeに乗り換えるとは思えません。 ケイタイとSkype端末の両方を持ち歩くことはさらに考えられません。

Skypeは特定ユーザ、特定用途で使われる便利なツールとして普及するのではないでしょうか。

Skypeを使う使わないに関係なく、Skypeから学ぶべきことはあります。 NTTは昨年11月の中期経営計画の中で「お客様が事業者やサービスを自由に選択できるネットワーク環境が必要です」とうたっています。 そのためにはネットワークは垂直統合モデルでなく、水平分散モデルであるべきです。 光ファイバーやADSLがA社なら、電話サービスもインターネット接続サービスも、映像配信もA社しか選択できない。 こんなユーザを技術や契約で縛るモデルが垂直統合です。 こんなキャリアがまだいくつかありますね。

Skypeは回線がどこであれ、ISPが何であれ、電話サービスとして使うことが出来ます。 水平分散モデルを具現化しています。 Skypeのような電話サービスさらには映像配信サービスがどんどん出てくれば、NTTのいう「お客様が事業者やサービスを自由に選択できる」が実現することになります。

企業ネットワークの設計も水平分散モデルで、いつでも回線やネットワーク機器、サービスを部分的にリプレースできるようにすべきです。 





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