間違いだらけのネットワーク作り(384)2005/05/28
記事評「大阪ガスのモバイル・セントレックス始動−その3」

先週の金曜日、研究会仲間3人で銀座2丁目のワインレストランへ行きました。 ここはローヌのワインの種類が多く、店の作りや料理が凝っているのが特徴です。 7時から11時すぎまでとりとめのない会話と、ワインを楽しんだのですが一つだけ真面目な話をしました。 「10年後のネットワークはどうなるか」というものです。 実は2ヶ月ほど前に10年後のネットワークがどうなるか、という宿題をお客様から貰ったのです。 この日一緒だった人はネットワークの第一線に20年くらいいる人たちなので色々アイデアを聞こうと思ったのです。

これを一つの種として、日経バイト7月号の記事を書きました。 テーマは「大きな宿題の楽しさ」。 エピローグには「10年後を考える楽しさと苦しさ」という見出しをつけました。 どんなオチをつけたか、読んでいただければと思います。

さて、6月、7月で2、3講演をするのですがいつもとちょっと趣きが違うセミナー「『Skype』の衝撃 〜通信市場はどう変わるのか!?〜」で話をします。 私の前後で講演する方は技術的あるいはマーケティング的な観点のようですが、私はいつもどおりユーザの立場から講演したいと思います。 Skypeについては2月のNET&COMで話しましたが、それから4ヶ月が経過し、私のSkype観も変わってきました。 Skypeをとっかかりに企業のIP電話やネットワークをどう企画・設計すべきか、キャリアの通信サービスは企業ユーザから見てこれからどうあるべきか、と言う視点で話したいと思います。
 

記事評「大阪ガスのモバイル・セントレックス始動」(日経コミュニケーション 5.15)−その3

グリコは一粒で二度おいしい、のですが、この記事はネタとして使わせて貰うのが三度目です。 おいしいかどうかは別として題材には事欠かないですね。 ただ、今回で終りにします。

モバイル・セントレックスなどというものはなく、単にIPセントレックスの端末に無線LAN端末が加わっただけだ、というのが私の見方なのでモバイル・セントレックスをGoogleで検索して調べる、などということはしたことがありませんでした。 しかし、ためしにGoogleで「モバイル・セントレックス」を検索するとこのホームページの記事が最初のページに出て来たので驚きました。  「ドコモvsAU、モバイルセントレックス比較」(NetworkWorld12月号より) です。 比較表を見直してみるとドコモの方式がオープン性が高いとなっていましたが、適切でないので修正しました。 さらに「大阪ガス モバイルセントレックス」で検索しても、やはり最初のページに表示されます。 モバイルセントレックスを検討している方はけっこう、このページを見てくれているかも知れません。

この記事に関する最後のテーマは「Meru vs Airspace(現CISCO)」です。 この記事には無線LANとしてこの2つを比較して決めたと書いてありますが、どういう理由でどちらに決めたかは書いていません。 

一般的にモバイルセントレックス用の無線LAN製品の比較項目としては同時接続数(同一AP配下で可能な同時通話数)、QoS、パワーセーブ機能の有無、ハンドオーバー時間などがあります。 

同時接続数ではMeruとAirspaceに大きな差はありません。 MeruにはバーチャルAPという面白い機能があります。 複数のAPで同一のチャネルを使用し、端末に対してはあたかも一つのAPであるように見せかける機能です。 端末が移動して最初につながっていたAPより電波が強いAPに近づくと、端末に意識させることなくAPを切り替えることが出来る機能です。 APが替わってもチャネル切り替えが不要なためハンドオーバー時間がゼロになる、というのがMeruのセールストークです。

バーチャルAPで気をつけるべきは複数のAPでカバーされる広いエリアでも、同時接続数は1APで使う時と同じなので無線LAN端末が多いと同時接続数が不足することです。 大阪ガスのようにデータと音声を統合する場合はデータとの競合もありますから、なおさら注意する必要があります。

パワーセーブはAirspaceに一日の長があるのではないでしょうか。 これから注目すべきQoS機能としてはCAC(Call Admission Control)があります。 無線LAN端末の呼設定をする際に、利用可能な帯域幅をチェックしOKであれば呼設定し、帯域不足であればビジーを返す機能です。 これは本来レイヤ2までの機能を提供する無線LANがアプリケーションレイヤの機能まで踏み込むということで、SIPサーバとの連携も必要になります。 帯域幅のチェックを単純なSIPセッション数だけでやる製品もありますが、音声だけで利用するならともかく、データ・音声統合環境では不十分でしょう。 しばらく、製品間で差がつく機能だと思います。

現時点でMeru、Airspaceどちらが優れているか、明確に言い切れるほどの差はないと思います。 無線LAN単体で比較して優劣を言うのも難しいですし、SIPサーバ、端末と密に連携しているのでトータルで評価しないと本当の評価にはなりません。

いずれにしても、QoSやパワーセーブを実現するために端末の仕様や設定と無線LAN、さらにはSIPサーバの機能が分け難く結びついているのはモバイルセントレックスが成熟していない証拠で、ユーザにとっては不利な状況です。 無線LANがどこの製品だろうと、どんな端末だろうと組み合わせは自由で、QoSやパワーセーブあるいは同時接続数といった基本的なサービスレベルは変わらない、というのが理想的な環境です。

主要な国産メーカーのSIPサーバで出来ることにあまり差がなくなっているように、どこの無線LAN製品を使おうが同じことが出来る、という状況になるのもそう時間がかからないかも知れません。 
 
 
 

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