間違いだらけのネットワーク作り(382)2005/05/14
記事評「大阪ガスのモバイル・セントレックス始動」

「ネットワークエンジニアの心得帳」を1月末に出版して3ヶ月あまりが経ちました。  新しい本を出すと、著者プロフィールに書かれている情報化研究会を知り、入会申込みをする方がかなりいらっしゃいます。 今週も「情報化研究会入会申込み」という表題で下記のようなメールをいただきました。 ご本人の了解をもらいましたので、匿名で紹介します。
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松田 様

先日、ネットワークエンジニアの心得張を読ませていただきました。
仕事柄、耳の痛くなる内容も何点かあったのですが、書籍の最後、
「エネルギーを燃やすことの大切さ」が大変印象に残っております。

私自身、ネットワークエンジニア7年目なのですが、新人だった頃
の忘れていた気持ちを取り戻すきっかけになりました。

ありがとうございました。
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感想をメールでいただく方も多いのですが、こんなメールを貰うとこちらも嬉しくなります。 この本のまえがきにもITPROに掲載された読者の感想をいくつか紹介しましたが、読む人によって共感できるところや、耳の痛いところは違います。 そんなところがいくつもあって、皆さんが元気になったり、仕事のノウハウ(考え方)として活かしていただけたら、著者冥利につきます。 

記事評「大阪ガスのモバイル・セントレックス始動」(日経コミュニケーション 5.15)

あいかわらずセンセーショナルな書き方の記事です。 「無線IP電話6000台稼動のノウハウを凝縮」という小見出しだけ見ると、もう6000台動いたのかと思いますが、まだ実運用は始まってないようです。 「ようです」と書くしかないのが、この記事の歯切れの悪いところです。

ただ、いずれにしても大阪ガスが大規模な無線LAN携帯の導入にチャレンジすることはすばらしいことで、最近停滞気味に感じるモバイルセントレックスに活が入り、ネットワーク業界がにぎやかになることを期待しています。

記事の歯切れが悪いのは次のような肝心な情報が明記されてないからです。

@現時点で、何台の900iLが実運用に供されているのか?

A無線LANとしてMeruとCISCOのどちらかに決めたとあるが、どっちに決めたのか?

B単純なランニングコストだけを比較しているが、本来の目的である「業務効率化」の経済効果をどう評価しているのか?

Cプロジェクトに参加する数10人におよぶ社員の人件費や、SIPサーバ、無線LAN、固定IP電話、900iL、ネットワーク機器、設計・工事等の投資がいくらで、回収期間は何ヶ月なのか?

記事を読むとマクロな疑問、ミクロな疑問がいろいろわいてくるのですが、マクロな疑問、ミクロな疑問を一つづつあげます。

@中期的なネットワークのライフサイクルや拡張性をどう考えているのか?
先週のこのコラムにも書きましたが、携帯電話の世界は2010年に大きな転換点を迎えます。 第4世代携帯です。 携帯網自体がIP化され、SIPで制御されるようになるとデュアルモード端末自体が今の形態で残ることは考えられません。  また、第4世代携帯の前に新しい無線LAN端末や、新たなキャリアの無線LAN携帯への参入も予想されます。 こういった中で、今回構築するネットワークを何時の時点で更改するか、投資回収との兼ね合いで決めるのがライフサイクルの計画としては重要です。 

また、「優れた端末」や「優れたサービス」を何時でも取り込める拡張性がないと、陳腐化のリスクを負うことになります。 たとえば、独自性の少ないSIPで使いやすい端末が出現したときの対応です。

ASIPサーバの選定
900iLの難しさは独自性の強いSIPと端末仕様、無線LAN特有の問題を解決するための端末仕様にあわせた無線LANコントローラーの機能拡張やチューニングです。 端末とSIPサーバの両方を開発し、無線LANの開発にも参画して、これら3つのコンポーネントや独自性の強いSIPに精通したメーカーでさえ苦労しています。 名前が売れている、売れてないではなく、何故、端末も、無線LANも作っていないメーカーを選択したのか分かりません。

複数サーバの切り替え時間が短いと言う理由が書いてありましたが、非常時のためにPBXを残すのですから、数10秒程度の差がSIPサーバを決めるポイントになるとは思えません。

記事によれば、来年3月までで端末の導入が完了するとのこと。  半年後くらいの導入状況と最終的な導入結果についても、日経コミュニケーションに書いて欲しいと思います。 銀行がIP電話4万台導入、といった導入前の記事はよく眼にするのですが、その結果というのはなかなか読む機会がありません。 読者には結果の方がはるかに役に立つと思います。 
 
 

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