間違いだらけのネットワーク作り(363)2005/01/01
「ネットワーク・ビジネスにおける不易なものとは」

  謹賀新年

 今年が情報通信に関わるすべての方にとって、幸多き年であることを祈ります。

と新年の挨拶をしましたが、この文章を書いているのは大晦日の午後2時過ぎです。 
毎年、家族それぞれに年末の大掃除の分担が決まっており私は29日に机のまわりの整理、30日にフローリングみがきとフロ掃除、31日に神棚の拭き掃除と鏡餅かざりを済ませました。 さて、机に向かって元旦のホームページの記事でも考えようと腰をおろしたところです。 

「ネットワーク・ビジネスにおける不易なものとは」

2004年を振り返ってネットワークの世界で印象に残ったニュースは何だろうと考えました。 業界誌では繰り返し「モバイルセントレックス」や「無線LAN」、「ソフトフォン」が取り上げられましたが、大したインパクトはなかったですね。 単にIP電話のバリエーションが増えただけのことです。 実際、ユーザとの会話の中でも一気にブームになるような熱さは感じられません。
 
印象に残ったのは2つ、2004年11月10日に発表されたNTTグループ中期経営戦略とSkypeです。
 
〇NTT中期経営戦略
NTTの中期経営戦略lは「安心・安全で便利なブロードバンド・ユビキタスサービス」をキーコンセプトに3つの経営目標と5つの具体的取り組みを示しました。 それら全部をここには書きません。 経営目標で主要なのは「NTTとして総合力を活かして、ブロードバンド・ユビキタスマーケットの創造に積極的に取り組み、e−Japanやu−Japan構想の実現に貢献」、「既存の固定電話サービスからIP電話サービス、メタルから光アクセスへの円滑なマイグレーション」。

具体的な取り組みとして「固定通信と移動通信の融合などを実現するブロードバンド・ユビキタスサービスの開発・普及」、「高品質・柔軟でセキュリティを担保する次世代ネットワークの構築」、「ブロードバンド・ユビキタスサービスを活かした事業機会の拡大」などをあげています。 繰り返し出てくるのは「双方向映像通信」、「移動通信」。 SCMなどの大規模SIやホスティングによるソリューション提供に注力することを宣しているのも眼を引きます。 光アクセスと次世代ネットワークサービスのユーザ数は2010年で3000万が目標。

〇垂直統合型は不可、階層型水平分散orP2P
私の眼にとまったのは「課題解決に向けた要請−ブロードバンド社会の健全な発展のために」の中にある「お客様が事業者やサービスを自由に選択できるネットワーク環境が必要です」というセンテンスです。 私が本で繰り返し書いたり、講演で主張しているのと同じことが書いてあるのです。 

自由に選択できる、というのはドミナントのほぼ反意語で、オープンの同意語です。 オープンなネットワーク環境であるためには垂直統合型のネットワークサービスでは不可です。 ユーザが何時でも回線だけ、あるいはアプリケーション・サービスだけをリプレース出来るには階層型の水平分散型あるいはP2P型のサービスでなければなりません。 特にネットワーク層とアプリケーション層の切れ目がはっきりしていることが大事です。 現在のIPセントレックス・サービスなどではそうなっていないものがほとんどですが、次世代ネットワークでは解消されるということでしょうか。

〇Skype
NTTに対してSkypeはまさに対極です。 NTTの中期経営戦略が米軍なみの強大さを感じさせるのに対して、Skypeはゲリラです。 良し悪しは別として事業者として大きな設備投資が不要で、ユーザはインターネットが使える環境さえあれば無償で簡単に使える全く新しい通信サービスのモデルです。 他人のパソコンを勝手にアドレスを管理するスーパーノードや電話を中継するリレー・ノードとして使ってしまう。 複数のルートの中から品質のいいルートを選ぶといった器用なこともやってのける。 この「変な」モデルにNTTはじめキャリアはどう対処するのでしょう? それとも無視しておけばいい存在なのでしょうか。 

無償でこれだけのことが出来るなら、少し設備投資をすれば既存のキャリアを脅かす存在になる可能性があります。 回線さえ高速になればP2Pで双方向映像通信も出来てしまうのですから、複雑で高価なレイヤをキャリアが提供しても、そんなところはトラフィックが通らないかも知れません。

コネクティビティはIPで保証されている、あとは相手のアドレスを知る仕組みさえあれば音声だろうが、映像だろうが送受信できるというIPネットワークの本質を活かした究極のモデルがSkypeではないでしょうか。

〇ネットワーク・ビジネスにおける不易なものとは
キャリアの提示する壮大なモデルと、Skypeが突きつけた超簡便モデル。 現実はこれら両極の間に多様なバリエーションが生まれ、ネットワークの世界は激しく変化を続けるのでしょう。 

さあ、この変化にどう対応すればいいのでしょう。 答は簡単です。 自分自身の「視点・考え方」と「道具」を持ち、さばいて行けばよいのです。 ネットワークやITの世界がどう変化しようが、企画・設計の考え方や勝つための営業の本質、あるいはトラブル対応の考え方は変わりません。 不易なものです。 大事なのは目先の技術や製品に深入りし過ぎて振り回されないことです。 ネットワーク・ビジネスにおける不易なもの、それは自分の頭の中にあるということです。 ただし、不易といっても考え方や道具が進歩しないということではありません。 経験と勉強を積めば進化するのは当然です。

この不易なものをテーマにした本を書きました。 「ネットワークエンジニアの心得帳」(日経BP社、1月刊予定)です。 日経バイト誌に2002年7月から連載しているコラム「間違いだらけのネットワーク作り」30回分を「企画・提案編」、「設計編」、「IP電話編」などに分類してまとめた前編と、企業ネットワークの企画・設計について書き下ろした後編から成っています。 参考にしていただければ幸いです。
 
 

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