間違いだらけのネットワーク作り(322) 2004/03/20
「無線LANとVoIP」

2月から3月にかけて全国9ヶ所で開催しているセミナーが、昨日は東京で開催されました。 最後にIP電話のプレゼンをしたのですが、いつもどおり「皆さんはIP電話というと通話コストの削減が目的だと思われているでしょうが、それは大きな間違いです。 企業にとってのIP電話の第一の目的は設備コストの削減です。 企業ではマイラインの恩恵で通話料は大幅な値引きを享受していることが多く、IP電話の3分8円より安いこともめずらしくありません。 企業向けのIP電話、IPセントレックスはPBXや高価なルータを企業内から一掃することで設備コストを大きく削減するのが目的です。」と言うイントロで話を始めました。 

2番目のポイントとして申し上げるのは「私がご説明するIP電話とメーカーのIP電話では、名前は同じでも180度中身が違います。 企業内の高価な設備を削減してリース料や保守料を削減することを目的とするIP電話に対して、メーカーのそれはIP−PBXやVoIPサーバ、1台数万円もする高価なIP電話機で設備コストを増大させるものだからです。」
 

相変わらず、某通信業界誌は「通話コスト削減を目的としたIP電話」という書き方をしていますが、まったくお門違いな話です。 高い設備の言い訳にアプリケーションの話を持ち出していますが、アプリケーション連携にしても高価なIP−Phoneなど使う必要はありません。 企業内においたIP−PBXやVoIPサーバまでIPセントレックスと呼ぶことも含めて、ユーザ側に立った記事ではなく、メーカー応援記事ばかりが目立ちます。 困ったもんです。

参考にセミナーのオープニング・スライドを載せておきます。 高いルータを一掃して、ルータレス・モデルに、高いIP−PBXやVoIPサーバを企業に持たずシェアード・サービスであるIPセントレックスを使ってPBXレスにする。 これで、従来の企業ネットワーク、レガシーモデルのコストは50%から60%に削減できます。 

そして、これまではコストのコントロールがまったく効かなかった携帯電話も、企業内では無線LAN上のIP電話機として使うことでIP電話の通話料で外線にかけられるようになります。 これがシームレス・モデルです。 今年は無線SIP端末がブレークするでしょう。

「無線LANとVoIP」

さて、無線LANでのVoIPには設計上のいろいろな留意点があります。 これに関して面白い論文が先週紹介した電子情報通信学会2004年総合大会の論文集にありました。 部分的に引用させていただきます。

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B-6-66無線アクセスネットワークにおけるQoS 保証方式に関する一考察
NTTネットワークサービスシステム研究所

従来の無線LAN 環境におけるQoS 保証の標準技術としては、IEEE 802.11e 規格があり、その実現方式として、優先制御型(EDCA:Enhanced Distributed Channel Access)方式と帯域保証型(HCCA:HCF Controlled Channel Access)方式の2 種類が規定されている。 現状の無線LAN は、同一基地局にアクセスする端末で共通の無線チャネルをシェアするメカニズムであるため、前者方式では同一基地局にアクセスする端末数が増加すると、QoS 保証をするために必要な無線チャネル占有時間を十分確保できない問題が既に指摘されており、通信のQoS保証を確実に実現するためには後者方式が有効であると考えられる。

現状のインターネット通信において、リアルタイム性の高い通信としてはVoIP とストリ−ミングが考えられる。 VoIP は、送受信されるデータサイズ自体は比較的小さい値のため(例:G.729CODEC で10−40 バイト)、伝送速度の違い(例:802.11a の場合:6Mbps−54Mbps)による無線チャネル占有時間への影響度は低い。 一方でストリーミングは、VoIP と比較して送受信されるデータサイズは大きいため(例:最大約1500 バイト)、伝送速度の違いによる無線チャネル占有時間への影響度は高い。 したがって、本論文では従来方式のHCCA 方式をベースにVoIP は、全ての端末の伝送速度を最低速度に設定した上で、同一の送信キューに収容し、ストリーミングは各端末の伝送速度を考慮した送信キューに収容するQoS 保証方式を提案する

B-5-251レイヤ2転送ネットワークにおけるシームレスハンドオーバ
東北大学電気通信研究所
 

移動局の移動時にはパケットの転送は続いており, 基地局にパケットが溜まる。  基地局にパケットが溜まった状態のままハンドオーバを行うと, 基地局に残されたパケットは移動局へ届かず破棄されてしまう.。 これはTCPパケットの場合には多数の再送を引き起こし, 全体のスループットを著しく低下させる原因となる。 そこで, ハンドオーバ時に無線LAN カードを2 枚使用してサブインタフェースを備えるシームレスハンドオーバ方式を提案する
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*無線LAN上でのVoIPに関しては、VoIPを意識していないAPを使うと同一AP配下で同時通話数が6、7通話になると音が途切れる、といったテスト結果も出ているようです。 これはお粗末なAPですね。 最新の製品では上記のQoS制御に近い、RTPを意識した送信スケジュール制御がされています。 無線LAN上にRTPとデータが混在するときにはAP等に求められる機能・性能と、設計でカバーせねばならないこととがあるでしょう。 その辺の詳細を4月10日の京都研究会では無線LANに詳しい方とディスカッションする予定です。

*シームレスハンドオーバーは無線SIP端末をビル内で移動しながら使うには不可欠な機能です。 上記のアイデアが苦しいのは無線LANカードが2枚必要なこと。 また、ハンドオーバーがレイヤ2なので、ビル内での利用を考えると大きなビルであっても無線SIP端末は一つのセグメント上になければならないことになります。 数100、あるいは1000台を超える端末数がめずらしくない企業のビルで多数の端末を1セグメントに出来るのか、という問題もあります。 どうしても、ある数を超えるとレイヤ3のハンドオーバーが必要になるのではないでしょうか。 この辺のやりくりの仕方も興味があるところです。 

4月10日京都研究会の講師は決定しました。 CallManagerの設計・導入経験が豊富な方からは構築や運用上で何が問題になりやすいか、アプリケーション連携がユーザにどの程度使われているのか、効果をもたらしているのか、といった点を教えていただこうと思っています。 講師だけでなく、参加する方の多くはネットワーク設計・運用にたずさわっている方なので、有用な情報やアイデアをたくさん聞かせてもらえるものと期待しています。
 
 

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