間違いだらけのネットワーク作り(321) 2004/03/13
「VoIPの研究動向」(電子情報通信学会講演論文集より)

今週は火曜日に松山でセミナーの講演、金曜日が大阪で商談。 ここのところ、トラさんのような移動の多い日々を過ごしています。 お客様との会話も機会が多いのですが、最近はその会話の中で、これは面白い(勉強になる、あるいは新しい仕事のアイデアになるという意味)と言うものがなくてガッカリしています。 お客様との会話が新しいアイデアの宝庫なのですが、そろそろ有用な話に出会いたいものだと切望しています。

3月9日に「企業ネットワークの設計・構築技法−広域イーサネット/IP電話の高度利用」の第二刷が出版されました。 ほぼ1年かかっての2刷です。 前著が半年だったのと比べると時間がかかったものだと思います。 IP電話の本、とりわけ安価な入門書が雨後のたけのこのごとく出版されたためでしょう。 しかし、増刷されたことでほっとしました。 これまで出版した4冊の本はすべて増刷されたことになります。 ちなみに一番多いのは「フレームリレー/セルリレーによる企業ネットワークの新構築技法」で現在、4刷です。

「VoIPの研究動向」(電子情報通信学会講演論文集より)

さて、ユーザーとは対極にある研究の場ではどうなのでしょう。 3月22日から25日まで東京工業大学大岡山キャンパスで開催される電子情報通信学会2004年総合大会の講演論文集がCD−ROMで送られきました。 VoIP関係でどんなテーマがあるか検索すると、次のようなものがありました。 

IP電話の無線IPv6化に関する検討○
VoIPによる緊急呼の優先制御と一般呼品質の両立についての一検討
シームレス通信に関するユーザニーズ調査結果○
IP電話の主信号暗号化に関する一検討
VoIPにおける無音圧縮方式の最適化に関する一検討△
複数プロトコルをサポートするIP呼制御サーバに関する一検討
網区間分割型のQoS情報通知装置におけるRTP/RTCPパケット識別手法に関する一検討
VoIPに適した公衆無線LANシステムの構成に関する検討○
IEEE 802.11 無線LANにおける異なるCODECに適用したVoIPスケジューリングの検討○
VoIP Media Gatewayにおける装置故障時切替方式に関する検討△

○をつけたのはワイヤレス関係。 やはり実用の世界同様、関心が高いのですね。 この中で興味を持ったのは三洋電機の「IP電話の無線IPv6化に関する検討」。 こんな記述があります。 
「ワイヤレスIP 電話では、現在の携帯電話なみの普及率を考えた時、IPv6 化は必須であり、中でもセキュリティの観点からはIPsec の実装が不可欠であると考えられる。 そこで今回、この試作システムを用いて基板1対とIPv6 ルーター、SIP サーバー等による実験環境を構築し、基板にかかるトラフィックの負荷を解析した。 具体的にはIPsecを使用する場合と使用しない場合で、着呼した側が通話開始操作を行ってから音声パケットが双方向送受信可能になるまでの時間計測を行い比較した。

試作システムによる評価実験の結果、基板間のIKE の処理には実用に堪えない時間がかかっていることが分かった。(中略)ソフトェア処理では負荷が重いこのような暗号処理を本試作システムで高速に行うためには、専用のハードウェアを追加する必要がある。(中略)この暗号処理サポートハードウェアの追加により本試作システムのようなIP 電話基板のPtoP でのIPsec 利用が性能的には可能になると考えられる。」

たしかに将来はIPv6も、IPsecも使われるようになるでしょうが、現在はv4、IPsecなしの無線SIP端末が実用に入りました。 

「シームレス通信に関するユーザニーズ調査」は通信総合研究所、アッカ、東京大学が行ったもの。 昨年6月から8月にかけて行われたシームレスアクセスソフトウェアの実験にもとづきアンケートを取ったもので、有効回答は88人。 シームレス通信を求める無線システムとしては68%がすべての無線アクセスと答え、無線LAN、3G携帯、2G携帯、PHSのすべてがシームレスに使えることを求めています。 中でも無線LANで利用できることは97%のユーザが求めています。 

ちょっとなつかしいのは三菱電機の「VoIPにおける無音圧縮方式の最適化に関する一検討」。 無音圧縮というのは私の頭の中では死語に近いので、今、どうして無音圧縮なのかという気がします。 DSPの性能やネットワークの帯域幅が限られていた6、7年前は議論の必要性があったのですが、今では無音圧縮などせず、安価で豊富になったCPUやネットワーク資源を使って高品質を目指した方がユーザーのニーズにかなっていると思います。

総じて研究のスピードより、実用(製品化)のスピードの方が上回っているのではないか、と感じました。

さて、大いに違和感はあるのですが、私もこの学会のパネルに参加することになっています。 皆さんとは180度違う観点で、場を盛り上げられればと思います。
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TB-2. VoIP/IPテレフォニーの最新動向(予稿なし)
 3月23日 13:00〜15:00  南1号館S126講義室  座長 佐藤博彦(NTT)
                    講演時間:各25分
                   座長挨拶:2分
 TB-2-1       VoIPの標準化動向とアーキテクチャ、制御技術
                     千村保文(沖電気)
 TB-2-2       VoIPネットワークの品質制御
                     間瀬憲一(新潟大)
 TB-2-3       SIPプロトコルを用いたアプリケーション及び製品開発動向
                     嶋谷俊道(岩崎通信機)
 TB-2-4      企業向けIP電話:IPセントレックスの設計と構築、今後の展望
                     松田次博(NTTデータ)
  
                   パネル討論(18分)
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