間違いだらけのネットワーク作り(318) 2004/02/21
記事評「VoIP導入25のポイント」(NetworkWorld4月号)

昨日は博多へ2ヶ月ぶりの出張。  広域イーサを使ったネットワークの完成報告会。 昨年9月から移行をはじめ、計画どおりぴったり完成しました。 拠点数は150拠点超。 例のごとくルータレスで、国産レイヤ3スイッチを多用しています。 主要拠点は広域イーサを二重化し、OSPFでロードバランス。 小規模拠点はフローティング・スタティックによるINSバックアップ。 基幹業務の帯域を確保、といったところが特徴です。  帯域を確保するといってもパケットシェーパーを全拠点に導入するなどという無駄遣いをお客様にさせたりはしていません。 

また、同じお客様で今週からコールセンター用のIP電話のテストが始まり、順調に動いています。 アウトバウンドの通話をGWでIPセントレックスに流し、通信料を削減するのが目的です。 コールセンタは最終1000席超になるのですが、大規模なコールセンタでIP電話を本格的に利用するのは国内初ではないでしょうか。 もちろん、0AB−J番号を使います。 モビリティよりも、信用が大切なコールセンタでは0AB−J番号ははずせません。 これからのIP電話はモビリティや端末の多様化を実現する050番号主体にすべきですが、本社代表番号とか、コールセンタのお客様向け番号のようにそのままIP電話にもって来るべき0AB−J番号は残ります。 

往復の飛行機の中でちょうど届いたNetworkWorld4月号をパラパラと読みました。 この本は記者が記事を書くのでなく、実際にネットワーク設計・構築をしているプロが書いているので内容が深いです。 センセーショナルさはなく、特定ベンダーのPR誌的色彩もありません。 客観的に技術を勉強したい人にはおすすめです。 

その記事の中で「VoIP導入前に押さえておきたい25のポイント」というのが面白かったのでコメントします。
 

記事評「VoIP導入25のポイント」(NetworkWorld4月号)

「何を基準に機器を選べばいいの?」「IPセントレックスはどこで比較するの」、こんな疑問が一気に解消!というのがキャッチコピーになっていますが、結論から言うと一気に解消はしません。 ユーザの迷いは消えず、「こんなにバリエーションがあるの? 何を選んでいいか分からない」となるでしょう。 しかし、この記事が価値があるのはIP電話のバリエーションがこれだけある、と示したことだと思います。 

企業へのVoIPの導入をPBXにVoIPゲートウェイを付加、自営ソフトスイッチ、IPセントレックスの大きく3つに分類。 IPセントレックスの定義は正確です。 某誌のように自営ソフトスイッチをIPセントレックスと言ったりはしない。 いろいろな利用パターン、アイデアが紹介されていますが興味を持ったのは次の2つです。

「G.711とG.729のコンバータ」:IPセントレックスでは外線通話もイントラネットを使うのが原則です。 つまり、イントラネットの回線があれば各事業所に電話回線やINSを引かなくても外線発着信が出来るのです。 しかし、欠点は外線ではG.711を使うため1チャネルあたり約100Kの帯域幅が必要なこと。 これを解消するためにG.711とG.729のコンバーターを私も探していました。 IPセントレックスとイントラネットを接続するSBC(SessionBorderController)を境にイントラ側はG.729、IPセントレックスとPSTNはG.711という使い方が出来るとイントラネットの帯域幅は1チャネルあたり25Kで済むため大幅に減ります。

心配なのは遅延とコンバータの処理能力。 遅延が大きいと固定電話の満たすべき遅延100ミリ未満を守れないかもしれませんし、エコーも生じやすくなります。 大企業では外線のトラヒックは相当量ありますから、コンバータは充分安価で処理能力もあるものでないとだめです。 さっそく編集部を通じて著者を紹介してもらい、製品を詳しく調べたいと思います。

2つめは「分離型IPセントレックス」:実はこのアイデアは某通信機器メーカーから1年近く前に聞いていました。 通信機器メーカーは独自世界を守りたいという目的もあって、自社のソフトスイッチを全拠点に設置し、コールハンティング(代表)や転送などの機能はそちらで実現。 キャリア等のIPセントレックスは外線の呼制御のみ行うというものです。

この方式の良さは電話の増設・移設や代表の組替えなどがローカルに出来ること。 欠点は番号ポータビリティが不可能で、各拠点には電話回線を残さねばならないことです。 IPセントレックスで0AB−J番号を使うための重要な条件はキャリアからのセッションが途中で終端されずに固定IP電話機に接続されることです。 IP−PBXやCallManagerをローカルなソフトスイッチとして使用すると、キャリアからのセッションはそこで終端されてしまうため、0AB−J番号は使えないのです。 終端されると端末の位置はキャリアからは見えなくなり、0AB−Jの大前提である、位置の固定が保証できないからです。

「ソフトスイッチは、冗長性を持たせるための柔軟な設計変更が可能で、オープンな技術に基づいている製品を選ぶべきである」というのは同感。 この方もベンダーの奴隷ではなく、選択できることの自由を重視するオープン主義者なのですね。 
 

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