間違いだらけのネットワーク作り(300) 2003/10/11
「IPセントレックスと自営IPセントレックス(???)の大きな違い」

このコラムも今回で300号になりました。 盆正月の2回は休むので、年50回、ちょうど丸6年たったことになります。 初期にはVoFRやVoATMのことをよく書いたもので、Nortelのパスポート、MICOMのMARATHONを使った経験から結構、細かなことを書いていました。 97年当時、64Kのデジタル専用線で構築した100店舗規模の銀行のVoFRネットワークは今でも動いています。 64Kの回線に音声2チャネル、勘定系、LANを収容していました。 フレームリレーはヘッダが小さい分、効率がいいのです。 標準化されたばかりのG.729を使い、音質も実用に足るものでした。 今は128Kに速度アップされていますが、そろそろ更改時期でしょうか。 現在構築している東京ガスさんはじめ、広域イーサネット、IPセントレックスベースの企業ネットワークはVoFRと比べると隔世の感があります。 

さて、300回を記念して情報化研究会大会を開催します。 日時は12月13日(土)午後1時−5時、場所は明治大学リバティタワー1114教室です。 講師は総務省技術政策課長 稲田修一氏、CSK取締役技術担当有賀貞一氏、そして私の3名を予定しています。 稲田さん、有賀さんは84年の情報化研究会発足当初からのメンバーです。 会費やプログラムは来週には案内できると思います。 

「IPセントレックスと自営IPセントレックス(???)の大きな違い」
 

昨日日経コンピュータ主催のセミナーが行われ、私と東京ガス情報通信部森主幹、KDDI鎌田課長の3人が講演しました。 鎌田さんの話はCISCOのコールマネージャーを使った飯田橋ビルのことが中心。 信頼性を確保するためPBXを併用しており、外線や他拠点との内線はすべてPBXに収容、コールマネージャーやIP−PhoneはGWでPBXに接続していました。 面白い構成ですね。 代表電話や外線をすべてPBXに収容するのが。 主役はPBXに見えました。

さて、このセミナーは東京ガスさんの現状を正しく知ってもらうためのいい機会だと思っていたのですが、案の定、「IPセントレックスでは転送ができないのでは」などという冗談みたいな質問が出て、風説の流布というのも大変なものだと思いました。 森さんが笑いながら転送も、ピックアップもそれが主体の使いかたなので問題なく使えていると回答されていました。 前回のこの記事でも書きましたが、東京ガスさんでは同一事業所内の転送だけでなく、他事業所への転送も出来るようになっています。 

森さんの了解を得ましたので、講演で使ったスライドの中から2枚を引用させていただきます。 ( )内は私が補足しました。 
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これまでを振り返って−苦労した点
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□ユーザーおよび管理者の理解獲得(下記のような不安の払拭)
 ■従来型電話への高い信頼
 ■今夏の電力不足やNY大停電事故
 ■コンピュータ・ウィルスの流行
 ■LAN/WAN障害
 ■電話とパソコンの共倒れ
□移行作業・運用
 ■安価でIP電話に適したLAN構成
 ■広域イーサネットの開通時期
 ■ユーザ実施作業の範囲拡大
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これまでを振り返って−良かった点
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□コストダウンの実現
□WAN・VoIPの一括アウトソーシング
 ■回線、機器、音声のチューニングはノウハウが必要な上、それぞれの会社を(ユーザが)調整するのは大きな負担
□IPセントレックス(IP電話)による新機能
 ■発番号通知
 ■音声品質改善
□事務所開設の省力化
 ■PBX・ビジネスホンに比べて、容易に構築可能
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*エンドユーザが新しいIP電話に持つ不安をいかに払拭するかがやはり大変ということでしょうか。 払拭する一番いい方法は事実で大丈夫であることを示すこと。 私が講演の中で、一番うれしいこととして紹介したのは9月に移行したIP−Phone1000台強の拠点では、1日12000から15000コール使って頂いていること。 移行から3週間以上たちましたがたくさん使ってもらえていることがありがたいです。

*この記事を書いている途中で、次男・三男の高校の学園祭へ出かけました。 帰って来ると日経コミュニケーションが届いており、コールマネージャーを使った事例を「自営IPセントレックス」という造語で紹介していました。 ユーザに対して大きな誤解を与える最悪な造語ですね。 この定義でいくと、現在PBXを使っている企業はすべてセントレックス・ユーザということになります。 ベンダーが売り込むのに耳ざわりのいい名前でユーザに説明するにはこういう造語は便利ですね。 同じものをKDDIさんは「IP−PBX」と図に表記し、日経コミュニケーションは「IPセントレックス」と表記する。 ユーザは言葉が同じなら東京ガスのIPセントレックスも、日経コミュニケーションが言うそれも同じと誤解するでしょう。 言葉に対して一番厳密であるべき専門誌がユーザに混乱を与えかねない造語をするのは感心しないですね。

*Centrexの語源は「Central Office Switch(局用交換機)+Private Branch eXchange(構内交換機)」の合成です。 キャリア側にあってCentrexと言えるのであって、企業内にあるのはKDDIさんの「IP−PBX」の表記の方がまだましと言えるでしょう。 ただ、UNIXや独自OSで動き、数100種類のPBX機能を持っているIP−PBXのメーカーから見れば同じ呼び方をされるのは迷惑かもしれません。

*ごく簡単に本来のIPセントレックスと日経コミュニケーションの自営IPセントレックスの比較をしておきましょう。 さらに詳しいことは私の著書、「企業ネットワークの設計・構築技法−広域イーサネット/IP電話の高度利用」の第10章に書いてあります。
 
 
本来のIPセントレックス 自営IPセントレックス(???)
使用OS UNIX Windows
設置場所 キャリアがキャリアの資産として設置 ユーザが自己の資産として自社内に設置。 要するにPBX。
番号ポータビリティ あり。 従来利用していた固定電話番号(0AB−J番号)をそのままIP電話の番号として使う。 電話回線はライフラインなど一部をのぞき、拠点には残さないのが原則。
 

IP電話だが、0AB−J番号を使っているため固定電話からIPセントレックスに収容されたIP電話にかけても通常のマイライン料金。

固定電話から050のIP電話にかける時の3分10円、11円といった料金ではないため、固定電話利用者にとって市内通話が割高にならない。

固定電話利用者が050の利用者に市内通話をかけるとマイライン料金より割高になる。

なし。 電話回線は各拠点に従来どおり、そのまま残る。
プロトコル SIP、オープン指向 ベンダー独自、クローズド指向
IP電話中継網との接続 あり。 IPセントレックスはクラス4ソフトスイッチと呼ばれるIP電話中継網と直結しており、IPセントレックス収容のIP電話からの発信は全国一律3分8円程度の通話料でかけられる。 なし。 PBXと同様、電話回線がキャリアにつながっているだけ。
利用形態 従来の局用電話交換機と同様、共同利用。 そのため災害対策や障害対策のほどこされた設備を安価に利用できる。 1ユーザの単独利用。 障害対策や災害対策は自己負担でせねばならないためコストがかかる。

 

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