間違いだらけのネットワーク作り(276) 2003/04/19
「IPセントレックスの正しい目的」(京都研究会模様)

先週、土曜日東京発9時ののぞみで京都研究会に向かいました。 ゆったりしたグリーンのシートで、本当ならワインでも飲みつつ行きたいのですが2時間の講演という義務が待っているので、おとなしくコーヒーを飲み、MDを聞きつつたらんとリラックスしました。 車内にはノートパソコンをパチパチたたいているビジネスマンが眼につきます。 ご苦労さん、という感じ。

私はというと、うすっぺらいノート(PCではなく、紙のノート)と3色ボールペンが旅の伴。 5月中旬までに書くように頼まれている原稿のプロットを書きました。 企画書や講演、あるいは原稿のプロット書きにはパソコンよりノートの方がはるかに生産的です。  好き勝手書きこんだり、線で消せるし、絵が自在に書けます。  第一軽いし、安い。 私が愛用するのは30シートのノートで、ダイエーで10冊ほど束にしているのが300円で買えます。 一つのテーマで1冊、30枚、30円。 今私のカバンに入っているノートには表紙に「IPセントレックス」と書いてあり、中には講演や原稿のプロットがあり、新聞の切り抜きもはってあります。  

リラックス・モードのはずなのに、原稿書きかと思われるかも知れませんが、私にとって原稿書きは本業でなく、趣味なのでリラックスの手段なのです。 静岡を通過するまでにプロットは書き終わり、あとは東京に帰ってからWORDで頭の中のものをアウトプットすればいいだけになりました。 

11時すぎに京都着。 地下鉄で四条烏丸へ。 午後から晴れの予報なのですが、わずかに雨が残っていました。 そこから河原町通りをてくてくと歩き、四条大橋東詰、南座の隣にある「松葉」を目指します。  松葉は元祖にしんソバの店。 大きなにしんの身がそばからはみだすように乗せられているソバです。 みりんで濃い味に煮込まれたにしんの身が、はしをつけるとちょっとくずれてソバのだしに溶け出します。 この味と食感が好きなのです。 99年の夏に長男と来て以来、ごぶさたしていたので行こうと思い立ったのです。

途中、ジュンク堂京都店に立ち寄りました。 もちろん、目的は私の新著がちゃんとあるか確認することです。 5階のコンピュータ書籍売り場に平積みされていました。 ちょうど店の人が棚の整理をしていたので、「この本は売れてますか?」と聞くと、この手の本にしては売れている、とのこと。 よしよし。 実は神田書泉グランデのコンピュータ書籍3月月間売上ランキングでは3位でした。 3月20日頃店頭に出たので、3分の1ヶ月で月間3位なのですから、立派です。

ジュンク堂を出て四条大橋にかかると、鴨川べりの桜が満開でした。 そこにいたのが写真のおじいさん。 
かさをさして熱心に絵を書いていました。 芸術家ぶったカッコウをせず、その辺のおじいさんが普段着で写生しているのがいいなあ、と思いました。

この写真を撮った場所から松葉は100メートルと離れていません。 松葉でにしんソバを食べ終わった直後、携帯が鳴りました。 表示された電話番号に見覚えがありません。 出てみると、某企業の方が自宅から電話をかけて来たのです。 IPセントレックスを社内で説明する資料を作っていて、それに関連する質問です。 一瞬、観光気分から現実に引き戻されましたが、熱心に検討いただいているんだな、とうれしくなりました。 

松葉からさらに歩いて八坂神社(祇園社)へ。 ここにもしだれ桜がたくさんあります。 お参りをしてから桜を見に行くと、雨があがったおかげで青いシートの上で花見をする人たちがかなり集まっていました。

京都研究会模様

八坂神社からタクシーで三条烏丸の研究会会場、新風館(http://www.shin-puh-kan.com/)へ。 この建物は大正15年電話交換所として建てられた京都の電話発祥の地です。 2001年に烏丸通りに面した正面の建物を保存し、内側の建物を建て替えて新風館として生まれ変わりました。 基本的構造は変わっておらず、3階建てで真中に四角い広場があり、まわりを建物が囲んでいます。 広場ではコンサートのリハーサルをしていました。  研究会の会場は保存された建物の3階にあるギャラリー。 もちろん内装はリニューアルされ白い壁とフローリングのさっぱりした空間になっています。

詳しいレポートは5月に発売される日経バイト6月号の間違いだらけのネットワーク作り第12回に書きますが、一つだけ研究会で出た質問を紹介しましょう。
研究会の常連で、京都にもほぼ毎年来ているAさんの質問です。 「IPセントレックスで通話料が全国一律3分8円になっても、大企業はマイラインで通話料がかなり安くなっているのでメリットがないのではないですか?」

この質問には失望しました。 私の話のポイントが理解されてないからです。 口の悪い私は「Aさん、ちっとも分かってないですね。」と再度、IPセントレックスの目的であるPBXレス化を説明しました。 東京ガス事例が典型ですが、IPセントレックスは企業ネットワークでコスト比重の大きいPBXのリース料や保守料をなくしてしまうのが目的です。 IP−PBXであれ、何とかマネージャーであれ、そんな設備は企業からなくしてしまおう、ということです。 通信料の削減が目的ではなく、設備コストの削減が目的なのです。 それをAさんは理解していなかった。

何故、Aさんは分からなかったのだろう、と考えて思い当たることがありました。 東京ガスに触発されて通信事業者を中心にIPセントレックスを始める事業者が相次いでいます。 私もそれらの事業者の提案書をいくつか眼にしたことがあります。 これらに共通しているのは、PBXの存在を前提とし、ゲートウェイでPBXをIPセントレックスに接続するパターンをメインに考えていること。 これはIPセントレックスとは呼べません。 これではコスト高のPBXが残るのですから、設備コストの削減は目的となりえず、通話料の削減を目的としてアピールせざるを得ません。 おそらくAさんは、そんな目的を取り違えたIPセントレックスの説明を聞いて洗脳されていたのでしょう。

大企業の通話料は驚くほど値引きされていることが多いので通話料削減を目的とし、PBXを残すIPセントレックスでは経済効果を得ることが難しいのは当然です。 私は言いました。「Aさん、せっかく私の新著、企業ネットワークの構築技法−広域イーサネット/IP電話の高度利用」を買ってくれたんですから、もう一度10章のIPセントレックスの設計・構築技法−東京ガス・モデルを読んでください。」

「IPセントレックス」という名前は同じでも、コンセプトや具現化できる効果は事業者によってまるで違います。 名前という形式的なもので、実質を見誤らされたのでは正しいIPセントレックスが必要なユーザは大迷惑です。

御所の桜

研究会の翌日曜日は御所の一般公開の最終日でした。 御所には入ったことがなかったので見学に出かけました。 そこで出会ったのが写真のしだれ桜。 樹齢の古い大きな木で形もよく、今が盛りと咲いていました。 次々にスナップを撮る人が桜の前に立つので、写真をとるのにずいぶん時間がかかりました。
優美な女性のきもの姿を思わせるしだれ桜はやはり京都によく似合います。

12時すぎののぞみで帰途につきました。 帰りは完全なるリラックス・モード。 ホームで買ったハーフボトル、875円のオーストラリアワインが意外においしかったです。

研究会の集合写真を会員ページに載せておきます。 
 
 

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