間違いだらけのネットワーク作り(266) 2003/02/08
「NET&COM2003講演要約−その1」

2月6日NET&COMで「2003年版VoIP:IP電話/IPセントレックスで企業ネットワークを革新する」を講演しました。 400人あまりが参加。 2時間で2万円もする有料セミナーとしては前代未聞ということです。 

講演終了後、情報化研究会のメンバー、一緒に講演していただいた東京ガスの田井マネージャー、影のキーマンとも言える東京ガス・森係長、某専門誌記者の総勢20人で打ち上げをしました。 講演で好き勝手なことを話してストレス解消し、終わって仲間と打ち上げ。 本当に楽しい一日を過ごさせてもらいました。 参加いただいた多くの方と、4年連続で講師に招いてくれた日経コミュニケーションに感謝。

しかし、残念だったのはその日経コミュニケーションがITPROに書いた速報記事が今ひとつだったこと。 インパクトのあること=言い換えると聞く人によっては耳が痛いことを書いてないからです。 それが講演の面白さなのに。 で、しょうがないから自分で要約記事を書きましょう。 スライドを38枚使ったのですが、そのうちポイントである11枚を今週から3回で解説します。 

せっかくなので速報記事へのリンクはしておきましょう。 参考にはなると思います。 
【NET&COM2003速報】「IPセントレックスが電話の常識を変える」−NTTデータの松田氏が講演

「2003年版VoIP:IP電話/IPセントレックスで企業ネットワークを革新する」要約−その1
 

○講演は「水洗トイレ」の話で始まった
今週火曜日、事件がありました。 会社の代表電話に「私はNTTデータの株主だが、そちらに松田という社員はいるか」という電話が入ったのです。 キャリアやルータ・メーカーが怒るようなことはしょっちゅう口にしたり、書いたりしますが、個人株主に怒られるようなことを言った覚えはないのでドキリとしました。 総務部の株式担当が対応。 話を聞くとクレームではなく、反対に松田にお礼をしたいとのこと。 総務部から来たメモには株主さんが言ったことがこう書いてありました。

「私は御茶ノ水でミロという喫茶店を経営している。 NTTデータの株主です。 松田さんが日経バイト2月号にうちのことを書いてくれた。 うれしいのでお礼がしたい。 株主からお礼を受け取るといったことはしないのかもしれないが、本人に連絡して欲しい。 NTTデータの株価には不満を持っているが、松田さんの記事はうれしかった。」

その記事は12月7日に明治大学で行った情報化研究会の内容を紹介したものです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
日経バイト2月号 間違いだらけのネットワーク作り第9回「IP電話で日本のネットワークを革新する」
(前の方は略、最後の段落のみ引用)
路地の奥のレトロな喫茶店
研究会が終わって10数人で打ち上げ。 エネルギーにあふれる人たちとワイワイ言いながら酒を飲むのは楽しい。 二次会はJR御茶ノ水駅に近い喫茶店。 細い路地を入った奥まったところにある。 この喫茶店がレトロで良かった。

テーブル、イス、内装すべて古いものを大事に使っている。 テレビはガチャガチャとチャンネルを回す20年以上前のもの。 トイレに入って驚いた。 私が30年近く前に大学に入ったころ、下宿で初めて見た水洗トイレと同じなのだ。 木の箱に入った水槽が高いところにあり、そこから細いクサリのひもが下がっている。 それを引っ張ると水が流れる。 30年前がそのまま保存されている。

そう言えば、遅い時間なのにお客が多い。 中年男性が主である。 このレトロな雰囲気が懐かしいファンがいるのだろう。 ITの世界で仕事をしていると、元気なときは変化を楽しめるが、たまにはノンビリしたいと思うこともある。 そんな時、こんな喫茶店に来て変わらないことの良さをかみしめるのもいいものだ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
喫茶店の名前は忘れていたので書きませんでした。 しかし、この店の常連客が日経バイトの記事を読み、この喫茶店のことが書いてあるよ、とご主人に教えたのでしょう。 日経バイトも結構、読者がいるのですね。 しかも、私のコラムをちゃんと読むような読者が。

自分の文章を読んで、こんなに喜んでもらったのは初めてなので、ご主人に電話をしました。 女性です。 お聞きしたのは次のようなこと。
「私はお茶の水で、ミロという喫茶店を40年やっている。 主人は明治大学の先生なのだが、つねづねトイレを新しくしたらどうだ、と言われ続けて来た。 お客から日経バイトに店のことが書いてあることを教えてもらい、それを主人に見せた。 こんな考えの人もいるんだなあ、と言った。 私の気持ちを分かって、それを書いてくれたことがうれしかった。 日経バイトを10冊買って、知人にも配りました。 お礼を用意してあるから、店に寄ってください。」

「私も変わらないことが好きなのです。  しかし、今日の電話の話は違います。 電話の世界を思いっきり変えましょう、という話をします。」ということで、長いイントロが終り本題に入りました。

○ブランドのいいもの、高価なものでないと品質や性能が悪い、という時代はとっくに終わった

2000年以来、4回目の講演。 シンプルなことばかり提案して来ました。 サーバは高いので、ネットワークを高速化して集中設置し、台数を半減させましょう=サーバレス(JA共済連さんの事例)。  ルータは高すぎるから、ローソンさんルータなんか捨てて広域イーサでネットワークを作りましょう=ルータレス。 

実は東京ガスさんには「ローソンさんと同じことをやって、コストを50%削減してください」という依頼をいただいたのが事の始まりでした。 しかし、現状調査をしてみるとルータ以上に償却費や保守料が高いのがPBXでした。 驚きました。 PBX屋さんがこんなに儲けているなんて。 私はまたもやシンプルな提案。 こんなPBX全部、なくしましょう=PBXレス。 PBXレスを実現するのがIP電話であり、IPセントレックスです。 昨年まで私が「VoIPなんて止めたほうがいい」と言っていたVoIPは、通信料の削減が目的でした。 しかし、私がこれから思いっきりやりましょうと言っているVoIPはPBXを消滅させることが目的なのです。 まったく意味が違います。

ちょっと昨年の復習もしました。 昨年の講演ではローソンさんの事例が目玉でした。 講演終了後、あんな安いスイッチを使って大丈夫なんですか?と数人の人が来て言いました。 失礼ですよね、安いスイッチベンダーさんに。 そこで、完成して1年経過したローソンさんのネットワークでの事実をいいました。 あの安価なスイッチは140数台動いていますが、1年間で1台も故障していません。 1台14万円のスイッチは100Mまで使えて、1年間故障もない。 ブランドがいいもの、高価なものでないと品質や性能が悪い、という時代はとっくに終わっているのです。 ローソンさん始め、多くのユーザ事例がそれを証明しています。 もちろん、メーカーは違いますが東京ガスさんのネットワークもルータレスで、安価なスイッチを使います。

○日経コミュニケーションのIPセントレックスの定義は間違い
 

PBXレス、つまり、PBXをなくするための仕組みがIPセントレックスです。  ネットワーク構成は下図を見てください。 点線から上半分はプロバイダーのネットワーク、下半分が企業ネットワークです。 企業ネットワークは広域イーサネットなどで構築されたイントラネットです。 イントラネットの回線をIPセントレックスの設置してある通信センタに引き込みます。 これでイントラネット上での内線通話も、クラス4ソフトスイッチを経由した外線の発着信も可能になります。

IPセントレックスの定義は次の3点です。
@オープンであること
これが一番大事です。 IP−PBXや何とかマネージャーといったVoIPサーバとIP−Phone間のプロトコルはメーカー独自のクローズドなものです。 そのため、IP−Phoneにはハード価格以外にライセンス料などというわけの分からない費用がかかったりする。 結果、1台5万円とか10万円になる。 これは昔からのPBXでも同じ。 AというメーカーのPBXにはA社の電話機しかつながらない。 これで端末に競争が起こらないので価格は高止まりのまま。 

そういうクローズドな世界をオープンな世界に変えるのがSIPベースのIPセントレックスです。 どんなメーカーのIP−PhoneでもSIPで簡単にIPセントレックスに接続でき、ライセンス料なんて払う相手はいない。 ユーザはたくさんのメーカーのIP−Phoneの中から自分の要件にあったものを選択できる。 出来て当たり前のことが、出来る世界です。 
東京ガスさんでお使いいただくIP−Phoneについては次回詳しく書きますが、1万円代の価格です。 他社のライセンス料より安いのです。
 

Aクラス4ソフトスイッチとセットであること
クラス4ソフトスイッチとはIPベースの電話中継網であり、日本全国をカバーしています。 レガシーな中継電話交換機をとおらず長距離通話が出来るので、どこにかけても3分8円という通話料が実現できるのです。
 

Bシェアードサービス(共同利用型サービス)であること
IPセントレックスの実体は複数のUNIXサーバとその上で動くソフトウェアです。 セントレックスはシグナリングの処理が主体でトラヒックがその中を流れたりしません。 負荷が少ないですから、1つのシステムを複数の企業で共同利用できます。 だから、二重化された信頼性の高いシステムが低コストで利用できるのです。

日経コミュニケーション2月3日号ではクローズドなIP−PBXを単にデータセンタにハウジングしたものをIPセントレックスと呼んでいますが、あれはIPセントレックスではありません。 上記3つの条件を一つとして満たしてないからです。  


 

ホームページへ