間違いだらけのネットワーク作り(255) 2002/11/23
「IP電話のR値」

紅葉していた街路樹も葉が落ち、いよいよ冬本番、という季節になりました。 水曜日にスタートしたばかりのプロジェクトで総勢31人でのレビューを半日かけてやりました。 こういう大掛かりなプロジェクトは楽しいです。 一方で、今月完成したVoIPのネットワークが二つあり、一つはノークレーム。 もう一つは若干のトギレがある区間があり、調査中です。 さらには新規の提案プロジェクトも複数並行して走っており、まだ師走でもないのに文字通り走り回っている感じです。 厳島神社に大規模案件受注のお礼参りに行きたいのですが、何時のことになるやら。 夏の旅行で商売繁盛のお守りを買ったのです。 今も会社のパソコンの横に立ててあります。

日経バイトに連載中の間違いだらけのネットワーク作り(第二回)がITPRO掲載後1週間で予想どおりアクセスランキング、参考になったランキングともに1位になりました。 毎回ベスト3くらいには入れる記事を書きつづけたいものです。


IP電話のR値
 
IP電話の話題がほとんど毎日新聞に載るようになりました。 IP電話は予想を上回る加速度で普及するでしょう。 イス取りゲームはもうスタートしています。 電話事業という通信事業者の収益の源泉は急激に涸れ、ISP事業との境界は消滅。 企業ネットワークのあり方も大きく変化するでしょう。 通信業界自体は売上が激減。 どんどんイスが少なくなる中で、最後までイスを確保するにはどうすればいいか? といったことを考えつつ日々の仕事をしています。

「間違いだらけ」を連載しているので、毎月日経バイト誌が自宅に届けられます。 12月号には「050」電話登場の意義というレポートがあり、めずらしくちゃんと読みました。 日経バイト誌の記事は私のようなネットワーク文学者には難しすぎるので、自分のコラム以外はほとんど読まないのです。 050の記事は自分の分野でもあり、楽に読めました。 勉強になったのはR値の話。 以前にもここで取り上げましたが、総務省のIP電話の品質基準は下表のようになっています。
 
 
R値 端末間の遅延 取得できる番号
クラスA(固定電話並み) 80より大(100が最大) 100ミリ秒未満 0AB〜J番号、050
クラスB(携帯電話並み) 70より大 150ミリ秒未満 050
クラスC 50より大 400ミリ秒未満 050

R値はRo−ls−ld−le,eff+Aで算出され、パラメータは20個あるとのこと。 しかし、TTC(情報通信技術委員会)が決めた測定方法は遅延だけを変数として測定し、それ以外のパラメ−タは定数として扱うそうです。 ちなみに、計算式の項の意味は
Ro:回線雑音、室内の雑音による劣化=定数、
ls:音量、側音、量子化ひずみによる劣化=定数、
ld:エコー、遅延による劣化=ハンドセットと相手端末間の片方向遅延、ハンドセット間の片方向遅延、端末間の往復遅延
le,eff:低ビットレートの符号化、パケット損失による劣化=定数
A:モバイルなどの利便性のアドバンテージ=定数

ITU−Tの音声遅延のガイドラインであるG.144では0−150ミリ秒、150−400ミリ秒、400ミリ秒超の3クラスに分け、150ミリ秒以内であればあらゆる用途で利用可としているのと比べるとクラスAの100ミリ秒未満はちょっと厳しいですね。 現在使われているゲーウェイベースのVoIPでは200−300ミリ秒の遅延でも平気で使われているのですが。

送信端末での符号化遅延、パケット化遅延、受信端末のJitterバッファ遅延の合計だけでも100ミリ秒近くになるでしょうからクラスAは相当に高いハードルと言えるでしょう。
普通の企業ネットワークではITU−Tの150ミリ秒基準を満たせば上出来のように思います。

経験的にエンドユーザは遅延よりトギレに対して敏感です。 とすれば、多少バッファでの遅延が生じてもパケット損失がおき難い設計の方がMOS値(音質の主観評価)はよくなるのではないでしょうか。 そういう意味ではパケット損失による劣化を定数にする、というのが本当だとするとTTCのR値測定法では実感する音質とかなりズレが生じるように思います。
 
 

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