間違いだらけのネットワーク作り(242) 2002/08/17
記事評「企業ネットを席巻するIP−VPN」

今週はお盆で通勤電車も空いており、世の中全体夏休みモードでした。 が、なぜか私のところは設計やら新規の仕事が立て込んで1年に1回あるかないかの超多忙な状況に追い込まれています。 このホームページも盆と正月の2回は休むのですが、こうして今日もパソコンに向かっているのは遊びに行ってないため。 7月のおわりに研究会のメンバーと京都で遊んでおいたのがせめてものなぐさめ。 今のドタバタ状態が落ち着いたころには夏は終わっているでしょう。

さて、先週SIP−URLについてのメールをHさん、から頂きました。 そのHさんからSIPの研究会をやろうという提案がありました。 さっそくHさん自身に講師をお願いし、OKになったので下記のとおり、久しぶりの研究会を行います。

1.日時・場所
9月21日(土) 午後2時〜5時 5時〜6時30分立食パーティ
港区赤坂1−5−11 NTT葵荘  tel:03−3583−7655

2.プログラム
2時−4時
「SIPとMSNメッセンジャー:SIPサーバを自作したらこうなった」(仮題)
講師: NTTPCコミュニケーションズ 波多 浩昭氏

4時−5時 最近の企業ネット(SIP、IP電話サービスを中心としたディスカッション)
モデレータ:松田

3.対象
情報化研究会会員

4.会費 4000円

5.申込み 松田までメールで。

記事評「企業ネットを席巻するIP−VPN」

なぜか日経コミュニケーションの8月19日号は届くのが早かったですね。 夏休みの方がふだんより早い、というのが面白い。 雑誌作りにたずさわる人たちが夏休みを取るために仕事を速めに進めたのでしょうか?

さて、企業ネットを席巻する(?)IP−VPN、ですか。 この特集は面白く見ました。 ていねいには読んでいません。 IP−VPN vs 広域イーサネットという議論は2000年以来続けてきて、私の頭の中では結論は出ています。 現在の関心事は上記の研究会テーマのとおりで、広域イーサネットからもIP−VPNからも遠のいています。 

でも、企業ネットの現状やキャリアの商売の状況を知る上でこの特集は面白いですね。 以下、2、3コメントします。

1.広域イーサネットは大健闘
マーケットシェアを左右する最も大きな要因はセールスマンの数です。 マーケティングの世界にはランチェスターの法則という有名なセオリーがあります。 営業成果はセールスマンの数の二乗に比例する、というものです。 たとえばAという製品とBという製品のセールスマンの数が1:2とすると、営業成果は1:4になる、ということです。

IP−VPNのセールスマンの数は広域イーサネットのそれより1桁、あるいは2桁多いでしょう。 仮に10倍としても、営業成果つまり、マーケットシェアは100:1、つまり広域イーサネットの100倍取れることになります。 しかし、この特集のアンケート結果では現時点の幹線系で21.9%対5.5%。 4倍にも満たないのです。 今後採用する予定で見ると、44.2%対21.4%。 近い将来は2倍程度の差に縮まるということです。 

広域イーサネットは少ない戦力と比べると、きわめて大きな成果をあげており、今後さらに成果を拡大する、いうことになります。
IP−VPNが企業ネットを席巻する、というのは間違った見方で、大手キャリアがあんなにセールスマンを投入しているのに、広域イーサネットをねじ伏せられない、というのが実態だということが良く分かります。 

IP−VPNのシェアで1位のNTTコミュニケーションズが、広域イーサネットでは6位と低いのが意外です。 これは、NTTコミュニケーションズがIP−VPNに戦力をより多く割いている結果ではないでしょうか。 この特集の結果はNTTコミュニケーションズのマーケティング戦略がそのまま表れている、といっても良さそうな気がします。

マーケットの実態はNTTコミュニケーションズのIP−VPN vs 広域イーサネット陣営、と要約できるのではないでしょうか?

ランチェスターの法則、Googleでも検索すると出てくると思いますから調べてみてください。

2.IP−VPNは大規模ネットワークの基幹系では使われていない
これは特集には書かれていませんが、かつて日経コミュニケーションに掲載された保険会社のネットワークでも、その他の大手金融機関のネットワークでも、IP−VPNは支線系でしか使用されておらず、基幹部分は専用線が使われています。 バックボーンは専用線を使い、OSPF等で負荷分散や障害時のバックアップに要する時間の短縮を図っているのです。 要は本当に大規模なネットワークではIP−VPNは基幹系に不向き、ということです。

IP−VPNは中小規模のネットワークと大規模ネットワークの支線系に適する、というのが私の見方です。
広域イーサネットは基幹系から支線系までOK。 ただ、大規模ネットではVLAN設計に工夫を要します。

3.広域イーサネットは足回りのバリエーションに難
アクセス回線のメニューの多さでは広域イーサネットはIP−VPNに勝てませんね。 メニューを増やしていくにはお金もかかります。 この辺は体力差がそのまま出ていると言えそうです。
 

実は私がこの特集で一番価値のある情報だと思ったのはキャリアの値引きの実態です。 ヒドイですね。 2割、3割はふつう、場合によっては5割以上値引く。 さらに、来年は国が相対取引を認めて、ダンピングを公認するという。 勝手にやんなさい、という感じです。 回線で付加価値を出すのが私の仕事ではないので、安くなればなるほど企業ネットの仕事は増えるのでありがたいのです。

しかし、アメリカのISPがやったようにダンピング競争で寡占化が進み、寡占状態になってから料金値上げ。 料金が上がるとユーザが逃げて、ISPは倒産。 このシナリオを日本で繰り返して欲しくないですね。 ユーザが迷惑です。
 

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