間違いだらけのネットワーク作り(210) 2002/01/05
「2002年:ネットワークはユーザ主役、キャリア淘汰の時代へ」

新年、おめでとうございます。 2002年がネットワークの仕事にたずさわる全ての方々にとって幸多き年であるよう、お祈りします。

この冬休みは12月29日から1月6日までの9連休。 受験生がいるので遠出はしませんが、ふだん読めない本や資料を読みたい、今年既に6本予約が入っている講演の資料を考えなきゃいけない、原稿も書きたい、テレビも見たい(紅白とテレビ東京の長時間時代劇)、大掃除も受け持ちをやらなきゃいけない(神棚、風呂、フローリングみがき)、と時間をもてあますおそれはまったくありません。 何と安上がりな冬休み。 「なきゃいけない」より、「たい」が多いのが幸せなところです。

今回は年頭の少し大きめのテーマと、第15回研究会のパワードコムさんのスライド紹介の2部構成にします。

2002年:ネットワークはユーザ主役、キャリア淘汰の時代へ

ネットワークはユーザ主役の時代

ネットワークは完全に供給過剰になりました。 たとえば、IP−VPNはNTTコミュニケーションズ、KDDI、日本テレコム、パワードコム、フュージョン・コミュニケーションズの5社、広域イーサネットはCWC、NTTコミュニケーションズ、パワードコム、その他 計7社が提供しています。 カリフォルニア州の広さに満たない狭い日本にこんなにたくさんのキャリアが必要なのでしょうか?  

しかし、供給過剰はユーザにとっては選択肢が多く、サービスが安価に手に入る、という面で有利です。 ユーザに求められるのは選択する「眼」です。 前回の記事に書いたとおり、名前が同じIP−VPNでも、「旧」と「新」ではユーザができることが全く違います。 広域イーサネットもキャリアの採用している機器や方式の違いで、できることや信頼性に差異があります。 そこをちゃんと理解して選択しないと、安かろう悪かろうの選択になりかねません。 さらにはネットワークの変更に対応するサービスの速さや保守のレベル、究極は3年後に存在している会社なのかどうか、といったことまで考える必要があります。

特に品質を見極めることは重要です。 この点で日本のユーザというか、「世間」の眼も捨てたもんじゃないと最近思ったのは、ソフトバンクが電話事業に乗り出すというニュースに対するマスコミや金融市場の反応です。 「ソフトバンク、電話事業に参入――良質なサービス、選択の基準に 」(  2001/12/17日本経済新聞 朝刊)。 VoIPをはじめあおるのが好きな日経新聞にして「良質であること」を選択の基準にすべき、と書かざるを得なかったところがポイントです。 金融市場の反応はもっとあざやかで、12月上旬に2500円を超えていたソフトバンクの株価は17日のニュースリリースの翌日にはいっきに400円近く下げて終値で2000円を切り、その後も2000円から2100円前後で低迷しています。

YahooBBの騒動が背景にあることは言わずもがなです。 通信事業は社会のインフラを担うもの。 ユーザのことも、同業者のことも、機器ベンダーのことも眼中にないかのような「商売」の仕方が好ましいとは思えません。 「安さ」をもたらしたことは一見、ユーザのためかも知れません。 しかし、通信事業者が品質や信用を保てないような価格水準に持ち込んだとしたら、それは破壊行為でしかありません。 そのことを「世間」は知っている、ということがこのニュースで分かりました。
 

キャリアは淘汰される

これからの数年でキャリアの淘汰が進むでしょう。 株価の低迷、ファイナンスの苦しさの中でキャリアに求められるのは「主体性のある、ユーザの立場にたったサービス開発」ではないでしょうか? IP−VPNと広域イーサネットを例にとりましょう。

IP−VPNについて日経コミュニケーション1月7日号P.70に面白い記述がありました。
特にIP−VPNは好調だ。 NTTコミュニケーションズとKDDIは、ともに契約回線数が2001年度中に3万回線を突破する。(中略)KDDIでは2002年中にフレームリレーの回線数を逆転する。」

この記事を背景を知らずに読むと、「IP−VPNは好調だ」と思ってしまいます。 私はこの記事を読んで、「IP−VPNはもうだめだな」と確信しました。 それを理解するにはフレームリレーとIP−VPNのマーケットの経緯を知る必要があります。

キャリアの間では95年から98年頃まで「フレームリレー戦争」が行われました。 勝利をおさめたのがNTT。 2000年10月にNTTコムが行った講演資料によればフレームリレーの回線数は8.3万回線、シェア50%以上。 IP−VPNはフレームリレー戦争で負けたキャリアが新しいサービスで挽回をはかるため、おそらくは機器ベンダーのアイデアそのままに始めたものだろうと思います。 フレームリレー戦争に勝利したNTTコムも負けじと追随。  IP−VPNはキャリアがユーザの立場にたって、主体的に開発したものではなく、キャリア間の競争の道具の意味合いが強いと私は理解しています。 それが証拠にIP−VPNのサービスが始まってから、フレームリレーからIP−VPNへの移行合戦が続いています。

このような背景をふまえて上記の記事を私がリライトするなら、こうなります。
IP−VPNの今後の成長には疑問。 NTTコムはサービス開始から2年近く経って年度内に3万回線を突破する見込みだが、フレームリレー契約回線数の半分に満たない。 KDDIはもともとのフレームリレー回線数が少ないため、2002年中にIP−VPN回線数がフレームリレーを上回る見込み。 しかし、CWC、パワードコムなどが積極的に展開している広域イーサネットに対するユーザの評価が高くなっているため、IP−VPNの伸びには限界があるだろう。」

フレームリレーで競争し、ベンダーや他社がIP−VPNだと言えばそれに投資。 2年前には軽んじていた広域イーサの評判がいいとなれば、また投資。 現在のキャリア間の競争はお互いが、お互いを振り回しながらの消耗戦におちいっており、淘汰は避けられないと思います。 

私は「キャリア」という言葉に重みや信頼感をいまだに持っています。 それにふさわしい主体性とポリシーを持って欲しいと思います。 それをユーザに明確に示したキャリアが生き残るのではないでしょうか?
 

第15回研究会レポート(その2):パワードコム

パワードコムの安藤さんから研究会で使用したスライドのうち、公開可能なものをいただいたのでご紹介します。  前回の記事でコメントしたとおり、「セル」という名前の部分ネットワークを組み合わせる形でネットワークを構成しているのが特徴です。 県内網、エリア網、全国網の3種のセルから成っています。 面白いのはセル間の接続が加入者収容スイッチであること。 これだと各セルからは接続相手のセルは1ユーザとしてしか見えませんから、セルの独立性が確保されます。 それがどんなメリットとデメリットになるのか、までは研究会では言及されませんでした。 たとえば、網間の接続部分の冗長化をどうとるんだろう、というのが下図からは分かりません。 


 
 
 

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