間違いだらけのネットワーク作り(206) 2001/12/01
記事評「IP−VPNでのOSPF模造リンク」

昨日の金曜日、よくあるパターンで書店に寄り道。 ただし八重洲ブックセンターでなく、自宅に近い西葛西の書泉。 ここは小さな書店なのですが、文芸書の品揃えが私の好みに合っているのです。 ほかの町中の書店では1冊も置いてないような作家の本を平積みにしていたりします。 車谷長吉の「文士の魂」というエッセイ集を購入。 この作家は「反時代的毒虫」というのをキャッチフレーズにしている、いまどきめずらしい私小説作家です。 この作家が好みかというと、小説はまったく好みに合いません。 直木賞を受賞した「赤目四十八瀧心中未遂」というのを数年前に読みましたが、二度とこの作家の本は読むまいと決めました。 あまりに「普通」とはかけはなれているからです。 同じ私小説作家でも椎名誠などは健全な明るいものが多いのですが、車谷のはまさしく「毒虫」。 重たすぎてツカレルのです。

ところが、ある出版社のPR用の小冊子でこの作家のエッセイを読んだのですが、これは小説とちがって独特の視点と文体が面白く、重たくもない。 「文士の魂」は夏目漱石、谷崎潤一郎、三島由紀夫らの近代文学作品を車谷が独特の解釈をしたもの。  実はつい最近夏目漱石の「三四郎」を20数年ぶりに再読したのですが、車谷はこの本の中で「三四郎」と鴎外の「青年」を対比して「三四郎」が格段に優れていることを解説しています。 論旨明解。 ふーん、こんな読み方もあるのか、というのと、「文士の魂」とういう表題にそのまま表れている車谷の文学への思い入れがこの本の面白さです。

記事評「IP−VPNでのOSPF模造リンク」

さあ、今週は何を書こうか、と思案していると日経コミュニケーション12月3日号が届きました。 前号のサーベイ&チョイス「IP−VPN」に続いて、レポート「IP−VPNの使い勝手向上に道、OSPFを格段に使いやすくシスコがルーターに新機能」(p.89)という記事が掲載されています。 なんだか、苦し紛れ、という感じになってきましたね、IP−VPNも、記事の書き方も。 そんなにIP−VPNを持ち上げなきゃいけない必然性があるのでしょうか?

(先週の間違いだらけから)
”OSPFやRIPが使えるかどうかについて述べた中のP.154の文章。 「ただし、ルーティング・プロトコルを重視すべきなのは、IPネットワークを構築済み企業。 ルーティングの設定や管理といった面倒な運用はすべて事業者に任せたい、(中略)単にサービス内容の違いで選べばよい。」 

いまどき、IPネットワークを構築済みでない企業なんて、よっぽどの小企業でしょうね。 この文章はこう書くべきです。 「IP−VPNの導入を検討している企業のほとんどはIPネットワークを既に構築している。  これらの企業はルーティング・プロトコルを重視すべきであり、現在使っているRIPやOSPFが使えるかどうかはIP−VPNを選択する重要な基準である。 また、IP−VPNか、広域Ethernetかを選択する重要な基準でもある。 広域Ethernetはルーティング・プロトコルの制約がまったくないからだ。」”

今回の記事はOSPFがそのまま使えることの重要性と、ユーザ・ニーズがあることを裏付けたものです。 で、どんな手段でシスコ製ルータを使っているIP−VPNでOSPFを使えるようにするか? MPLS上にOSPF用のシャムリンク=Sham Link(模造リンク)を張るとのこと。 

ただし、先週の間違いだらけでも触れたとおり、ルータの処理能力の問題をクリアしないと不可。 いわく、「各社がシャム・リンク機能を本サービスに採用するには、まずOSPF自体の処理負荷の問題を解決することが先決となる。 高性能なルーターを使うか、あるいはOSPF処理をハードウェア化してルーターのCPUに与える負荷を軽減させるなどの方法があるだろう。」(p.91)  なぜ、あるだろう、なんでしょう? シスコが11月にシャムリンクの機能を出荷すると書いているんですから、その実現方法が?付きということはないでしょう。

また、OSPFをそのまま使えるようにする、ということはユーザの持っているルータの経路数はそのまま減らす必要がなく、100だろうが、200だろうが、CEから外側へアドバタイズできるのでしょうね?  現在のIP−VPNはCEの経路数は10以下にしろ、とかネットワーク全体でいくつ以下にしろ、といった制約がありますが、それもなくならないと意味がありません。

さらに、企業のIPネットワークはOSPFだけで成り立っているわけではなく、RIPやスタティックも併用しているのが普通です。 全拠点がOSPFなんてめったにない。 RIPの拠点はどうやって始末をつけるのでしょう? 疑問は増えるばかりです。

キャリアが莫大な投資をして作り上げたIP−VPN。 そのPEルータをOSPFが動かせるようなルータに買い換える投資をするくらいなら、OSPFだろうが、RIPだろうがユーザが自由に使える広域Ethernetに投資した方がはるかに安上がりで、キャリアにもユーザにもメリットがあるのではないでしょうか?

といったところを12月15日の研究会では議論したいと思います。 講師はフュージョンコミュニケーションズとパワードコムの方に依頼中です。  処理負荷を気にしなくていいルータを使ってサービスを提供している両社が、IP−VPNや広域Ethernetを今後どう発展させていくのか、また、現在どんな事例があるのか、教えていただこうと期待しています。
 
 

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