間違いだらけのネットワーク作り(198) 2001/10/06
「高速道路に信号機」

私が日経NETWORKに書いた書評を読んで、「IPルーティング徹底解説」(トーマス・モーファー著・日経BP社)を購入した、というメールを会員の方からもらいました。 推薦した本を読んでもらうのはウレシイのですが、一番読んでいただきたいのは「聖(さとし)の青春」(大崎善生著・講談社)。 技術とはまったく離れた本もたまには読んでください。 私はといえば、昨日も会社の帰りに八重洲ブックセンターに寄り、3連休中に読む本を物色。 「夏目家の糠みそ」(半藤末利子著・PHP)を買いました。 著者は漱石の孫。 ここ半年ほど漱石関係の本をよく読んでいます。 

本はすぐたまるのが欠点。 机上の2段の本立てには今必要な本(これは日経の雑誌やら専門書)を置いてあるのですが、どうにも収まりがつかなくなり先週末、大整理。 書棚、机の下、クローゼットやらに押し込まれた本をダンボール4箱に詰め込み、BookOFFに送りました。 約200冊。 中には椎名誠の最近の本のように、最初の10ページも読んでいないのが結構あります。 著者と題名だけ見て、サっと買うので当たり外れも多いのです。 面白くない本を読むことほど苦痛なことはありませんから、もったいないという気はまったくないのですが、よめさんはあきれていました。 文庫本はほとんど買わないので、200冊の購入額は1冊1500円として約30万円。

BookOFFから来た査定額は? 楽しみにしていました。 2割くらいの額にはなるだろうと。 結果、期待値の10分の1、6800円。 まあ、送料が不要だし、スペースも出来たし、いいか。 

高速道路に信号機

さて、そういうことで今週の記事は技術的というより、文学的にいきたいと思います。 まな板にのせるのは日経BizTechの記事。
NTTコミュニケーションがIP−VPN等で帯域制御装置を使ったサービスにSLAを導入する、というもの。

下記がリンクと要約です。

帯域制御サービスにSLAを導入、NTTコムが11月から試験サービス
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NTTコミュニケーションはSLA付きの帯域制御サービスのトライアルを実施する。
2001年11月1日から2002年2月28日までの期間限定。

同社は、端末やアプリケーションごとに帯域を保証したり優先制御を実行するサービス「AppMaster」
を6月から提供中。 IP-VPNなど帯域を保証しない「ベストエフォート型」のサービスで使うと効果が見込める。
ただし、帯域保証や優先制御を行うサービスでありながら、SLAによる保証はなかった。
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@サービス・コンセプトへの疑問
帯域制御サービスはIP−VPNに限定したものではないのですが、主たる対象として考えられているのは間違いないでしょう。
でも、IP−VPNで帯域制御装置を使ったサービスをするのはサービス・コンセプトに破綻をきたしているとしか思えません。

たとえて言うなら「高速道路に信号機をつける」ようなもの。 IP−VPNのコンセプトは「高速で、運用が楽」(ATMやフレームリレーのようなPVCの設定が不要)じゃなかったのでしょうか? ATM交換機でPVC設定をするより、パケットシェーパーなどで設定する方がわずらわしく、かつ、不完全。 

優先制御サービスはPEの能力を著しく消費するという欠点はあるものの、ルータだけで実現できる、VoIPなどでは有効、運用も重くない、というので納得できます。 高速道路に追い越し車線があるようなものです。 が、帯域制御装置を使うのは、 ルータだけではユーザが求める帯域制御はできないから別装置を使う、有効性に疑問、運用が重くなる、大いに疑問です。 高速道路(ルータ・ネットワーク)に信号機(帯域制御装置)を付けるのはいただけません。
 

A有効性の疑問
帯域制御装置は限られたパイプ(帯域の保証された)において重要なアプリケーションの帯域を確保してレスポンスを保証するのに有効。 キャッチフレーズ的に言えば「回線を太くしなくても基幹系のレスポンスが向上します」。  ATM回線や専用線なら文字通りのパイプですから、帯域は帯域制御装置でコントロールできます。 しかし、IP−VPNはパイプではありません。 そもそも網内で帯域保証がないので、端っこの装置が帯域制御しても意味がないのでは? しようとしても結果は優先制御にしかならないのでは? という疑問があります。 テストで有効性の検証をした方がいらっしゃったら是非、コメントをいただきたいものです。

Bこれからの企業ネットワークの設計は?
ネットワーク設計でトラヒック特性の把握と適切なQoSポリシーが重要なことはNET&COM21「VoIPによる大規模ネットワークの構築技法」で述べているとおりです。 しかし、これからの設計は「よりきめ細かな帯域制御や優先制御」を行う方向へ進むべきなのでしょうか? それとも「ゆるやかな制御」をする方向が正しいのでしょうか? 答はいうまでもありませんが「ゆるやかな制御」です。 

理由はネットワーク資源がどんどん豊かになり、安価になっているからです。 限られた資源しか使えなかった時代にはきめこまかな帯域制御や優先制御によって、資源の有効利用に工夫をこらす必要がありました。 が、今は違います。 ゆたかなネットワーク資源をぜいたくに使い、必要最小限の制御をする。 これが設計・機器・運用管理などを含むトータルコストを最小化し、ネットワークの効果を最大化する考え方だと思います。

高速道路に信号機をつけるのは逆行しています。 ちなみに私が今手がけているネットワークの中には150拠点規模の広域Ethernetで、全拠点0.5メガ以上、優先制御・帯域制御いっさいなし、というのもあります。 ついでに言うとルータも一切使っていません。 さわやかな秋晴れのような設計です。
 
 

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