間違いだらけのネットワーク作り(184) 2001/06/23
「IPv6は上から?」

最近、漱石書簡(岩波・漱石全集22〜24巻)を気に入って毎晩読んでいます。 私はふとんに入ってから1時間ちかく本を読むのが習慣なので、枕もとには知らないうちに何冊もの本が積みあがっています。 もちろん技術書を読むわけがなく、エッセイやノンフィクションがほとんどで小説はめったに読みません。 この2週間ほどは漱石の書簡集をずっと読んでいます。 きっかけは以前からひいきにしている出久根達郎の「漱石先生の手紙」というエッセイを読み、漱石の手紙文に惹かれたからです。 エッセイでは部分的な引用しかないので全文を読もうと八重洲ブックセンターで漱石全集のうち書簡がおさめられている巻を買いました。 

漱石には木曜会で知られる多くの弟子や正岡子規をはじめとする友人たちに恵まれていました。 漱石の手紙を読むと漱石の誠実さ、優しさ、厳しさ、強さ、弱さ、そういった人柄がにじみ出ており、たくさんの人々に畏敬され慕われた理由がよくわかります。 同時に出来の悪い弟子に宛てた手紙を読むと、自分が漱石にしかられたり力づけられているような気分になってきます。 たとえば明治39年2月13日弟子の森田草平への手紙には次のような文章があります。 小説家として自信喪失している森田を叱咤する手紙です。

 「他人は決して己以上遥かに卓絶したものではない又決して己以下に遥かに劣ったものではない。 特別の理由がない人には僕はこの心で対している。 夫(それ)で一向差し支えはあるまいと思ふ。 君弱いことを云ってはいけない。 僕も弱い男だが弱いなりに死ぬ迄やるのである。 やりたくなくったってやらなければならん。 君も其通りである。 死ぬのもよい。 然し死ぬより美しい女の同情でも得て死ぬ気がなくなる方がよからう。」

 あるいは同39年7月2日高浜虚子あて書簡では
 「小生は何をしても自分は自分流にするのが自分に対する義務であり且つ天と親とに対する義務だと思ひます。 天と親とがコンナ人間を生みつけた以上はコンナ人間で生きて居れと云ふ意味より外に解釈しやうがない。 コンナ人間以上にも以下にもどうする事も出来ないのを強ひてどうかしやうと思ふのは当然天の責任を脊負つて苦労するやうなものだと思ひます。」

このページにアクセスする方は漱石など読む時間があればIPv6の技術書を読む、若い世代の方が多いと思います。 しかし、たまには目先を変えて漱石の手紙もいいかもしれません。 生きているうちに漱石のような人物に出会える人はまずいないでしょうから。

話かわって、7月7日の第13回情報化研究会「IP−VPN vs 広域LAN」ラウンド3は63名出席となり、申し込みは締め切りました。 今回も総務省の方からエンドユーザの方まで多様な方が出席するので、私とは異なる観点のアイデアをたくさん聞けることと楽しみにしています。 
 

IPv6は上から?

いやはや日本人というのは江戸時代以来の「お上」や「先生」に弱い気質が抜けきらないのかな、とIPv6論議を見ながら思いました。 政府からの文学博士号授与を断固拒絶した漱石が見ていたら、100年たっても日本人は変わらんなあと嘆いたかもしれません。

でも、IPv6について書き込まれたそれぞれの方の意見を否定する気はありません。 それぞれが正しくIPv6の一面を言い当てているのでしょう。 ただ、問題は何を重視するかです。 私は一貫してユーザの立場に立つ主義なので、掲示板にも書いたようにじょぐさんの考えに近いです。 IPv6においても「目的」と「手段」を取り違えないことが大切、ということです。 IPv6も手段の一つにすぎず、エンドユーザからはv4だろうがv6だろうがやりたいことが、より簡単により安価にできれば良い。 
 

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IPv6は上から?  Follow: 448 / No: 446 [返信][削除]

 投稿者:松田  01/06/16 Sat 20:29:42
松田です。 IPv6は文学的理解すらしていません。 が、Aさんがくれたメールのコメントが面白いので引用します。
「インタロップのIPv6では、トネリングがかったるいとの否定派の意見を覆すような実験結果をみたかったのに、
聞いた相手がたまたま「うちのはネイティブです」という例ばかりだったので拍子抜けでした。

なお、マルチホーミングしたときの問題なども提起されていました。 しかし、IIJもOCNも「まだ参加者が少なくて。。。」
と言っていますし、「こういうものは上から押し付けて無理にでもやらせないと普及しない」とのことで、
早速プロジェクトをやらせるようですね。」

こんなもんですか?
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Re: IPv6は上から?  Follow: 451 / Prev: 446 / No: 448 [返信][削除]

 投稿者:じょぐ  01/06/17 Sun 22:03:53
「キラーアプリ」という言葉の定義にもよりますが、「有効性」が論じられない技術が、お上の主導で普及するのか、
私には疑問です。 例えばIPv6を導入したISPには補助金が出るために導入はしたとしても、それとISPがIPv6への移行
作業を本気で進めるかは別の話だと思います。

またWindowsXPにIPv6が入ればそれで普及するのでしょうか? RSVPだってWindowsには入っていますが、普及していませんよ。
ネットワークにかかる(管理や機器導入)コストに見合うペイバックがなければ民間レベルでの導入は進みにくいのではない
でしょうか?

IPv4はその有効性が当時のネットワーク技術と比べて明らかでした(i.e. パケット通信のコストパフォーマンスをBest Effortという
割切りの元に向上させた。そしてそれで失った信頼性をTCPという転送機器にコストが跳ね返りにくいところ(=Endホスト)で保証させた)。
だから普及したのだと理解しています。

> こんなもんですか?

TinHatさんがおっしゃるように有効性はまだ見えておらず、掛け声が先行しており、掛け声に普及を追いつかせるためのことが色々と考え
られている段階、と理解しています。

全くの私感ですが、どうにもかつてのOSIとIPv6がダブってみえてしまう…。

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Re: IPv6は上から?  Follow: 452 / Prev: 448 / No: 451 [返信][削除]

 投稿者:のらのら  01/06/18 Mon 18:45:39
はじめまして。

おっしゃること、ごもっともだと考えています。
でも、私はIPv6肯定派なんです。(^_^;)

TinHatさんが言われていたように、
> 私もいまの段階でIPv6の有効性は論じられないと思います。 現段階では、論じられないと思っています。
なぜなら、IPv6が本当に有効なのは、Intranetでもなく、Extranetでもなく、Internetだと考えているからです。
このプロトコルが全世界に浸透するまでには後何年もかかるでしょうし、いろいろと障害が発生することも考えられますが、
私は、本当のブロードバンド時代には必要なものだと思ってます。

例えば、ある家がBroadBandに接続されていたと仮定させていただきますね。(中略)
テレビをつければ、自分の好きな番組を好きなときにみる事が出来、電話の特定のボタンを押したら、おばあちゃんとのTV電話が始まる、
そんな状況になったとき、絶対にIPv4 Addressは枯渇します。

また、技術的な面から申し上げますと、Endの端末を特定できる、というのは非常に都合がいいです。
現在のIPv4 NATの裏側に隠された機器は特別な設定をすることなしには外部に公開できませんよね?
もちろん、Firewallに穴あけたり、DMZを設計したり、とちゃんと出来る方がいればそんなのたいしたこと無いのかもしれませんが、
Internetは誰でも使えることが条件ですよね。
また、End端末が特定できるのであれば、P2Pサービス(例はあまりよくないですが、グヌテラ、などなど)を考慮して、
より簡単にBtoCが可能となります。

こういったことを考えると、やっぱりセキュリティも必要になってくるわけでして。。。

以上の面から、私はIPv6に非常に好意を抱いてますが、
皆様のご意見はいかがでしょうか??

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Re: IPv6は上から?  Prev: 451 / No: 452 [返信][削除]

 投稿者:Frederic  01/06/19 Tue 13:42:11
はじめまして。某メーカのエンジニアです。

> でも、私はIPv6肯定派なんです。(^_^;)

> このプロトコルが全世界に浸透するまでには後何年もかかるでしょうし、
> いろいろと障害が発生することも考えられますが、
> 私は、本当のブロードバンド時代には必要なものだと思ってます。

私もおおむね同意見です。エンジニアとして技術的に考えるとevolutionとしてv4からv6へ向かうのは自然だし必要な
段階と時間をかけて進んでいけば良いのだと思っていました。 ところが最近官庁を含むいろいろなところに出入りして
生臭い話を聞くと、考え方を変えなければいけないかなぁと思い始めました。

v4のトラヒックの半分以上は実は米国を経由しているという話があって(そりゃぁIXのあるところに行くしかないので)、
トラヒックが流れればそこに当然支払いが生じるわけで、誰がどう払っているのかよく知りませんが日本はアメリカに
結構な金額を払っているようです(あいまいですみません、どなたかこの辺に詳しい方いれば補足してください)。

お金の話はともかく、情報支配ということを考えればやはりあまり好ましい姿ではなく、特に米国の人々は
戦略なるものがお好きなようですから色々と仮想敵国を作ってシミュレーションなどをなさっているのでしょう。

そういう状態に甘んじていて良いかどうかは技術の話ではなくて政治の話ではあるのですが、日本が国家戦略として
米国の情報支配を脱却してv6をテコに情報主権を手に入れようなどと宣言したときに(実は某森といういとが
すでに宣言したらしいのですが...日本人はそう思っていませんが、世界の人はそう思っています)、技術者は
どう対応すれば良いのか悩んでしまいます。

もちろん技術というものは上からわめいてもなるようにしかならないのですが、お金のかけ方が違ってくると
技術の進歩の速度も変わってきますから。

この場にそぐわない話をしたかもしれませんが、v6の話は技術論だけではどうもいかんみたいのですよ。
(そもそも国家戦略として仕掛けたのはどこかに名前がでてきた某先生一派なので、技術者も無関心ではまずい
と思うのです。)
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Re: IPv6は上から?  Follow: 455 / Prev: 451 / No: 454 [返信][削除]

 投稿者:じょぐ  01/06/19 Tue 21:47:05
多くの人と議論ができてとても嬉しく思います。

まず私の立場を明確にしておきますね。 私は「ユーザへのメリットを"明確に定義"できないものは決して売れ
ないし、普及しない」という考えです。

この場合、ユーザとは企業の情報担当の方であったり、ISPや各種の常時接続系につなげている一般の人です。またメリットとは「自分が
やりたいことをいかに安くできるか」と定義しています。

しかし一般的に、ユーザがしたいことを的確に理解するためには、ユーザの言っていることに対し、「本当は何をしたいのだろう?」
という咀嚼が必要です。やりたいこと→結論ではなくて、やりたいこと→真の問題点→様々な解決手法の吟味→結論、という中間の
プロセスが一般のIPv6の議論の中では見えてこないことを不思議に思っている、というのが私の主旨です。

以下、各論に移ります。

確かにアメリカの各NSPやISPが自ネットワークへ流れ込むトラフィックが逆方向との圧倒的なアンバランスを理由に、日本のNSPやISP
との接続時に日本側へのみ課金を要求しています(この場合、重要なのは経路情報であり、IXはそのためのまき餌でしょう)。そのた
めにユーザが高い金をISPやNSPに払わされているのは事実でしょう。

しかしこの解消を"どのように"することが最も上記で定義したユーザメリットに結びつくのかという議論がもっと必要ではないでしょうか?
アメリカへの向かうトラフィックが圧倒的に多い原因はLayer3ではなく、むしろLayer1(アメリカのバックボーンが太いこと(ファイバを
バンバン引けてしまうお国ですし))と密接な関係があるように思います。もしこれが真の問題点だとするとLayer3の入れ替えでは十分な
解決には至らない危険があるように思います。

村井先生がおっしゃったことだから無視できないというご意見ですが、村井先生の功績は十分に認めています。しかし村井先生のおっしゃった
ことが上記で定義したユーザメリットに論理変換できるか、という観点も必要ではないでしょうか?

おばあさんはTV電話で"手軽に"孫たちと話したいときに、それがそもそもThe Internetで提供するのがベストかという議論がまず必要だと
思います。ご存知のようにバーストが発生し、それがトラフィック理論的に解明されていないThe InternetではDelayやジッタがつきものです
(これはここでのVoIPでの議論がたくさんあったことからもお分かり頂けると思います)。もしフュージョンのようなThe Internetとは異
なるIP網で提供するのがベスト、という結論になったらIPv4でも十分かもしれません。

「自宅にサーバをおきたいこと」が一般ユーザのリクエストだとして、そのためになぜ固定的なIPがいるのか、という箇所を明確にする必要
があると思います。 固定的なIPとは、そのサーバをThe Internetや他の人家のネットワークから一意に指定できる識別子、という意味で
おっしゃっているように私には見えます。 それならFQDN(いわゆる名前空間)がその役目を果たすことができるかもしれませんよね?
DDNSを使えば、IPが可変でもFQDNレベルではそれを隠蔽できます。 NATに穴をあける必要があって、それが面倒ならwebサーバとNAT間
で自動化する技術をベンダさんに提案すればいいのではないでしょうか?
(IPv6ルータ対応ルータにISPがどんどん入れ替える必要性を求めるよりはDDNSの導入とNATとwebサーバの入れ替えのほうが安そうです
よね?)
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Re:いわゆるIPv6対応  No: 459 [返信][削除]

 投稿者:焔星  01/06/21 Thu 10:34:09
Yenxing(焔星)と申します。
ちょっと面白そうだったので。

CHさんの書きこみより(一部抜粋にて)
>A. レイヤ3のトランスポートがIPv6
>
> FreeBSD4.1RELで見るに、ほとんど別ソケット・別インタフェースに見えます。
>物理的には一つのコネクタ・ケーブルなのだけど、レイヤ3論理的二つの異なる
>ネットワークに接続しているイメージです。そして当然、IPv4⇔IPv6のトンネル
>を、内部に持っていると。
エンドポイントのマシンにはこういうのはないはず。 基本的にifconfigで出てくるのは「カーネル」をデフォルトで
取り扱っているからgifやfaithが出てきているだけで、別に内部でトンネルはしていないはず。
#っていうふうにソースコードを読んだんですが。
gifやfaithはそれぞれトンネルのためのゲートとなるマシンが処理できればいいので、エンドポイントは利用したいIPを選択すれば良いだけです。

>B. レイヤ3に密接した上位レイヤのIPv6対応
>
> 一番切実なのがルーティングプロトコルです。小規模SOHOルータならスタティッ
(しょーりゃく)
> V4との同居がなくならない限り、こういう2回拾いに行く動作は必要になるの
>でしょうか。
それぞれのプロトコルだけで行うので、DNSの2度引きなどは発生しないでしょう。 IPが混在していても、どれを利用するのかがはっきりしていれば問題はない。
ただ、混在ネットワークにてどちらを使うか明示的でない場合はDNSはどうしても2度引きは必要でしょうが。
あと、ディレクトリもの一般については変わらないですよね。 現に今のBINDはIPv6対応ですが、名前の問い合わせは同じ手順でやりますから。
これについてはこういう話も。 DJBさんからの議論によってはBINDの手法自身が否定され、レコード指定の方法が変わるかもしれません。
でも、ユーザーレベルで名前を引く手順が変わるかどうかというと”多分変わらない”でしょう。
#でも、DHCPv6って使えるのかどうかは知りません。 あるというのは聞いてますが。

>C. IPv6パケットのペイロード内の、情報要素としてのIPv6
>
> L3のヘッダを書きかえるってことでNATとIPv4⇔IPv6トランスレータは、どうせ
>機構的に一緒なんでしょう。そこで書き換えできないところにv4前提にしてしまっ
>た情報要素があったら大変です。
>
>ここがソフト屋さんの悩みどころなのでしょうね。gethostbyaddr()みたいな
>関数をV4用とV6用で二通りつくって別ライブラリにしておくのかな。どっちにリ
>ンクしたかで ping, traceroute, telnet, ftp などの、全クライアントソフト
>が、どっちを(先に)通るか決まるのかな。Windowsでも、メーラーもブラウザ
>もV4用とV6用と2種類作ることになるのかな。
トンネルを利用した場合、ヘッダが書き換えられると、行った先が困るので実際にはヘッダにヘッダがついたパケットがつく状態でなので問題は発生しない。
違うプロトコル領域へ出たとしてもNATと同じ状態になるので問題はない。 と思うのですが。

アプリも対応しているものはコンパイルオプションの変更だけで可能ですから、そう苦労はしないはずです。MS製品だけで見ると、
多分IPv4用、IPv6用と分けるようなことはしないでしょう。 ちなみにNetscape6は対応していたはずです。(Windows版は違うと思うのですが)
 Windows2000にIPv6をいれたらブラウザとかはどうなんだろう?そういうのを試してみる人っていないんでしょうか?

多分ここを見る人のなかには「IPv6」なんていらないっていう否定的な方々もいると思うのですが、私は今すぐにでもほしいですね。(っていまは大半がIPv6で生活
してますが。freenet6なんていいものもあるし)理由は単純明快で、古くからのインターネット利用者として

・モラルに欠けた人たちとは一種かけ離れたところで昔同様の平穏な生活がしたい

というのと、

・家にある複数のマシンにアクセスするのに、IPv4だとNATをやっているマシンに
接続したあと、目的のマシンに接続しないといけない(アクセス手順が多い)。セ
キュリティ的にポートフォワードなんてのは使いたくない。

からですね。

今の「あまりにも」モラルの低いインターネットと隔絶するという形で「IPv6」が
浸透するという解もありだと思うのでが。
#こういう答えは無しですかねぇ?
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